政府やメディアでは、「処理済み」とされる「トリチウム汚染水」の海洋放出が13日、閣議決定された。地元の反対や不安を押し切る暴挙の「政治決断」だ。肝心のフクシマ第一原発の廃炉のメドも経っていない。ただし、政権交代を行えば、今回の「閣議決定」は覆すことが出来る。「最良のコロナワクチン」も無為無策の政府=菅義偉政権からの真正野党による「政権奪取」だ。そのことを踏まえて、JX通信社によるハイブリッド世論調査の結果を紹介してみたい。
全国では、全国では午後23時59分の時点で、新規感染者が4312人、死亡者が34人、重症者は前日比12人増加して608人になっている。大阪府は新規感染者が2日連続で1000人を突破して過去最多の1130人になり、死亡者が8人出ている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、4月13日時点の実効再生産数は全国が前日と同じ1.18人、東京都は同じく4月11日時点で前日比0.02人増の1.17人だった。前日比上昇、下落を繰り返しているが基調的には上昇模様。ただし、1.1人は超えているので指数関数的に増加していくことが懸念される。
尾身分科会会長、攻勢労働委員会でコロナ第4波突入と答弁ー何をすべきかは語れず
政府新型コロナ感染症対策本部の「専門家委員」で構成される分科会の尾身茂会長(独立行政法人地域医療推進機構理事長)は14日の衆院攻勢厚生労働委員会で、コロナ第4波入りをやっと認めた。立憲民主党の長妻昭衆院議員の質問に対する答弁。3回目の「緊急事態宣言」発出の可能性にも言及したが、「人流が減っていくので新規感染者は減少に転じる」と楽観的。また、「まん延防止等重点措置」か「緊急事態宣言」のいずれを発出するべきかは問題ではなく「何をするべきかが問題」で今は、「医療従事者の大阪府への派遣が重要」と付け加えた。
ただし、変異株による新規感染者の急増阻止に対しては新味のある具体的な提案はなく、「何を行えばよいか分からない」というようにも受け取れた(https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51924&media_type=)また、菅首相は「(第4波は)全国的な大きなうねりとまではなっていない」との認識だが、この日の厚労委員会では他の野党議員から日米首脳会談を控えて「非常事態宣言」の発出はまずいから、大阪府などで非常事態宣言は発出しないのではないかとの疑問も出た。
なお、東京都では関西と同様、英国で変異し、感染力が強いうえ、重症化力が強いことも専門家のチームで論文発表された英国型の変異株(N501Y)の市中感染が広まっているようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210414/k10012973461000.html)。ただし、陽性検体のうちどの程度の検体の調査を行ったのかは明らかではない。政府=菅政権は全検体の40%の調査(スクリーニング)を行うように地方自治体に指示しているが、そこまでは検査が届いていないようだ。医療装置政策メーカーとして有名な島津製作所は即座に検査できるPCR検査キットを開発、伊藤忠商事株式会社の出資する株式会社iLAC(読み方:アイラック)は、4月1日から「新型コロナウイルスの全ゲノム解析※受託サービス」を開始した(https://www.shimadzu.co.jp/news/press/r073msp1316mq4ja.html)。
フクシマ第一原発「トリチウム汚染水」の海洋投棄閣議決定について
既に投稿させていたが、フクシマ第一原発の核燃料棒を直接冷却する冷却水に加えて、東北大震災で損傷した原子炉建屋に流れ込んだ水が加わり、現時点で高濃度放射性物質に汚染された「汚染水」が東京ドーム一個分に当たる125万トン(冷却水が含有している放射性物質の量に換算して900兆ベクレル)程度に達している。一応、多核種除去設備(ALPS)で処理されてはいるが、少なくとも、水素の同位体(原子番号が同じ元素)であるトリチウムだけは、酸素と結合して「水」の状態になっているため、取り除けない。
東京電力はフクシマ第一原発近くの敷地に、ALPSで処理したトリチウム汚染水(朝日新聞など大手マスコミの一部は「処理済み汚染水」と表記していたが、いつの間にか「処理水」と表記するようになった)の貯蔵タンクを作り、「保管」していたが、敷地がいっぱいになったため、国際基準の40分の1に薄めて海洋投棄することになった。しかし、世界史上初めての試みなので、➀40分の1に希釈すると言ってもそれが確かかどうか、国民も判明できるシステムをどのようにして構築するのか定かでない②海洋投棄して福島県沖を中心とした海洋系の安全性は保証されるのか③「風評被害」という言葉が使われるが、「実害」も想定しておかなければならない➃「風評被害」だけではなく、「実害」が出た場合にももちろん、迅速に補償がなされるのか⑤フクシマ第一原発の廃炉の見通しが経っておらず、海洋投棄の期限も定かでないーなどの問題が山積している。
補償問題について、朝日新聞は4月14日付3面の「風評対策効果見通せず 東電の賠償に不安」と題する記事には次のように報道されている(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14869887.html?iref=pc_ss_date_article)。
風評被害への賠償のあり方も焦点になる。政府は東電に、期間や地域、業種などは限定せずに賠償するよう求めた。損害の立証の負担を被害者に一方的に負わせず、「被害者に寄り添って迅速に対応する」よう指導するという。
だが、賠償が適切になされるのかどうか、不安視する声もある。国の原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)の和解案を、東電が理由を示さないまま拒否している事例もあるためだ。センターの資料によると16年~21年に1万9163件の手続きが終わった。東電が和解案を拒否し打ち切ったケースは、東電社員や家族による申し立てを除いて55件あった。100人を超える集団申し立てのケースもあり、対象者は少なくとも2万2千人にのぼる。
しかも、「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従って定められた、日本国民が1年間に受ける放射線被曝量は1ミリシーベルトだが、この宣言によって20ミリシーベルトに引き上げられたままだ。財政による被災支援措置も打ち切られ、フクシマ第一原発近辺の廃屋地帯以外で住む住民は、安全な地域で住むことができない。100ミリシーベルトの放射線を浴びると、ヒトの細胞の染色体に異常が生じることなどから、発がん率は0.5%高まるという。人口100万人当たり5000人に上る勘定だ。「トリチウム汚染水」の海洋投棄問題については、次の投稿記事を参照にして下さい。
今後、首都圏直下型地震などの超大型地震が起こることも想定しておく必要がある。このことも想定して、「反原発」の立場に立つ原子力の専門家からなる「専門家会議」を立ち上げ、フクシマ第一原発の廃炉の方法、スケジュールの根本から議論を初めて、本格的な議論と作業を開始しなければならないだろう。自公連立政権にそれはできない。真正野党の強力な共闘による「政策連合」の結成が不可欠だ。4月25日投開票の衆参両院議員の3補選ではともかくも「野党統一候補」を立てることができたが、真の「政策連合」とは呼べない。
菅義偉首相が4月16日に予定している日米首脳会談で、「奇策」を打ち出してくる可能性もあるから、真正野党側は財源論(税制・財政政策)を固めて、強力な「政策連合」を形成する必要がある。
JX通信社の世論調査
さて、遅くとも秋までに行われる衆院解散・総選挙の参考にするため、JX通信社が行った4月のハイブリッド世論調査を紹介させていただきたい(https://www.youtube.com/watch?v=CSoqVdGk1yo)。JX通信社は東京都千代田区一ツ橋に本社を置いたインターネットに特化した独特の通信社であり、ネット分析を得意とする。
まず、内閣の支持率について。共同通信社や朝日新聞社の4月の世論調査では、政府=菅政権のコロナ禍対策を批判する世論になっているのに、何故か内閣支持率は上向いてきている。この点、JX通信社の世論調査では不支持率の方が多い。
4月時点での支持率は、支持率が低下して32.0%になった半面、不支持率は反転上昇して40.5%になっている。これは、政府=菅政権が2回目の「緊急事態宣言」解除直後に、関西圏と東京都で「まん延防止等特別措置(まんぼう)」を採らざるを得なくなり、他の首都圏や愛知県でも「まんぼう」を発出することを検討するなど、良く言っても新型コロナ感染症対策が「後手後手」に回っていること、率直に言えば、無為無策に終止していることに対して、国民の不満がまた高まってきたことを意味するものだろう。
次に、菅政権の受け皿になる与党、野党の支持率はどうか。
維新の支持率は電話、ネットとも下がっているのは理解できる。しかし、自民党の支持率は上若干昇している。立憲の支持率は電話調査では上昇しているが、ネットでは下がっている。ネット戦術に再考の余地があると言えるだろう。れいわは、ネット戦略はまずまずだが、電話調査のブレが大きい。固定支持層を掴むことに苦労していると見られる。ただ、何よりも問題なのは、支持政党なしがやはり多いことだ。組織票に頼る自公両党と、腰の定まらない野党とも受け取れる。次に、有権者の投票行動を見てみる。
これを見ると、自民党への投票は少なくなるとの回答だ。立憲は電話調査では上昇している。れいわはそれなりに健闘していると言えるだろう。一番問題なのは、「分からない」が電話調査、ネット調査ともに増えていることだ。野党が自公連立与党の受け皿になっていないとはよく言われることだ。これは、コロナ禍対策やデフレ不況からの脱出策に対する経済政策(特に財源)が弱いことを意味するからだとみたい。次に、いわゆる無党派層の投票行動を見てみたい。
これを見ると、自民党はまた減少している。コロナ禍第4波無策が続くと、「支持政党なし=無党派層」は自民離れをおこすだろう。ただし、立憲が伸びていないのに対し、日本共産党とれいわ新選組は伸びている。一方で、国民民主党は前回より少なくなっており、基調的にパッとしない。日本の国民も、御用組合である日本労働組合総連合会(連合、神津里季生会長)傘下の同党に疑問を抱き始めているのではないか。
以上はあくまでひとつの世論調査だが、コロナ禍対策では政府=菅政権を評価しないのに、内閣支持率は40%を超えているという摩訶不思議な大手メディアの世論調査よりは、それなりに評価できる世論調査と言えるのではないか。日本の小選挙区制度では、自公両党の相対得票率(実際に選挙=投票行動=を行った人数に対する得票数の占める割合)は、連立与党と野党で半々程度だ。しかし、野党が分裂すると、小選挙区では連立与党圧勝になり、衆院議員での議席数は連立与党が圧倒的多数の議席を獲得することになる。また、50%の有権者は投票行動を行わない(棄権する)から、日本は全有権者の4分の1(政官業癒着の恩恵にあずかれる業界団体を中心とした団体・組織)に政治が左右されることになる(利権政治の跋扈)。
その結果、「少数意見」を聞き入れない「多数独裁制」がこの国の政治体制になってしまう。しかし、ガリレオ・ガリレイを待つまでもなく、「真理」は既成の支配的な多数派の所論に疑問を抱いた「少数者」からしか出てこない。だから、「少数意見」を無視した「多数独裁制」は真の意味での民主主義体制とは言えない。加えて、日本の長い歴史で培われてきた「お上としもべ」という権威主義精神から抜け出せない「空気」がある。この「日本教」を改革しない限り、「少数者による多数者の支配」がまかり通ってしまう。
真正野党が共闘しなければならないことは確かだが、基本政策、特に経済政策を強化する必要がある。