コロナ感染拡大スピード加速-不思議な日本のPCR検査数(補強のため加筆)

朝日デジタルなど各種メディアの報道によると、世界各国で新型コロナウイルス感染拡大スピードが加速してきたようだ。特に、米国が厳しい。朝日デジタルによると、「新型コロナウイルスの感染者数が27日、世界で50万人(累計)を突破した。各国政府の発表などをもとに集計している米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターなどによると、米国で感染が急増しており、日本時間同日午前7時の時点で、米国の感染者数は8万2404人となり、中国(8万1782人)やイタリア(8万589人)を追い越し、世界で最も多くなった」。日本でも公表数字だけでも、首都圏の中核・東京都で感染者数が拡大している。にもかかわらず、PCR検査はなお抑制されている。改正インフル特措法に基づく非常事態宣言発令は混乱を拡大するだろう。

その前に、「来年2021年夏までに開催」とされてきた東京オリンピックの実際の開催時期について、確定事項ではないことが明らかになってきた。朝日デジタルによると、開催権限を持つ国際オリンピック委員会の「IOCは26日、あと3週間程度で決めるとの方針を全委員や各競技の国際統括団体による会議で確認した。この日の会議では『真夏の開催は暑さが心配』として春の開催を望む意見や、新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期が不透明なことを踏まえ、来秋への先送りも視野に入れるべきだ、との声もあったという」。

要するに、来年に延期されたとしても来年のいつ開催になるのかは不透明なのだ。3週間程度で決めるということだが、その前提として、開催日の数カ月前には新型コロナウイルス感染拡大が終息することが医学的・科学的に明確にならなければならない。それは、3週間後に可能になるのか。

さて、小池百合子東京都知事が25日夜の20時、「感染者の爆発的拡大(オーバーシュート)の懸念」と「東京都封鎖の可能性」を記者会見で公式に発表してから、東京都と都に同調した神奈川県、埼玉県、千葉県で食料品など生活必需品の買い溜めが殺到し、首都圏は大混乱に陥っている。こうした中、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて26日、「政府対策本部」が設置された。狙いは、私権を制限できる「緊急事態宣言」を発令し、強権を発動することにあると予想される。

しかし、感染拡大防止と日本の経済社会の大混乱を阻止するためには、PCR検査と大規模な財政出動を迅速に発動することが不可欠だ。しかし、いずれも政府=安倍政権の下では全く動きが鈍い。

厚生労働省のサイトによると3月28日早朝段階のPCR検査、感染者数は下図の通り。

厚生労働省による新型コロナウイルス感染者の「公表値」=3月28日の段階

これを見ると、注に記載している2月18日~3月24日までの36日間の国内(国立感染症研究所、検疫所、地方衛生研究所・保健所等)におけるPCR検査の実施件数は44,562件で、1日当たり1238件。しかし、その上に掲載の検査人数の累計25,171件とは大きく異なる。厚生労働省のコロナウイルス関連の電話番号0120-565-653に問い合わせてみたが、厚生労働省の国家公務員ではなく委託業者に対応を任せているらしく、その大きな差がどうして生じてるのか、分からないとのことであった。

前者については、検査結果が記載されていない。そこで、上記表からPCR検査陽性人数に対する検査人数の比率を求めてみると、1292÷25171×100=5.1%。そこで、大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号での検査結果と比較してみる。乗員・乗客合わせて3711人全員に対してPCR検査を行ったとして、陽性の判定者(感染確認者)723人の比率を計算してみると、723÷3711×100=19.5%。政府=安倍内閣の大失態で同船では乗客・乗員が事実上閉じ込められており、また、初期の段階では乗客・乗員が船内を自由に行動できたために、感染が拡大しやすい状況にあったとは言える。

しかしながら、国内での検査結果とダイヤモンド・プリンセス号の検査結果で、陽性判定率に4倍も開きがあるということは信じがたい。基本的には、誤判定などを考慮しても、新型コロナウイルス感染者数はPCR検査などの検査数に比例するというのが常識だろう。しかも、上表では検査結果確認数のうち、コロナウイルス感染症が直ちに入院が必要な指定感染症に指定されているとは言え、入院治療を必要としているものが88.2%と圧倒的に多い。これは、症状の重い患者に対してしかPCR検査を行っていないことの現れと見て取れる。医療処置上、適切でないのは明らかだ。

※追記2020年3月28日午前5時15分
新型コロナウイルス感染症は、感染症法による「指定感染症Ⅱ」に定められている。この場合は医師の判断が基本だが原則、公費負担による入院措置が必要になる。3月27日12:00現在の厚労省の公表データでは無症状感染者148人のうち継続して入院治療が必要な患者は105人、有症状感染者1212人のうち継続して入院治療が必要な患者は837人の合計942人。この人数の感染確認者1387人に対する比率は、942÷1387×100=67.9%と70%弱。入院治療が継続して必要な患者を無症状患者と有症状患者に分けて割り算するとそれぞれ70.0%と69.0%。
無症状患者は感染ルートを確定するために行われたものと推察されるが、継続治療が必要な患者の割合が70.0%というのは相当に高い。こうした無症状感染確認者が意図せずして新型コロナウイルスの感染拡大に大きく寄与していると思われる。しかも、無症状感染者のうち継続治療の必要な感染者の比率も相当に多い。極端に言えば「PCR検査など必要はない」として政府=安倍政権の方針に間違いはないとの見解も流布されているが、こうした見解は政府=安倍政権側から流されていると思われる。
なお、小池都知事らが「オリンピックの延期」が公式に決まった途端、「感染者の爆発的増大(オーバーシュート)」「都市封鎖(ロックダウン)」の懸念を公式表明したのは極めて不自然だ。また、19日の段階では「何とか持ちこたえている」との基本見解を示し、PCR検査の積極的推進にも及び腰だった新型コロナウイルス専門家会議が「感染者の爆発的増大(オーバーシュート)」の可能性が高まったことを認め、改正インフル特措法に基づく「政府対策本部」の設置を容認したのも対策本部と専門家会議の連携プレーと見るのが妥当と言える。
2020年3月27日 21時22分の時点で朝日デジタルは、「新型コロナウイルスの感染者は、26日深夜から27日午後9時半までに新たに109人が確認された。1日の感染者が100人を超えたのは初めて。東京都では40人が確認され、3日連続で40人台、合計は299人となった。大阪府でも20人増えた」との記事をサイトにアップしており、政府=安倍政権は厚労省を使って公式統計でも「感染者の爆発的増大(オーバーシュート)」を煽りだしたと見るべきだろう。

政府=安倍政権のPCR検査のバリアー装置

日本では6日に検査に保険が適用になってもいまだに、帰国者・接触者相談センターの許可がないとPCR検査を受けられない。このように検査を抑制すると、感染確認者が極めて低く抑えられるのは自明の理だ。海外の報道機関では、「日本のコロナの謎」としてこの問題が報じられている。

世界保健機関(WHO)も、医師がPCR検査は不要と診断した場合のように、必要のない検査はする必要がないとしたうえで基本的には、新型コロナウイルス感染拡大防止の最重要項目としてPCR検査などの検査実際に行うことを位置づけている。政府=安倍政権が人命ファーストより東京オリンピックファーストで検査妨害方針を貫いていることは、感染拡大阻止対策としては重大な矛盾を含んでいる。

ただし、初動対策の誤りとこうした矛盾だらけの「対策」を続けている結果、「公式発表=大本営発表」によっても、東京都、大阪府、愛知県という日本を支える三大中核文科・経済圏で、観戦確認者の増加数が加速してきている状況になっている。

PCR検査などの検査妨害と財政出動が迅速ではない状況では、改正新型インフル特措法に基づいて政府対策本部を設置し、緊急事態宣言を発令しても効果はないどころか、逆に人命喪失と経済社会の大混乱に拍車を欠けるだけだろう。

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