感染者発生数を抑制している厚労省、19日にも自粛解除は矛盾

厚生労働省が公式サイトの新型コロナウイルス感染者数を発表した内容によるとでこのところ、1日あたりの感染者数が減少している。こうしたことを受けて新型コロナ感染症対策症専門家会議につのり、同会議は2月24日が「ここ1〜2週間が瀬戸際だ」と述べた最終期日に当たる3月9日に公式見解を表明。「本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえている」との見解を示した。しかし、これは6日にPCR検査への保険適用を解除してからも、検査に厳しい制限をかけているうえでの見解であることに留意が必要だ。

朝日デジタルによると、3月9日午後10時半現在の豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号の乗員・乗客、中国武漢市からのチャーター便での帰国者の中の感染者数を合わせた国内の感染者の数字は下記の表の通りだ。

このうち、高齢者の方を中心に亡くなられた方は13人。感染症のひとりは20代の若者だが、新型肺炎ではなく「髄膜炎」に罹患している。病院では極めて重要な事実として、警戒を強めている。なお、大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号は3月1日に沖縄県の那覇港に入港、入国手続きと防疫を行っている。入国手続き以降は内船であり、同船での感染者は国内感染者数に入れるべきだが、厚労省のサイトでは国内感染者数の数字から除外している。

さて、厚労省のサイトから3月1日以降の国内感染者数を表にまとめる(ダイヤモンド・プリンセス号等は除く)と、次のようになる。

日付 1日あたりの感染増加者 感染者累計
3月1日(日) 15人 232人
3月2日(月) 10人 241人
3月3日(火) 16人 257人
3月4日(水) 30人 287人
3月5日(木) 26人 313人
3月6日(金) 53人 366人
3月7日(土) 42人 408人
3月8日(日) 30人 438人
3月9日(月) 19人 457人

この表から見ると、国内感染者数は3月6日をピークに減り始めていることになる。そこで、専門家会議は現状について「一定程度、持ちこたえている」と判断し、今後の見通しについては、➀国内での急速な感染拡大を抑制できたとしても、世界的な流行を完全に封じ込めることはできない②今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、世界的な流行が進んでいることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後繰り返されるものと予想される-と、日本自身には問題はなくなったかのような内容を、3月9日時点の正式見解として公表している。なお、1人の新型コロナウイルス感染者がウイルスの感染者を拡大する人数(基本再生産数)を1人とし、専門家会議以外の感染症対策専門の指摘する1.5人〜4人に比べればかなり低い数字を公式見解として表明していることを付け加えておきたい。

専門家会議はこの内容を踏まえて今月19日にも、「大規模イベントの自粛」や「全国の小中高校学校に対する一斉休校要請」、「北海道での緊急事態宣言を受けた対策」などの効果を分析したうえで、現在の対策を継続する必要があるかどうかなど、今後の方向性を公表する。

しかし、この専門家会議の公式報告には納得がいかない面が少くない。AFP通信は日本時間3月10日午前2時で次のように報道している。
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各国当局の発表に基づきAFPがまとめた統計によると、日本時間10日午前2時現在での世界の新型コロナウイルス感染者数は101の国・地域で11万3255人に達し、うち3964人が死亡した。

9日午前2時以降に確認された新規感染者数は4233人で、死者は173人。

昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生した中国では、香港とマカオ(Macau)を除く本土で8万735人が感染し、うち3119人が死亡。9日午前2時以降、新たに40人の感染と22人の死亡が確認された。中国以外では計3万2520人の感染者が確認され、うち845人が死亡。新たに確認された感染者数は4193人、死者は151人となっている。

中国以外で感染者が多い国は、上位から順にイタリア(感染9172人、死亡463人)、韓国(感染7382人、死亡51人)、イラン(感染7161人、死亡237人)、フランス(感染1191人、死亡21人)。

9日午前2時以降に新たな死者が確認された国は中国、イタリア、イラン、韓国、フランス、英国、イラク、スイス。さらにドイツでも同国初の死者を2人確認。アルバニアとキプロスでは初の感染者が確認された。

10日午前2時現在の地域別感染者数はアジアが8万9913人(死者3188人)、欧州が1万4868人(死者511人)、中東が7576人(死者244人)、米国・カナダが614人(死者16人)、オセアニアが98人(死者3人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が93人(死者1人)、アフリカが93人(死者1人)となっている。
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専門家会議では、日本で新規新型コロナウイルスの感染者増加が抑制されてきていることについて、➀医療技術の水準の高さ②感染対策体制の充実など-を挙げている。しかし、韓国やミラノなど北部地域の国民の移動が制限されたイタリアを始めとする欧州などは先進国であり、医療水準は高く、感染症対策も整っているのではないか。欧州や韓国では爆発的に感染者数が増加しており、死亡者も日本に比べてかなり多い。

ニューヨーク株式市場で3月9日、史上最大の暴落。トランプ大統領は休業補償など軌道的な財政政策を打ち出す方針

また、新型コロナウイルス感染に対して、金融・資本市場は極めて驚いている。新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格暴落への警戒感から、週明け9日のニューヨーク株式市場は、主要企業でつくるダウ工業株30種平均は、終値で前週末比2013・76ドル(7・79%)安い2万3851・02ドルで終了した。1日での下げ幅は、これまで最大だった今年2月27日(1190ドル)を抜いて史上最大となった。これを受けて、10日の東京市場も厳しい。午前中だが、同市場では日経平均株価が一時、700円超下落し、1万9千円を割り込んだ。取引時間中に1万9千円を割るのは2018年12月26日以来、約1年3カ月ぶり。前日9日の米ニューヨーク株式市場での大暴落を引き継いだもので、新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格の暴落(これも、新型コロナウイルスへの感染が世界で拡大、経済活動への萎縮で原油への需要が急減することが見込まれるのに、OPEC諸国が協調原産に合意をみなかったことが背景)への警戒感が高まっている。

為替市場も米国が利下げを行うとのニュースを背景に、9日の東京外国為替市場、円相場はおよそ3年4か月ぶりに一時、1ドル =101円台まで円高ドル安が進みました。10日午前中は、「(米国の)トランプ米大統領が給与税減税を10日に議会と協議する」などと米主要メディアが報道したことや、日本の輸入企業の見切り売りで、円は1ドル=103円程度に戻している。ただし、輸出企業の今年度の企業内為替レート予想値は1ドル=108円程度であり、消費税強行に追い打ちをかけた新型コロナウイルス感染禍で、今年の景気は大幅後退に見舞われることはほぼ確実だ。

欧州や韓国など先進国の新型コロナウイルス感染拡大状況や国際金融・資本・為替市場の狼狽ぶりと、新型コロナウイルスウイルス感染症対策専門会議の見解とはどうにもずれが生じていると言わざるを得ない。日本の公式数字には何か、トリックがあるのではないか-そう疑うのも当然だ。今回の専門家会議では集団感染ケースが発生するのは、➀換気の悪い密閉区間②多くの人が密集③近距離での会話や発生-の3つが重なった場合であるとし、こうした状況が重ならないように国民に注意を呼びかけている。しかし、2月24日の会議で開いた際に注意を喚起した、「これまでに判明している感染経路は、咳やくしゃみでの飛沫感染と接触感染が主体です。(中略)無症状や軽症の人であっても、他の人に広げる例があるなど、感染力と重症度は必ずしも相関していません」との内容がすっぽり抜けており、帰国者接触者相談センターの体制整備を要請するにとどまっている。

もちろん、PCR検査に施しているバリアー(障壁)の撤廃にも言及はない。要するに、新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判定するPCR検査は、すでに重い肺炎にかかっている罹患者か、その罹患者と濃厚接触をした友人・知人・会社員に限られていると見られる。要するに、PCR検査を受けたくても受けられない何らかの症状を持つ患者さんが、かかりつけの病院・医院を通して簡単に検査を受けるルートがなく、PCR検査を受けてきた患者さんが極めて少ないために、厚労省が公表した1日あたりの増加数は上のようにしかならないのではないか。

実際のところ、日本のPCR検査は次のように抑制されている。

朝日デジタルによる

既に述べてきたように、PCR検査を受けられるのは次の患者さんに限られている。
➀風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上(高齢者は2日以上)続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)②強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)-がある。ただし、高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合。こうした既に新型コロナウイルス感染の疑いのある患者さんが、かかりつけ医や保健所に相談して、各都道府県に設けられている帰国者・接触者相談センターをに相談、帰国者・接触者相談外来を紹介してもらい、外来診療に出かける。ただし、この帰国者・接触者相談外来ーは全国11万の医療機関のうち840〜860しかない。全国の都道府県に平均、18機関である。

新聞・テレビなどマスコミで報道される感染者は基本的に、重症化した中、基本的にこうした経緯で感染が確認されたものである。せきや熱など風邪の症状の出た患者さんは基本的に、勤め先を休み、自宅待機しなければならない。正社員ならまだしも、時給で給与が算定される非正規社員には休業補償はない。安倍首相は2月29日の記者会見で「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」と威勢よく語ったが、これは「やるやる詐欺」だ。3月3日の参議院予算委員会で、日本共産党の小池晃書記局長から追及されたが、発言の前後を読んで頂ければ理解できることと開き直った。

新型コロナウイルスについては、症状の段階に応じて効く治療薬が明らかになってきたことが報道されている。また、横浜市立大学では、新型ウイルスに感染が確認された患者さんから、ウイルスの抗原に対する抗体が発見されたとの報道もある。新型ウイルスに対する防疫医学上の正しい理解が重要であり、抗体をヒトの体内に確保できるワクチンを開発することが、根本的な医学上の対処法だろう。これに加えて、患者本人に過失はないことから、休業などにともなう休業補償や、金融・資本市場・為替市場の大混乱に鑑み、財政出動を含む経済対策を打ち出すことにも全力を挙げるべきだ。

しかし、新型コロナウイルスはSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こしたコロナウイルスの亜種だが、世界的な広まりから見て、SARSコロナウイルスよりもたちが悪い。また、防疫医学的な解明もまたまだこれからで、不透明な部分が多い。こういう初期の段階こそ、徹底的な情報公開が必要である。そのためにも、まさに、主治医のいるかかりつけの病院・医院で、医師の判断のみでPCR検査を受けられるようにする体制を整えることこそ、現在の新型コロナウイルス対策の基本である。感染確認者の数字を並べるだけでは、事態の悪化を防ぐことは難しく、日本の経済社会は消費税増税強行・新型コロナウイルス禍による大不況に沈んでしまうことになる。なお、3月9日に昨年第4四半期の実質国内総生産増加率(経済成長率)は前期比1・6%減、年率換算6・3%減から前期比1・8%減、年率換算7・1%減に下方修正された。新型コロナウイルス禍前の数字である。

※追伸
なお、こうした中、本日3月10日すぎの閣議で、政府=安倍政権は10日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案を閣議決定した。2年を限度に政令で定める日まで、新型コロナを同法の対象に加える。同日中に国会に提出。与党と一部野党と称する政党で合意しており、13日に成立する。菅義偉官房長官によると現状、今すぐ緊急事態宣言を発令する状況にないとしているが、上に述べたことから、感染者数抑制策が破綻すると、緊急事態宣言に到る可能性は極めて高い。

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