河井参院議員秘書に有罪判決、河井夫妻逮捕は18日か19日−都知事選にも重大な影響

各種メデイアの報道によると、昨年7月の参院選で初当選した自民党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=の公設秘書・立道(たてみち)浩被告(54)に対して広島地裁の冨田敦史裁判長は17日、公職選挙法違反(買収)に当たるとして懲役1年6カ月執行猶予5年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。これに関連して河井克行元法相(57)と河井案里参議員も国会閉会後の18日か19日同じ容疑で逮捕される見通し。18日告示の東京都知事戦で「無所属出馬」ながら事実上、自公両党の応援を受ける小池百合子都知事に対しても批判が強まり、都知事選も重大な影響が生じる公算が大きい。

朝日デジタルが2020年6月17日5時00分に投稿した「河井案議員、失職の可能性 公選法違反、秘書に有罪判決 量刑、連座制適用の対象」と題する記事によると、「立道被告は、案里氏の夫克行前法相(57)=衆院広島3区=の政策秘書だった高谷真介被告(44)=同罪で公判中=らと共謀。昨年7月、車上運動員計14人に対し、法定上限の2倍となる1日あたり3万円(総額204万円)の違法な報酬を支払った」との判決を下された。

弁護側は控訴も検討しているが、最終判決が確定すればまず、河井案里参院議員は連座制に問われ、失職し、5年間は選挙に立候補する資格を失う。この事件はもともと、河井前法相側が自民党本部から1億5千万円相当の「政治資金」を受け取り、昨年夏の参院議員選挙で安倍晋三首相と対立している溝手顕正参院議員(当時、5期の自民党重鎮)を落選させるために、地元の地方自治体(県、市)の首長や地方自治体議員に大規模な買収工作を展開したことが発端。

ヤフーニュースが2020年6月16日20時35分に配信した「アエラ・ドット」の記事によると、「案里氏の参院選の時の選挙収支報告書によれば、案里氏が支部長となっている自民党広島県参院選挙区第七支部が選挙運動の費用として支出したのは2688万円あまり。自民党から支出された、1億5千万円とは大きな差額がある。またもや国民不信を招く政治とカネの問題だ」。使途不明な差額が巨額すぎるが、広島県の検察庁が東京、大阪地検特捜部の協力を得て、そのうち少なくとも2000万円以上は地元の地方自治体の首長や議員が受け取っていたことが判明しており、自民党の党本部も捜査を受けたことがある。

河井夫妻は今になって自民党を離党すると発表したが、検察側は大規模な自民党本部側から買収工作の指示がなさられた可能性が強いと見ており、全容解明のため河井克行元法相・河井案里参院議員を東京都知事選挙の告示日である18日か、都知事選に影響を与えるとして19日のいずれかの日に河井夫妻を逮捕すると見られている。稲田伸夫検事総長、林真琴東京高検検事長の決意が問われるところだ。

その場合は、政府=安倍政権にも重大な影響を及ぼす可能性が高い。コロナ禍対策のために今通常国会の延長を求めていた野党側の正当な要請を振り切って、本日17日国会を閉じるのも、河井夫妻逮捕の衝撃を和らげる狙いがある。しかし、日本国憲法第五十三条に定める臨時国会開催の要件(「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」)を満たせば、臨時国会は開催しなければならないとの那覇地裁の判決が6月10日に出ており、裁判所としての最終判断ではないが常識的には、今度は臨時国会を開かなければならなくなる。

朝日デジタルより

自民党内では、このところ、小中高校の一斉休校など党内に一切相談なく経済産業省出身の首相補佐官の提言を頼りに独断で重要事項の決定をする安倍首相と「女房役」である菅義偉官房長官との亀裂は、修復のめどが立っていない。また、同党内には比例代表選の出馬年齢を引き下げる動きも出ており、これは二階俊博官房長官の動きを封じ込める狙いがあると見られる。各種のメデイアで安倍首相は8月に内閣改造を行う意向と報道されているが、これに対して河井問題にはかかわりがないと見られる二階俊博官房長官、菅官房長官、石破茂元幹事長らが、巻き返しの「クーデター」を挙行する可能性も強まっている。

自民党内では一挙に党内政局が展開する公算が大きい。こうした事情は18日告示の東京都知事選挙にも重大な影響を及ぼす。現職の小池百合子都知事は党内の政争を避ける狙いから「無所属出馬」しているが、事実上二階幹事長の支持を得ての出馬であり、今回の都知事選は、コロナ禍のためインターネットが舞台になると言っても党内政局は当然、小池陣営の選挙運動にも重大な影響を及ぼす。前回の都知事選や都議会議員選挙で小池氏から重大な痛手を被った自民党東京都連は既に二階幹事長に白旗を上げているが、その中にはなお、小池都知事に反発している都議たちも少なくないからだ。

こうした反小池陣営の動きによっては、小池陣営の選挙活動にも当然、支障が出てくる。また、自民党内の抗争や「政治とカネ」の問題、さらには逮捕されるような人物を法務大臣に任命した安倍首相の任命責任は重大で、首相としての脂質が問われる。「任命責任は私にある」とだけ喋って、何の責任も取らないこれまでの繰り返しを行えば、国民の反初は当然、一層激しくなる。また、①自民党支持層の同党離れ②無党派層内の反自民表の拡大③事実上の日本維新の会の候補である小野泰輔前熊本県知事との票の分捕り合戦④れいわ新選組の山本太郎代表が都知事選に参戦したこと−などから、圧勝と見られてきた小池陣営にも「黄信号」が灯り始めている。

小池百合子東京都知事
れいわ新選組・山本太郎代表

また、小池百合子都知事が15日の選挙公約記者会見の最後に「公開」した卒業証書、卒業証明書について疑問が持ち上がっているという(https://biz-journal.jp/2020/06/post_163029.html)。引用させていただくと、「卒業証書では卒業年月が『1976年10月』と記されていますが、小池氏は過去の著書で“72年10月に1年生としてカイロ大学に入学”“1年目に落第して進級できなかった”と記しており、小池氏が卒業した文学部社会学科は4年制のため、もし通常のプロセスで卒業したのであれば入学4年目に当たる76年に卒業したというのは辻褄が合いません」。

ノンフィクション作家・石井妙子氏の「女帝・小池百合子」の内容からすれば、小池氏が学歴を詐称している可能性は極めて高い。その小池氏は今、自民党の総裁を目指して自民党と癒着を強めている。評論家の小池信夫氏も指摘しているが、その「学歴詐称問題で『アラブの春』を破壊したエジプトの軍事政権(2018年の2国間政府開発協力援助額は2億9500万ドル)に運命を握られているとすれば、小池氏だけではなく、日本国家にとっても極めて由々しき問題だ。

なお、山本太郎代表の公約については「バラマキ」との批判が小池陣営から流されている。これは、緊縮財政が正しいという古い考えの持ち主が山本代表攻撃のために先導しているものだ。山本代表の考えは、①東京都には20兆円程度の地方債を発行する資格はある(18%以下が総務相の許可なく発行できる実質公債費比率は東京都の場合1.5%程度で全国平均の10%程度よりはるかに低い)②時の内閣に対して、全国の都道府県の先頭に立って、新型コロナウイルス感染の拡大を「災害」として政令指定させる③MMTに基づいて、通貨発行権を持っている政府に対して大規模な財政支援を行わせる。そのことによって、日本がデフォルトに追い込まれることはない。このことは、財務省も認めている−などである。

この考え方が、山本代表が、日本最大の中核都市である東京都知事選に出馬することと「総理大臣」になると発言してきたことと矛盾しないと説明した理由だ。

政府=安倍政権の終わりの始まりは今後、どんどん進むと見られる。

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