政府=菅政権、変異ウイルスに警戒ー検査、医療体制の抜本転換必要

政府=菅義偉政権は、菅首相が指示した11カ国のビジネス入国は認めるという「水際対策」としては考えられない不備(抜け穴)があったことも災いし、早くも静岡県で3人が英国で変異した感染力が極めて強いコロナウイルスに市中感染していることが発見された。このため、政府=菅政権は監視体制を強化することにしている。しかし、それには社会的検査の抜本的拡充と医療体制の強化・休業補償の強化がセットにならなくては意味がない。コロナ禍対策の抜本転換が必要だが、菅政権にその意思がないことは明らかだから、野党側は共闘体制を強化し、2020年度第3次補正予算案の抜本的組み換えが必要だ。

1月20日水曜日コロナ感染状況

本日1月20日水曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の1月2713日水曜日の1433人を159人下回ったが8日間連続の1000人超えの1274人、死亡者は10人重症者は前日比5人増加して過去最多の160人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は1517.4人、PCR検査人数は10985.0人だから、瞬間陽性率は13.81%。東京都独自の計算方式では10.8%。感染者のうち感染経路不明率は58.81%だった。
全国では、午後23時59分の時点で新規感染者数は5533人、死亡者数は92が確認されている。重症者は前日比13人増加して1014人と過去最多更新になった。
東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、119日時点の実効再生産数は全国が同0.02人増加の0.97人、東京が0.04人増加の0.91。下げ止まりから反転上昇に転じてきた模様。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

【追記】1月20日東京新聞1面によると、19日火曜日の東京都の感染者数は1240人だっだが、結果が都に報告されるという3日前のPCR検査件数は7509件。推測瞬間陽性率は1周間前の12日火曜日の11.34%から16.51%に跳ね上がっている。➀検査を受けた都民の検査理由②3日前の検査件数ーも公開しなければ、実態は分からない。東京都の公式発表(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では移動平均での陽性率は11%程度に低下している。

静岡県で英国で変異した新型コロナウイルスに発見された3人の男女のうち少なくとも20代の女性1人は静岡県内で感染したことが分かっている。経路不明の感染者で、要するに、静岡県内で英国型変異ウイルスの市中感染がかなり広まっている可能性が濃厚だ。NHKWeb(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210120/k10012823401000.html)が本日20日午前5時30分に公開した。

イギリスで広がる変異した新型コロナウイルスに感染した静岡県の男女3人のうち、最初に症状が出た20代の女性は県内で感染した可能性が高いことがわかり、静岡県は変異ウイルスの感染がすでに広がっていてもおかしくないとして対策の徹底を呼びかけています。

静岡県では18日、20代の女性とその濃厚接触者の40代の女性、それに60代の男性の3人が変異ウイルスに感染したことが確認され、さらに19日、男性の濃厚接触者もPCR検査で陽性と判定されました。

静岡県によりますと、今月上旬に最初に症状が出た20代の女性は、感染した可能性のある先月中旬以降県外に出ておらず、静岡県内で感染した可能性が高いということです。

こうしたことから、本日の午前6時38分に公開されたNHKの「政府 変異ウイルスの市中感染に危機感 全国の監視体制強化へ」と題する報道によると(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210120/k10012823531000.html)、政府は監視体制に強化を入れ、新型ワクチンの早期接種に努めるという。

新型コロナウイルスの感染状況が大きく改善しない中、政府は、変異したウイルスの市中感染とみられる事例が新たに見つかったことに危機感を強めており、自治体と協力しながら感染経路の把握などに努めるとともに、全国の監視体制も強化する方針です。

新型コロナウイルスの感染状況をめぐっては19日、1日当たりの死亡者数が100人を超えて過去最多となるなど、依然として予断を許さない状況が続いています。(中略)

菅義偉首相
菅義偉首相

政府は、感染者数が大きく改善しない状況に加え、変異した新型コロナウイルスの市中感染とみられる事例が静岡県で新たに見つかったことに危機感を強めていて、自治体と協力しながら感染経路の把握などに努めるとともに、全国の監視体制も強化する方針です。一方、政府は、ワクチンの接種に向けた具体的なスケジュールの策定を本格化することにしていて、医療従事者や高齢者などへの接種を優先したうえで、早ければ5月ごろから一般の人への接種を開始する案も出ています。

ただし、報道内容が抽象的すぎる。「監視体制強化」の中身が不明だ。強化の「意向を決めた」だけなら仕方がないが、特別対策チームを設置してから1日以上の時間が経っている。場合によっては、11都道府県だけでなく、全国に十分な補償を前提とした緊急事態宣言を拡大することもあり得る状況だ。

静岡県庁
静岡県庁

しかし、監視体制の強化には絶対に必要な条件がある。第一に、政府=菅政権は病床の確保に務めているとしているが、コロナ受け入れ病院に限らず、地域の医療機関がコロナ感染患者と非感染患者で医療を分担している現状で、院内感染を恐れて来院が減少しているため、いずれも減収で経営が圧迫されている。新型コロナ対応の病院に対して「ピンポイント」の医療支援を行うだけでは不十分だ。政府は地方自治体にも負担を求めているが、地方自治体はもちろん「通貨発行権」を持たない。通貨発行権をもつ中央政府(政府と日銀)のうち政府が国債を発行して、全額国庫負担すべきだ。

第二は、病床の確保のためにもホテルや旅館の確保だけでなく、簡易医療施設の用意(建設を含む)など簡易医療施設の準備が欠かせない。また、医師や看護士などの確保も重要になる。最早、地方自治体同士で連絡し合う状況ではない。政府内に、菅首相の意向を忖度しない強力な真の専門家による日本版疾病予防管理センター(CDC)の設置することが必要で、リアルタイムに状況を監視できるインターネット・ネットワーク・システムの構築が不可欠だ。

第三は、PCR検査の抜本的拡充と陽性と判定された感染患者に対する保護・隔離・治療体制を確立することだ。初期、中期に重症化を防ぐために開発されているアビガンやレムでシビルなどの抗ウイルス薬を症状の段階に合わせて服用・投与することが必要だ。併せて、「お茶を濁したような」休業補償ではなく、事業者や従業員が安心できる十分な休業補償措置を取ることが不可欠だ。第二、第三も第一と同様、「通貨発行権」を持つ中央政府(政府と日銀)の政府による国債発行での国庫負担が欠かせない。

第四は、英国と米国で開始している新型ワクチンの接種の現状を広く、国民に知らせることだ。日本で第3相の治験を行っているわけではなく、緊急承認したものだから、当然のことだ。まず、南アフリカでの変異種には新型ワクチンが効かないという専門家の意見が有力だ。また、英国型のウイルスにも効くかどうか定かではない。

英国では新たに感染者が確認される人数は次第に減少してきている(どのような原因=国民間の接触率の低下かワクチン接種の効果か、その両方かなどか=によってどの程度減少しているのか不明)が、19日には1610人の死亡者が確認されている。英国型変異ウイルスにも効いている可能性はあるが、2回接種しないと完全な効果が出ないことと死亡者数の激増もあり、断定はできない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210120/k10012823701000.html)。武漢型、ミラノ型、スペイン型、日本首都圏型、英国型、南アフリカ型、ブラジル型と多種多様の変異した新型コロナウイルスが存在し、感染を続けていることが問題を複雑にしている。

アレルギー体質を持つ国民に接種すると、場合によっては相当なアレルギーが発生することが伝えられている。その他にも副作用が出ている可能性は濃厚だ。これらの状況を周知徹底する必要がある。大手メディアも、サイト管理者(筆者)の寡聞ではあるが、新型ワクチンの副作用についてはあまり報道されてはいないようだ。また、副作用が出た場合の医療措置や費用負担(死亡した場合を含む)も明確に定めておかなければならない。こうした情報の提供と副作用が出た場合の医療措置、費用負担を明確にしていなければ、ワクチン接種を受けない国民が多数出てくる可能性がある。とても、「集団免疫」の獲得にはいたらないだろう。

第五は、新型ワクチンの接種が基礎地方自治体任せだということだ。米国のファイザー社、モデルナ社、英国のアストラゼネカ社の新型ワクチンを接種することになるが、いずれも2回接種する必要がある。基礎地方自体では新型ワクチン接種案内票を郵送で国民に届ける。もちろん、手作業だ。手作業によって、異なるワクチンを接種してしまう可能性が少なからずある。インターネット・コンピューター・システム(クラウドを使ったクラウド・コンピューティング・システムなど)の早期開発が不可欠だ。

政府=菅政権が構築して、基礎自治体に導入するべきだ。当然、国庫による財政負担が必要になる。河野太郎行革相が総責任者になっているが、第四と第五にしっかりとした責任を持ってもらわなければならない。

第六は、東京オリンピック/パラリンピックの早期中止発表を行う必要がある。国民の8割が延期開催にも反対しており、実務から言っても時間的に無理だ。延期開催に伴う費用の増加はすべて、コロナ禍対策に充てるべきだ。「やるやるオリ/パラ」を言い続けると、国民に根拠のない安心感を植え付けてしまうことになってしまう。緊急事態宣言再発出と東京オリンピック/パラリンピック強行開催は厳密に言えば矛盾する。

安倍晋三首相(当時)は昨年8月28日の辞任記者会見である程度のコロナ禍対策の転換を表明した(https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200828/mca2008281936035-n1.htm)。

まずは、検査能力を抜本的に拡充することです。冬までにインフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査態勢を目指します。特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員の皆さんに対して定期的に一斉検査を行うようにし、高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染を防止します。医療支援も高齢者の方々など、重症化リスクの高い皆さんに重点化する方針です。新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARSやMARSといった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します。

軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。コロナ患者を受け入れている医療機関、大学病院などでは大幅な減収となっており、国民のために日夜ご尽力をいただいているにもかかわらず、大変な経営上のご苦労をおかけしております。経営上の懸念を払拭する万全の支援を行います。インフルエンザ流行期にも十分な医療提供体制を必ず確保いたします。以上の対策について順次、予備費によって措置を行い、直ちに実行に移してまいります。

これを受けて、厚生労働省は昨年9月、全国の都道府県に対して通達を行い、検査体制拡充の姿勢をみせた(参考:https://www.youtube.com/watch?v=w7I4x0VDQts)。これを受けてのようだが、厚生労働省のPCR検査抑制姿勢が多少緩和された。

厚労省、検査体制の拡充通達
厚労省、検査体制の拡充通達

しかし、安倍前首相の復権を望まない菅首相はこれに応えていない。むしろ。Go To トラベルを強力に推進するなど「コロナ感染拡大」に驀進してきた。3月には街角希望検査を行うようだが、陽性者のための医療体制・補償の大胆な強化がなければ、検査に応じる国民は少ないだろう。なお、世田谷区(保坂展人区長)によると世田谷区では「飲食店」は感染拡大の最大の場所となっていない。最大の感染場所は家庭である。

飲食店いじめになる政府=菅政権の限定的緊急事態宣言発令には大きな問題がある。東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1月18日時点の簡易実効再生産数は全国が前日比0.02人減の0.95人、東京都は前日比0.02人減の0.87人となっており(感染者数が減少に転じるためには、確かな緊急事態宣言の発令などにより、1.0以下に抑えることが必要)、このところ、簡易ながら実効再生産数は低下している。

しかし、国民の行動変容(不要不急の外出の自粛など。正月3が日の初詣参拝者は例年に比べて3割に減少したとの情報もある)によるものと思われるが、少なくとも、英国変異型、南アフリカ変異型、その他の感染力の強い変異型の市中感染が拡大すれば、実行再生産数が再上昇する可能性は決めて濃厚である。

プール方式
プール方式

コロナ禍の収束のためには、➀複数の検体を同時に検査できるプール方式など革新的なPCR検査や抗体検査などの社会的検査を大規模に実施すること②陽性者の保護・隔離・適切な治療(抗ウイルス薬の投与)を行うこと③新型ワクチンの情報公開の徹底を行うことや副作用対策を明確にすることを前提として、国民に対してワクチン接種の是非・可否の判断を仰ぐことにより、集団免疫(ある感染症に対して多くの人が免疫を持っていると、免疫を持たない人に感染が及ばなくなるという考えのことであり、一般には国民の人口の6割程度の国民が正常な抗体=中和抗体=を獲得していることが必要だとされている)を確保すること

➃医療体制の抜本的再編➃中央政府(政府と日銀)が通貨発行券を持っていることから、政府の国債発行による「異次元積極財政政策」による事業者の事業継続・転換支援と国民に対する生活保障を国費として行うことーが基本である。なお、別途、食糧・食料の確保に努めておく必要がある。

 


 

ただし、現在の政府=菅政権にはコロナ禍対策の抜本転換は望めない。野党側は2020年度第3時補正予算の組み換え要求(同義)を行う。多数決原理は少数意見の尊重のうえに成り立つ。ガリレオ・ガリレイのように、真理はいつも少数者から出てくるからだ。だが、多数決原理を多数決独裁にすり替えている菅政権には真の多数決原理の理解と尊重などは求めること自体が不可能だ。オリンピック中止を正式に発表し、内閣総辞職をしていただく以外に菅内閣に残された道はない。

なお、黒田東彦日銀総裁は、米国を中心に世界各国が超大規模な財政政策を行っていることについて、自身の「量的金融緩和政策=マネタリベース(銀雨が日銀に持っている当座預金の残高=市中銀行保有の既発国債を日銀が通貨発行権をもとに日銀券を剃って購入すること=と市中に流通している現金の合計)を増加させること)を自画自賛しているようだ。しかし、世界各国が行っているのは事実上の現代貨幣理論(MMT)に基づく「積極財政」であって、黒田総裁率いる日銀の「量的金融緩和政策」ではない。財務官出身の情けない日銀総裁だ。



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