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アベノミクス(アベクロノミクス)の破綻(番外編)―米国が仕掛けた「悪魔」の思想が原因

アベノミクス(アベクロノミクス)の「デフレ脱却」は「羊頭狗肉」であることが次第に明らかになってきている。「最後の砦」だった日経平均が調整局面に陥っていることはその証左だ。もっとも、日本経済の実力から外れた円安で生産、生活必需品の価格が上昇する一方、庶民の給与は上昇せず、これに4月1日からの消費税大増税が追い打ちをかける。「一億総中流時代」は既に過去のものになり、勤労者の40%が年収200万円程度の非正規社員に陥っている大格差社会の現状、庶民は塗炭の苦しみの時代に入る。何故、そういうことになってきたのか。日本財政金融研究所長の菊池英博氏の最新著「そして、日本の富は略奪される―米国が仕掛けた新自由主義の正体」(ダイヤモンド社)が、その理由を論理と実証に基づいて余すところなく明らかにしている。

アベノミクス(アベクロノミクス)は、破綻した小泉構造改革と同じく、「金融超緩和・小さな政府・規制緩和」から成り立つ。平成24年度の13兆円規模の財政出動は「偽装財政出動」であって、消費税を増税する「理屈」を作るための茶番劇に過ぎなかった。

実際、2012年1―3月期以降の実質経済成長率の推移は、年率換算で+3.5%、-1.7%、-3.2%、+0.1%、+4.5%、+4.1%、+0.9%、+0.7%と昨年2014年の後半以降、既に失速している。日本経済の実態がデフレ不況ないし恐慌型デフレにあることがまたまた明確になった形だ。この恐慌型のデフレの中で、安倍晋三政権は平成26年度に歳出を実質的に30兆円規模でカットする超緊縮デフレ財政を組み、執行する。当然、今後の経済社会は恐ろしい展開になる。

何故、「金融超緩和・歳出を歳入のうちに抑える小さな政府(「基礎的財政収支均衡策」)・規制緩和」という「政策」が、小泉純一政権時代に失敗し、安倍政権で大失敗するのか。それは、これらの「政策」が、ユダヤ系米国人のミルトン・フリードマンが打ち出した「悪魔」の思想である新自由主義と、その経済政策上の手法である市場原理主義に基づくからである。この点を喝破し、その危険性と克服策を訴え続けてこられたのが、菊池英博氏であり、その集大成が本著「そして、日本の富は略奪される―米国が仕掛けた新自由主義の正体」(ダイヤモンド社刊)である。

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新自由主義は単に経済学、経済思想にとどまらず、その思想と理論(理屈:サイト管理者によれば屁理屈)をベースとして、富を一部の富裕層に集中しようとする政治経済行動の理論的骨格で、その目的のためには政治権力と結託して行動を起こし、手段を選ばず目的を貫徹しようとする執念を持っている。新自由主義思想は、政権を狙う政治家(同政治屋)が一国の富を富裕層に集中する経済政策をとるときに利用する経済理論であり、さらに時の権力に迎合するレントシーカーや(誤用)学者に利用されている

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こう考えると「賢者は歴史に学び、愚者は歴史を繰り返す」の諺に反して、鳩山由紀夫首相―小沢一郎幹事長以外の歴代政権が何故、「愚者」であり続けるのかが理解できる。意図的に「愚者」であり続けることによって、国民の富を収奪し続けるのが狙いだからである。

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本書では、新自由主義を「提唱」したミルトン・フリードマンの人となりから始め、新自由主義・市場原理主義の体系的分析とその実践的帰結、すなわち経済社会の混乱と破壊(チリを始めとした南米での実験➤英国のサッチャリズム➤米国のレーガノミクス➤日本の構造改革路線、の帰結)を論理的かつ実証的に、つまり、科学的にかつ詳細に分析している。新自由主義のような「ハッタリ」はもちろん、無い。

そのうえで、国際レオンチェフ大賞(ワシリー・レオンチェフはソ連出身の経済学者。産業連関分析の創始者として20世紀を代表する人物)を受賞された宍戸駿太郎筑波大学名誉教授(経済企画庁時代に多国間マクロ経済モデルを構築されたが、現内閣府=実態は財務省=が財政政策の効果が出ないように改ざんした)の経済モデルDEMIOSを応用して、恐慌型デフレを真に克服する「財政出動・金融フォロー(長期金利の安定)」のポリシー・ミックス(一次と二次にわたる5年間100兆円規模の真に必要かつ有効な財政出動、一次と二次にわたるのは、安倍政権がデフレ期には禁断の政策である消費税大増税策を強行したため)の効果を定量的に分析、日本の経済社会の再建策を提示している。読者に対して、「右も左も真っ暗闇じゃござんせんか」(鶴田浩二「傷だらけの人生」)のこの日本にも実は、確かな未来がある」ことを実感させてくれる。

さて、本著は日本の経済分析(自民党の小渕恵三政権を除く橋本龍太郎政権以後の構造改革路線の批判的分析)にかなりの紙数を割いているが、新自由主義に焦点を当てて「戦後世界経済史の正体」を暴露している。その意味では、サイト管理者も目から鱗が落ちる思いがした、外務省出身の外交評論家である孫崎享氏のベストセラー「戦後史の正体」とともに熟読するのが妥当である。

両著を比較すると、「戦後史の正体」は主に政治・外交の現場から日本が独立国としての気概を失い、「対米従属国家」化して行く過程を描いているのに対して、本著は経済面から新自由主義という思想に犯されて、日本が米国の植民地化して行く姿を描いている。ただし、サイト管理者には日本の経済社会再建の方策を示している点において、本著のほうがポスト・ポスト冷戦後の新世界秩序の創出のうえで、より示唆に富むと感じられた。

何故なら今日、世界的な混乱の主因になっている米国の国力の衰退の根本的な原因を、本著は明らかにしているからである。「アメリカは、第一次世界大戦が始まった1914年に対外純債権国になり、戦後も世界の覇者であった。ところが、(新自由主義に基づく)レーガノミクスによって、(いとも簡単に)1985年には71年ぶりに対外純債務国に転落してしまったのである。これこそ新自由主義・市場原理主義を理念とする政治経済政策が生み出した当然の帰結であり、今日に至るアメリカの苦悩と悲劇の始まりはここにあったのだ」(69頁)。そして、その結果として、今や「アメリカは世界最大の債務国であり、経済的にはもは破滅状態にある」(233頁)のである。

なお、著者は親交のあるベン・バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長が同議長を辞職したことについて量的金融緩和(QE1/2/3)が失敗したことの「責任を取った」とされているが、実際のところは、「病膏肓に入り」、職責を投げ出したのではないか。

このため、米国が自国の「生命維持装置」として利用してきたのが日本である。「日米同盟」などともちあげながら、その経済的実態は日本を財布代わりに使う「日本財布論」を進めているのである。実際、日本は財務省の指示による大規模な為替介入、黒岩日銀の超金融緩和政策などで、ことあるごとに米国の国債を購入、資金を提供している。ただし、米国には日本から借りたカネを返済する能力はもちろん意思はない。ドル紙幣を刷って返済する「偽装債務履行」ができるに過ぎない。また、ロシアはウクライナ問題で保有米国債を大量に売却したようだが、日本は保有米国債の売却ができない。

「日本財布論」は「日本植民地化論」にたどり着く。具体的には「日本の国富を根こそぎ収奪する手段」としての「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」である。著者によれば、これこそまさに「悪魔の罠」であるが、サイト管理者も同感である。

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TPPは場合によっては、①投資家対国家紛争条約(ISD条項)②ラチェット条項(一度決めた条約の各条項は変更はできない)③スナップバック条項(米国だけは一方的に条項や関税を変更できる)④許可・特許条項―などが盛り込まれた韓米FTA(二国間自由貿易協定)よりももっと厳しい日米FTAに変更される可能性がある。まさに、アナクロニズム的な平成の「不平等条約」であり、日本国憲法に定められた「主権在民」が、実質「主権在米」になる「第二次世界大戦終了後の最悪の国際条約である」(以上、第7章「TPPはアメリカの日本占領政策」)。

ただし、サイト管理者の見るところ、日米両国政府が新自由主義・市場原理主義的手法を使う限り、両国の問題は解決せず、「共倒れ(日米心中)」になるだけであろう。著者が本著で詳細に示された「財政主導・金融フォロー」の政策によって日本を再建しつつ、併せて米国再建の道筋を示すことによって、戦後の「パックス・アメリカーナ」に代わる「21世紀型世界経済新秩序」の姿を浮き彫りにすることができると考える。

 

 

 

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