英国で変異したコロナウイルスについての中間まとめと政局(追記:安倍前首相任意聴取済み)

ブルームバーグ通信の配信記事(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-21/QLOPCAT0G1KW01)によると、英国で今年の9月に変異して感染が拡大している新型コロナウイスルについて、欧米諸国は警戒体制に入っている。日本では政府=菅義偉政権の加藤勝信官房長官が「日本では英国での変異ウイルスは確認されていない」と発言しているが、空港での防疫体制をくぐり抜け、既に日本に「上陸」している可能性があると指摘する専門家も存在する。少なくとも「日本上陸」を前提としたコロナ禍対策を講じなければならない。

12月22日月曜日コロナ感染状況

本日12月22日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都は新規感染確認者は1週間前の12月15日火曜日の460人より103人多い火曜日としては、初の500人台と過去最多の563人、東京都基準の重症者は前日比1人増加の64人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は630.0人、PCR検査人数は7440.1.人だから、瞬間陽性率は8.25%。東京都独自の計算方式でも7.3%。感染者のうち感染経路不明率は59.89%だった。ステージ3/4の陽性率は10%。いずれの「公式公表値」も悪化傾向が続いている。推定瞬間陽性率も8%超えており、新規感染者数と医療体制に強い懸念が続いている。東京都医師会の尾崎治夫会長は「通常診療がだめになる瀬戸際でラストチャンスだ」と強い危機感を示した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201222/k10012778561000.html
全国では午後23時59分の時点で、2688人の新規感染が確認され、死亡者は48人になっている。重症者は前日比17人増加して620人になっている。国内の死者数は内国船になった豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号での死者を含めると3006人に達し、3000人を超えた。
政府=菅義偉政権は感染拡大を食い止めるため、改正インフル特措法に営業活動自粛強制条項を盛り込もうとしているが、補償なき営業活動の自粛強制は日本国憲法第29条1項「財産権は、これを侵してはならない」、第3項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」に違反する。改正インフル特措法を強制力を持つようにさらに改正するなら、「営業活動自粛強制と休業補償」をセットで盛り込まなければならない。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、12月21日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減少の1.03人、東京都では前日比0.01人増加の1.15人となっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

【追記】安倍晋三前首相が「桜を見る会前夜祭」で21日、東京地検特捜部から任意聴取を受けていたようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201222/k10012777111000.html)。簡易裁判所の判断次第だが、安倍後援会事務所の代表兼会計責任者の政治資金規正法違反での略式起訴と罰金で法的には決着になる見通しになった。ただし、100回を超える衆院での無責任な虚偽答弁を追及し、政治家としてのけじめをつけなければならない。取りあえずは、国会喚問の方法をめぐり、自民党内部で菅・二階グループの半グレ派(原意は暴力団に所属せずに犯罪を行う集団)と「正統」派閥の対立抗争が行われているが、党内抗争は今後とも続くと見られる。なお、検察庁も含めて桜事案は国民の批判を浴びることは間違いない。

最初にNHKが本日12月22日の午前8時16分に公開した「変異した新型コロナウイルス イギリスで混乱広がる」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201222/k10012776981000.html)と題する投稿記事から欧州各国の現状と対応策について引用させて頂きたい。

英国で変異した新型コロナウイルス
英国で変異した新型コロナウイルス

イギリスでは感染力が強いとされる、変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国がイギリスから旅客機の受け入れを停止するなどの措置をとっているほか、フランスは、物流の大動脈であるドーバー海峡を経由するトラックなどを含むイギリスからの入国を21日から停止しました(中略)。

世界40の国と地域でイギリスからの航空便受け入れ停止
イギリスで変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、公共放送BBCは、ヨーロッパをはじめ、世界40の国と地域でイギリスからの航空便の受け入れを停止するなどの措置がとられていると伝えています。(中略)

アメリカNY州知事「歴史を繰り返してはいけない」
イギリスで変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、アメリカ東部ニューヨーク州のクオモ知事は、ツイッターに「変異した新型ウイルスによって歴史を繰り返してはいけない」と投稿しました。(中略)

フランス EU加盟各国が共通した対策や対応打ち出すよう求める
ドーバー海峡を挟んでイギリスとの大陸側の玄関口となっているフランスは、EU加盟各国が共通した対策や対応をすみやかに打ち出すことを求めています。(中略)

このため、イギリスからの物流などを再開させるためには、EU加盟各国が共通した感染症対策や対応をすみやかに打ち出すことを求めていて、各国は21日、イギリスからEU域内への渡航や感染対策について協議しました。

この中で、共通の対応を取ることが重要だという認識では一致しましたが、結論は出ませんでした。

との現状だ。欧米でのコロナ第二波の襲来は、夏のバカンスでスペインを訪問した観光客がスペイン型に変異したウイルスに無症状感染し、冬の到来で新型コロナウイルスの活動期に入ったことにより引き起こされていると見られているが、ここにきてさらに英国型に変異した新型コロナウイルスの感染が本格化したことで、事態はより深刻になった。英国型ウイルスの問題点は➀いつ英国型に変異したのか②感染力の強さ(実効再生産数の大きさ)③新型コロナ感染症(Covid-19)の重症化をより強く引き起こすか➃英国から接種が始まったmRNA新型ワクチンががなお効くのか⑤新型ワクチンとの相関性ーなどだ。



まず、第一の英国での変異時期だが、ブルームバーグの最新の配信記事(日本時間22日午前1時30分公開、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-21/QLOPCAT0G1KW01)によると、「最も早い時期で9月後半にロンドンに加え、隣接するケント州で2つのサンプルが採取されていたことが分かっており、12月初めまで発見は続いていた。この変異種が流行した理由の一つは、家族など人との交流が増える時期に出現したことだろう。科学者らは、慢性的な感染者からこの変異種が拡散された可能性があるとの仮説を立てている」という。これが事実なら、普通に考えると新型ワクチンと英国型ウイルスの発生に相関関係はないということになる。

第二の感染力の強さと第三の重症化させる度合いについてだが、ヤフーー・ニュースへの配信記事から引用させていただく。

英国で変異した新型コロナウイルス
英国で変異した新型コロナウイルス

1:これまでの新型コロナウイルスとは何が違う?

英国のボリス・ジョンソン首相は12月19日の会見で、諮問グループの分析として「R値(実行実効再生産数)を0.4ポイント以上引き上げる可能性がある」とし、「かなり不確実性はあるが、従来よりも最大70%感染しやすいようだ」と説明している。(中略)

2:症状は重くなった?

ジョンソン英首相は12月19日の会見で「まだ多くの不明点がある」とした上で、「より致命的なものか、より重篤な病気を引き起こすかということを示唆する証拠はない」と述べている。

ただし、ジョンソン首相の重症化させる程度については証拠が示されていない。これについては、ブルームバーグは新型ワクチンの効果も含めて次のように指摘している。

1.この変異種がなぜ警戒されているのか
この変異種「B.1.1.7」は昨年末に中国の武漢で発生したウイルスから約10回の変異を経ており、感染力などウイルスの主な部分が変化している。英国の暫定的な分析によると、この変異種は流行している他の新型コロナウイルスに比べて感染力が70%余り強い恐れがあり、同国で感染者が急増している原因となっているかもしれない。世界保健機関(WHO)はこの変異種について、感染力や重症化の確率、ワクチンの効果などを調べていると明らかにした。(中略)

4.ワクチンは依然有効なのか
この変異種が感染やワクチンで得られた免疫反応から逃れられるだけの進化を遂げたかについては現時点で判明しておらず、研究が続いている。WHOのマリア・ファン・ケルクホーフェ氏はBBCに対し、現時点の情報では現在展開中のワクチンの有効性がこの変異種で変わることはないと示唆されていると語った。季節性インフルエンザのように毎年変異するウイルスであればワクチンもそれに応じて調整する必要があるが、コロナウイルスはインフルエンザとは異なり、ウイルスが複製時のミスを修復する校正機能を備えている。このためインフルエンザほど速く変異はしないと考えられている。これまでに有効性が証明されたワクチンは、必要に応じて容易に修正することが可能だと、医学誌BMJは16日に伝えた。

ジョンソン英国首相や世界保健機構(WHO)などでは一応、新型ワクチンは英国型コロナウイルスに対しても安全性と有効性は維持されるとの見解を表明しているが、実際のところは「この変異種が感染やワクチンで得られた免疫反応から逃れられるだけの進化を遂げたかについては現時点で判明しておらず、研究が続いている」という段階だ。明確になっているのは、従来の(変異タイプも含めて)新型コロナウイルスの感染力が従来型より7割程度強いということだ。英国では新型ワクチンの接種は開始しているから、同国での感染拡大の状況を追跡すれば感染のある程度の全貌、新型ワクチンの効能が明確になってくる。

ただし、英国は既に欧州諸国から締め出しを食らっている状況だから、EUから離脱したとはいえ、欧州各国からの食料を始めとした支援が必要になる。少なくとも国連傘下のWHOはもちろん、他の国際機関も英国の支援をしなければならない。



日本では加藤勝信官房長官が「日本では英国型ウイルスは発見されていない」と語るが、識者・専門家の間では「英国型ウイルス」の「上陸」を前提とした対策を建てておくべきであることは当然だ。サイト管理者(筆者)は日本での第三波の襲来で感染者と死亡者が急増しているが、これに少なくとも感染力の強い英国型が加われば、事態はさらに厄介になる。英国型の出現も含めて、抜本的コロナ禍対策を追記しておきたい。

  1. 政府は2020年度に第一次、第二次補正予算を合計58兆円策定し、第三次補正予算案では19兆円強を充てることにしている。第三次補正予算案ではコロナ収束後の予算措置に力点が置かれているが、現実離れしているとしか言いようがない。全額コロナ禍対策に充てるべきだ。特に、2020年度に予算は国会で定めるという日本国憲法の定め(日本国憲法の第83条「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」)を無視して12兆円もの予備費を確保したが、このうち約5兆円はまだ未使用だ。これは全額コロナ禍対策に充当するべきだ。
  2. 当面、年末には通常、医療機関は業務を停止するので、医療体制の崩壊を招くことがないように、医療体制の強化を行う。取り敢えず、コロナ対策用に3兆円規模の臨時地方創生交付金精度が設けられたが、地方自治体が2割負担することを求めているので、絵に書いた餅になっている。財政状況が厳しい地方自治体に負担を課すことなく、全額国庫負担するべきだ。取り敢えずの使途は、経営が悪化している医療機関の減収補填と、年末年始の医師、看護士を確保するための特別手当てを支給する必要がある。
  3. 予備費を新型コロナ禍で失業、低賃金を余儀なくされている国民に対する食費・住居費を中心とする生活支援金の支給に充てることも重要だ。
  4. 一部の高級ホテル、旅館、富裕層に利益を与える不公平なGo To トラベルを含むGo To キャンペーンは即時、停止し、財政資金はコロナ禍で経営悪化した企業や失業や低賃金を余儀なくされている勤労者全てに交付する。
  5. 新型コロナウイルスの特徴は、感染しても無症状あるいは軽症である場合が多く、PCR検査を積極的に行わない場合は感染の実態が掴めない。東京オリンピック/パラリンピックの強行開催が感染症対策の上位目標に置かれている(フランスは2024年開催のオリンピックについて、計画の修正に取り組み始めた)。このため、オリ/パラ用にコロナ感染の実態を掴めないようにすることと検査利権を獲得することを目的として、政府=安倍、菅政権はPCR検査不要論を流し、一般医療機関での検査を抑制してきた。その大きな法的根拠になったのが、新型コロナウイルス感染症を第Ⅱ類相当の指定感染症に指定したことで、行政検査と第Ⅱ類感染患者を受け入れる医療機関でしか治療できないようにしてしまった。これを改めることが必要である。
  6. 厚生労働省が12月17日、新型コロナウイルス感染症に対する現行の、感染症法に基づく「指定感染症」と、検疫法の「検疫感染症」に指定する政令を2021年2月から1年間延長する方針を固めたと報じられているが、まずはこれを改める必要がある。感染集積地(エピセンター)では全員、PCR検査を国費で受けられるようにすることと、国民全員がいつでも、どこでも、何回でも無料で検査を受けられるような新たな「指定感染症」に分類し直すことが必要だ。
  7. 少なくとも感染力が従来型より7割程度強いとされる英国型ウイルスの日本上陸が確認された場合は、少なくとも確認地帯に対して「緊急事態宣言」を再発出する。場合によっては全国規模での再発出に備えて置く必要がある。
  8. PCR検査方法は1980年代に基礎が確立された古い技術だが、複数の検体を同時に検査するプーリング方式など今回の新型コロナウイルスの出現で急速に技術革新が進み、検査費用も大幅に低下している。一部のクリニックでは1件につき2千円程度まで下がっている。政府が本腰を入れれば、もっと安くなるだろう。政府(厚労省)が新しいPCR検査方法の導入を抑制していることを止めさせることが重要だ。
  9. 今後については取り敢えず、感染症対策、遺伝子工学、計測工学、情報工学の専門家からなり、政府(菅首相)を忖度するのではなく、国民の生命を第一に考え、対策する責任体制を明確にした専門家会議を設置し、将来的には政府から独立した日本版疾病予防管理センター(日本版CDC:Centers for Disease Control and Prevention)を設立すること。
  10. 政府は12月21日に平成21年度一般会計予算案を閣議決定したが、基本的に「コロナ収束」を前提にしており、予備費5兆円をコロナ対策用に充当し、他のコロナ対策(地方でのテレワーク導入支援、失業者の雇用支援、国民負担による医療機関の支援)も国民負担を前提として講じているが、現実離れした予算案だ。本来ならコロナ禍対策最優先のよさんあんに組み替える必要があり、そうしなければ再度、補正予算案の編成に取り組まざるを得なくなるだろう。
  11. 財政再建原理主義=緊縮財政論で20年以上の長期デフレ不況が続いた中で、新型コロナウイルス禍に見舞われたことを踏まえて、積極財政に転じることが重要だ。現代貨ち幣経済理論を日本の実情に合わせて応用することが必要になるが、供給力が失われないよう中小企業の経営悪化や失業対策に真剣に取り組まなければならない。

東京オリンピック/パラリンピックの再開催を再充填目標においているため、政府=安倍、菅政権のコロナ禍対策は、Go To トラベルの強行による全国へのコロナ感染拡大による架線者、死亡者の急増、医療体制の逼迫・崩壊を邁進するなど、支離滅裂を極めた。これに、安倍晋三前首相の国会喚問問題に加えて、鶏卵生産大手「アキタフーズ」の献金疑惑で自民党の吉川貴盛元農林水産相が議員辞職に追い込まれるなど、政府=菅内閣の支持率は急落している。

菅首相は、コロナ禍の収束に見通しをつけ、東京オリ/パラの来夏強行開催で実績を作ることにより、来年秋以降も自民党総裁・首相を続行しようとしているが、コロナ禍対策で失敗する可能性が濃厚だ。維新はもちろんだが国民民主を除く野党が早期に、➀抜本的なコロナ禍対策②現代貨幣経済論を創造的に日本に適用しての積極財政への転換③日本の真の独立を勝ち取ることを狙いとした外交戦略の確立ーなどで十分や政策体系を国民に提示することが不可欠である。来年は、政治決戦の時である。



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