ゴーン元会長の大逃亡劇の発覚、イスラム革命防衛隊司令官の米国による殺害で幕開けた新年

2020年はゴーン元会長の大逃亡劇の発覚、イスラム革命防衛隊司令官の米国による殺害で幕開けたが、カジノを含む統合型リゾート(IR)進出を目論む中国企業による現職国会議員への贈収賄疑獄も年末年始に発覚、日本の経済不況も深刻化している。新年は解散・総選挙を含む激動の年になる。

ゴーン元会長の大逃亡劇についてはさまざまな見方が錯綜しており、真相は明確でない。ただし、➀東京地方裁判所と交わした保釈条件(海外に逃亡しないことなど)を完全に破っていること②出入国管理法違反であること(出国したことが出入国管理当局のデータベースに登録されていない)-は間違いない。

これらの犯罪行為を、ゴーン元会長を四六時中監視しているはずの東京地方検察庁はもちろん東京地方裁判所のが見逃したわけで、その失態と責任は重大である。東京地検・地裁の長をはじめ、関係者の処分はすぐにではないにしても、必須である。

朝日デジタルによると、東京地方検察庁は斎藤隆博・次席検事の名前で次のような声明文を発表している。
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今般、被告人カルロス・ゴーン・ビシャラが、保釈の指定条件として、逃げ隠れしてはならない、海外渡航をしてはならないと定められていたにもかかわらず、正規の手続きを経ないで出国し、逃亡したことは、我が国の司法手続きを殊更に無視したものであるとともに、犯罪に当たり得る行為であって、誠に遺憾である。

我が国の憲法及び刑事訴訟法においては、例えば、被疑者の勾留は、厳格な司法審査を経て法定の期間に限って許されるなど、個人の基本的人権を保障しつつ、事案の真相を明らかにするために、適正な手続きが定められている。また、我が国においては、全ての被告人に、公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利を保障しており、検察官によって有罪であることにつき合理的な疑いをいれない程度の立証がなされない限り、被告人を有罪としてはならないこととされている。そして、検察においても、法廷において合理的な疑いを超えて立証できると判断した場合に限り、被疑者を起訴している。その結果として、我が国においては、有罪率が高くなってはいるものの、裁判所は、被告人側にも十分な主張立証をさせた上で、独立した立場から、公判に提出された証拠に基づき、合理的な疑いを超えて有罪が立証されたかを厳密に判断しており、公正な裁判が行われていることに疑いはないと確信している。

本件において、検察は、法に定められた適正手続きを厳格に履行し、被告人ゴーンの権利を十分に保障しつつ、捜査・公判手続きを進めてきたものである。被告人ゴーンは、豊富な資金力と多数の海外拠点を持ち、逃亡が容易であったこと、国内外で多様な人脈と大きな影響力を持ち、事件関係者などに働きかけ、罪証隠滅する現実的な危険性があったこと、裁判官、裁判所も保釈に関する決定中で認定しているとおり、当初の勾留期間中に妻などを介して事件関係者に対する働きかけを企図していたことから、公正かつ適正に刑事手続きを進める上で、被告人ゴーンを勾留することは必要やむを得ないものであった。

かかる事情が存在したにもかかわらず、被告人ゴーンは、公判審理に向けた主張と証拠の整理を適切かつ円滑に行うためには、弁護人らとの間で十分な打ち合わせの機会を設ける必要性が高いなどの理由で保釈を許可され、昨年4月25日に保釈された後は、弁護人らと自由に連絡し、公判準備を行うことが可能な状態にあったことに加え、検察は、公正かつ適正な刑事裁判を実現すべく、法に定められた手続きに基づき、被告人ゴーンの弁護人に証拠を開示するなどの公判活動を行ってきており、被告人の権利が十分に保障されていたことは明らかである。

このような状況の下で、被告人ゴーンが、必ず出頭するとの誓約を自ら破り、国外に逃亡したのは、我が国の裁判所による審判に服することを嫌い、自らの犯罪に対する刑罰から逃れようとしたというにすぎず、その行為が正当化される余地はない。

検察においては、関係機関と連携して、迅速かつ適正に捜査を行い、被告人ゴーンの逃亡の経緯等を明らかにし、適切に対処する所存である。
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しかし、ゴーン元会長を日本に連れ戻すことは困難である。日本は国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)にゴーン氏に対する国際手配を要請しているが、ゴーン氏はレバノン国籍を有しているうえ、日本とレバノンは身柄引き渡し協定を結んでいない(締結しているのは米国と韓国のみ)。レバノン政府としてはゴーン元会長に有利なように行動すると思われるから、ゴーン被告が刑事裁判から逃れ、➀金融商品取引法違反②会社法違反(特別背任罪)③出入国管理法違反-の疑いがうやむやにされる恐れは強い。

日本の刑事・司法制度の重大な汚点になり得る。なお、上記の東京地方検察庁の斎藤隆博・次席検事の声明文はデタラメである。日本の検察・警察および司法制度は腐りきっており、「上級国民」は犯罪行為を犯しても起訴はもちろん逮捕もされない。「下級国民」に対しては、無実であっても犯罪を捏造し、犯罪人に仕立て上げる前近代的性格が根本である。もとを正せば、立憲民主党が問題にしているように日本国憲法に「最高裁判所長官は内閣総理大臣が任命する」との条項があり、司法は行政に従属しているからである。三権分立が徹底されていない国家を民主主義国家とするわけには行かない。

次に、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官による米国(直接的にはトランプ大統領)の国家殺害は、政権内でも驚きの事実であり、イラン政府はロシアと中国を後ろ盾に徹底的報復をすると言明しており、それが現実のものになった場合、米国のブッシュ政権はイラン国内外の52箇所を報復攻撃をするとしており、米国・イランの対立が本格的にエスカレートする。米国とイランの仲介役を買って出た安倍晋三首相は何も出来ないだろう。

最重要統計である、昨年12月16日に発表された日銀の短期経済観測調査(日銀短観)によると製造業の場合、大企業の業況判断DI(良いとする企業から悪いとする企業を差し引き全企業数で除した数値)はプラスマイナス0だが、中小企業では マイナス9、先行き見通しはマイナス12に落ち込んでいる。 非製造業は全体として20とまだ好調だが前期に比べて1ポイント悪化しており、小売業では大企業でもマイナス3、中小企業 ではマイナス12を記録した。

景況の悪化する中、消費税を強行増税したとがめが本格化しているのである。消費税増税が社会保障支出のためというのは真っ赤な嘘で、税理士の研究会である「不公平税制をただす会」によると消費税が導入された1989年度から2019年度までの31年間の税収推移 を見ると消費税収累計が397兆円である。 これに対して、国税である法人税、地方税である法人事業税、法人住民税の法人3税減収累計額が298兆円、所得税・住民税減収が275兆円だ。 消費税収累計額397兆円に対して法人3税および所得税・住民税減収累計額 合計値は573兆円に達する。

要するに、消費税制度は税制の基本原則である応能原則を破壊し、経済社会の安定に必要な税収の再配分を、高所得層と利益を上げている企業に逆再配分し、中間層を崩壊させてきたのである。制度から見ても、➀税引き後の手取りに課税する二重課税である②実際に納税する主体の企業は、消費税を価格に転嫁できない中小企業を含め、赤字企業であっても代理納税しなければならず、詳細に検討してみれば憲法違反(財産権の保証など)の恐れが強い-税制である。

消費税制度が導入された平成の時代、日本の経済成長が止まり、税収が増えず、国内総生産および1人当たりの国内総生産の世界ランキングがどんどん低下するとともに、中間所得層が没落したのも消費税制度のためである。

こうした状況の中、立憲民主党と国民民主党が合流を目指して枝野幸男代表と玉木雄一郎代表がトップ会談を行うことになっているが、旧民主党が分裂した総括を行わないで、「数」の力で合流しようとしていることは大きな問題である。電力総連などの力が強く、原発再稼働やさらなる消費税増税を主張し、自公政権を支持してきた御用組合でしかない日本労働組合総連合会(連合)の強い影響力を跳ね除けるだけの意思力がなければならない。

これに関して、1月5日付の朝日新聞の社説は「立憲・国民両党は次の総選挙をにらみ、合流に向けた協議を続けている。ただ、『元のさや』に収まるだけの数合わせでは、国民の期待を引き寄せることはできまい。自公政権では実現できぬ社会像を示し、政治に失望した人々をも振り向かせる力強いメッセージを発することができるか否かが鍵となろう」と述べてある。

朝日、読売、毎日、産経、日経の全国新聞社、地方中核新聞社(北海道、中日、西日本新聞のブロック紙)、地方新聞に記事を配信する共同および時事通信社に加え、全国新聞社と同系列の日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、東京テレビのキー放送局に自公政権が監視し、忖度するNHKを併せた16社によって日本の言論空間は支配されている。日本の言論機関は朝日、東京の二社がかろうじてリベラルだが、自公政権に対しては守旧派の限界を超えることはない。その朝日ですら、上のような社説を掲載したことは重要である。

多難な新年は、野党と称される政党内の守旧派を見抜いて排除し、真の民主主義を志向する革新派と真性の社会主義を志向するリベラルな国民・市民が政策連合を形成、新古典派新自由主義を理論的・政策的に超克して行かなければならない。上からの民主主義というのは形容矛盾の何者でもない。戦前の自由民権運動と大正デモクラシーの教訓を生かした、真性の民主主義革命を起こしていかなければならない。

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