安倍首相の消費税大増税決定で政権崩壊へまっしぐら―史上最大30兆円のデフレ政策

安倍晋三首相が10月1日夕方、来年(2014年)4月からの消費税率の5%から8%への引き上げを閣議決定し、首相官邸での公表した。これに加えて、①今年12月までに5兆円規模の景気対策を行う②東日本大震災のための「復興増税」のうちの企業負担分(復興特別法人税)を廃止する(12月までに正式決定)③法人税の実効税率の引き下げ(法人税減税)を行う(同)―などを発表した。1997年度からの財政構造改革法の実施から本格化した財務省の経済政策の失敗(新自由主義の本格導入)による日本経済の長期デフレを一段と深刻化する暴挙である。「デフレ脱却」を掲げる政権が史上最大のデフレ政策を実施するのである。

安倍首相は記者会見で、「長いデフレの間、企業は、投資や従業員への還元を行わずに、ため込んできた状況がある。企業にとって投資をしたり従業員に還元したりしていかなければ、損をしていく方に変えていく。企業が国際競争力に打ち勝ち、賃金という形で従業員へ還元し、それが消費に回っていければ好循環に入っていく」と語り、大企業を中心とした法人企業が多額の内部留保を溜め込んでいるにもかかわらず、設備投資が増えていない状況を知っている。

企業が内部留保を大量に抱え込んでいるのに(さらに、黒岩日銀の量的金融緩和政策=マネーを市中金融機関にばらまく=の実施にもかかわらず)設備投資が増えないのに、何故、法人税減税を行うのか。これまでの経済政策を振り返ってみると、法人税減税は税収を減らすだけで、設備投資は増えない。アベクロノミクス(アベノミクス)の期待するメカニズムが作動する保証は全くない。

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今回の決定の実態は、それが史上稀に見るデフレ財政という事だ。まず、第一に、消費税大増税によって、8兆円規模で可処分所得が減少する(消費税率1%の引き上げで2.5兆円から3兆円の増税になる)。第二に、所得税増税(復興特別増税と所得制限などによる世帯当たりの負担増)と厚生年金保険料の引き上げなどによって、さらに8兆円程度、可処分所得が減少する。

これに、今年度(平成25年度)に景気を良くするために実施された13兆円規模の公共事業の効果が消滅する。これらを合計すると29兆円。30兆円(名目GDP比6%超)の有効需要が消えるわけである。4兆円―5兆円程度の経済対策を行なっても焼け石に水だ。真水(GDPに与える効果のはっきりしている直接の財政支出)はもっと少なくなるだろう。

これでは、平成26年度の経済成長率はマイナスになり、長期デフレが一層深刻化することは目に見えている。安倍巨大恐竜政権が誕生したのは、「新自由主義=市場原理主義(実態は、東電の破綻処理=福島第一原発事故の責任を問うこと=を未だ行わないことに象徴されるように市場原理を尊重しない、単なる弱肉強食政策)政策では日本が立ち行かなくなることを、国民が肌で実感し、政権交代を選択するようになる」ための天命であろう。

※参考までに追記すると、名目GDPは長期デフレが始まったと1997年の523兆円から2012年の476兆円に縮小。全般的な物価水準を示すGDPデフレーターは110.19から91.58へと20%も下がった。昭和恐慌の場合も同水準の物価下落が生じたが、短期間で起こったためにショックが明白だったが、今回の平成デフレは長期間にわたって続いており、「真綿で首を締められる」ような「長期恐慌型デフレ」である。また、国税庁の統計によると、この間の民間企業の従業員のの平均賃金は467万円から408万円へと60万円も減少した。今回の超大型デフレ財政による財政デフレで賃金は400万円を軽く下回るだろう。

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米国(アングロ・サクソン流)の新自由主義と決別した政党による新政権の樹立が必要である。下記に、生活の党の小沢一郎代表の談話を掲載する。

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このたびの消費税率引き上げ決定について

平成25年10月1日
生活の党代表 小沢一郎
わが党としては、現時点における消費税率引き上げ決定には反対である。政府が声高に主張している景気回復には、そもそも全く実体がともなっていない。各種指標の改善についても、補正予算や更新投資の影響であり、「力強い回復」とは程遠い状況にある。

実態をみれば、民間基本給は14か月連続で減少し、消費者マインドも3か月連続で悪化している。街角の景気の実感も5か月連続で悪化している。政府が、アベノミクスの成果として誇る株価水準も、日銀がこれだけジャブジャブとお金を流しているにも関わらず、依然として伸び悩んでおり、米国の金融政策や財政問題等で揺れる為替の動向と相まって、ますます先行き不透明感が強まっている。

ここで消費税率を上げれば、確実に景気は失速し、逆に税収全体が大きく減少することになりかねない。

政府は「物価上昇」に血眼になって取り組んでいるが、そうした中、確実に「悪い物価上昇」の足音が聞こえている。円安等による電力・ガス料金や一部食料品等価格の上昇は、徐々に生活を苦しめつつある。今のように非正規雇用が増大し、低所得者が増える中で消費税率を引き上げれば、このような悪い物価上昇も相まって、中小零細企業や農林漁業だけでなく、広く国民生活全体に深刻な影響を及ぼすことが確実である。

片や、消費税増税の前提であるべき社会保障制度改革は進んでいるのだろうか。答えは明らかである。医療も介護も年金も、削減の話だけがひたすら先行している。国民生活を安心させる制度改革には全く手が付けられていない。政治や行政の身を切る努力もどこへいってしまったのか。

安倍総理は消費税増税と併せて景気対策をやるという。ブレーキとアクセルを一緒に踏んで果たして車がうまく進むのか。国土強靭化などといって、結局、増税で浮いた分が効果の薄い事業に膨大に投入されることになりはしないか。穴の空いたバケツにいくら水を入れても無駄に漏れだすだけである。我々としては、水が垂れ流されることを大変憂慮している。

消費税増税はいわば「最後の手段」なのである。その前にまず、政治と行政は身を切る努力を最大限行い、地方分権でムダな事業を廃し、社会保障制度改革に結論を出し、金融政策頼みではない実体的な経済政策に取り組む。今求められるのは、そうした姿勢である。よって、わが党は今回の性急な消費税率引き上げ決定には反対である。

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