安倍前首相、「桜を見る会前夜祭」で「被疑者取り調べ」の可能性も

新型コロナ拡大事案では、少なくとも政府=菅義偉政権がGo To トラベルの発着地域から東京都と名古屋市を除外する方向で調整がなされている模様だ。全国での新規感染者数拡大と重症者が過去最多更新を続けていることから言えば、遅きに失している。ただし、Go To トラベル・キャンペーンを含むGo To キャンペーンは中止とするのが正しい。財源は、コロナ禍対策費に回すべきだ。コロナ禍に隠れているが、日本学術会議推薦者任命拒否事案や「桜を見る会前夜祭」事案なども重大事案だ。「桜」では安倍晋三前首相本人が東京地検特捜部から事情聴取を受ける方向だが、黙秘権を告げて「被疑者取り調べ」を受ける可能性もある。

12月13日i日曜日コロナ感染状況

本日12月13日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の12月6日日7曜日の327人より153人多い480人で、日曜日としては過去最多になった、東京都基準の重症者は前日比2人増加して70人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は503.0人、PCR検査人数は6245.6人だから、陽性率は8.01%。東京都独自の計算方式では6.5%。感染者のうち感染経路不明率は57.28%だった。
7日移動平均の感染者数は初めて500人を上回った。感染経路不明率も60%に接近し、瞬間陽性率も8%を超えた。ステージ3/4の陽性率は10%。第三波が本格的に襲来していることの結果と見られる。政府=菅政権や小池百合子率いる東京都知事はコロナ禍対策の抜本転換を行うべきだが、コロナかるたに象徴される「精神(神風)主義」の無為無策が改まらない。
全国では午後23時59分時点で2388人の新規感染者、19人の死亡者、累積での重症者は583人が確認されている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、12月12日時点の実効再生産数は全国が前日比0.03人増加の1.08人、東京都では前日比変わらずの1.04人となっている。

東京都のコロナ感染者数推移
東京都のコロナ感染者数推移

FNNプライムオンライン(https://www.fnn.jp/articles/-/119012)の報道によると、「GoToトラベルの一時停止について、政府は、北海道・札幌市と大阪市の延長に加え、東京と愛知・名古屋市を新たに一時停止の対象とする方向で調整に入ったことがわかった」とのことだ。官邸(内閣官房)からのリークだと思われるが、遅きに失している。ただし、もともとはコロナ感染収束後の政策であったことから、コロナ第三波の襲来が明白になっている現状、Go To キャンペーンは中止し、財源はコロナ禍対策に回すのが筋だ。

東京地検特捜部の事情聴取についてぶら下がり記者会見に応じる安倍晋三前首相
東京地検特捜部の事情聴取についてぶら下がり記者会見に応じる安倍晋三前首相

さて、「桜を見る会前夜祭」事案では大手マスコミから、不記載の金額が少ないことを理由に、「政治資金規正法違反」だが。不記載の金額が少ないことを理由に、安倍晋三後援会の代表兼会計責任者(公設第1秘書)もしくは、安倍前首相が代表人なっており、晋和会宛の領収書に記載された政治団体・晋和会の会計責任者(公設第1秘書)の略式起訴による罰金刑で済み、裁判が開かれることなく決着するとの見通しが、流されている(いずれも政治団体だが、今回の事案は安倍晋三後援会事務所の政治資金収支報告書への記載が必要だったと判断している模様)。また、東京地検特捜部が安倍前首相本人を事情聴取することも報じられているが、「参考人聴取」にとどまるとの見方も多い。

しかし、敏腕検事として知られ、全国各地での検事を歴任した郷原信郎弁護士がネットに公開した「安倍前首相“被疑者取調べ”、秘書事件“公判審理”で、国会議員『投了』か」によると(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fd01cc2c5b61d81b339f6e4)、黙秘権を告知したうえでの「被疑者聴取」になる可能性も高いと指摘している。以下、要点を引用させていただく(なお、Youtubeのhttps://www.youtube.com/watch?v=9VPyXoWRtjgも参照)。

聴取が、「被疑者としての取調べ」という意味合いを持つものか否かは、そもそも、この任意聴取が、どのような犯罪事実に関して、どの程度本人の「嫌疑」について行われるのかに関係する。「桜を見る会」前夜祭には収支が発生していること、それが安倍氏に関連する政治団体の政治資金収支報告書に記載すべきところが記載されていなかったことについて、安倍氏が認識していた疑いが濃厚だ。
(中略)
2019年分の政治資金収支報告書の提出時期は、今年3月末日(コロナ禍で5月末に延期)だった。前夜祭問題で、安倍氏が、野党、マスコミから厳しい追及を受けた後であり、その収支報告書上、前夜祭の収支をどのように処理するかは、安倍氏にとって極めて重大な問題であり、収支報告書提出の際に、安倍氏自身がホテル側から事実確認の結果を確かめることなく、前夜祭の収支を記載しない収支報告書を提出することは考えられない。

そういう意味で、安倍氏には、主催者の安倍晋三後援会の政治資金収支報告書に「桜を見る会」前夜祭の収支を記載すべきであることを認識していたのに、除外して提出したことについて犯罪の嫌疑が濃厚である。被疑者として、聴取に当たって「黙秘権の告知」を行った上で聴取するのが当然だ。(中略)

確かに、前夜祭の収支が、前夜祭の主催者であった安倍晋三後援会に帰属するものなのであれば、同後援会の政治収支報告書に記載すべき事項だったのに記載しなかった不記載罪が成立することは確かである。(中略)

しかし、これまで、検察は、例えば、「政治資金の寄附」を受けているのに、それを記載しなかったというような違反について、不記載罪が成立する場合であっても、その不記載が、その収支報告書の全体的な収支の総額に影響するとして、収支の総額等についての「虚偽記入罪」を適用することが多かった。「虚偽記入罪」であれば、身分犯ではなく「何人についても犯罪が成立する」という判例がある。

実質的には不記載罪であっても、虚偽記入罪と構成することで犯罪の成立範囲を拡張してきたので、実際に、不記載罪で起訴した事例は少ない。(中略)

しかし、少なくとも、虚偽記入罪も成立する余地があり、それを視野に入れれば、安倍氏にも犯罪の嫌疑は十分にあるのであるから、やはり、黙秘権を告知した上で、被疑者としての取調べを行うべきだ。

安倍氏の秘書については、政治資金規正法違反で略式起訴の予定とされている。もし、簡易裁判所に略式起訴され、簡裁判事が、そのまま略式命令を出せば、事件は書面だけの審理で終わることになる。しかし、国会でもマスコミでもこれだけ大きく取り上げられ、社会的関心が高い問題であるだけに、非公開の書面審理で終わらせることが適切とは思えない。
(中略)

安倍氏の秘書が略式起訴された場合、担当した簡裁判事が、書面審理だけで済ますとは思えない。公判が開かれる可能性が高いと考えられる。辞任したばかりの前首相が、検察に、政治資金規正法違反の被疑者として取調べを受けることの意味は大きい。これまで、マスコミには虚偽説明、国会では虚偽答弁を繰り返してきた安倍氏も、いよいよ、国会議員「投了」ということにならざるを得ないのではなかろうか。(以下、略)

サイト管理者(筆者)の理解では、会計責任者に対する「略式起訴」で取りあえずは済んだとしても、簡易裁判所の判事が書面審理だけで済ますということがなければ、公判が開かれ、「桜を見る会前夜祭」事案の全貌が解明される可能性はある。日本国憲法で保障されている国民の「知る権利」(国民が情報収集を国や公共団体の権力に妨げられることなく自由に行える権利であり、国家に対して情報の公開を請求することができる権利。これらの権利は憲法21条の「表現の自由」と紐づき保障されていると解釈されている)を保障する観点から言っても、「公判」を開くことは司法・検察にとっては当然のことだ。

なお、これに関連して、菅首相は安倍政治を継承すると言いながら、未来投資会議を廃止して、新自由主義の権化である竹中平蔵パソナ会長を実質の議長とする実質の経済政策立案会議である「成長戦略会議」(議長・加藤勝信官房長官)に取り替え、「影の総理」とも言われた今井尚哉首相補佐官ら経済産業省出身の側近や安倍前首相を支持する自民党議員の一掃に乗り出している。

広島県での大規模買収事件に発展した河井克行元法相・河井案里参院議員らの公判もそのひとつである。問題の核心は、自民党本部から可愛側に拠出された1億5000万円の使途の全貌がまだ明らかになっていない。両者の買収資金は3千万円ほどとされており、残りの1億2千万円程度の資金の流れは不明だ。

これについては、東京新聞のWebサイトの投稿記事(https://www.tokyo-np.co.jp/article/73178)、共同通信社の投稿記事(https://this.kiji.is/708936330335830016?c=44341039600582657)に次のような箇所がある。

(東京新聞)
昨年の参院選で自民党本部から河井案里氏陣営に資金提供した1億5000万円については「支部の党勢拡大などの政党活動のため、党内で定めた基準と手続きに従って、党本部から適切に交付された」と説明した。

(共同通信社配信記事)
河井夫妻が公選法違反の罪で起訴されたことを「非常に残念だ」とした上で、資金提供について「支部の党勢拡大などの政党活動のために、党内で定めた基準と手続きに従って適切に交付された」と言及した。

普通なら、お茶を濁す形で「適切に交付された」と書面回答すれば良いはずだが、わざわざ「党内で定めた基準と手続きに従って」と付け加えている。一部の識者によると、この文言を付加することによって、広島県の地方自治体での大規模買収事件の最終責任が当時の自民党総裁と幹事長、つまり、安倍前総裁と二階俊博幹事長に最終的な責任があることを間接的に伝えたとしている。

広島県での大規模買収事案には当時の菅官房長官も協力したが、基本的には安倍前首相を批判した溝手顕正参院議員(当時)を追い落とすための買収工作だから、安倍事案である。山口県に強力な拠点を持つ清和会と広島県に基盤を持つ宏池会との闘いでもある。

菅首相が、安倍政治を継承すると言いながら、実際は自民党内、官僚組織内の安倍派を粛清している現実がある。仲は悪くないとされる二階幹事長も高齢であり、菅総裁としては幹事長の座も側近で固めたいと思っているのだろう。菅首相が、Go To キャンペーンなど菅政権の政策をめぐる党内、官僚組織の中の反対勢力は左遷すると言明しているだけに、安倍派の粛清にさらに力を入れてくるだろう。ただし、このことは自民党内の分裂を助長する同党にとっては危険な政治戦術と言わなければならない。



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