イラン、米大統領選前にもイスラエルに再報復かー中東紛争拡大の懸念、大統領選にも影響か(追記:大統領選の状況へのリンク一覧)

イスラエルはイランの大規模ミサイル攻撃への報復として、10月26日にイラン国内のミサイル製造施設や防空システムをピンポイント空爆したが、時事通信社によると、イランの最高指導者・ハメネイ師は11月5日の米国大統領選前にも、イスラエルに対して報復攻撃を行うと述べたという。もし、イランがイスラエルに対して大統領選前にも報復攻撃を行うことになると、バイデン大統領・ハリス副大統領民主党政権の対イスラエル外交政策が失敗した形になり、選挙にも大きな影響を与えることになる。

時事通信社は11月2日午後19時ころ、「対イスラエル報復を明言 「必ず厳しく対応―イラン最高指導者」と題する報道記事を公開した(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024110200408&g=int#goog_rewarded)。次の内容だ。

イランの最高指導者ハメネイ師は2日、「米国やシオニスト(イスラエル)は、イランや抵抗戦線に行っていることに対して必ず厳しい反応を受けると悟るべきだ」と述べ、先月26日にイラン国内へ攻撃を加えたイスラエルに報復すると明言した。イラン国営メディアが伝えた。(中略)

ハメネイ師はイスラエルから攻撃を受けた翌日の演説では、再報復の是非には直接言及していなかった。しかし、2日の演説では「傲慢(ごうまん)な国に立ち向かうため、軍事的にも政治的にも必要な準備は全て行う」と主張。イスラエルの空爆でイランのミサイル製造拠点や防空システムが深刻な打撃を受けたとされ、保守強硬派を中心に主戦論が強まる中で強硬姿勢に傾いているとみられる。

これより先の1日午後20時30分ころに、時事通信社は「イラン、数日内に再報復か 対イスラエルで強硬姿勢」と題する報道記事を公開している(https://news.yahoo.co.jp/articles/1fbf1b4f2d1bb3550f6fc110ddad338b96e4af99)。

米CNNテレビは、5日投票の米大統領選前にも「決定的で痛みを伴う対応」に踏み切る可能性があると報じた。攻撃から2日で1週間となる中、イランで強硬論が高まっているもようだ。イスラエルは大規模ミサイル攻撃への報復として、10月26日にイラン国内のミサイル製造施設や防空システムを空爆。ネタニヤフ首相は同31日、「イランの急所を攻撃した。必要ならイランのどこにでも行ける」と成果を誇示した。

一方、イランのナシルザデ国防軍需相は「敵は攻撃、防御両システムへの打撃を狙ったが、多くは成功しなかった」として、ミサイル製造に支障はないと主張した。同国政府報道官は攻撃後、来年の国防費を3倍に増やす予算案を国会に提出したと発表。軍事力強化で対抗する構えだ。(中略)

イランの最高指導者ハメネイ師は、イスラエルの攻撃翌日の演説で「誇張も過小評価もすべきでない」と発言。「国家に最善の利益となることが行われるべきだ」と述べ、再報復の可能性を完全には排除しなかった。イスラエルの攻撃ではイラン精鋭軍事組織「革命防衛隊」の拠点も打撃を被ったと伝えられ、サラミ司令官は「(イスラエルにとって)想像できない苦い結果を招く」と警告した。防空網に甚大な被害が出ているとすれば、攻撃の応酬が続く場合はイランに極めて不利となるものの、「われわれは40年以上、攻撃されれば必ず反撃してきた」(ファダビ革命防衛隊副司令官)と強硬姿勢を崩していない。

これに対して、米国のバイデン政権とイスラエルは警戒を強めているようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241104/k10014628491000.html)。

イランの最高指導者が国内の軍事施設を攻撃したイスラエルに対して報復攻撃を行う考えを示す中、イスラエルと同盟国アメリカは軍の高官が対応を協議するとともに、中東地域に爆撃機を追加で配備するなど警戒を強めています。(中略)

アメリカのニュースサイト、アクシオスは関係者の話としてイスラエルを攻撃しないようアメリカがスイスを通してイランに警告したと伝えていて、イスラエルとアメリカは警戒を強めています。

ただし、国際情勢解説者の田中宇氏は11月2日投稿・公開した「厚顔無恥なイスラエルの成功」(https://tanakanews.com/241102israel.htm、無料記事)で、「イスラエルは、パレスチナ抹消を進め、ヒズボラを無力化し、(ヒズボラが政府を支援している)シリアやイランと冷たい和平の関係を非公式に結び、国際的な脅威を減らした。イスラエルは人道犯罪や虐殺を公然と続け、世界からの非難を無視・敵視する厚顔無恥を重ねつつ、安全保障の面で成功している。ユダヤ人が持つ力量は、非公式なネットワーク、秘密の諜報力、隠然関係などに依拠している。イスラエルと他の諸国・世界との今後の関係も、非公式なものが中心でかまわない」と分析。イスラム教を信奉するアラブ民族は現実的だと指摘して、次のように「冷たい和平が続いても構わない」と判断し、イスラエルとイランは、報復をエスカレートしない冷たい和平を継続すると分析している。

アラブやイスラムを中心に非米側諸国の多くは、パレスチナ国家創設・2国式パレスチナ問題解決を支持しており、パレスチナ国家が安定的に完成しないとイスラエルと和解しないと言っている。イスラエルはパレスチナを抹消しつつあり、パレスチナ国家の完成はもう不可能だ。エジプト、ヨルダン、UAEといった、すでにイスラエルと正式な国交を結んでいるアラブ諸国は、パレスチナが抹消されてもイスラエルとの外交を維持している。だが、他のアラブ諸国やイランやトルコは、イスラエルと国交を結べない。Netanyahu rows with Macron over creation of Israel

イスラエルは、中東諸国との非公式な和平・冷たい和平を、公式な和平に転換できない。軍事的な安保が改善しても、政治的な安保を改善できない。ダメじゃん。そうなのか??。イスラエルは、公式な和平にならなくても、ずっと冷たい和平・非公式な和平で良いと考えているのでないか?。もともとユダヤ人が持つ力量は、非公然のネットワーク、秘密の諜報力、隠然関係などに依拠してきた。ユダヤのパワーは非公式だ。

イスラエルという国家は公式な存在だが、イスラエルと他の諸国・世界との関係は非公式なものが中心でかまわない。冷たい和平、非公式な和平でかまわないなら、すでにイスラエルの国際関係は必要十分なものになっている。パレスチナ国家(分割案)の発案者はアラブでなく英米だ。アラブ人は現実的だから、英米覇権が(注:ドル基軸通貨体制による米側陣営の破綻で)崩壊し、パレスチナ国家も抹消されてしばらくしたら、パレスチナ問題を盾にイスラエルとの和解を拒否する姿勢自体を忘れていくだろう。ずっと続くガザ戦争

田中氏の分析によると、イスラエルとイランは「冷たい和平」を続け、報復の応酬を避けながら、英米が作り上げた「パレスチナ国家構想」そのものを潰して、最終的には中東にイスラエルとアラブ民族諸国家の事実上の和平の実現を目指していくと言うことになる。

【注】古代イスラエル人たちは、古代ローマ帝国を利用して、古代ユダヤ教(旧約聖書)の教え(律法)に反する教えを説いたとして、イエス・キリストを十字架につけて殺害。その後、古代イスラエルはローマ帝国によって滅ぼされた。その結果、イスラエル人(ユダヤ人)たちは、欧米を中心に世界に離散した(ディアスポラのユダヤ人)。19世紀になって、ディアスポラのユダヤ人を糾合して国家を建設するという思想であるシオニズムが台頭してきた中、第一次世界大戦が勃発。同大戦は、三国同盟側=英国、フランス、ロシア=と三国協商側=ドイツ、オーストリア、オスマン帝国(旧トルコ)=が戦ったが、当時の世界帝国の英国は、イスラエル人とアラブ人の協力を得るため、オスマン帝国から現在のイスラエル地域を切り離して、シオニストに与えることを約束。同時に、現在のパレスチナ人にも与えるという約束もした。そして、フランスやロシアには、オスマン帝国を三国で分割するという三枚舌外交を展開した=https://solver-story.com/?p=1776#outline__1=)

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なお、11月4日午後19時から放映された幸福の科学出身の及川幸久氏の「大統領選直前大予想(https://www.youtube.com/watch?v=NXNWVk8qZ-M)」も参考にされたい。

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