安全保障関連法案=戦争法案廃案のために⑦ー「国際情勢の激変」は米国の自作自演

安倍晋三首相、岸田文雄外相、中谷元防衛相は、国家の基本法である憲法の法的安定性を損なう憲法解釈の変更理由に「国際情勢が激変した」ことを理由に挙げる。しかし、その国際情勢の激変の理由は、①ロナルド・レーガン政権以降、新自由主義政策を採用した結果、同国が巨額の財政赤字、大幅な経常赤字、世界最大の対外純債務国(要するに、世界最大の借金国)に転落、ニッチモサッチも行かなくなり、経済が事実上破綻している②世界最大の軍需産業(核兵器生産シンジケートと原子力発電シンジケート含む)軍産複合体を維持するため、イラク戦争を始め世界に紛争を自作自演した(3・11事件も含まれる)ーことが主因である。

まず、経済的な側面を見る。

第一に、財政赤字が巨額化してきた推移だが、下図に端的に示されている。

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これは、「世界経済のネタ帳」によるものだが、ここに示される「財政赤字」は州政府の財政収支、社会保障基金の財政収支(主なものは、年金保険料が柱の社会保障税から社会保障支出を差し引いたもの)を合計した「一般政府」の財政赤字である。社会保障基金の収支はこれまで黒字だったが、戦後のベビブーマーが既に引退世代に突入したので、黒字から赤字に転落、その赤字幅が今後一方的に増大することが見込まれる。このため、近年の一般政府赤字は1兆ドルを割り込んでいるが、いずれ再悪化する。

最近、米国の経済が復調しかかっているように伝えられているが、ジャネット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げに踏み切れば、米国の経済を失速させ、ニッチモサッチも行かなくなるだろう。その後に待っているのは、同国経済の先行きを悲観して、量的金融緩和と称したこれまでの大量の国債増発、つまり、ドル紙幣の増刷による国債金利の上昇、株式価格の大幅下落、ドル安の「トリプル安」だ。

次に、大幅な経常赤字である。

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米国のドルは基軸通貨で国際決済通貨(ただし、通貨が持つべき価値保存機能はドルの場合、とうの昔に喪失している)だから、同国(政府も企業も国民も全て)対外収支には無関心である。だが、毎年4000億ドルもの赤字を垂れ流し、かつ、今後も傾向的に拡大するのは極めて問題である。何故なら、経常収支の赤字は海外からの借金で穴埋めしなければならないからだ。その分、対外純債務は拡大する。理論的には、過去の経常収支の合計が対外純債権ないし対外純債務になる。米国の場合は、対外純債務であり、要するに海外からの借金は膨れ上がる一方なのである。その様子は、下図になる。

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この図で「ネットポジション」というのが海外からの借金である。近年、対外粗資産が停滞しているのに対し、体外粗債務はどんどん膨れ上がってきている。この結果、海外からの借金はどんどん積もってきている。2013年末の状況は次のようになる。

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米国の海外からの借金は482兆円に上っている。これに対して、日本は325兆円、海外諸国に貸して、これらの諸国の海外発展に貢献している。ただし、米国に対しては貸す(米国債を購入する)だけで、安倍政権には返してもらう意思はない。一方で、米国も返す能力はないし、意思はさらにない。要するに、日本を「財布国家」、審査なしで日本に作ってもらったクレジット・カードで無制限に現金を引き出せる「ATM国家」にしているわけである。

さて、これだけの借金をしながらも、一部の識者を除いて米国は無関心だ。何しろ、基軸通貨国のため、相手国通貨建てで借りているのではなく、自国通貨建てで借りているからだ。このため、最後はドル紙幣を刷れば良いと考えているからだ。すでに、量的金融緩和と称してドル紙幣の増刷を行なっているが、これを海外諸国に対して行えば良い、というわけである。しかし、そんなことをすればドルには何の価値も失くなり、ドルの暴落は免れない。

以上の「三つ子の赤字」を考慮すると、「アメリカは世界最大の(純)債務国であり、経済的にはもはや破綻状態にあることを考えると、日本の国富を根こそぎ収奪する手段がTPPであると言えよう。まさに、『悪魔の罠』である」(菊池英博著「そして、日本の富は収奪されるーアメリカが仕掛けた新自由主義の正体」233頁)ということになる。

なお、米国債の発行総額は公表されているものだけで2013年9月末現在で16.74兆ドル(約1622兆円)で、このうち外国人投資家(政府と民間)が34%(5.65兆ドル)も保有し、そのうち第一位が中国で1.2兆ドル(全体の7%)、第二位が日本が1.1兆ドル(同6%)である。日本にはその意思も能力もないが、中国はいざとなれば大量の米国債を売却する。そうなれば、米長期金利暴騰、株価暴落、ドル暴落の状態になり、米国の経済は破綻して、戦争の遂行は不可能になる。国家観の戦争に勝つか否かは、経済力に依存するからだ。

要するに、ベトナム戦争以降、実質的に負け続けている米国(中東での戦争は泥沼化し、「積極的平和主義」は実現していない)では、「資本主義の最後の鐘がなる。収奪者が収奪される」事態に陥る。だから、「日米同盟」の往く果ては「日米心中」という結末にしかならない。このため、米政府も「米国にとって中国は戦略的パートナー」であると言い続けなければならないのである。

さて次に、軍事面で日本国を自国の「私兵国家」にしようと画策したのが今回の戦争法案である。ただし、日本の自衛隊員には給料は払わない。それは、日本国民の血税から賄われる。つまり、日本を完全な植民地にして国民の生命も財産もいただきますよ、というのが米国の真の狙いである。これに「承知いたしました」として唯々諾々と従っているのが、今の安倍政権である。「右翼(ウヨク)」の本質はここにある。

その理由は、年間の生産額が50兆円にも上るとされる米国の軍産複合体を維持するためである。軍産複合体は常に、戦争を欲している。このため、武器が大量に売れる戦争ができるように戦争を自作自演する。トンキン湾事件を自作し、北ベトナムへの空爆を開始したことを始め、2011年9月11日に起こった米国同時多発テロを契機としたアフガン戦争、「大量破壊兵器が存在する」との決め付けで国連の正式な承認なしに起こしたイラク戦争、そしてその結果として結成された「イスラム国(ISIL)」に対する有志国連合による空爆などがそれである。

イラク戦争ついて、早稲田大学理工学部出身で原子力産業に詳しく、2011年の3・11原発事故を予言していた広瀬隆氏による話題の新刊「東京が壊滅する日ーフクシマと日本の運命」に次のような記述がある(326頁以下)。

ここの箇所では、2003年3月20日のイラク戦争開始から3年後の2006年6月までに戦争やテロなどによって死亡したイラクの民間人は、イラク政府と世界保健機関(WHO)の合同調査で推計16万人以上、ジョンズ・ホプキンズ大学による独自調査では60万人以上に上ると紹介。その後で、「虐殺としか呼べないこうした米軍の殺戮を放置してきたのが、国連を中心とする国際社会と、(公認の「テロリスト」と指弾されるベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる)ユダヤ人国家イスラエルである。それに対する怒りが爆発して『イスラム国』(IS=Isramic State)のような武闘集団が発生しなければ不思議だったのである」と米国を中心とした有志国連合軍とイスラエルを「テロ国家」として糾弾している。

しかし、ISILがイスラム教の掟(「彼らが戦いを仕掛けない限り、汝らは戦ってはならない」=コーラン=)を破っていることを指摘し、「彼らの手にしている武器・兵器が、本当は敵方のヨーロッパ・アメリカやイスラエルの死の商人から送られたものである可能性が濃厚である。つまり、アメリカをはじめとする反『イスラム国家』有志国連合軍が続けてきた一般人を巻き込む無慈悲な殺戮空爆に見られる通り、中東・アフリカを戦乱に巻き込んで、全世界の軍需産業を隆盛させているのだ。それ以外には、現状の答えが見つからない」と推論している。こうした認識は、政府の御用学者、御用アナリスト、御用ダマスゴミ以外の知識人に共通している。

なお、広瀬氏は膨大な資料を分析した結果、同著で「原爆と原発は双子の悪魔」と断定している。これについては後ほど紹介したい。ただ、菊池氏も指摘しているように、この世に確かに「悪魔」は存在する。聖書では早くから、「悪魔=Satan」の存在を指摘し、ヨハネ福音書12章31節では悪魔を「この世の君(=主権者)」といい、コリント人への第二の手紙第4章4節では悪魔を「この世の神」と指摘している。

「悪魔」は存在する。賢明な日本国民は「悪魔の正体」を見破り、撃破していかなければならない。

 

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