志村けんさんは厚労省の指示通りで逝去された-国民生活よりも五輪優先

ドリフターズで活躍され、コメディアンとして国民を笑いと感動の涙に誘ってくださった志村けんさんが3月29日亡くなられた。心からご冥福をいのらせていただきたい。しかし、診察・治療の過程を振り返ると、厚労省の指示通りに診察・治療を受けておられたことが明瞭だ。つまり、厚労省に従えば亡くなる確率が高い、ということである。

在りし日の志村けんさん。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症に対する治療の基本原則は今年1月の日本国内での発生当時から全く変わっていない。厚労省のサイトを見れば未だに、次のように記載されている。

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➀②を目安に「帰国者・接触者相談センター」にご相談ください。
➀風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。
(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
②強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。
※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、風邪の症状や37.5℃以上の発熱が2日程度続く場合、又は強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合

センターでご相談の結果、新型コロナウイルス感染の疑いのある場合には、専門の「帰国者・接触者外来」をご紹介しています。マスクを着用し、公共交通機関の利用を避けて受診してください。
なお、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、 インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等に御相談ください。
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3月6日に保険適用後も、医師が治療方針の決定をする際に欠かせないPCR検査が必要だと判断しても、地方自治体の保健所に設けられた「帰国・接触者相談センター」に相談し、その許可を得なければ検査を受けられない。しかも、検査を受けられる機関は前後11万の医療機関のうち、「帰国・接触者外来」を持つ800程度の医療機関でなければならないというのが原則。

こうした特殊な「経路」が検査障壁になり、医師がPCR検査が必要だと判断しても受けられない場合が非常に多い。また、帰国・接触者外来を持つという特殊な医療機関での検査になるため、一般の医療機関で新型コロナウイルス感染症に対する防疫体制が整えることが困難になる。東京都で地域医療の中核を担っている永寿総合病院で大規模な集団感染が起こった。同病院が「帰国・接触者外来」を有していたかは不明であるが、仮に有していたとすれば、「帰国・接触者外来」に根本的な欠陥があるということになる。

もし、なかったのであれば、「帰国・接触者外来」を持たない病院は、新型コロナウイルスに対する防疫体制を確保出来る余裕がない(防疫体制の完備に必要な医療資源が供給されていない)ということになり、病院が新型コロナウイルスの感染源になるという事態になる。これは、日本でも「医療崩壊」をもたらすということになる。厚労省の「指導方針」は新型コロナウイルス感染者を見かけ上、抑制することに最大の力点が置かれている。これを抜本的に転換するとともに、軽症の場合の自宅待機などのための休業補償を大規模かつ迅速に行うことが肝要である。

さて、志村さんの場合だが、

経過日時 症状・検査
3月17日 倦怠感の症状があったため、自宅静養。(発症日)
3月19日 発熱・呼吸困難の症状が出現。
3月20日 訪問診察をした医師の判断により都内病院に搬送。重度の肺炎との診察を受け、入院。
3月23日 新型コロナウイルス検査陽性が判明。
3月24日 保健所による調査が行われ、発症日と濃厚接触者の特定が完了。
3月下旬 一部の「報道機関」により「回復しつつある」との楽観論が流布される。
3月29日夜 新型肺炎により逝去

となっている。発症してPCR検査を受け陽性との判定が出るまで7日(1週間)もかかっている。持病をお持ちだったと伝えられていることから、「強い倦怠感」はに新型コロナ感染症の症状のひとつであるから17日火曜日に倦怠感の症状が出てきた時点において、訪問医に相談するかまたは訪問医の医療機関で診察を受けるべきだっただろう。

しかし、厚労省の診察・治療方針は「高齢者や基礎疾患等のある方は、風邪の症状や37.5℃以上の発熱が2日程度続く場合、又は強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合」に「接触・帰国者相談センター」に相談するのが原則になっていること、また、高齢者の場合は真面目だから、この厚労省の診察・治療方針に従われた可能性が濃厚である。厚労省の方針が、高齢者でありかつ持病を持たられている方はすぐにPCR検査を受ける、また、即座の検査に必要な体制を確保することに力点を置いていたら、「逝去」という事態は避けられたかも知れない。

元国民新党代表であり、自民党の政調会長も務められた亀井静香元衆院議員は月刊日本4月号で、「現時点では、日本で新型肺炎によって亡くなった方は19名だと報道されています(注:3/30 23:45時点では59人。ダイヤモンド・プリンセス号を加えると69人)。しかし、政府はきちんと検査をしていないから、新型コロナウイルスが原因で亡くなったにも、数に含まれていない方もいると思う。実際はもっと多くの方が新型肺炎でなくなっている可能性もある。私たちは全力をあげて新型コロナウイルスに対処しないと、あっという間に滅ぼされてしまう。日本という国家が死滅してしまう。それくらい危機的状況です」と厚労省の公表数字の問題点を指摘しながら、強い危機意識を発している。

さて、延期になった東京オリンピックが来年7月23日開幕する予定が30日、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会、東京都、日本政府=安倍政権の間で正式に決まった。ただし、これはあくまでも開幕予定日が決まった以上のことでしかない。延期開幕が実現するのは、第一に新型コロナウイルス感染拡大が終息していなければならない。森喜郎大会組織員会会長も、「神頼みみたいなところはある」と認めざるを得ない状況だ。仮に、1918年から終息に2年ほどかかったスペイン風邪の再来のようになれば、今度は延期ではなく中止の選択肢しかなくなるだろう。

第二に、オリンピック大会の延期には少なくとも数千億円のコストがかかる。中止するよりも、追加コストが大きくなるだろう。日本の大会組織委などでは、IOCに追加出費を期待しているが、IOCは今年夏開催予定だったマラソン・競歩の会場を酷暑が予想された東京から札幌に移した際に、会場変更の費用は出し渋った経緯がある。こうした過去の例からすれば大会延期費用も結局、税収が大幅に落ち込むことが確実な日本国民、東京都民が負担しなければならなくなることは確実である。

ところで、安倍首相は28日の記者会見で、国民に対して、多大な負担のかかる大きな大会やイベントの自粛を要請しておきながら、「イベント中止に伴う損失を税金で補償するのは難しい」と臆面もなく述べた。血税をポケットマネーと同一視しているのでない限り、こうした発言が出てくるはずはない。三権分立の否定を進めている安倍政権にとっては当然の発想だが、オリンピックに国税、住民税の血税を費やすくらいなら、イベントなどの中止で大打撃を被るフリーランサーの休業補償に回して当然だろう。

小・中・大学校の授業再開も再び延期される見通しだが、順序としては一斉休校になった場合、特に小学校児童、障害児のための特殊学級・学校の児童・生徒の面倒を見なければならず、勤め先を休業しなければならない両親を中心とした家族の休業補償、学校に給食を納めている農家や食品事業の補填をあらかじめまとめたうえで、休校措置を発表し、踏み切るというのが筋だ。

オリンピック、パラリンピックの強行開催で、最も緊急を要する新型コロナウイルス対策は支離滅裂、休業補償対策は後回し。これが、政府=安倍政権、小池都知事を中心とした都の実態である。政府=安倍政権は4月上旬にもまた「緊急経済対策」を打ち出す予定とされているが、国民はその内容をしっかり見極める必要がある。

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