新型コロナウイルスについて世界保健機構が正式に「パンデミック(世界的流行)」の宣言を出したことで、ニューヨーク株式市場や東京株式市場など世界各国の株式市場がパニックに陥っている。世界各国の政策当局は取り敢えず、市場に流動性を供給(金融機関から保有債権の中心である国債など金融商品を買い入れ、低利で企業に資金を貸し出せる状態にすること)して、金融・資本市場を安定させようとしているが、焼け石に水の状態。本サイトでも繰り返し主張しているように、財政政策の大胆な活用が必要だ。

昨日12日の米ニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルス感染に楽観的な発言をしていたトランプ大統領が、一転して前日夜に発表した欧州からの入国停止措置で経済活動の萎縮が広範囲に及ぶことなどへの懸念が強まり、主要企業でつくるダウ工業株30種平均が前日比2352・60ドル(9・99%)安の2万1200・62ドルで終わる戦後最大の暴落を喫した。

これを受け継いで、東京株式市場も暴落状態に見舞われ、午前の段階で早くも2016年11月以来約3年4ヶ月ぶりの1万7千円を割り込んだ。午前11時段階で前日終値比1万6373円。上海市場、香港市場も暴落ショックに見舞われており、世界同時株価暴落の症状だ。なお、午前の終値はやや戻して1万7000円台を回復し、17081.44円で取引を終えた。

3月13日午前の東京証券取引所。前場の終値はかろうじて1万7000円台を回復した。朝日ダルから

アベノミクスなるものを持ち上げて、消費税増税強行の悪影響はないと断言し、国民に嘘をついてきた日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁もさすがに12日、首相官邸で安倍晋三首相と会談後、「潤沢な流動性を市場に供給し、適切な資産買い入れを進めることで、マーケットや経済の安定に努める」と記者団に述べた。このことで、12日の東京株式市場は一時的に平均株価が反発したものの、金融政策に効果のある経済状態ではないから、すぐに下げの局面に転じ、13日の午前中はどんどん暴落が進んでいる。

欧州中央銀行(ECB)も市中国債を買い入れ、市中の金融機関に低利で資金を融通する1200億ユーロ(約14兆円程度)の、量的金融緩和政策を発表した。けれども、世界的な新型コロナウイルス感染拡大(パンデミック)の前には、効果は限定的で、はっきり言ってない。朝日新聞13日付3面によると、「オランダの金融大手『ING』のカーステン・ブルセキ氏は、『現状必要なのは、財政出動や税金の減免だ』」と財政政策発動の重要性を指摘している。

サイト管理者の見方では、減税は現段階では効果ははっきりいってない。それよりも、新型コロナウイルス感染拡大で休業せざるを得ない人たちへの休業補償に充てたほうがはるかに効果がある。また、これだけ民間企業の経済活動が萎縮している中では、民間企業に資金借り入れの需要は乏しい。こうなると、政府による大規模な財政出動が不可欠で、カーステン・ブルセキ氏の発言はこの意味だろう。

特に、日本では東京オリンピック開催問題が急浮上している。政府=安倍制限のコロナウイルス感染症対策の根本は、本サイトでも述べているように、オリンピック開催が最大の最上位の目標である。つまり「参加することに意義がある」と語った近代オリンピックの提唱者であるピエール・ド・クーベルタン男爵のオリンピックの理念(アマチュア精神、国際有効・親善の理念)は完全に失われている。現在のオリンピックは、国威発揚と国際大ビジネス事業の場と化し、「オリンピック利権」の確保が主たる目的になっているのが実情だ。つまり「人命よりカネが大事」の発想になっている。この発想を根本的に変える必要がある。

これに関して、朝日デジタルサイトがロイター通信に基づいて、「トランプ米大統領は12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京五輪について『1年程度延期すべきかもしれない』との考えを示した」と報道。同サイトは、これに慌てた安倍首相が菅義偉官房長官とともにトランプ大統領と電話会談を行い、途中まで同席した菅義偉官房長官が記者会見で、「安倍首相が五輪開催に向け引き続き努力する考えを伝えたと説明。トランプ氏からは『日本の透明性ある努力を評価する」との趣旨の返答があり、開催に向けて引き続き協力することで一致した』」と報じた。けれども、東京オリンピック、パラリンピックの開催について、日本オリンピック委員会(JOC)など関係機関や各国政府から異論が噴出し始めたことは確かである。新型コロナウイルス感染拡大に終息の兆しさえ見えない現状では、「中止」が妥当である。JOCはもちろん、日本政府、東京都など関連機関・政府・自治体が適切な対応をしなければ、中止ないし延期による損賠賠償さえできなくなる可能性がある。

どうしても開催強行するというのなら、政府は「新型コロナウイルス終息宣言」を出さなければならないが、新型コロナウイルス感染症対策本部、専門家会議が打ち出している対策が矛盾しており、その有効性が疑われる中、果たして可能なのか。政府=安倍政権が考えていると見られるのは、本日13日にも成立する「新型ウイルス感染症対策特別措置法改正案」に含まれている「緊急事態宣言」を発令し、隔離対策を徹底化することによって感染拡大の防止策を行い、その間に国民が免疫力を確保するシナリオだろう。しかし、対策本部や専門家会議の対策方法には矛盾が多い。そのシナリオが実現するのは不可能だ。

話をもとに戻し、それを前提として、➀37.5度以上の高熱が4日間(高齢者は2日間)以上続き、強い倦怠感の症状ある患者に限定しているPCR検査の基準を、少なくとも中程度以上の風邪の症状が出た国民(患者)がすぐにPCR検査を受けることが出来るようにする②検査の障害になっている「帰国者・接触者相談センター」(全国各地の地方自治体が管轄する保健所に設けられている)とか、検査機関を全国に1万1千ある医療機関のうち、660程度しかない「帰国者・接触者外来」を持つ医療機関に限定するなどの馬鹿げた検査障壁を撤廃する③国内感染者数をただしく把握し、症状の段階によって自宅待機から入院まで、各段階での妥当な対策を講じ、感染拡大防止に努める④新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の構成を改め、国民の生命と財産を守ることを主張している医療・感染症対策の専門家で構成し直し、民間の検査施設(少なくとも900機関)を積極的に活用する➄民間の検査ツールの開発への助成金の提供、検査施設の拡充、重症・重篤者のための病床確保に全力を尽くすための財政措置を行う⑥現金給付を柱とした国民の休業補償-などを行うべきだ。

これに並行して、自宅待機など休業、各国による外国人受け入れ制限の強化などによる国内経済活動の萎縮、国際貿易の縮小均衡などによる大幅な経済悪化に対処するための思い切った財政措置を講じるべきである。

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