対ロ経済制裁、インフレ加速・金融引締強化で米欧日陣営に打撃へー基軸通貨ドルに対する信認問題に発展(コロナ追記)

米欧日陣営がロシアに対する経済制裁を課したことで米国などでインフレが加速し、QE(Quantitative Easying=量的金融緩和)を止め、QT(Quantitative Tightening=量的金融引締め)を強化せざるを得なくなっているようだ。同陣営ではスタグフレーションに追い込まれ、ドル基軸通貨国際決済システム(ブレトンウッズ2)が来年末までに破綻するとの見方も出てきた。

ドル基軸通貨国際決済システム(ブレトンウッズ2)の破綻への備え必要

米労働省が発表した2022年4月の消費者物価上昇率は前年同月比では比較する年が昨年2021年になったためやや鈍化したが、高止まり感は否めない。前月比では総合でも、価格変動の激しい食料品やエネルギー製品を除いたコアでもインフレが加速した(https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/05/22c98705b76d9fce.html)。

米国労働省が5月11日に発表した2022年4月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比8.3%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同6.2%上昇と、共に8カ月ぶりに減速した(添付資料図参照)。民間予想はそれぞれ8.1%、6%だった。前月比ではCPIは0.3%上昇、コア指数は0.6%上昇だった(民間予想はそれぞれ0.2%、0.4%)(添付資料表参照)。(中略)

4月の前年同月比の伸びは鈍化したが、これは2021年4月以降から物価が急上昇したことによって比較される前年同月の土台が高くなっている影響が大きい。前月比ではCPIは、ガソリンなどエネルギー価格が4月は急減した影響から、0.3%上昇と鈍化したものの、5月に入りガソリン価格は再び上昇しており、5月11日時点の1ガロン(約3.8リットル)当たりのレギュラーガソリンは4.4ドルと過去最高を記録するなど、5月も今回の鈍化傾向が続くかは不透明だ。加えて、食料品・エネルギーを除くコア指数の前月比は0.6%上昇と伸びが加速しており、これはウエートの大きい住宅費の高止まりの寄与が大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢の転換により、年初に3%前半だった住宅ローン金利(30年固定)は5%半ばまで上昇、1~3月期の住宅ローン組成額は前期比17%減と急減しており(2022年5月11日記事参照)、住宅価格には下落圧力がかかるが、住宅費への反映にはラグがある。今回の伸び率鈍化により物価上昇はピークを打ったと期待されるが、物価目標の2%には程遠く、今回結果はFRBの引き締め姿勢に影響を与えるほどではないと言えそうだ。

ただし引用記事中、エネルギーと食品価格は変動が大きいとあるが、ウクライナ事変(同事変の責任の所在は、米英ディープ・ステート=DS=の裏工作によるウクライナ政権の傀儡政権化にある)に対する欧米日陣営側の極めて強力な経済制裁にロシアが反発して、天然ガスの欧州への輸出制限に本格的に乗り出すなど、天然ガス・原油、貴金属、穀物などコモディティの価格は今後、さらに上昇していくだろう。コア・インフレ率だけに注目してももはや意味がない状況になっている(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR12FMD0S2A510C2000000/)。

12日の欧州市場で天然ガス相場が急反発し、域内の指標価格となる「オランダTTF」は6月物が前日比で一時2割あまり値上がりした。ロシア政府の制裁措置に対応して国営ガスプロムが同日、ポーランド(注:カチンの森事件=第2次世界大戦中のソ連の赤軍によるポーランド将校大量殺害事件=などで、ポーランドは旧東欧諸国の中でも反ロシアの筆頭国)を経由する主要パイプラインを通じた供給停止(注:ドイツが大きな打撃を被る)を表明した。ウクライナ経由の供給も設備の問題で一部乱れており、調達環境の中長期の不透明感から買いが優勢になった。

米欧日陣営では冷戦後の「グローバリズム」を象徴する金融技術の「革新」の失敗で、2008年9月のリーマン・ショックにより国際金融・資本・為替市場が破綻するところ、QEを開始することによってかろうじて金融崩壊を避けるとともに、表面上は逆に株式相場・債券相場などの証券相場を吊り上げる=バブルを引き起こす=ことに腐心してきた。これに加えて、コロナ禍に伴うQE(国民や企業に対する資金供給)もあってとりあえず需要面から、インフレの種が撒かれていた。

こうした状況下で、米英ディープ・ステート(DS)の暗躍によりウクライナの傀儡政権化が起こり、今回のウクライナ事変が起こった。米英ディープ・ステート(DS)も、その傀儡政権であるゼレンスキー大統領率いるウクライナ政権も、ウクライナ事変を停戦に持ち込むつもりは皆無だ。ゼレンスキー大統領も米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)から大量の最新軍事兵器の供与を要請し続け(注:軍産複合体が巨大な利益を得る)、ウクライナ国民(市民)を犠牲にしてロシアとの戦闘を続けることに全力を集中している。もともと、ウクライナ事変は米国を盟主とするNATOとロシアとの戦争であったが、その本質が露呈している。

NATOとしてはロシアのプーチン大統領率いるロシア政権の打倒がウクライナ事変の狙いだろう。その強力な一環として、米欧日陣営はロシアに対してまれにみる強力な経済制裁を展開している。しかし、ロシアを含む中東やイラン、中国(経済・軍事大国、金生産大国)などコモディティ大国に対して経済制裁を課せば、それが強力であればあるほど米欧日陣営に対して資源価格(コモディティ価格)の高騰を通して、コストプッシュ型のインフレを引き起こす結果になる。コストプッシュ型インフレを避けようとすれば、効かないことの無理は承知だけれども、金融引締め(総需要の徹底的な引き締め)を行わなければならない。行き着くところは、激しいスタグフレーションだ。

コモディティの代表であり、ドルの強力なライバルである金価格の動きは次のようになっている。なお、金はドル紙幣の強力なライバルなのでデリバティブ取引(金先物の売りなど)で1トロイオンス=2000ドル以下に抑えられているが、1トロイオンス=2000ドルを突破して上昇を続けるようになると、ドル紙幣は危なくなる。ドル基軸国際決済システム(ブレトンウッズ2)の破綻を招く。

ということで、米欧陣営では無理は承知でQEを止め、まともなQT(市中から資金を回収する正しいQT)を行わざるを得なくなっている。米国では政策金利(フェデラルファンド・レート)の引き上げに乗り出したが、そのため10年物や30年物の米国債金利は急上昇(相場は急落)しており、併せてダウ平均も今年1月4日の最高値3万6799.65ドルから5月13日には3万2196.66ドルまで急落している。この流れは止まることはないだろう。証券相場のさらなる急落や暴落は起こり得る。

なお、米欧日陣営のマスメディアは、ネオ・ナチ勢力の代表であり、2014年2月22日のウクライナでのマイダン暴力革命以降、ロシア系ウクライナ人が多数を占める東部ドンバス地方でロシア系ウクライナ住民を大量虐殺してきたアゾフ大隊(日本の法務省の外局である公安調査庁が当初はネオ・ナチ勢力として位置づけていたが、その後は削除した)を「英雄視」するなどの「大本営発表」報道を展開しており、実際の戦闘状況について詳細は不明だ。プーチン大統領は5月9日の対独戦勝利記念日に次のように述べた(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220509/k10013618261000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_003)が、これは正しい。

2022年5月9日の対独戦争勝利記念大会で演説するロシアのプーチン大統領

われわれの責務は、ナチズムを倒し、世界規模の戦争の恐怖が繰り返されないよう、油断せず、あらゆる努力をするよう言い残した人たちの記憶を、大切にすることだ。だからこそ、国際関係におけるあらゆる立場の違いにもかかわらず、ロシアは常に、平等かつ不可分の安全保障体制、すなわち国際社会全体にとって必要不可欠な体制を構築するよう呼びかけてきた。去年12月、われわれは安全保障条約の締結を提案した。ロシアは西側諸国に対し、誠実な対話を行い、賢明な妥協策を模索し、互いの国益を考慮するよう促した。しかし、すべてはむだだった。

NATO加盟国は、われわれの話を聞く耳を持たなかった。つまり実際には、全く別の計画を持っていたということだ。われわれにはそれが見えていた。ドンバスでは、さらなる懲罰的な作戦の準備が公然と進められ、クリミアを含むわれわれの歴史的な土地への侵攻が画策されていた。キエフは核兵器取得の可能性を発表していた。そしてNATO加盟国は、わが国に隣接する地域の積極的な軍事開発を始めた。このようにして、われわれにとって絶対に受け入れがたい脅威が、計画的に、しかも国境の間近に作り出された。

アメリカとその取り巻きの息がかかったネオナチ、バンデラ(注:ウクライナにおける反ユダヤ主義・反ソ連=ロシア=主義のネオ・ナチズムの開祖であるステパン・バンデラのこと。)主義者との衝突は避けられないと、あらゆることが示唆していた。繰り返すが、軍事インフラが配備され、何百人もの外国人顧問が動き始め、NATO加盟国から最新鋭の兵器が定期的に届けられる様子を、われわれは目の当たりにしていた。危険は日増しに高まっていた。

さて、こうしたインフレ急進・高騰や強力な金融引締め政策の展開(QEの廃止とまともなQTの実施)により、来年までにドル基軸通貨決済体制(ブレトンウッズ2)が崩壊するとの大胆な予測も公開された。国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏による「来年までにドル崩壊」(https://tanakanews.com/220511dollar.php、有料記事)がそれだ。

先進諸国の株価が下落傾向を続けている。米欧日とも、昨年10-12月ごろが最高値で、それ以来下がる傾向がずっと続いている。米国のジャンク債の金利も、昨年11月から上昇傾向だ。10年もの米国債も昨年末から金利が上昇している。昨年10-12月は、米英などの中央銀行群がQEの終了を決めた時だ。造幣した資金で債券などを買って相場を支える中銀群のQEは、2008年のリーマン危機以来の、米欧日の金融システムにとって唯一の相場テコ入れ策だった。中銀群のうち、日銀はQEをやめるつもりがない。欧州中銀はやめると言いいつつ続けている。だが、最大のQEをやっていた米連銀は3月にQEを停止し、6月からはQEで買い込んだ債券を手放して中銀群の資産を減らしていくQTを始める。英国やカナダは、すでにソフトなQT(国債償還金を再投資しないこと)を開始している。相場を支えてきた唯一の要素だったQE資金がなくなっていくのだから、昨年末から株安や金利高など各種の金融相場が下がっていくのは当然だ。 (ICE BofA US High Yield Index Effective Yield) (Bloodbath)(中略)

ほとんどのコモディティが高騰する中、金地金だけはまだ幽閉されている。株や債券は少しずつ相場が下がっているが、金地金は少しずつ相場が上がるのでなく、この2年間ほど、おそらくQE資金によって1オンス2000ドル以下に閉じ込められている。これは意図的なものだろう。きたるべきドル崩壊に気づいている非米諸国などの勢力が次の備蓄通貨である金地金を安く買い貯めておけるよう、米中枢の多極派が、金相場を抑止しているのかもしれない。QTが進み、金相場を抑止する資金が失われると、金相場は高騰する。金地金の現物に対する需要は、世界的にものすごく強い。 (金相場の引き下げ役を代行する中国) (“The US Destroyed Trust” Jim Rickards Says “The World Is Turning To Gold”

ドルが基軸性を喪失すると、替わりの通貨はとりあえず金地金しかない。米国政府が覇権喪失やドルの基軸性喪失を認めたら、次の基軸通貨体制を決める話が正式に始まるが、米国政府は覇権を手放したがらず、米欧のマスコミ権威筋も歪曲誇張ウソまみれが常態化しているので、ドルが実際に基軸性を喪失して国際決済にあまり使われなくなっても、その状態がなかなか人類の公式論にならないかもしない。そうなると、ドルが基軸性を喪失しているのに替わりの基軸通貨がない・決まらない事態が長引く。この場合、金地金が実質的な基軸通貨(備蓄通貨)になる。非米諸国は金地金を含む金資源本位制を採用していくが、米国側の諸国はその存在すらなかなか認めないかもしれない。ロシアを皮切りに世界が金本位制に戻る) (ドルを否定し、金・資源本位制になるロシア

QTが予定通りに進むと、(注:ある程度の不確実性はあるが)来年の今ごろまでにドルと米覇権の崩壊が起きる。

米国ではシェール・ガス革命があり、一定のコモディティを有するが、コストが高く、穀物生産では農業に対しても莫大な補助金を投入している。欧州の共通農業政策も似たようなものだ。日本の食料自給率はカロリーベースで30%台だ。非米側のコモディティ大国にはかなわない。ウクライナ事変がフィンランドのNATO加盟まで巻き込んで長期化すれば、世界経済情勢・ドル基軸通貨国際決済システム(ブレトンウッズ2)はG7諸国などの「コモディティ小国」にとって、決定的に不利になる。ウクライナ事変は、これまで米英ディープ・ステート(DS)が確立してきた一極支配体制崩壊の始まりになるだろう。

新型コロナ再対策とQE(Quantitative Easying=量的金融緩和)継続の可能性

ここに来て、世界的な規模で新型コロナ再対策の機運が出てきた(https://www.tokyo-np.co.jp/article/177293?rct=coronavirus)。即断は出来ないが、QE(Quantitative Easying=量的金融緩和)再開の可能性がある。QEを再開させ、QT(Quantitative Tightening=量的金融引締め)を遅らせば遅らせるほど、金融・資本・為替市場でのショックを大きくするので、注意を要する。なお、新型コロナワクチンはいまなお緊急承認の段階で、第三層の治験がなされておらず、mRNAワクチンの接種で人体の免疫機構が悪影響を受けるなどの報告が相次いでいることにも警戒が必要だ(免疫学研究の第一人者・荒川央=ひろし=著「コロナワクチンが危険な理由」花伝社)。

 

米政府などは12日、新型コロナウイルス対策を話し合う第2回首脳会議をオンラインで開催した。参加した各国や関係機関などは計32億ドル(約4100億円)のコロナ対策資金を新たに拠出すると表明した。コロナ収束に向けた対策を継続し、新たな感染症のパンデミック(世界的大流行)や変異株に備えた対応を進めることも確認した。



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