日本学術会議会員任命拒否で菅内閣支持率、急落ー朝日新聞社、共同通信社の世論調査で

朝日新聞社と共同通信社が10月17日、18日に行った世論調査で菅内閣の支持率が急落していることが19日付の朝日新聞、東京新聞で明らかになった。共同通信では内閣支持率は9月に比べ5.9ポイント低下したが、朝日新聞では12ポイントも急落している。日本学術会議(以下、会議)会員の任命拒否事案が影響している。ただし、内閣史実率はなお50%を上回っており、一部の識者の間で指摘されている菅政権が警察独裁国家を爆進していることへの警戒感はほとんど見られない。なお、東京新聞18日付3綿生地によると、政府の総合科学技術会議の下に設置された有識者の専門調査会は2003年、行政改革の一環で意見書をまとめ「学術会議は総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められる」と提言したが、「政府の任命拒否は想定していなかった」と明言したという。2018年11月13日に内閣府日本会議事務局が作成したという文書は有識者会議の提言趣旨とも異なっており、「虚偽公文書」作成の可能性も含めて文書作成の経緯を徹底的に 調査すべきだ。

10月19日月曜日コロナ感染状況

10月19日月曜日の新型コロナウイルス感染状況は、東京では前週12日月曜日と変わらず78人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。重症患者数は前日と変わらず24人。全国では318人の感染者と2人の死亡者が確認されている。東京都のモニタリング指標は(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)7日移動平均での感染者数は179..4人、PCR検査人数は4117.9件だから、瞬間陽性率は4.36%。東京都独自の計算方式では3.6%。感染経路不明率は55.74%。東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1018日時点の実効再生産数は東京都が前日比0.04人減少の1.01人、全国が同日比かわらずの1.02人。

朝日新聞社、共同通信者が17日土曜日、18日日曜日に行った両者の世論調査の主要部分の結果を簡単な票にまとめてみる。

朝日新聞、共同通信ンが17,18日の両日に行った世論調査の結果
朝日新聞、共同通信ンが17,18日の両日に行った世論調査の結果

この結果を見てみてみると、やはり、会議による推薦名簿のうち政府に批判的な論文、著書を執筆している6人の人文・社会科学者6人を拒否したことが、菅内閣の支持率の急落を招いていることが分かる。朝日新聞19日付1面(朝日デジタルはhttps://digital.asahi.com/articles/ASNBL6H5CNBLUZPS001.html?iref=comtop_7_04)でもつぎのような図を示している。

上図の朝日新聞の世論調査では任命拒否が「妥当だ」、「妥当ではない」がやや拮抗しているところには疑問は残る。それはそれとして、菅首相の今回の事案に対する説明不足に賛成する声が圧倒的に多いのは、菅首相の一連のグループ記者会見で、神奈川県警察本部長や内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監なども歴任などを歴任した警察官僚出身で国家官僚トップの杉田和博内閣官房長官の説明に基づいて任命を拒否した疑いが濃厚になっていることが、原因だろう。

さて、より問題なのは東京新聞が共同電として19日付3面で報道した、政府の総合科学学術会議の下に設置された有識者専門会議が「政府の任命拒否」を想定していなかったとする記事(東京Webでは、https://www.tokyo-np.co.jp/article/62686?rct=mainで報道されている)だ。少し長くなるが、重要なので引用させて頂きたい。

============================================================================
政府の総合科学技術会議の下に設置された有識者の専門調査会は2003年、行政改革の一環で意見書をまとめ「学術会議は総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められる」と指摘した。
委員を務めた有識者は、会員の選考方法が当時の大きな課題だったとした上で「政府の任命拒否は想定していなかった」と明言。従来は個別の学会などの推薦を基に会員を選んでいたが、2003年の意見書を踏まえ「学術会議が自ら最善と考える人を選ぶ形になった」と述べ、一定の改善が図られたとの認識を示した。
2015年には、内閣府が設けた別の有識者委が報告書をまとめた。学術会議の会員は「専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点で向き合う人材が望ましい」とした。

座長を務めた京都芸術大の尾池和夫学長は「推薦のまま首相が任命するのが当然と思っていたので(任命拒否は)議論しなかった。今回、政府が自動的に任命しなかったのは法律違反だ。政府がコントロールしてはいけない」と指摘した。他の複数の委員も、人事介入の想定はなかったと証言。名古屋大の隠岐さや香教授は「当時はそういう心配はなく、業績以外の基準で候補が落とされることはないだろうと認識していた。今回は異様なことが行われたと捉えている」と述べた。
============================================================================

時系列的にまとめると、次のようになる。

2003年 日本学術会議は「総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められる」との意見書を政府=安倍晋三内閣(当時)に提出。
2015年 日本学術会議には「専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な観点で向き合う人材が望ましい」
突起 有識者会でも会議が推薦した会員候補の「任命拒否は想定せず」。政府側は2018年11月13日の内閣府会議事務局が作成したとされる文書で、日本学術会議法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」として、会議推薦名簿の名から実質的に任命を拒否できる権限があるとした。

有識者会議なるものは、時の政府(狭い意味では内閣)の主張・政策にお墨付きを與えるもので、有識者会議を通して会議に「総合的・不貫徹な活動」を要求していることが分かる。しかし、「総合的・俯瞰的」という言葉の実態が不明だ。「俯瞰的」というのは一般的には、「物事を一段高い観点から俯瞰するように、大局的・客観的に捉えること」(https://www.weblio.jp/content/%E4%BF%AF%E7%9E%B0%E7%9A%84)である。

「一段階高い観点」とは本来は、日本国および日本国民のためと言うのが普通の解釈だろう。しかし、「科学者の国会」とも言われる会議の会員がそのような観点を持ち合わせていないことはないだろう。国会議員の本来の義務・仕事は、憲法第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」、憲法15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」で定められているように、本来は日本国および日本国民のためになされることと同じであり、そのことが国会議員としての暗黙の資格であるのと同じだ。

しかし、政府=菅政権側が有識者会議の意見書で述べられた「総合的・俯瞰的」という「錦の御旗」の言葉を連発するのは、ほかに狙いがあると考えられる。それは、会議(の会員)が日本国・日本国民の立場に立って諮問に東進したり、意見書を陳述しても、それが政府=安倍、菅政権の政策目的に反するものであれば、そのような会議の会員は排除するという意味であろう。この点は、法政大学法学部政治学科の山口二郎教授のツイートに応えたヤフー・ニュースの次の投稿記事も指摘しているところだ(https://news.yahoo.co.jp/articles/3d5271b7e2cb2b58f1c70c24dc0c212fd36266de)。この点については、任命を拒否された6人の人文・社会科学者の名簿を見れば良く分かる(https://www.chunichi.co.jp/article/130308)。

日本学術会議会員に任命されなかった6人
日本学術会議会員に任命されなかった6人

政府=安倍、菅政権の御用学者ではなくて、正論を流布している人文・社会科学者たちばかりである。この6人は「見せしめ」と考えられる。ここまでは、既に本サイトでも論じたところだが、本投稿記事でより問題にしたいことは、政府の総合科学技術会議の下に設置された有識者の専門調査会議(有識者会議)でさえ、座長を務めた京都芸術大の尾池和夫学長が有識者会議のメンバーを代表して、「推薦のまま首相が任命するのが当然と思っていたので(任命拒否は)議論しなかった。今回、政府が自動的に任命しなかったのは法律違反だ。(日本学出会議を)政府がコントロールしてはいけない」述べていることだ。

この点からも、2018年(平成30年)11月13日に内閣府日本学術会議事務局が作成したと言われる「日本学術会議第17条による推薦と内閣総理大臣による任命との関係について」と題する怪文書(https://www.it-ishin.com/wp-content/uploads/2020/10/siryo301-youbou.pdf)の作成の経緯の解明が不可欠だ。この文書は従来の日学法の第7条、17条に反する結論を下しており、既に当サイトで述べたように会議事務局名で国会閉会中審査で開かれた衆参の内閣委員会に提出されているが、事務局レベルで作成できるものではない。憲法15条では公務員は国民が選定・罷免する権利が定められており、国会で十二分に審議されなければならない。また、この怪文書は当時の日本学術会議会長や会員にも知らされておらず、総会でも承認されていない。とすれば、ますます「公文書偽造」に該当する可能性が濃厚になってくる。

野党側は腹を固めて、会議会員拒否の重大事案を臨時国会で追及しなければならない。なお、会議の予算はギリギリの状態(https://www.tokyo-np.co.jp/article/60927)。



この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう