朝日デジタルの2020年3月28日 19時57分の報道によると、安倍晋三首相は2020年度予算成立後の28日午後6時からの記者会見で、PCR検査の少なさを認めた。そのうえで、肺炎で亡くなられた方で、「肺炎で死去した人で新型コロナの感染が疑われる場合は、その後にPCR検査を実施しているという」。肺炎患者に対してはまずPCR検査などの検査を行い、治療方針を決めるというのが当たり前ではないか。PCR検査を抑制するという基本方針も考慮すれば全く、支離滅裂な「新型コロナウイルス感染防止対策」である。
NHKの2020年3月28日 17時21分の報道によると、同時点での28日の都内の新型コロナウイルス感染者は最大の63人、累計で362人だと言う。政府=安倍政権のPCR検査などの検査の抑制方針によっても、感染確認者はどんどん加速している状況であり、安倍首相も同日の記者会見で「長期戦を覚悟しなければならない」旨の発言をせざるを得なかった。また、小・中・高校の学校閉鎖の解除も見送ることを示唆した。
※追記29日午前6時52分:朝日デジタルが2020年3月29日 2時50分にサイトにアップした投稿記事によると、政府=安倍政権も認めたPCR検査抑制政策にもかかわらず、「首都圏を中心に不要不急の外出自粛が要請された28日、国内で1日の新型コロナウイルスの感染者数が初めて200人を超えた。前日の27日に初めて100人を超えたばかりだった。東京都で63人、千葉県で62人といずれも最多の数が確認され、大都市圏を中心に感染が急速に広がっている」。日本のさん大工業地帯の中核都市での感染拡大は、日本の経済社会に甚大な影響を及ぼす。
実際は、PCR検査を中心に各種の検査をすることは抑制されているから、軽度の発熱、だるさを訴え、病院での診察を受けた患者の中で、医師が検査が必要だと診断しても地方自治体に設けられた「帰国・接触相談センター」が検査を拒否されたものが相当数いると推測される。
併せて、あの「専門家会議」でさえ認めざるを得ないように、こうした軽症の患者もしくは重症の患者との接触により新型コロナウイルスに感染しており、PCR検査を行えば陽性と判定されるが、自覚症状がないためPCR検査を受けないため、感染確認者の中に入らない者も相当数いると考えられる。
双方合計した実際の感染者数はかなりの数に上り、すでに「感染者の爆発的増大(オーバーシュート)」が初期の段階から中期の段階に移行している可能性が高い。
全てにおいて、政府=安倍政権の「新型コロナウイルス対策」は支離滅裂である。政権に同調し、19日には「持ちこたえている」との判断を示した厚生労働省傘下の国立感染研究所の代表などからなる専門家会議の現状分析・提言も当てにならない。旧日本帝国陸海軍病院を前身に持ち、仁術を基本とする医師ではなく、研究者に過ぎないからだ。予算分捕りと研究データ蓄積が彼らの最大の狙いだからだ。
さて、朝日デジタルにアップされた午後20時13分の号外によると、「千葉県の障害福祉施設で職員と利用者の計57人が新型コロナウイルスに感染した」という。東京都の28日の感染者数も半分は、患者や医療従事者合わせて40人の感染が確認されている東京台東区の永寿総合病院の関係者だと言う。同病院は年間20万人の外来患者が訪れている地域の中核医療病院である。すでに外来患者の診察はストップしているので、28日に感染が確認された患者は、もともと入院患者や看護師、職員など大規模な感染が確認されていた感染者の関連者、つまり、入院患者の見舞い訪問の家族、他の看護師、他の職員、外来患者はもちろん医師も含めた方々のPCR検査で判明したのだろう。大規模院内感染が発生していることには疑いがない。早急に、病院・高齢者介護施設・障害者福祉施設を始め、感染が拡大しやすい機関でのPCR検査を実施することが必要だ。従来のPCR検査の手順を撤廃すべきだ。
日本全体が、東京都、大阪府、愛知県の三大工業地帯の大(だい)中核都市を中心に、「感染者の爆発的拡大(オーバーシュート)」の少なくとも初期段階に入っていると考えるべきだ。初期段階ではない可能性もある。こうした状況の下では、PCR検査その他の有効な検査を早急に実施し、症状に応じた適切な措置を講じるとともに、早急に大規模な財政出動を柱とした国民生活安定のための緊急経済対策を打ち出すべきだ。朝日デジタルによると、「安倍首相は記者会見で、経済対策を盛り込んだ新年度補正予算案については『できるだけ早期に国会に提出する』と述べた」そうだ。しかし、米国は上下両院で早期に2兆ドル(210兆円程度)の緊急経済対策を決定、実施段階に移行しているのとは対象的に、過去の実績から言って「決定・実施が遅すぎ、真水(建設並びに赤字国債の発行額)も少なすぎる」という「Too late, Too little」になる公算が大きい。
実際、政府=安倍政権は3月26日の月例経済報告では、それまでの「緩やかに回復している」旨の表現を削除し、「新型コロナウイルス感染症の影響により、足下で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」と遅すぎる事実上の景気後退宣言を行った。しかし、日本の景気は、政治・経済分析の第一人者である植草一秀氏の指摘によると、2018年10月の段階から後退局面入りしており「厳しい状況にある」のは基本的に、景気後退期の昨年10月に消費税増税を強行したことにある。昨年第4・四半期の実質経済成長率(国内総生産増加率)は年率換算7.1%のマイナスで、勤労者の給与や企業の利益が年間で40兆円程度も吹っ飛ぶ勢いでの経済規模の縮小をもたらした。
これに、コロナ・ショックが2009年のリーマン・ショックを上回る規模で追い打ちをかけたことが加わる。これらの過程を振り返れば景気対策のは基本は、➀消費税率のゼロ%への引き下げ②雇用の不安定な非正規労働者が全体の労働者の4割を超えている現状、国民の生活支援のための大規模な現金給付③雇用調整助成金に特例措置を設けること(労働基準法第12条に定める平均賃金ならびに同26条に定める休業補償の金額の適用を一時的に凍結し、休業補償を満額とすること)④手取り収入を少なくする社会保険料(社会保険税)の減免措置-として当然である。安倍首相自らが、「長期戦を覚悟しろ」との旨の発言を行ったのだから、これらは当然のことである。
そうしなければ、海外諸国と自主的に遮断した日本は新型コロナウイルス大恐慌を招来することになる。なお、世界の金融・資本市場は暴騰、暴落を重ねながら、基本的には暴落している。朝日デジタルの市況感によると、「世界での感染者が50万人を超えて増え続ける中、米国での感染者は中国を抜いて世界最多となった。外出制限や移動規制など感染拡大を防ぐ措置が長期化し、経済の停滞が想定以上に続きそうだとの見方が強まっている」ことから、今週末27日の米ニューヨーク株式市場は、同国での新型コロナウイルス感染急拡大への懸念などから、主要企業でつくるダウ工業株30種平均が一時1000ドル異常下がり、週末終値は前日比915・39ドル(4・06%)も急落し、2万1636・78ドルになった。
感染拡大を防ぐための外出・移動などの各種制限が長期化するとの見方は、新型コロナウイルス感染の終息までには、長期間の時間がかかることを意味している。こういう状況のもとで、来年春に東京お輪ビックを開催する声が強まっているというのは、やらせ発言としか思えない。年内に新型コロナウイルス感染拡大が終息している医学的・科学的根拠はあるのだろうか。