枝野代表は「消費税凍結」を選挙公約の中核から外すなー自民新総裁に菅義偉氏

新・立憲民主党の枝野幸男代表は12日の読売テレビで年内総選挙の中核争点にするべき「消費税凍結」を争点から外すことを明言した。コロナ禍で日本経済が大不況から大恐慌に暗転する懸念が出ている。国民の最大の関心は経済問題、特に消費税を凍結することで消費者、代理納税者の中小企業(特に赤字企業)にとって消費税率10%の負担は極めて思い。一方、自民党の次期総裁になることが確実な菅義偉官房長官は消費税増税強行を継続すると口を滑らせてしまった。その後で10年間は消費税を増税しないと「軌道修正」をしたが、安倍晋三首相とその補佐をしてきた菅官房長官が「嘘つき」であることは明白だ。民主党(当時)の悪徳7人衆のひとりであり、環太平洋パートナーシップ(TPP)の提唱や消費税率の5%から10%の引き上げを唐突に主張し、民主党政権を内部から破壊してきた政権幹部のひとりであった枝野代表は過去の過ちを素直に反省し、少なくとも「消費税凍結」を総選挙の最大の争点にするべきだ。

◎本日14日午後2時過ぎから行われた自民党総裁選挙はシナリオ通り、有効投票総数534票(無効票なし)中、石破茂候補68票、岸田文雄候補89票、菅義偉候補377票になり、菅候補が自民党の新総裁に選出された。15日には公明党との連立政権合意を結び、16日に招集される臨時国会で第99代首相に選出され、菅内閣を発足させる予定だ。石破氏は離党したほうが良いと思うが、総選挙の結果次第だ。

◎本日14日の新型コロナウイルス感染者は、東京都で今月7日以来100人を割り込んで80人となった。死亡者は2人。東京都基準の重症者数は前日比2人減少の22人になった。20代〜30代の若者は33人で、それ以外の世代の割合は62.5%だった。全国では午後20時30分時点で266人が感染、8人が亡くなられた。10日には速報値で1日に1万8909件のPCR検査が行われたため、推測瞬間陽性率は、1.4%。

時事通信社が2020年09月12日10時41分に報道した「消費税、争点化を否定 立憲・枝野代表」と題する報道(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091200295&g=pol)によると、「『消費税を選挙の道具に使ってはいけない』と述べ、任期が1年余りとなった衆院解散・総選挙での争点化を否定した」。ロイター通信も2020年9月12日11:00公開、13日午前2日更新の「消費税増税は論外」と題する報道(https://jp.reuters.com/article/idJP2020091201001202)でも、菅官房長官の消費税増税発言を批判するだけで、「実際に減税を実現するには次期衆院選の争点にすべきではなく、国会論戦や水面下の議論を通じて与野党合意を図る必要があると主張した」とのことだ。

「水面下の議論」で、「新55年体制」を築き、議員特権を墨守しようということなのか。

代表選出後の枝野幸男・新立憲代表
代表選出後の枝野幸男・新立憲代表

消費税増税強行は、小泉純一郎政権が竹中平蔵氏とともに強行してきた弱肉強食で「自己責任・政府無責任」の新自由主義に基づく緊縮財政・量的金融緩和政策の柱だ。表向き、民主党最後の政権だった野田佳彦首相が「税と社会保障の一体的改革」を大義名分として消費税率の5%から10%への引き上げを提唱して、自公両党に「大政奉還」したが、実際のところは社会保障増大のために用いられていない。高所得者層と法人税減税の財源に用いられてきたというのが偽らざるところだ。単年度の主要税項目の推移を見ると、次のようになっている。

財務相による
財務相による

また、税理士が中心になって設立された「不公平な税制をただす会」(荒川俊之事務局長、http://japan-taxpayers.org/https://www.youtube.com/watch?v=CfR79rbLWXY)の試算によると、1989年度から2019年度までの31年間に累計で400兆円の消費税による税収が庶民を中心に巻き上げられ、その全てが高額所得層(富裕層)と法人税減税(累計額575超円)に使われてしまっている。

不公平税制をただす会研究リポートより(2018年度当初予算まで)
不公平税制をただす会研究リポートより(2018年度当初予算まで)

消費税とその増税強行は、①逆進性が強く、低所得層ほど打撃が大きい②消費に対する懲罰税制であるため、国内総生産(GDP)の大層を占める家計の最終消費支出を大幅に減収させる③今日の日本のGDPの主力は家計最終消費支出と設備投資、それに公共投資であるが、その中でも大層を占める家計最終消費支出に多大な悪影響を与えてきたため、公共投資の削減(消費税は一般財源)とともに、実質GDP、名目GDPの増加率(経済成長率)が極めて低い伸びにとどまり、「失われた30年」と称される、30年間に及ぶデフレ不況の原因になったーという極めて大きな問題を抱えている。

その結果、①実質GDPは安倍政権が誕生した2012年第4・四半期の498兆円から2020年4-6月期の485兆円に減少した(コロナ禍で今年第2・四半期の実質GDPが大幅に減少したこともあるが、消費税の強行増税でそれまでの実質GDPの伸び率がマイナスになったか、または非常に鈍化したことが主因)②労働者のひとり当たり実質賃金は、6%も減少した(消費税は企業が代理納税者であり、派遣労働者の労働サービスは控除対象になるので、企業側は正規労働者を非正規化したり、派遣労働者を採用しようとする誘引が働くことになり、労働者の非正規化が加速される。派遣労働者が主体の非正規労働者の賃金は派遣会社が中間搾取することも重なり、低くなる)

③これに対して、企業の利益剰余金(いわゆる内部留保=https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/2020.4-6_2.pdf=企業の税引き後利益から法人税、株主配当、役員報酬を差し引いた残りの剰余金額)は、今年第1・四半期の547兆円から第2・四半期はコロナ禍のために減少したものの、それでも521兆円の巨額に上っているーというデフレ不況の長期化と貧富の拡大の進行という結果が生じている。

安倍政治を踏襲する菅候補が新総裁になれば、この傾向は一層強くなる。新しい立憲は野党の共闘を妨げてきた日本労働組合連合会(連合)傘下の産業別労働組合のうち、主力になっていた旧同盟系の電力総連(原発推進の御用組合)と電機連合(消費税の多額の還付を受けられる輸出大企業の御用組合)の出身議員が加わらず、玉木雄一郎代表の新国民民主党に加わる一方、益子輝彦参院議員が代表が玉木氏になったことに反発して新党に加わらないことを表明し、舟山康江参院議員が新党に加わることを表明したため、14人の政党になった。

新しい立憲に、連合主力の電力総連、電機連合系の労組出身議員が加わらなかったことから、野党の共闘を妨げていた連合の力が弱まることは特筆すべきことだ。しかし、玉木代表率いる新・国民民主党はまだ野党のつもりであるが、同党に参加した前原誠司衆院議員が、①日本維新の会と近いこと②民主党政権時代の国土交通省時代に、2000年6月1日に発効した日中漁業協定を無視して、自分自身が海上保安庁に尖閣諸島周辺の海域で操業する中国漁船の拿捕を命じて混乱を引き起こしたことは棚に上げて、新立憲に加わった菅直人首相(当時)が中国漁船の船長の引き渡しを那覇地検に命じたことを政府系の産経新聞社に垂れ流したーことから、早くも新立憲を攻撃したことで、新・国民が政府=安倍政権・後継政権を支援する実質的に与党補完勢力であることを示している。

※(追記)尖閣諸島問題については改めて記事を投稿します。日本政府側が「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と言い続けていれば、日中軍事衝突が起きる可能性があり、悲惨な結果をもたらす可能性があります。

新国民民主党に対しては、①日本共産党との共闘を組むこと②原発ゼロ社会を認めること③前原氏を利敵行為をしたことで、離党処分することーの三点を踏み絵として迫ることが肝要である。米国のCIAによって創設された民社党(当時)の春日一幸党首(当時)は「反自民、非共産」と叫んでいたが、実際の役割は野党を分断することであった。新自由主義と決別して共生主義と原発ゼロを掲げる新立憲は早くも攻撃にされされている。大手マスコミや政府系のネット論者が新・立憲批判を展開するのは、新・立憲を警戒していることの表れだが、前原衆院議員を中心にした攻撃は警戒を要する。

経済政策では、新・国民のほうが優れているように見える。馬淵、泉両立憲衆院議員は、前の国民に所属していた。また、日本維新の会も消費税率の5%への引き下げを狙っている。次期総選挙では、参院議院がまだ自公・維新に握られているため、その対策を考えなければならないが、総選挙の争点として馬淵澄夫衆院議員、泉健太衆院議員などが主張しているように、廃止を視野に入れた消費税の凍結を打ち出さなければ、「無党派層」と呼ばれる政治不信、野党不信層の支持を得ることはできない。

こうした政治・経済情勢の下で、枝野代表が高等戦術で与野党を騙そうとした発言なら別だが、参院議院の議員構成を恐れて「消費税を選挙の争点にしない」と考え、実際にそうするならば、山本太郎率いるれいわ新選組が猛反発し、立憲選出の小選挙区に立候補するかも知れない。既に、東京5区と7区には候補を擁立している。場合によっては、山本代表本人が枝野代表の埼玉5区に立候補するかも知れない。自公与党より、「新55年体制」を築こうとしている野党がより、日本一新の妨げになっているからだ。

れいわが加わらなければ、真の野党共闘は実現せず、小選挙区で野党候補が乱立することになり、総選挙で大敗することは必至だ。枝野氏は民主党政権時代の過ちを列挙して深く悟り、深く反省して、党内の大勢になっている選挙公約として「消費税凍結」を発信しなければならない。財源は取り敢えず、①利子所得課税、株式譲渡益課税などの分離課税の強化②所得税の累進税制の強化③法人税への累進税制の導入④歳出の2割は存在すると見られる利権支出の廃止など徹底した歳出改革ーなどで可能だ。

なお、菅氏と極めて近い維新が大阪市を解体する、名前だけ大阪市の市民に聞こえの良い「大阪都構想(実際は、大阪市の財源を召し上げ、社会保障費など市民・府民を守るための歳出をカットするのが狙い)」の住民投票を11月1日に行うため、総選挙が10月25日だけでなく、この日に伸ばされるとの見方も有力になってきている。ただし、晩秋以降はコロナの第三波の襲来が予想されている。コロナの第三波の襲来が現実のものになれば、普通は総選挙は取り止めだが、解散する日がそうでなければ、総選挙を強行するだろう。



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