ウクライナ4州のロシア併合でウクライナ事変は戦争状態にー米側と非米側陣営、対立鮮明化へ(追記:米側陣営経済破綻の先陣を切る英国)

ロシアのプーチン大統領が2022年09月30日、ウクライナ東部、南部の4州の併合に踏み切ったことで、ウクライナ事変はウクライナ・NATOとロシア側陣営との事実上の戦争状態に入ったと見られる。最終的には、エネルギー資源や貴金属、穀物を大量に生産・保有し、人口も圧倒的に多い非米側陣営と「持たざる」米側陣営の深刻な対立が激化する公算が大きい。

ロシア4州併合は「特殊軍事作戦」から「戦争」への格上げー米側・非米側陣営対立深刻化

NHKは2022年10月01日06時06分にWebサイトで「プーチン大統領 ウクライナ4州を一方的に併合 対立一層深まる」と題する記事を公開した。

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの東部や南部の4つの州を併合すると定めた「条約」だとする文書に署名し、一方的な併合に踏み切りました。
これに対して、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請する方針を表明したほか、欧米側も相次いでロシアへの追加制裁を発表し、双方の対立は一層深まっています。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は9月30日、日本時間の夜、モスクワのクレムリンで行われた式典で演説しました。

この中でプーチン大統領は、①ウクライナ東部ドンバス地方の①ドネツク州と②ルハンシク州(ロシア語でルガンスク州)(ロシア語でルガンスク州)、ロシア側が完全に掌握している)、③南東部ザポリージャ州(欧州最大の原子力発電基地のあるザボロジエ州)、④南部ヘルソン州の合わせて4つの州で強行された「住民投票」だとする活動について、「住民は、自分たちの選択を行った。この地域に住む人々は永遠にロシア国民だ」などと述べ、ロシアがウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言しました。(中略)

併合支持するルハンシク州の市民の声

親ロシア派の勢力が支配するウクライナ東部ルハンシク州では、巨大なスクリーンが用意され、プーチン大統領の演説の様子などが映し出されました。スクリーンの前には、併合を支持する人々がロシアの旗を手に集まり、プーチン大統領が一方的に併合を宣言すると、拍手したり、歓声をあげたりしていました。また街中には「永遠にロシアと共に」と書かれた横断幕も設置されていました。

地元の女性は、「やっとロシアの一部になりました。勝利はわれわれのものとなり、すべてうまくいくでしょう」と話していました。また地元の男性は、「きょうの出来事は世界的に見ても意味があります。われわれが犠牲のすえに獲得したものです」と話していました。

また、国連安全保障理事会(15カ国)が緊急に開かれたが、10カ国代表はロシアの「住民投票」を意義を認めなかったものの、ロシアは当然常任時理事国として拒否権の行使で反対し、中国・インド・ブラジルの他のBRICsは棄権した。これに、2022年06月、英国連邦に加盟したガボンまで棄権に加わっている。世界諸国民の中では米側陣営から離脱する動きが静かに進行していると見るべきだろう。さて、NATOや傀儡政権のウクライナは経済制裁を強化すると言っているが今のところ、次のようなものらしい。

米 ロシア中央銀行総裁らに制裁

アメリカのバイデン政権は、ロシアによる一方的な併合を受けて9月30日、追加の制裁を発表しました。このうち財務省は、▽ロシア中央銀行のナビウリナ総裁や、▽議会議員278人、それにミシュスチン首相やショイグ国防相の家族などを資産凍結の対象に加えたとしています。
また商務省は、ロシアやウクライナ南部クリミアの57の団体について、ウクライナへの軍事侵攻に関与したとして、アメリカ製品の輸出規制の対象に加えたとしています。

制裁効果はロシアの経済に悪影響を与える効果は、はっきりいってないだろう。それよりも対露経済制裁で欧州諸国の物価が激しく上昇し、庶民の生活に多大の悪影響が生じている。また、ロシアから天然ガスが来なくなったことで(逆対欧州経済制裁)、今冬はドイツを中心に凍死者が急増するとの見方も出ている(国際情勢解説者・田中宇氏「潰されていくドイツ」https://tanakanews.com/220823europ.htm)。実際、NHKは「ユーロ圏の消費者物価指数 9月は10%上昇 初のふた桁伸び率に」と題する記事を公開してしいる(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220930/k10013844241000.html

ドイツやフランスなど、ユーロ圏19か国の今月の消費者物価指数の伸び率は10%ちょうどとなり、統計をさかのぼれる1997年以降ではじめて、ふた桁の伸び率となりました。EU=ヨーロッパ連合が30日発表した、今月のユーロ圏の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて10%ちょうどの上昇となりました。上げ幅がふた桁を記録するのは、統計をさかのぼれる1997年以降はじめてで、過去最大の伸び率を5か月連続で更新しました。

ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、エネルギー価格が40.8%と物価全体を押し上げているのが最大の要因で、食料品なども11.8%と幅広い品目でインフレが進んでいます。

こうした中で、米側陣営は日本を除いて需要を抑制するだけの利上げを強力に進めているから、インフレと不況が同時に進行するスタグフレーションに陥っていくだろう。米側陣営でのインフレの根本的原因は、対ロシア経済制裁の跳ね返りによる(対米側陣営逆制裁)によるコストプッシュ型・インフレだから、QT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)を強化しても効果はない。むしろ、株安・債券安(国際金利高)・為替相場安のトリプル安に見舞われるだろう。

実際、NHKはWebサイトで2022年07月01日午前06時42分に「NYダウ 2万9000ドル割れ おととし11月以来」と題しする記事を公開した。

(2022年09月)30日、アメリカで発表されたことし8月の個人消費に基づく物価指数が市場の予想を上回ったことなどから、ニューヨーク株式市場では、欧米で、インフレを抑えるための金融の引き締めによって景気が冷え込むことへの懸念が強まりました。

この結果、売り注文が膨らみ、ダウ平均株価の終値は前日に比べて500ドル10セント安い、2万8725ドル51セントとおととし11月以来、およそ1年11か月ぶりに2万9000ドルを割り込みました。

米側陣営の金融・経済破綻の先陣を切る英国

経済情勢の厳しさは、米国よりもユーラシア大陸に位置する欧州NATO加盟諸国のほうが厳しい。サイト管理者(筆者)は米側陣営の実体経済・金融情勢の厳しさは欧州NATO加盟諸国のほうが深刻化と思っていたが、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が昨日2022年10月02日に投稿した「破綻が進む英米金融」(https://tanakanews.com/221002bond.php、有料記事)と題する論考によると、英国が米側陣営破綻の先陣を切るようだ。

英国のリズ・トラス新首相は09月23日、対ロシア経済制裁の「返り血」を浴びて苦境に陥っている自国の経済を「立て直す」ために「大型減税策」を発表したが、財源の裏付けが不明確だったために、新規国債の大規模発行・市中消化で賄うものと見られ、英国債の大幅値下がり懸念が表面化し、同国債価格と(国債金利は急上昇。1日で1%程度も上昇した)と通貨ポンドが急落した。実際、同国の年金基金は運用資産である英国債を投げ売りした。国債価格の急落、つまり、国債金利の急上昇は当然、英国の株式市場にも悪影響を与える。いわゆる、「債券・株式・為替」のトリプル急落が起こった。

このため、同国の中央銀行であるイングランド銀行が最終的に国債を買い上げるQE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策=)を慌てて行ったが、拙稚な「大型減税策」が金融市場の混乱を招いたことは明らかだ。ただし、トラス政権は財源なき「大型減税策」を実施する方針は撤回していない。ロイター通信は次のように伝えている(https://jp.reuters.com/article/britain-politics-idJPKBN2QX0K4)。

トラス英首相は2日、自身が打ち出した大型減税などの「成長計画」について改めて妥当性を訴えた一方、もっと「地ならし」をすべきだったと語り、対応に拙速な面もあったと認めた。この日から始まった与党・保守党の党大会開催地のバーミンガムでBBCの取材に応じた。

トラス政権が23日に発表した一連の経済政策は、具体的な財源の裏付けを伴っていなかったことで市場の動揺を誘ってポンド/ドルが一時最安値を更新し、英国債が急落するなど混乱を引き起こし、投資家や多くのエコノミストから批判を浴びている。

しかし、米側陣営の三大主要国である米国、英国、カナダの三国は、国民の目から国内のインフレが対露経済政策の跳ね返りで大規模に生じているエネルギー資源、貴金属、穀物価格のコストプッシュ型インフレであることを隠しているから、QT(Quantitative Tightening=量的金融引締め政策=)を行う姿勢を崩していない。QTへ本格的に乗り出すと、トリプル安が本格的に起きるようになり、金融破綻する。その中で、実体経済は内需が引き締められるから、インフレと不況が同時に起きるスタグフレーションも本格化する。

それではまた、QEに戻れば良いかというと、QEを続けてもいずれ金融破綻する。第一に、貨幣が実体経済に回ればデマンドプル・インフレを引き起こす。経済の供給サイドを考慮に入れずに、インフレ率2%程度を目標=米側陣営では2%目標を大幅に上回るインフレが起きている。現在のインフレは資源・穀物の供給成約から起きているのだから、コア・インフレ率だけを見ても仕方がない=として価値の裏付けのない通貨を大規模に発行する現在の現代貨幣理論は詳細に検討して、見直す必要があるだろう。

第二に、QEも結局のところ、金融・資本・為替市場を大混乱に陥らせる金融破綻を先送りする延命措置に過ぎないことである。QTは不健全な延命措置が金融大破綻をもたらすことを避けるために出てきたものだ。田中氏も上記論考で(QE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策=)を行っても)最終的な金融破綻は免れないとしている。要するに、米側陣営に打つ手はない。ただ一つあるのは、下記に詳細に述べさせていただいたように、自陣営の過ちを認め、露中を中心とした非米側陣営(特に、ロシア)と和解する道だけである。

今回の英国の混乱について田中氏は次のように述べておられる。

世界の金融の中心だった英米の金融システムが崩壊し始めている。米国よりも市場規模が小さい英国で先に崩壊が進んでいる。英米など欧米全体は(米諜報界による流通網を詰まらせる策などによって)2021年春からインフレが激化し、今年に入ってウクライナ戦争での極度な対露制裁の跳ね返り(ブローバック)が加わり、欧米(など世界各地)で史上最悪のインフレや物不足になって悪化し続けている。欧米では、インフレの原因がゼロ金利やQEなど中央銀行群の超緩和策にあると間違って決めつけられ(本当の原因は流通網の詰まりと対露制裁)、英米(と英傘下のカナダ)の中銀群は今春から、金利の引き上げとQE停止・QT開始への流れを続けている。原因分析が間違っているので、利上げとQE停止をいくらやってもインフレはおさまらず、むしろインフレが激化している。英米中銀は、利上げ政策を2年続ければインフレが抑止されて2%に戻り、再利下げして成功裏に政策を完了できると言っているが、こうした計画は全くの絵空事だ。 (Bank launches emergency intervention in markets after Kwarteng mini-budget) (世界的なインフレと物不足の激化

英米の金融システムはリーマン危機後、QEとゼロ金利によってバブル膨張の状態を延命させてきた。利上げとQE停止は、不可避的にバブル崩壊を引き起こす。加えて、ウクライナ戦争と対露制裁の長期化で、ロシアの石油ガス穀物に頼ってきた欧州や英国は、インフレと物不足の悪化で実体経済と国民生活が破綻している。欧米全体で、中産階級が貧困層に没落している。英国企業の6割が燃料高騰を受けて廃業寸前だ。英米は、金融システムと実体経済の両方が破綻する流れの中にいる。戦後の世界を支配してきた米英単独覇権の崩壊が進んでいる。 (UK government bonds: why are yields rising and why does it matter?) (Europe’s Economy And Living Standards Are Plummeting

4州併合のプーチン大統領の狙い

今回のプーチン大統領の4州併合の狙いは、欧州連合(EU)加盟国のうちエスタブリッシュメントのエリート政権が支配するドイツなど欧州諸国の経済を破壊して、新自由主義政策をこっそり行っているEUに反対する、マス・メディアではいわゆる「ポピュリスト政権」と呼ばれる反エリート民衆政権を成立させ、ロシアに対して米側陣営から離脱せせ、ロシアとの友好関係を再構築させることが狙いだろう。米側陣営の分断である。

さて、今回のウクライナでの住民投票であるが、ルガンスク州については、外務省時代に条約局長と欧亜局長を歴任して現在、静岡県立大学グローバル地域センター客員教授の職責を務められ、外交評論家としても活躍されている東郷和彦氏が、鳩山友紀夫主催の東アジア共同体研究所のビデオ・チャンネル(UIチャンネル、https://www.youtube.com/watch?v=b6r2TqLZ-mk)で「ロシア側が(注:行政機構も含めて)完全に掌握している」と断言している。

例によって、米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)とその軍事的・経済的支援を(注:恐らく無償で受けている。タダより高いものはない。欧州NATO加盟諸国ではウクライナ支援疲れなるものが広がつている)バイデン政権の傀儡政権であるウクライナ側は国際法に完全に違反したでっちあげの住民投票であり、全くの無法。対露制裁を強化するとしている。しかしながら、ロシア系ウクライナ人が多数を占める東部、南部4州の住民はゼレンスキー大統領を表看板にした独裁政権が、戦闘に参加できる20〜60歳程度の成人男子の出国を禁止している。

しかし、1500万人以上の多数のウクライナ人が出国している。独裁者(注:裏ではバイデン大統領が操っている可能性が高い)と化しているゼレンスキー大統領(注:ウクライナ人が一人になっても領土を守ると言っているが、国家が主権・国民・領土から成り立っているという日本の小学校高学年生にも分かることを無視した発言。国民のいない国家というのはあり得ないことだ)の支配を離れて、ロシアに「帰って」保護を受けたいと思っている住民は少なくない。

ウクライナはソ連邦が1991年末に解体してから成立した国家であるが、歴史は30年と極めて短い。同国はポーランドを宗主国とし、ウクライナ語だけを話すガリツィア地方の住民ととそれ以外のロシア系ウクライナ住民とで構成されているが、ロシアを叩き潰すためのNATOの東方拡大とともにその後押しを受けたガリツィア地方系ウクライナ人が政治勢力を伸ばしており、ロシア系ウクライナ人はガリツィア地方を基盤とするアゾフ大腿などネオ・ナチ勢力によって徹底的に弾圧されるようになった。このことが、2022年02月24日におこったロシアによるウクライナ侵攻(=ロシア事変の始まり)の直接の原因である。本サイトでもこのことを繰り返し主張してきたが、東郷氏の図で改めて確認しておきたい。

まず、今回のウクライナ事変(ロシアによるウクライナ侵攻)については、米側陣営の諸国民はウクライナの歴史について概要をもご存じないと思われるので、マス・メディアの歪曲的な報道によって、次のように信じ込まされている。

しかし、この見方はあまりにもバイデン政権・ゼレンスキー傀儡政権の見方に与させられた。ソビエト連邦が1991年12月26日崩壊して以来、ソ連邦はそれまで統合していた地域を独立国家共同体(CIS)に分割することを余儀なくされたが、西側諸国(かっては米側陣営をそう呼んでいた)が温かい支援の手を差し伸べることもなく、西側諸国は金融技術立国(要するに、数学を駆使した金融博打のようなもの)と貧富の大格差を生み出す新自由主義政策にいそしんだため、CIS加盟諸国は非常に苦しんだ。ロシアもその例外ではなく、エリツィン大統領から大統領職を引き継いだプーチン大統領が望んでいたものは次のようなものだった。

しかし、西側諸国(これ以降は米側陣営と記す)は一時(1998年から2003年まで)、ロシアを先進国首脳会議参加諸国の構成メンバー国に迎え入れていた(G8)が、それ以降は除外している。その裏で、東西ドイツの統一の際に当時のブッシュ大統領(父)とベーカー国務長官らがゴルバチョフ大統領やシェワルナゼ外相に約束したNATOの東方不拡大の原則を破り、ウクライナまで加盟対象国に入れるようになった。ウクライナがNATOに加盟すると、ウクライナには最新の中長距離ミサイルや戦略爆撃機、高性能戦闘機、重装備高性能戦車、高性能軍事ドローンなどを配備する基地が建設されるようにる。これは、ロシアを破壊するため以外の何物でもないが、ロシアにとっては全く受けいられないことだ。

そもそも、ウクライナは国家として成立してから30年ほどの歴史しかないが、ウクライナはポーランドを宗主国としてウクライナ語のみを話すウクライナ人居住のガリツィア地方とロシア系ウクライナ人が居住するある程度の複数民族国家だった。このガリツィア地方で勢力を伸ばしたのが、ウクライナ民族主義者(ネオ・ナチ勢力と呼ばれる)。その開祖はアドルフ・ヒトラーに協力したステパン・バンデラだったが、ポーランドがカチンの森事件でソ連に対して激しい怒りを持っていたこともあって、バンデラもナチスに協力的になった。なお、カチンの森事件とは次のようなものである(https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A3%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6-45110#:~:text=%E3%82%AB%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A3%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%82%AB%E3%83%81%E3%83%B3,%E6%89%80%E5%9C%A8%E4%B8%8D%E6%98%8E%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82)。

第2次世界大戦中のソビエト連邦によるポーランド将校大量殺害事件。ソ連は 1939年9月にポーランドに侵攻し,約 1万5000人のポーランド将校を捕虜にした。そのうち 400人を除く大部分が所在不明となった。1943年4月13日にドイツ宣伝機関は,ソ連のスモレンスク郊外にあるカチンの森で 1940年4月頃殺害されたと推定される 4443人のポーランド将校の射殺死体を発見したと発表。これに対しソ連は,1941年6月にソ連領内に侵攻したドイツ軍が同年 8月に殺害したものであると主張した。ロンドンのポーランド亡命政府は赤十字国際委員会による真相調査を要請したが,ソ連はそれを拒否し,1943年4月25日に亡命政府との外交関係を断絶した。

第二次世界大戦は米側陣営の勝利に終わったため、ガリツィア地方のネオ・ナチズム民族主義者は米国などに亡命する(注:ロシア革命の首謀者はディアスポラのユダヤ人である)。しかし、1991年の暮にソ連邦が崩壊し、ウクライナが建国されたため、米国など諸外国に亡命したネオ・ナチズム民族主義者はウクライナに帰国して、米側陣営の後押しのもと、急速に政治勢力を拡大するようになる。米側陣営によるオレンジ革命(大統領の不正選挙との見方が強い)で誕生した親欧米派のビクトル・ユシチェンコ大統領(2005年〜2010年)の誕生はその大きな例だが、同大統領は2010年の大統領選挙で決選投票にも残ることが出来ず、辞任する。

ユシチェンコ大統領の後を就いだのがやや親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ氏で最終的には2010年02月17日に大統領に選出され、2010年07月25日からヤヌコーヴィチ政権が誕生する。ヤヌコーヴィチ大統領は欧州連盟(EU)への加盟を希望する恐らくは一部のウクライナ国民の声に押されてEUと加盟交渉を行うが一旦、EUとの加盟交渉は頓挫した。これに怒ったウクライナ国民がキエフのマイダン広場で平和的なデモを行い、ヤヌコーヴィチ政権としてもEUとの交渉に前向きに取り組むようになるが、これを妨害したのが、親露派政権の存続を阻止しようとした米国オバマ政権下の当時のジョー・バイデン副大統領。当時のビクトリア・ヌーランド国務次官補(現在、バイデン政権下で国務次官)に指令してウクライナの米国大使館で計画を練り、平和的なデモ隊に発泡、流血の大惨事になった。

ヌーランド国務次官補は、発砲事件の濡れ衣をヤヌコーヴィチ政権にかぶせ、暴力的かつ非合法的に(注:大統領の解任に必要な議会での解任賛成者数は憲法の要件を満たしていなかった。上述の「ウクライナ・オン・ファイー」参照)同政権を打倒することに謀略的に「成功」し、合法的に選出されたヤヌコーヴィチ大統領を国外に追放することに成功する。これが2014年02月22日に怒ったマイダン暴力革命と言われるものであり、それ以降はウクライナで親露派大統領が誕生することはなく、ネオ・ナチズム民族主義者が政権や軍部の要職を占め、東部ドンバス地方を中心にロシア系ウクライナ人を大虐殺するようになる。

このマイダン暴力革命にプーチン政権が対抗したのが、「住民投票」戦略によるクリミア半島(注:ニキータ・フルシチョフ第一書記長の時代の1954年にクリミア半島はロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国へとソ連構成国間の移管が行われたが、元を正せば旧ソ連=現在のロシアの領土だった)の奪還だった

このため、親米派だが2014年06月07日からウクライナの大統領を務めたペトロ・ポロシェンコ大統領はクリミア半島問題はさておき、東部ドンバス地方の紛争解決にむけてある程度の力を注ぐようになり、2015年02月15日にウクライナ、ロシア、フランス、ドイツの首脳に加え東部ドンバス地方の代表者がベラルーシのミンスクに集い、①東部ドンバス地方での停戦②東部ドンバス地方のルガンスク州、ドネツク州に高度の自治権を付与することーをうたったミンスク合意Ⅱが結ばれた。

しかし、このミンスク合意Ⅱは誠実に履行されたとは言い難い。ポロシェンコ大統領とと同大統領を支えたウクライナのオリガルヒ(振興財閥)であるイホル・コルモイスキー氏との仲が悪くなり(注:コルモイスキー氏の所有企業に対してポロシェンコ大統領が強制捜査を命じたことなどによる)、コルモイスキー氏は、俳優のウラジーミル・ゼレンスキー氏をテレビ・ドラマポロシェンコ政権の腐敗を暴き出した政治ドラマ「国民のしもべ」に抜擢、反ポロシェンコ大統領のキャンペーンに乗り出した。その結果、ゼレンスキー氏は2018年12月31日に大統領選挙への出馬を表明、翌年2019年前半の選挙戦で現職のポロシェンコ大統領を破り、2019年05月20日第6代ウクライナ大統領に就任した。

ゼレンスキー大統領は就任前後はミンスク合意Ⅱの「誠実な履行」を謳っていたが、2021年01月21日に米国でバイデン政権が発足するとミンスク合意Ⅱの破棄やクリミア半島の武力奪還、NATO加盟を過激に主張するようになった。当時、ロシアがウクライナに求めていたのは次の二点である。

ところが、ゼレンスキー大統領はバイデン政権と結託して次のような態度に根本から変わり、正体を露わにする。

これは、ゼレンスキー政権が民主党バイデン政権の完全な傀儡政権になったことを意味する。このため、ロシア側のウクライナに対する強い要望は完全に無視されるようになり、2022年02月24日にウクライナ事変(ロシア軍によるウクライナ侵攻)が勃発してしまい、今日まで続いている。東郷氏によると、03月29日にウクライナ側がロシア側も交渉に応じることが可能と見られ、停戦にも持ち込めそうな調停案を持ち出してきたという。

しかし、この提案は、ウクライナ側がキエフ近郊のブチャでロシア軍が撤退する際に、ウクライナ住民の大量虐殺を行ったと大々的に報道されたことで、反故になってしまった。東郷氏によるとブチャの虐殺は実際はウクライナ側が行い、ロシアに濡れ衣を被せたものだとしている。国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏も同じ見方だ(「市民虐殺の濡れ衣をかけさせられるロシア」https://tanakanews.com/220408bucha.htm)。

東郷氏は2022年05月17日南東部の要衝、マリウポリが陥落した際にロシア側としても停戦交渉に持ち込めたのではないかとロシア側に疑問を持っているが、現実にはそうならなかった。サイト管理者(筆者)としては、ウクライナ戦争を終わらせないために、米国が高性能軍事兵器の供与とともに、ゼレンスキー政権の一層の傀儡化に乗り出したことが背景にあるのではないかと思っている。

このため、ロシア側としてもウクライナには元々ロシア人が居住地、人口の4分の3を占めていたウクライナ地方(主に、ノボロシア地域と呼ばれる)をロシア側に編入するととともに、豊富な天然資源(天然ガス・原油などエネルギー資源)、金銀など貴金属、穀物などコモディティ大国との連携を強め、コモデティ大国の多い上海協力機構加盟諸国やBRICsなどとの新たな国際決済システムを構築することで、米側陣営に依存しない国際秩序形成に本格的に乗り出したのではないかと思われる。

今回のプーチン政権のウクライナの①ドネツク州と②ルハンシク州(ロシア語でルガンスク州)、ロシア側が完全に掌握している)③南東部ザポリージャ州(欧州最大の原子力発電基地のあるザボロジエ州)④南部ヘルソン州の合わせて4つの州ーの併合は、ウクライナに対する「特殊軍事作戦」を「戦争」に格上げするものであり、同時に欧州NATO加盟諸国での民衆の生活が第一の民衆政権の樹立によるロシアとの和解の道と非米側陣営での政治・経済・軍事力各分野での結束を狙ったものだろう。

【追記:2022年10月03日午後16時】ロシア側が支配していたウクライナ東部ドネツク州の要衝リマンについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は「完全に敵(注:ロシア軍)を排除した」と語っているらしい(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221003/k10013845981000.html?word_result=%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E6%83%85%E5%8B%A2)が、東部ドンバス地方の主力州であるドネツク州はロシア系ウクライナ人が多数を占める。NATO側が無償で、つまり、タダで軍事的・経済的支援を続けなければ、予備役を動員しているロシア側に奪還される公算が大きい。そのNATO諸国は戦争が長引けば長引くほど実体経済・金融経済が破綻するようになり、ウクライナを支援できなくなる。また、ロシアでは議会で4州の併合を既定路線通りに進めるつもりだ。

サイト管理者(筆者)が関わったことのある国際勝共連合は米側陣営の走狗になり、旧共産圏諸国を滅ぼすという運動方針を大転換し、米側陣営の政治・経済の再検索と北朝鮮の経済発展を前提にした朝鮮半島(韓半島)の平和統一を中核とした北東アジア文明の創設に乗り出さない限り、本来の使命(朝鮮半島の平和統一を中心とした世界平和の実現)を果たすことはできないだろう。また、国際勝共連合と教理面から理念面で深い関わりを持っている世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)も、「キリスト教文明国が世界平和実現の目的を実現できなければ、神の祝福は(旧)共産圏諸国に与えられる」と言ったとされる文鮮明師の警告を深い次元で理論的・実証的に理解する必要がある。


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