梶田日本学術会議会長と菅首相会談も首相「任命拒否」理由説明せずー首相強硬路線に自公内では危機感

菅首相が今月10月9日のグループ記者インタビューで「日本学術会議会長が会いたいというのなら会う」と発言していたことを受け、昨日の10月16日金曜日、梶田隆章日本学術会議(以後、会議)会長が菅義偉首相と会い、同会長が推薦名簿掲載の6人の人文・社会科学者の任命を拒否した理由と速やかな任命を求める要望書を手渡したが、首相は応じなかった。17日付東京新聞によると首相の強硬姿勢に自公与党内部に危惧が広まっているようだ。

10月17日土曜日コロナ感染状況

10月17日土曜日の新型コロナ感染者数は、東京では前週10月10日土曜日の249人より14人少ない235人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)、厚生労働省基準より少なくなる東京都基準の重症者は前日比2人減の23人だった。国内では午後22時の時点で624人の感染者と 6人の死亡者が確認されている。
東京都のモニタリング指標は16日には午後23時20分ころにサイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)に公開された。7日移動平均での感染者数は181.4人、PCR検査人数は3801.3件だから、瞬間陽性率は4.77%。東京都独自の計算方式では4.0%。感染経路不明率は56.17%。ただし、公開時刻は10月17日 19:15 JSTとなっていた。東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1016日時点の実効再生産数は東京都が前日比0.02人減少の1.08人、全国が同0.01人増加の1.06人。感染拡大が下げ止まりから反転増加の傾向にあるか、もう少し慎重な見極めが必要だと思われる。

会議は要望書を3日に首相側に送っており、それと同等のものと思われる(https://www.it-ishin.com/wp-content/uploads/2020/10/siryo301-youbou.pdf)。各種報道によると、梶田会長は挨拶もかねて菅首相と会い会談時間も短かったので突っ込んだ議論には至らず、それを利用して菅首相は会議が「日本の社会に役立つようにして欲しい」と要請し、井上信治科学技術担当相を見直し作業を進めることで合意したという。

日本学術会議、要望書決定
日本学術会議、要望書決定
菅義偉首相と会談した後、記者会見に答える日本学術会議の森田隆章会長
菅義偉首相と会談した後、記者会見に答える日本学術会議の森田隆章会長(時事通信社のhttps://www.jiji.com/jc/article?k=2020101600805&g=pol&p=20201016at53S&rel=pv)より

加藤勝信官房長官は16日の記者会見で「既に任命(問題)は終わっている」としたことから、梶田会長は「要望書に従っていただけるなら(見直し作業に)合意する」と条件をつけ、論点・争点ずらしには応じないようにすべきだった。人文科学者・社会科学者・自然科学者など学者の「国会」とも位置づけられている日本学術会議の会長としては、迫力に欠ける点は否めない。ただし、会談後の記者会見で井上会長は6人の任命については「総会の決議なので、変更はない」と語ったという。上記の要望書の内容は次のようなものである。
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第25期新規会員任命に関する要望書
令和2年10月2日
内閣総理大臣 菅 義偉 殿
日本学術会議第181回総会

第25期新規会員任命に関して、次の2点を要望する。

1.2020年9月30日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。

2.2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい。
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一応、決定的な対立は避けたとも考えられるが、菅首相・政権は安倍晋三前首相・政権よりも政権批判を誰にも許さない警察独裁国家体制の樹立を爆進しているから、日本学術会議会長と会議自体が菅首相・政権との対立を深め、真実を明らかにし、正義を実現していく必要があろう。そうしなければ、国民全体の基本的人権(信仰・思想・信条の自由、集会・結社の自由)が奪われていくことになる。

首相側の説明は、日本の警察官僚。内閣官房副長官兼内閣人事局長。神奈川県警察本部長や内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監なども歴任した官僚トップの杉田和博内閣副長官が実質的に「菅政権にとって有害な」6人の学者の任命を拒否し、菅首相に進言した疑いが極めて濃厚である。もしそうならば、国民によって選定されたわけではない官僚が実質的に特別国家公務員である会議の会員の任命を拒否したわけだから、日本国憲法第15条第1項の「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」、第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」に完全に違反し、憲法違反は明らかである。

また、会議の会長と会員に知らされず、総会の了承もないまま、内閣府学術会議事務局が2018年11月13日に作成され、今回の6人の任命を拒否した法的根拠になったと言われる文書に、「公文書偽造」の疑惑が出ていることは本サイトで既に述べている。文書の核心部分は「憲法第 15 条第 1 項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、 会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものでなければならないことからすれば、 内閣総理大臣に、 日学法第 17 条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」である。

この日本学術会議会員任命拒否問題は、内閣府事務局文書の作成の経緯も含めて、臨時国会で野党側が徹底的に追及しなければならない重大事案である。首相官邸側は追及をかわすために会議の在り方に問題をすり替え、しかも、会議を私物化することに注力しており、極めて強硬な態度を取っている。

まず、官邸の側近には既に述べた内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監なども歴任した官僚トップの杉田和博内閣官房長官を置き、事実上の日本最大の防諜機関である国家安全保障局(NSS)の局長には1980年4月、警察庁に入庁し、同期に、第26代警察庁長官の坂口正芳、第92代警視総監の高橋清孝がいる警察官僚の北村滋氏を再任、新閣僚である武田良太総務相(自民党衆議院議員、小選挙区福岡11区、志帥会=二階派)と平沢勝栄復興相(同、東京17区、同)の2人もまた、警察官僚とつながりが深い人物である。デジタル庁新設も、こうした側近布陣との関連において捉える必要がある(https://biz-journal.jp/2020/09/post_180025.html参照。デモクラシータイムズの「山田厚史の週ナカ生ニュース」https://www.youtube.com/watch?v=pX5JG8bt9Uwも参考になる)。

警察畑官僚と国会議員を側近に置き、政商や理論が破綻しているリフレ派を民間から参与などに起用した菅首相
警察畑官僚と国会議員を側近に置き、政商や理論が破綻しているリフレ派を民間から参与などに起用した菅首相

起用した民間人には政商・学商であり、国家戦略特別区の創設など利権絡みの構造改革推進の音頭を取ってきた竹中平蔵パソナ会長・東洋大学教授、中小企業庁法の「改正=改悪」による中小企業つぶしを狙い、地銀再編という名の「地銀解体・地方経済の破壊」を狙っているゴールドマン・サックス(別名ガバメンタル・サックス)出身の金融アナリストであるデービード・アトキンソン氏、量的金融緩和を主張しバブルとその崩壊の種をまき、竹中平蔵パソナ会長や日本維新の会/大阪維新の会の中心人物である橋下徹元大阪府知事などとも関係の深い高橋洋一嘉悦大学教授らがいる。

なお、リフレ派の量的金融政策は「インフレ率2%の引き上げ」が大義名分だが、結果的に見て実質的な狙いは直接的には債券価格、株式価格、地価(不動産投資)を引き上げるとともに、為替相場を円安に誘導することで外国人観光客の増加、カジノを含む統合型リゾート(IR)=カジノ業者を誘致することにある。積極財政は否定したから民間経済の二大エンジンである家計消費と設備投資は凍てついたままになり、経済成長が出来るどころか20年以上の長期デフレ不況が続く結果になった。債券価格や株式価格の上昇はやはりバブルであり、崩壊を懸念しなければならなくなっている。既に地価は下落に転じている。福岡県福岡市に拠点を持つブロック紙の西日本新聞は、「国土交通省が発表した今年7月1日時点の基準地価では、全用途の全国平均が3年ぶりに下落し、商業地の全国平均も5年ぶりに下落した。昨年、バブル経済の崩壊以来28年ぶりに上昇に転じた地方圏の商業地も再びマイナスに沈んだ」(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/649650/)と伝えている。

今回の日本学術会議会員任命拒否事案を通じて、警察独裁国家を爆進しつつある菅首相だが、独走に強い警戒感も出ている。東京新聞2面の特集機(東京Webではhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/62370?rct=main)によると、自公与党内では次のような記事が掲載されている。
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自民党幹部は「国民の反感は強い。内閣支持率は40%ぐらいまでアッという間に下がる」と危惧。閣僚経験者は「早々に謝って任命拒否を撤回すべきだった。日に日に収拾がつかなくなっている」と頭を抱える。より危機感を募らせるのは、憲法へのこだわりが強い公明党だ。関係者によると、任命拒否が明るみに出た後、山口那津男代表ら幹部は首相に「慎重に考えた方がいい」と重ねて忠告した。しかし、対応は変わらず、むしろ混乱は拡大。ベテラン議員は「憲法は学問の自由を保障している。首相や官邸が価値判断して『この人はダメだ』と言ってはいけない」と批判する。
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臨時国会前に真正野党側は政権構想を国民の前に提示するなど解散・総選挙の準備をしたうえで、今回の日学会員任命拒否問題を徹底的に追及しなければ、日本の国民の生存権や経済社会の再建は不可能になる。ただし、立憲民主党の枝野幸男代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長の弱腰ラインが気になるところだ。もっとも、11月1日投開票の「大阪都構想=政令都市である大阪市廃止し、4つの特別区に再編する構想=大阪市の財源をカツアゲする構想」の可否を決める住民投票で反対派の勢いが強まっている。

もし、「大阪都構想」が否決されれば、維新の勢いがストップし、公明党とのパイプが強く、維新との蜜月関係で支えられている菅首相には打撃になる。このため、菅首相の依頼で公明党の山口那津男代表が反対派が強くなってきている創価学会をまとめるため、大阪市を訪問、応援演説を行う。住民投票の結果が、菅政権を大きく左右する。また、自民党内では菅グループ。二階派、他派閥の間に少しずつ亀裂が入りつつあるとの観測もある。さらには、新型コロナウイルス感染拡大が現実のものになれば、菅政権の運命を左右することも大いにあり得る。



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