来る4月25日に衆院北海道2区、参院長野選挙区、参院広島選挙区の補欠選挙の投票が行われる。北海道2区、参院長野選挙区では、野党側が統一候補を擁立できたことで当初から選挙に勝てる見込みが強かった。しかし、広島県は高度成長を実現した池田勇人首相(当時)を出すなど、保守王国で、保守本流の宏池会の組織基盤が固いことで知られている。河井案里氏の買収罪による議員辞職に伴う補選だとしても、自公推薦候補が勝つと見られていたが、どうやら野党側の統一候補が少なくとも追いつき、追い越しつつあるようだ。
全国では、全国では午後23時59分の時点で、新規感染者が3455人、死亡者が44人、重症者が前日比33人増えて596人になっている。大阪府の新規感染者が1000人を突破して1099人になり、死亡者が8人出た。吉村洋文知事は3回目の政府=菅義偉政権に「緊急事態宣言」発出を要請することを検討している。
【参考】米国Google社のAI予測(4月8日から5月8日まで)では、全国の新規感染者数3390人、死亡者45人だった。学習能力を持っているから、無視することはできない。上手く利用すべきだ。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、4月12日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加の1.18人、東京都は同じく4月11日時点で前日比0.01人増の1.15人だった。前日比上昇、下落を繰り返しているが基調的には上昇模様。ただし、1.1人は超えているので指数関数的に増加していくことが懸念される。
首都圏、関西圏での変異株拡大で東京オリンピック/パラリンピック開催危機に
関西圏に加えて首都圏も変異株による市中感染が広まってきた。東京都では、80人が感染力が強いとされる「N501Y」の変異があるウイルスに感染していることが新たに確認され、ある病院では職員と患者合わせて7人の集団感染(クラスター)が発生した。大阪府の吉村洋文知事は「緊急事態宣言」の3回目の発出要請を検討している。また、複数のメディアによると、政府=菅義偉政権は週内にも「まん延防止等特別措置(まんぼう)」を神奈川、埼玉、千葉、愛知の4県に発出するとのことだ。
しかし、「緊急事態宣言」でも「まんぼう」でも、「後手後手・小出し・右往左往」の菅政権に打つ手はない。仮に、ワクチンが日本人に安全かつ有効だとしても、入手できないからどうしようもない状況だ。今まで抑えに抑えてきた検査(技術革新の進んだPCR検査装置を利用)と保護・隔離・治療政策を大規模に行うことを基本とする以外にない。症状が悪化しないようにするための抗ウイルス薬の承認を急ぐことである。菅政権と巨大制約会社がワクチン利権を分け合うために、アビガンなどの抗ウイルス薬の承認をわざと遅らせてきた可能性がある。
米紙ニューヨーク・タイムズはスポーツ面のコラムで、このままでは東京オリンピック/パラリンピックは「一大感染イベント」になると警告を発し、併せてオリンピックの抜本的改革が必要だと訴えている。特に中国を念頭に置いて、バイデン大統領の主張のように人権を軽視する国での開催を中止する必要があると指摘した(https://www.tokyo-np.co.jp/article/97751)。
人権問題については、世界人権宣言に基づいて作成された国際人権規約(社会権規約と自由権規約があり、それぞれ国際人権A規約、国際人権B規約と呼んでいる)に基づいて対処することが重要だ。中国はB規約を批准していないため、国際連合憲章(敵国条項を削除する必要がある)と世界人権宣言に基づいてB規約の批准を要請していく必要がある。ただし、米国も人種差別を完全に撤廃、大量破壊兵器を発見できなかったのに「ある」と言ってイラクに侵攻したような「人権」を大義名分にした蛮行は止めるべきだ。外交面でももちろん、ダブル・スタンダードは取るべきではない。日本人にはあまり知られていないが、ディープステートは米国の主要な言論機関さえ傘下に置いている。
4月25日投開票の衆参3補選について
北海道2区衆院補選は、鶏卵疑惑で吉川貴盛・元農水相=収賄罪で在宅起訴=が辞職したことに伴うものだ。連立与党のうち自民党は候補を擁立せず、公明党は自主投票だが、自民党は「隠し玉」として維新の鈴木宗男参院議員の元秘書で前道議の山崎泉氏(48)を擁立した。このため、立憲民主党と北海道に一定の地盤を持つ日本共産党が統一候補を立てなければ、「隠れ自公」の維新候補が勝つ可能性があった。取り敢えず、共産党が立憲に譲ったことで、2017年の衆院選の際の立憲と日本共産党の得票数を合計すれば、当時の吉川候補の得票数を追い抜く。自民党、公明党の中にも、自らの選んだ衆院議員が収賄罪で辞職したため、棄権するか、場合によっては、「自民党にお灸をすえるため」野党統一候補の松木候補に投票するかも知れない。
参院長野選挙区補選は、立憲の参院幹事長だった羽田雄一郎氏がPCR検査を受けられず(拒否された可能性が強い)新型コロナで急逝したことに伴うもの。羽田雄一郎氏の弟の立憲民主党の羽田次郎候補(51)を自民党の小松裕候補(59)が追う形にはなる。しかし、神津里季生会長率いる日本労働組合総連合会(連合)と野党のふりをした国民民主党が「原発ゼロ」政策をネタに、立憲と日本共産党を分断する工作を展開していたが、枝野幸男代表が神津会長に謝る形で分断工作を断ったと受け取れなくもない形で、取り敢えず「丸く収め」、立憲と日本共産党との野党共闘を維持した。
玉木雄一郎代表率いる国民民主党もしぶしぶ「野党共闘」に加わるようだが、立憲と日本共産党、れいわ新選組を分断することが連合や国民の主な任務であるから、あまりあてにはできない。ただし、長野県は全体として県民が合理的精神を重んじる県だから、自公連立政権の悪政・暴政に厳しい審判を下すのではないだろうか。
問題は、広島選挙区である。河井克行・案里氏夫妻は結局、贈賄罪が確定し、夫妻そろって議員辞職をした。しかし、1960年の日米安保闘争で日本の政界が大混乱に陥ったため、自民党は岸信介首相(当時、以後同じ。安倍晋三前首相・衆院議員はその外孫)を退陣させ、自民党は宏池会(保守本流)に属し、広島県選出で経済政策に強い池田勇人衆院議員を総理・総裁に選出。池田首相は「所得倍増政策」を展開して「日本の空気」を一新し、日本を高度経済成長期入りさせた。広島県は自民党の牙城・「保守王国」であり、宏池会の地盤でもあった。
だから、河井克行・案里氏夫妻が贈賄罪で議員辞職をしても、「みそぎ」を受ければ、広島選挙区では勝てると思い込んでいたふしがある。そこで、経済産業省基準認証政策課課長補佐を務めた忖度官僚・西田英範氏(39)を自民党新人として公認=公明党推薦=、「みそぎ」を受けるつもりでいた。
しかし、河井克行・案里氏夫妻の贈賄事件はまったく解決されていない。まず第一に、2019年の参院選広島選挙区で河井案里氏を当選させるため巨額買収を行ったのは、宏池会(現在、岸田派。護憲の立場を取る)の重鎮であり、当選すれば自民党参院幹事長になり、安倍首相の強力な敵になる溝手顕正氏を落選させることに狙いがあった。安倍首相は、自主憲法制定という大義名分のもとに、憲法改悪を企てる清和会(現細田派)の後継者になると見込まれている。安倍首相の溝手参院議員に対する個人的な恨みだけでなく、宏池会を解体する狙いがあったと見られる。このことが明確にされていない。
第二に、贈賄に使われた買収金額は3100万円だが、自民党からは1億5千万円(うち、1億2千万円は血税の政党助成金)の資金が河合陣営に安倍総裁、二階俊博幹事長から正式に支給(交付)されている。つまり、1億2千万円程度の支給金(交付金)の使い道が分からないのである。これについて、朝日新聞記者を務め、現在フリー・ジャーナリストの佐藤章氏によると、広島県選挙区での選挙資金は1億5千万円でも足りず4億円程度はかかるが、3100万円でももちろん足りない分は、内閣官房機密費から出たのではないかと推察している。
林真琴検事総長率いる検察庁は、この問題をなお追跡調査しているという。これには、検事総長になる予定の林真琴名古屋高検検事長が、黒川弘務東京高検検事長(かけ麻雀で辞任。その後、退官後の2021年、賭博罪で東京地方検察庁特捜部から略式起訴を受け、罰金20万円の刑を受けた)に検事総長の座を奪われそうになったことがある。なお、鶏卵疑惑で議員辞職した吉川事案も可愛夫妻の贈賄事件の取り調べの過程で浮かび上がってきた。
第三は、贈賄罪と収賄罪はセットだ。贈賄罪で犯罪が確定し、刑罰が下されれば、収賄側も刑罰が下さなければならないというのは、刑法の大原則だ。この点に関して、検察側が取った手は、法廷で収賄事案を当事者に証言させる代わりに、収賄罪は問わないとの一種の「司法取引」である。しかし、東京都や広島県、長崎県などで検察官として敏腕を古い、現在は郷原コンプライアンス法律事務所の所長を務めている郷原信郎弁護士によると、市民団体が広島高裁に対して不起訴を問題とする異議申し立てを行い、既に受理しているという。
検察審査会で審査すれば普通なら、収賄側も全員「起訴相当」になる。要するに、検察庁は収賄側の広島県の首長、市町村会議員らをだましたわけだ。それを知ってか知らずか、西田候補には収賄側の政治家が応援に馳せ参じている有様だという。こうした無軌道ぶりから、郷原氏によると、西田候補の演説などには広島県の有権者は集まらないという(https://www.youtube.com/watch?v=nGXSHBSgsMs)。
だから、毎日新聞社はWebサイトで4月11日午前5時30分、最終更新13時57分の時点で「参院広島再選挙 野党推薦新人がリード、自民新人が追う 情勢調査」と題する記事で選挙情勢で報道した(https://mainichi.jp/articles/20210411/k00/00m/010/014000c)。
参院広島選挙区再選挙が8日に告示されたのを受け、社会調査研究センターは10日、広島県内の有権者を対象に電話世論調査を実施して情勢を探った。諸派新人の宮口治子氏(45)=立憲民主党、国民民主党、社民党推薦=がリードし、自民党新人の西田英範氏(39)=公明党推薦=が追う展開となっている。回答者の3割が「まだ決めていない」としており、投票日の25日までに情勢が変わる可能性がある。
調査は10日、コンピューターで無作為に数字を組み合わせた固定電話の番号に電話をかけるRDS法で対象者を抽出。自動音声応答(オートコール)で質問し、1066件の有効回答を得た。
大手マスコミの選挙情勢は世論操作に使われている面はあるが、西田候補が早々と事実上の選挙活動を行っていたのだから、この見出しは普通では考えられない。本来は、いち早く擁立を決めて補選活動に乗り出した西田候補が序盤戦ならそれなりに優勢でなければおかしいところだ。
ところが、毎日の報道では序盤戦から野党候補が有利なのだ。立憲など野党側は広島地方検察庁の特別刑事部部長を務め、説法鋭い郷原氏に立候補を依頼したが、諸般の事情から郷原氏を候補者に擁立できなかった(しかし、郷原氏野党統一候補の応援演説は行っている。https://www.youtube.com/watch?v=nGXSHBSgsMs)ため、地元のアナウンサーの経歴を持つ宮口治子氏を候補として擁立したが、瀬戸内テレビのアナウンサーの経歴があるだけに声の通りもよく、郷原氏によると県内有権者が選挙演説などに寄ってきているという。
ただし、宮口氏はシングル・マザーで苦労してきたと言われているが、子育てに他者の手助けを受けたこともある。それはそれで問題はないが、自公サイドの旧態依然たる「シングル・マザー感」の持ち主から攻撃を受け始めている。ジャーナリストの横田一氏によると、有名な週刊誌がとりあげて揺さぶることも考えられるという。
野党側は、立憲の枝野幸男代表、玉木雄一郎国民民主党(国民は真正野党ではないだろう)代表らが現地入りして応援しているが、連立与党側も自民党広島県連会長の岸田文雄前政調会長や公明党の山口那津男代表ら大物が登場した。ただし、公明党は広島3区選出議員であった河井克行氏が4月1日議員辞職したことに伴い、次期総選挙の広島3区に党政調会長、幹事長を歴任した斉藤鉄夫副代表を出馬させることを自民党広島県連に無断で決定した。突然発表した。
公明党は、河合夫妻贈賄事案が組織ぐるみの買収工作だから、自民党と同党広島県連には候補者を擁立する権利はないことは困難と判断した可能性がある。このため、特に岸田文雄県連会長(前政調会長)を中心とする宏池会の自民党広島県連との間でもつれた。公明党・創価学会が当時の河井案里候補を応援したことで、溝手顕正候補落選の苦い思いを味わった苦い経験もある。結局は、自民党本部と公明党本部が斎藤氏が広島補選で西田候補を全力で支援することを条件に、自公の間で正式な広島3区候補に擁立されたが、両党の自民党広島県連と公明党との間に隙間風が吹いていることは否めない(参考:https://digital.asahi.com/articles/ASP426VXSP42UTFK00X.html?iref=pc_ss_date_article)。
公明党の山口代表は「皇国の興廃、この一戦いにあり。各員、一層奮励努力せよ」の心境だろう。しかし特に、公明党執行部との仲(すきま風)が問題とされている、創価学会婦人部の存在がある。創価学会婦人部は、選挙の実働部隊である。同婦人部の広島選挙区での動きがカギを握る。昨年2020年11月1日の大阪都構想住民投票は、公明党が賛成に回ったものの、創価学会婦人部の動きが鈍かった。ただし、僅差だったため、れいわ新選組のゲリラ街宣が効いたところもある。
一方、岸田前政調会長は自民党総裁選での菅義偉首相の唯一の対抗馬だ。吉田候補が敗北すれば、自民党広島県連会長の岸田氏には総理・総裁の目はなくなる。菅首相としては、岸田氏の追い落としを狙っているフシがある。こうしたことから、4月25日の参院広島補選での自民党候補、公明党推薦の吉田候補の当選には、かなりの困難がつきまとう。保守王国ではあるが、金券腐敗政治にあきれて、西田候補の選挙パンフレットを受け取ってくれない有権者も少なくない。このため、自民党広島県連は、建設業界など地元の自民党系業界の組織固めにやっきだ。
自民党内では現在、菅・二階俊博幹事長グループ、清和会の細田派(安倍前首相を次期領袖に予定)・麻生派連合軍、宏池会の岸田派の三つ巴の党内権力闘争が始まっていると見られる。菅首相は4月25日の参院広島補選で自民党の吉田候補が敗れれば、責任を岸田氏に押し付けて葬り去るつもりだ。
ただし、地元紙広島新聞は本日4月13日の社説で次のように述べている(https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=743020&comment_sub_id=0&category_id=142)。
首長や地方議員を大量に巻き込んだ金まみれ選挙で、全国にとどろいた汚名を返上するきっかけにできるか。異例の再選挙を通じて、候補者や政党はもちろん、私たち有権者も金権政治と決別する本気度が問われる。
戦後一貫して政官業癒着、利権政治、1990年台以降の新自由放任主義に伴う弱者切り捨て政策を推進してきた政党は、紛れもなく自民党である。4月16日の日米首脳会談とコロナ第4波の規模・広がりが参院広島選挙区での勝敗を大きく左右すると思われるが、4月25日の保守王国・参院広島選挙区での勝敗は、日本の戦後政治の行く末を占う大決戦でもある。また、郷原弁護士の指摘のように、広島県民ひいては日本国民の「民主主義感想」が問われる選挙でもある。なお、朝日新聞社や共同通信社の世論調査で菅政権のコロナ禍対策には反対が大勢を占めるのに、内閣支持率が上昇しているのは矛盾している。
ただし、立憲が、真正野党間の分断を図る神津里季生会長率いる連合と「野党」のふりをしている国民に左右されるのは、いただけない。立憲の枝野代表は「原発ゼロ」政策がどんどん後退してきているし、日本共産党も連合・国民の分断策に乗る立憲に内心、不満を持っている。来る総選挙で禍根を残されるだろう。何よりも、現在の野党共闘体制の政策では最も肝心な経済政策=財源論が不明で、事実上ない。国防費を削減したところではとても足りないだろう。立憲は連合や国民と決別し、財源論を明確にしているれいわ新選組の声を虚心坦懐に受け止め、コロナ禍対策の抜本転換をなして、日本型の社会民主主義政党に完全に脱皮する必要がある。