菅義偉新内閣に対抗するためには政権奪取を目指す野党間で目玉の経済政策提示が不可欠(MMTについて追記)

菅義偉内閣が16日発足したが、安倍政治の踏襲を基本としているため、安倍旧・菅新政権の憲法破壊、緊縮財政、国民の生存権よりも権力の私物化を優先させることは既定路線であり、日本の経済社会のさらなる悪化・衰退は不可避だ。これに対処するためには、新・国民民主党を野党共闘から外し、れいわ新選組を野党共闘の一員の政党として迎えることが必要だが、立憲の枝野幸男代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長の要(かなめ)の執行部にその考えはないように見える。そうであれば、年内総選挙で政権を奪取することはできない。泉健太政調会長や「消費税減税研究会・不公平な税制をただす会」の共同代表を務めた馬淵澄夫衆院議員ら立憲のベテラン、中堅、若手議員の経済政策痛の決起に期待しなければならない情勢だ。

◎9月17日の新型コロナウイルス新規感染確認者は、東京都で3日連続の100人超えの171人。重症者は東京都基準で4人増加の171人。最終的なまとめはhttps://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/です。少し、公表値が変更になっています。国内では491人が新規感染、9人が亡くなられています。15日には速報値で1日に、1万7949件のPCR検査が行われたため、推測瞬間陽性率は2.7%。厚生労働省のサイトはhttps://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1ですが、1日前のデータしか公表されていません。

菅新内閣の構成を見ると当然ながら、「守りの内閣」の性格が強い。今回の菅新内閣の樹立に関して、安倍晋三前首相と不仲説が話題になった二階俊博氏は早々と自民党幹事長に留任。安倍首相(当時、以下同じ)に麻生太郎副総理兼財務相、環太平洋パートナーシップ(TPP)本部長などを歴任、UR(都市再生機構)との贈収賄疑惑(公訴時効成立)が残っている甘利明衆院議員、菅義偉内閣官房長官の3A+1Sに二階幹事長を加えた「上からのクーデター」(言葉は、立憲の小沢一郎衆院議員側近の元参院議員・平野貞夫氏によるもの)だから、当然だ。

朝日デジタルが2020年9月17日午前5時00分に公開した「菅内閣は守りの布陣 目玉は『異端児』と『デジタル通』」と題する記事によると、「経済政策を支え、安倍政権の顔の一人でもあった麻生太郎副総理兼財務相や、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉などを担った茂木敏充外相ら8人を再任。加藤勝信官房長官、河野太郎行革担当相ら前政権からの横滑りを含めると、閣内への留任は11人に上った。上川陽子法相や田村憲久厚生労働相らは、安倍政権で同じポストの経験者」である。初入閣は、閣僚20人のうち5人だけ。

目玉は「デジタル疔」新設と「風雲児」と呼ばれる河野太郎氏を行革担当大臣にしたことだが、いまさら「デジタル疔」新設というのは、行政が民間と比べてIT化にいかに立ち遅れていたかを証明するものでしかない。河野太郎氏は防衛相の時代に「イージス・アショア」基地建設断念の代わりに、「敵基地攻撃論」を自民党内で活発化させた疑いが濃厚である。要するに、国防の基本となる国家安全保障戦略を改定して、日本を米国に従属して戦える国にしようとした憲法破壊論者であり、その手腕が「買われた」のに過ぎないのだろう。

注目すべきは、「影の総理」とも呼ばれ、安倍前首相の最側近、今井尚哉(たかや)首相補佐官兼首相秘書官を筆頭に、新原浩朗経済産業政策局長、佐伯耕三首相秘書官ら経産省出身の「官邸官僚」と呼ばれるメンバーと、その背後にある経済産業省の力が、アベノマスクの失敗や一般社団法人サービスデザイン推進協議会への持続化給付金業務の委託で電通を重用したことなど、コロナ禍対策の失敗で弱まり、財務省が復権してくる可能性が強いことだ。その場合は、新自由主義によるプライマリー・バランス論(歳出を税収の範囲内に抑えること。実態は社会保障費などプログラム支出を法改正で削減し、利権支出拡大のための裁量的支出を増加させる内容)に基づく緊縮財政が一段と強化されることになる。

安倍前政権の下で、①実質国内総生産(GDP)は2012年第4・四半期の498兆円から2020年第2・四半期の期の485兆円に減少した②労働者の分配所得が減る中で、その所得を分け合う人数だけが増加したため、結果として、一人当たり実質賃金は6%も減少してしまったーという最悪の事態に陥った。その一方で、消費税の強行増税が法人税率の引き下げに使われたため、法人企業の利益は2012年度から2017年度の5年間に2.3倍の水準に激増した。その結果として、財務省の法人企業統計(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/2020.4-6_2.pdf)によると、資本金一千万円以上の法人企業の利益剰余金(当期利益から国税・地方税としての法人諸税と株主配当、役員報酬を除いた残りの累計金額=内部留保金)はコロナ禍の今年第2・四半期でさえ521兆2626円の巨額に上っている。

日本経済の現状と将来について最も憂えているのは、山本代表率いるれいわ新選組だ。現状と将来について、同党の見通しを下図にかかげる。まずは、減少を続ける正規社員と増加を続ける比正規社員の給与の差が拡大している図だ。

安倍政権下の正規・非正規の賃金格差の拡大
安倍政権下の正規・非正規の賃金格差の拡大

これは平成29年分のものであるが、令和2年度はコロナ禍が追い打ちをかけたため、企業の利益の悪化と非正規労働者は雇い度止め解雇、激減している休業補償しか支払われていないため、2020年度の正規、非正規の賃金(年収)は相当に減少しており、格差も大幅に拡大していると推定される。次の図は、日本の将来を担う児童・生徒・学生が学ぶ教育機関への公的財政支出の規模である。新自由主義に基づく政府=安倍政権が社会保障費およびそれに類する歳出の大幅カットを繰り返してきたため、教育機関への公的財政支出のGDPに占める割合は、経済開発協力機構(OECD、加盟国は先進国とされる)中、最下位だ。

教育機関に対するGDPの割合
教育機関に対するGDPの割合

学生は、有利子の奨学金の貸与と称される融資で卒業時には元本だけで約500万円の債務を負っている。これに利子がつく。しかし、正規の正社員として就職できる学卒者の割合は年々減少し、非正社員の非正規労働者になっている(働き口があればまだましだが、大卒で無職者・失業者も増加している)。大卒男子も女子も同じであるが、安倍政権は偽のというよりも、「男女共同参画」「少子化対策」の看板しか掲げておらず、多額の有利子借金を抱えて泣きながら卒業している大卒者に対して見てみぬふりをしており、何の救援措置もしていない。失業率が1%上昇すれば、経済苦から自殺者が千人増えているのが、現状である。

失業などの生活苦で今年は自殺者が大幅増加
失業などの生活苦で今年は自殺者が大幅増加

これでは、大卒男子、女子が正式の結婚をして、子どもを設け、育てたくても育てることができる経済情勢ではない。特に、「男女共同参画(ジェンダーフリー)」と言っても、女性の給与は男性と比べて相当低く、また、就職先も優良企業が多いとは言えず、その逆が普通であるため、女性の生活は非常に厳しくなっている。これでは、まともな結婚はできず、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数)を1.8に引き上げるなどのことは夢のまた夢であり、現在の約1.4人からさらに低下することは確実だ。

これはほんの一例だが、根本的原因は、①所得税の累進税率を緩和する(高所得者=富裕層の所得税減税)②国際競争力の強化のためと称して法人税を減税する③医療費など高齢化に伴って増加する社会保障費などのプログラム支出を法律策定によって切り刻んできた④自公の支持層に対する買収資金として利権支出を拡大させてきた⑤これらの税制構造改革、歳出構造改革を弱肉強食で自己責任・政府無責任の新自由主義に基づく緊縮財政の下で行ってきたーことにある。政府の仕事は公助が中心であって、公助の中で国民が互いに切磋琢磨して自立精神を正しく涵養することを支援することにある。

ところが、新自由主義の立場に立つこれまでの自公政権にはそうした考えが全く無い。次の写真は自民党総裁選の際の菅氏の写真であるが、「自助」の言葉がひときわ大きく書かれている。総裁に選出され、首相に指名された時は、国民に対しては「自助努力を求めますよ」ということだ。

国民に自助努力を求める菅義偉候補。首相に指名。
国民に自助努力を求める菅義偉候補。首相に指名。

こうした緊縮財政による長期デフレ不況と「自助努力」が当たり前の風潮に慣れれば、日本はOECD諸国の中でどんどん貧困国になっていく。次の図は京都大学大学院の藤井聡教授(日本の現代貨幣論者の第一人者のひとり)の日本の過去ー現在ー将来(予想)を分かりやすく示したものだ。

藤井聡京大大学艦教授による日本のGDPの過去・現在・未来
藤井聡京大大学艦教授による日本のGDPの過去・現在・未来

日本が消えて無くなりそうな予想図だ。こうした方向への推移は、安倍前政権の後継政権になる菅政権以降、さらに加速される。この暗黒の未来に日本が「たどり着く」のを避けるためには、日本を再建しようとする野党がしっかりと共闘して野党側が政権を奪取し、菅政権(自公政権)に対置でき、実現可能なよほどしっかりした経済政策体系を国民の前に提示しなければならない。

数ある野党のうちで、そうした経済政策の体系を持っているのはサイト管理者(筆者)の見る限り、れいわ新選組である。ただし、立憲の枝野代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長の執行部にはれいわとの共闘の意思は見えない。日本共産党は、政策よりも「野党共闘」に加わることが最優先だ。もっとも、枝野代表には仮に政権奪取しても閣僚に共産党の国会議員を取り込む意思もないようだ。同党は、閣内に入ることを希望しているが、使い捨てに終わる可能性も否定できない。

立憲の泉健太政調会長や「消費税減税研究会」「不公平税制を考える会」の代表として活躍し、れいわとの共闘を打ち出している馬淵澄夫衆院議員(民主党政権下で国土交通相を経験)らベテラン・中堅・若手議員が執行部に圧力をかけてれいわ排斥を覆すか、党内クーデターを起こすしかない。れいわの基本政策は、山本代表自身は現代貨幣理論支持者(MMTer)ではないと言っているが、少なくともMMTの影響を受けているのは確かだ。

サイト管理者(筆者)は、消費税廃止の財源なら税制の抜本改革、歳出の抜本改革で捻出できると思うが、コロナ禍で日本経済が深刻になる場合は、それだけでは財源が不足すると思う。国債の新規発行が必要だ。財務省は、新規国債を増発すれば財政は破綻すると言い、大手メディアを使って財政破綻論を煽る。だから、国民も国債を増発すれば、財政は破綻し、日本経済は崩壊すると思うようになる。しかし、日本は、欧州連盟(EU)の形成に伴って通貨発行自主権を放棄したスペインやギリシアのように、外国通貨建ての借金をしているわけではないから、デフォルトなどの事態に陥ることはない。

残念ながら、日本きっての政策通である政経アナリストの植草一秀氏も、MMTには反対している。「25%の人が政治を私物化する国」では(234頁)では、ハイパーインフレに陥れば救いの道はないというのがMMTに反対する理由である。しかし、MMTには「機能的財政論」という考え方があり、国債発行の上限額は、「インフレ率」如何であるとしている。植草氏は、MMTによって税制の抜本改革や歳出構造の抜本改革がなされないことを危惧しておられると思われる。また、コロナ禍では需要とともに供給力も蒸発する危険性があるから、MMTを応用する場合には、コロナ禍の下にあっても供給能力を確保することが極めて重要だ。最大の問題は、食糧の確保である。

サイト管理者としてはまず、①消費税の凍結ないし廃止を中心とした抜本的税制改革(所得税の累進構造の強化=富裕層への増税と法人税への累進課税制度の導入、加えて可能なら大企業の内部留保への課税)②制度によって財政からの歳出額が決まっているプログラム的支出の適正化と利権支出が横行している裁量的支出の削減という歳出構造の抜本的改革③「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特別会計の実態公表と抜本的改革ーなどにより、財源を捻出する。併せて、①国内経済の供給能力の低下を防ぐ(PCR検査、抗体検査を感染震源地域、周辺地域、それ以外の地域に分けて抗体、PCR検査を大規模に展開する)②日本国憲法の平和主義に沿った積極的平和外交を展開し、食糧(穀物)や資源などの調達先の多様化を図る③国内のインフレ状況を逐次把握するとともに、為替相場に留意し過度な円安にならないように、投機目的の短期的な取引を抑制するため、国際通貨取引(外国為替取引)に低率の課税をするトービン税などを導入するーなど供給力の低下を防止する。

そのうえで、日本は円という自国建て通貨の発行権を持っている(直接的には日銀。最終的には政府と日銀の統合政府)ことを利用して、自国通貨建ての新規国債を発効し、財源を確保する。以下、自国建て通貨の発行権を持っている国が財政破綻をするなどのことはありえないことを、れいわがまとめているいくつかの図で示しておきたい。

◎以前は説明不足でしたので以下に追記・補足しておきます。参考文献は、「『MMT』による令和『新』経済論(京都大学大学院藤井聡教授著書)」(唱文社)の第4章「現代国家の『貨幣』とは何か?」です。サイト管理者(筆者)の観点で要点をまとめてみました。原文にあたることをお勧めします。

①現代国家の権力は地政学的、防災的、社会秩序的、経済的、文化的なあらゆる意味で「国民を守る」義務がある。この義務の履行をするため、国民に対して「貨幣」もしくは「国債」を発行(ファースト・すペンディング)する。国民は、国家に対してその義務を果たさせるため、貨幣で納税しなければならない。納税に貨幣が使われるため、国家が存立している限り、国民の貨幣に対する需要が生じ、さまざまな経済活動を通じて貨幣を取得しようとする。なお、国債の新規発行は国家権力が上記の目的を遂行するために行われる。

②貨幣と国債の同じ点は、双方とも国民に対する国家の借用証書(国家の負債)であるが、貨幣には返済期限が明示されていないのに対して、国債には元利金返済の期限が明示されているという相違がある。

中央政府は中央銀行に新発国際を引き受けさせることはできないが、「政府短期証券」と「割引短期証券」が統合されて出来た短期の割引債である「国庫短期証券」(国庫の一般会計や特別会計の一時的な資金不足を補うためなど発行される割引債で償還期限は2、3、6、1年というのが通説。https://www.smd-am.co.jp/learning/glossary/YST0577.html)という一種の国債は引き受けさせることができる。
この政府短期証券を中央銀行に引き受けさせることによって、政府が日銀に持っている当座預金口座に貨幣を確保し、小切手を非金融法人等に発行。小切手を取得した非金融法人は市中金融機関と市中金融機関が日銀に持っている当座預金口座を通して、非金融法人に預金額を記帳してもらう(万年筆マネーを確保する)ことができる。この口座預金で、様々な経済活動を行うことができる。つまり、毎年スペンディング・ファーストを行うことによって、民間非金融法人の当初の経済活動が可能になる。

④「国庫短期証券」の発行により、年度当初に経済活動が活発化し、非金融法人など国民側の貨幣による納税が始まれば、小切手の持ち込みによって発行された貨幣は市中から消滅する。

⑤国債については、取り敢えず市中金融機関が引き受け、それによって得た貨幣は中央銀行内にある政府の当座預金口座に振り込まれる。政府はまた小切手を発行し、非金融法人等に渡すが、非金融法人等は小切手を市中金融機関に持ち込み、市中金融機関が中央銀行(日銀)と連絡を取り、中央銀行(日銀)に持っている当座預金口座の操作をする。この捜査によって非金融法人等は市中金融機関から預金通貨を取得する。その分だけ市中に貨幣が創造される。重要なことは、市中金融機関に対する預金額は変わらないので、「どれだけ国債を発行しても、それが原因で金利が高騰していくということなど有り得ない」(前掲書72%辺り)ということである。

⑥次に、市中金融機関が新発国際を購入することについて考えてみる。これは市中金融機関が中央銀行に持っている当座預金口座の中の資産の形態を「預金」から「国債」に振り替えるだけのことである。

⑦ところで、中央銀行は「市中金融機関」から「(既発)国債」を購入することが出来る。日銀が「量的金融緩和」と言って行っていることはこのことである。要するに、事実上の「中央銀行(日銀)による国債の直接引受」を行っていることになる。

⑧ところで、政府と中央銀行は「統合政府」の構成組織だから、統合政府は誰からも「借り」などない状況を作り出せる。そして、市中金融機関の当座預金口座の預金額は以前と同じ金額になり、非金融法人など市中には新発国債を発行しただけの「銀行預金」が増加し、その文だけの貨幣が創造される。この資産(貨幣)によって実物資産が形成されれば、それは統合政府の実物資産になる(公共投資)。

⑨結局、政府の財政政策に加えて中央銀行が市中金融機関から国債を購入する(中央銀行は貨幣=通貨の発行権を持っているから、国債購入の原資が無くなるなどのことは絶対に有り得ない)という金融政策を同時に行えば、市中金融機関が日銀に持っている当座口座口座の預金が増えることになるから、国債の金利にさらに強力に下落圧力がかかる。下図はSMBC日興証券(https://www.smbcnikko.co.jp/products/bond/market/pdf_bond/rate.pdf)によるもの。

世界各国の国債金利の推移
世界各国の国債金利の推移

 

➉政府発行の国債の償還財源は、税金でなくとも政府が日銀に持っている日銀当座預金口座の預金または国債を用いて調達することができるが、その国債は通貨=貨幣発行自主権を持ち、「最後の貸し手である」日銀が購入することもできるので、償還金を用意できなくなるという事態は絶対に生じ得ない。

⑪現在、国債残高は1100兆円ほどあるが、これは貨幣を1100兆円分創出していることを意味する。ただし、日本では財政政策を行わず、市中金融機関から既発国債を購入するだけなので、経済は全く活性化しない。量的金融緩和政策をいくら行ったとしても、実体の経済に貨幣が流れないから、長期デフレ不況は一向に解消されないのである。新発国債の発行・市中金融機関の購入・中央銀行の市中保有国債の買い入れを行ってこそ、長期デフレ不況は解消できるのである。

なお、新規国債の発行の過程はやや複雑であり、別の機会に譲らせていただきたい(基本的には、銀行が日銀に持っている預金口座=日銀当座預金口座=に統合政府が円を振り込み、各銀行はこの振り込まれた円で新発国債を購入する。政府は新発国際の発行によって得た資金で、積極財政を展開する)。まずは、通貨発行自主権を持っている国が財政破綻をするなどということは有り得ないことを示す。

最初に、日本の財務省自身がデフォルトは有り得ないと言っていることを紹介する。ここで、黒田財務官というのは現日銀総裁の黒田東彦(はるひこ)総裁のことである。しかし、各付け機関へのこの反論に従って「積極財政」を行うということはついになかった。黒田総裁は、「黒田バズーカ砲」を打ち兵器の「逐次投入はしない」などと言って、市中金融機関が保有している国債はもちろん上場投資信託(ETF)などを大量に購入して、市中金融機関を通して非金融法人・個人に日銀マネーを流そうとする量的金融緩和政策を行ったが、民間の消費需要、住宅投資需要、設備投資需要が盛り上がらないので、実需には結びつかず、物価上昇率を2%まで引き上げるという目標は達成できなかった。黒田総裁は任期途中でも責任を取って辞めるべきである。

デフォルトはありえないという財務省の見解
デフォルトはありえないという財務省の見解

次に米国も当然ながら、ドル通貨の自主発行権を持っているから、デフォルトに陥ることはない。ただし、米国債の最大の保有主体は中国である。「新米中冷戦」がさらに深刻化すれば、中国は米国債を含むドル建て債権を大量に売却するかもしれない。その場合は、米国の金利は急騰する。トランプ大統領ーポンペオ財務長官の背後にいる多国籍企業系軍産複合体もうかつには動けないだろう。

税金と統合政府による通貨発行との違いを説いたバーナンキ米国連邦準備精度理事会議長
税金と統合政府による通貨発行との違いを説いたバーナンキ米国連邦準備精度理事会議長
グリーンスパン元米国連邦準備精度理事会議長の証言
グリーンスパン元米国連邦準備精度理事会議長の証言
投資家のウォーレン・バフェットによるギリシアがデフォルトに陥った理由
投資家のウォーレン・バフェットによるギリシアがデフォルトに陥った理由

次は、元国際通貨基金(IMF)のチーフ・エコノミスト(主任エコノミスト)のオリビエ・ブランシャールによる日本の政府・財務省に対する痛烈な批判である。

国際通貨基金の元主任エコノミストによる日本の政府(財務省)・日銀に対する痛烈な批判
国際通貨基金の元主任エコノミストによる日本の政府(財務省)・日銀に対する痛烈な批判

もちろん、新規国債の発行には限りがある。インフレ率がどのように推移するかが最重要問題である。ジェームズ・トービンはノーベル経済学省を受賞しているが、現代貨幣理論(MMT)が体系化されてきた1990年代よりもはるか昔に、MMTの「機能的財政論」と同様なことを当時のケネディ大統領に語っていた。なお、トービンの宿敵であり、新自由主義(理論的には新古典派経済学、現代経済学の主流学説になっている)の元祖であるミルトン・フリードマンも同じく、ノーベル経済学賞を受賞している。ノーベル記念財団も将来のことは見通せない。正論か邪推論なのかは結局、自分で見分けるしかない。

現代貨幣理論を先取りしたトービン
現代貨幣理論を先取りしたトービン

以上を前提にして、れいわが参院調査情報担当室に依頼して、4年間毎月10万円を全国民に給付した場合のインフレ率の推移を経済モデル(マクロ経済計量モデル)でシミュレーションしてもらったものが、次の図だ。財務省による試算ではないので、政治的バイアスは同省ほどはないと思われる。ただし、参院調査情報担当室の経済モデルでの供給能力はコロナ禍以前のものだと思われるので、この点に注意が必要である。

れいわ新選組が参院事務局に依頼して作成してもらった将来のシミュレーション
れいわ新選組が参院事務局に依頼して作成してもらった将来のシミュレーション

新発国債の発行額は、年間10万円×12カ月×1.2億人=144兆円。インフレ率は3年目に1.809%と2%は超えない。大規模な国債発行額になるが、それでもインフレ率が2%を超えないというのは現在(コロナ禍以前)の経済状態が極めて重度の需要不足状態に陥っていたことの裏返しだろう。実際に行うべきことは、①持続化球金の継続②定額支援金の継続③大規模な赤字に陥っている医療機関の再建支援金④PCR検査、抗体検査など重要な検査の政府負担金④大学生を中心とした学費・奨学金徳政令ーなどが主になる。このため、新発国債で調達した資金の内訳を明確にする必要がある。

ただし、あくまでもシミュレーションには細心の注意を払わなければならないことは当然である。

まず第一の通常の税制・財政(歳出)構造の抜本的改革に、第二の新発国際の財源を発行することで、国民の生命の安全、経済社会の活性化という抜本的なコロナ禍対策が可能になる。枝野代表にはまともに経済政策勉強してもらわない限り、こうした経済政策は打ち出せないし、立憲主義や原発ゼロ社会の実現(原発依存地方自治体の原発廃止に対する補償金と産業構造の転換支援金、原発従事者に対する雇用保証のための財政支援が必要)、共生主義などをうたっても空念仏に終わるし、野党不信と政治不信に陥っている「無党派層」に覚醒してもらい、投票所に足を運んでいただくことは不可能だ。

なお、日本共産党はいつも主張しているように、同党が考えている「共産主義」とは何かを国民の前に明らかにすべきだ。そうでないと、野党共闘は反共攻撃で攻撃され、「無党派層」の信頼を得ることができなくなる。最後に、現在の立憲執行部には日本共産党にもれいわを野党共闘の一員(一政党)とし、政府=菅政権の補完勢力である新・国民民主党とは闘う気概がないようだ。いずれにしても、活発な論戦を行い、国民の総選挙に対する関心と投票率を引き上げるよう、最大限の努力をすべきだ。



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