PCR検査に保険適用でも検査数の増加は期待できない(追加・補強)

昨日3月6日から新型コロナウイルスに感染しているか否かの判定に欠かせないPCR検査に保険が適用されることになったが、現在最も必要な検査数の増加には期待できない。検査数の増加が期待できない理由は、医師が検査が必要と判断する来院患者が極めて限定されているからだ。

安倍首相は2月29日の記者会見で「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」と述べた。これについて、参議院の予算委員会で3月3日に日本共産党の小池晃書記局長(参院議員)が本当なのか追及したが、首相はあいまいな答弁を繰り返し結局、「いますぐできるとは申し上げていない」「私の会見を見れば誤解は生じない」と開き直る形で、実際はそうではないことを認めた。参院議員の小池書記局長は国民が正しく理解、判断できる言葉で語るべきだと首相を戒めた。これは、植草一秀氏がメールマガジン第2570号で指摘するように、「オレオレ詐欺」ならぬ「やるやる詐欺」だ。

朝日デジタルによる

実際のところはこうである。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が先月の2月25日に発表した内容によると、PCR検査を受けることのできる患者は、➀風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む)②強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある【ただし、高齢者や心臓疾患、糖尿病などの持病を抱えている患者は2日間】-に限られるとした。この基準は同検査に保険適用が開始される6日以降も変わっていない。

新型コロナウイルス

こうした既に症状が重い患者のみが、地方自治体管轄の保健所に相談、全国で11万ある医療機関の中で860程度しかない感染防護の整った帰国者・接触外来のある医療機関(公表されていない)の紹介を受け、帰国者・接触者外来を受診することになる。受診でPCR検査が必要と医師が判断すれば、保険適用前は保健所が最終的に判断して各都道府県などに設置している地方衛生研究所などでPCR検査を受けることになっていたが、その数は1カ月で1機関当たり2人にも満たない。

保険適用後は、医師がPCR検査が必要だと判断すれば、全国に900施設ほどある民間の検査専門会社に検査を発注できる仕組みだ。風邪の症状が出た国民で症状の軽い人はひとまず、自宅待機を命ぜられる。これまでは、単なる風邪なら多少の無理は効いたが、新型コロナウイルス感染が拡大している現状では不可だ。出社等を行ってもまず入室は不可能。しかも、正規社員ならまだしも非正規社員ならまず、休業補償は出ない。

これでは、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたSARSウイルス(コロナウイルス)の亜種である新型コロナウィルスに感染し、重篤な新型肺炎にかかってからPCR検査を受けることになる。治療にはもちろん必要だが、感染拡大防止には役立たないことは明らかだ。検査費は国庫負担というのだから、風邪の症状のある希望者がだれでも受けられないというのは当然のことだろう、というのが政府=安倍政権の言い分だ。要するに、感染確認者数を最小限に抑えることが、安倍首相が本部長を務める新型コロナウイルス感染対策本部の最上位の目標であることに、変わりはない。この本部を支える専門家会議で、スイスの大手製薬会社ロシュが開発した検査ツールの話が出ないか、出ても公表されないのも不思議だ。

世界保健機関(WHO)の調べや日本の医療機関などで、新型コロナウイルスに感染してもSARSほど症状は重くなく、到死率も高くないとの発表を行うところもある。また、1人あたりの感染者が他の人を感染させる数を基本再生数というが、東京新聞では1.4人から2.5人との数字を7日の新聞に掲載している。また、朝日デジタルや東京新聞などメディアが伝えるところによると、抗HIVウイルス薬「カレトラ」や喘息の治療に効く吸入ステロイド薬「オルベスコ」などが治療に有効の可能性があるという。しかし、医学的根拠は不明だし、基本正整数も4人とする感染症専門家もいる。

要するに、新型コロナウイルスには医学的・免疫学的に確信をもって公表できる内容、数字がまだ、存在しないのだ。このため、風評被害が広まり、マスクや消毒液はもちろん生活筆所品の売り惜しみ、買いだめ、インターネットオークションでの高値販売が起きる。また、政府=安倍政権の対応も支離滅裂だから、感染者防止どころか拡大に貢献している。こんな状態だから国内外の経済社会情勢は悪化、麻痺し、内閣府が発表した今年1月の景気動向指数は6カ月連続で悪化になる。誰が感じても現在は景気後退局面だが、これを数字で裏付けた形だ。

新型コロナ感染者受け入れ医療機関の患者退院の判定図

菅義偉官房長官は、「現時点では」新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正しても、強権発動・人絹制限になる非常事態宣言は出さないとしているが、戦後史上極めて特異な政府=安倍政権であるだけに、蓋は開けてみるまで分からない。

※追伸
なお、政府=安倍政権は4月に予定されていた中国の習近平国家主席の来日が(今年秋に)延期になったことを受け、5日に開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で、遅きに失した中国の国民(人民)、韓国国民、両国に滞在履歴のある外国人の入国を禁止した。日本の中枢である東京が感染源になっているのは、城南地区の個人タクシー業界が1月に屋形船で開いた新年会の際、それ以前に中国人を接待し、濃厚接触を行ったためにウイルスに感染した従業員がいたからである。

米国はWHOが新型コロナウイルスの危険性を勧告すると直ちに、中国全土中国に滞在履歴のある外国人の入国を禁止する水際対策を行った。まともな内閣=政権なら、外交ルートを通じて習近平国家主席の来日を直ちに延期し(中国当局も対策に追われており、トップが日本を訪問する余裕はなかったと思われる)、同時に中国国民(人民)の入国制限を打ち出したはずだ。それが、水際対策というものであろう。しかし、今の政府=安倍政権は外交成果として「政権の得点を上げる」ためにまともな水際対策をうちだすことなく、ざるに水を汲むようなザル対策しか採らなかった。その初動対策の誤りは致命的だったというほかはない。

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