河井克行前法相・案里参院議員起訴も釈然としない検察−「交付罪疑惑」で「本丸=自民党」攻め入るか?

河井克行前法相と河井案里参院議員が昨夏の参議院選で広島県の市町村の首長、議員ら100人に総額2901万円の買収資金を供与した疑いで東京地検特捜部は18日、河井夫妻を起訴した。しかし、本件の最大の問題は「本丸」である自民党本部からの1億5000万円の供与が「交付罪」に相当することを検察が立件することであるが、検察が収賄側の市町村の首長、議員らの立件を見送ったことなどから、「本丸」への追及の手を緩める可能性が高くなってきたことだ。

朝日新聞7月9日付の関連記事を総合すると、東京地検特捜部は前法相の河井克行被告は2901万円、参院議員の河井案里被告は170万円の合計2901万円を市町村の首長、議員に対して、河井案里参院議員候補者(当時)を当選させる目的で買収資金として供与したと見ているとしている。

7月8日、東京地検特捜部から起訴された河井克行前法相被告と河井案里参院議員被告

同紙によると、昨年7月の総選挙に向けて自民党本部は河井案里候補陣営に史上最大級の1億5000万円の資金を提供していた。その内訳は、昨年4〜6月に河井案里候補が代表の党支部に合計7500万円、河井克行前法相が代表の支部に4500万円であり、合計1億2000万円は国民の血税が原資の政党助成金。また、河井克行前法相には自民党の一般会計(自民党が集めた政治献金などが収入の大半)からも3000万円が振り込まれた。

これらを合計した1億5000万円から東京地検特捜部の捜査で2901万円が買収資金として使われている。残りの1億2099万円の使徒も問題になるが、河井案里被告はポスターの作成や党広報紙のポスティング、電話かけなどの「政治活動」に使ったと説明しているという。しかし、そうした政治活動に約1億2100万円もの巨額の資金が必要なのか。同特捜部はこの使途についても、徹底的に捜査・解明すべきである。

しかし、同紙によると、ある検察官部は「金に色はついていないので、一度口座に入ってしまえば、その先の解明はなかなか難しい」と話しているとして、残る1億2000万円の支出先の捜査・解明に、東京地検特捜部が及び腰になっていることを示唆している。

しかしながら、これに対して野党側から、国民民主党の小沢一郎衆院議員が2日のツイッターで「使い道はもちろん、異例の金額である1億5千万円の提供を誰がどう決めたのか、決定の過程や金額の内訳を有権者に明示する義務がある」とし、「総理がいま一番恐れているのは、自分が辞めた後、犯罪の証拠が次々に明るみに出て、訴追されることである」とも付け加えている。

昨年7月の参院選広島選挙区で河井案里候補の応援演説を行う安倍晋三首相(https://ameblo.jp/kin322000/entry-12600249698.htmlより)

敏腕検事として知られ現在、郷原信郎コンプライアンス法律事務所の主任弁護士である郷原信郎弁護士などの識者によると、法務相経験者が逮捕・起訴されるという前例のないこの贈賄事件は、参院議員を5期務め、参議院自民党幹事長も経験した溝手顕正参院議員(当時)が、①2007年夏の参院選で小沢民主党に惨敗しながらも続投に拘泥した安倍首相に対して、当時防災相で内閣の一員でありながら、痛烈な批判を行った②2012年2月25日の読売テレビの番組で、早期の話し合い解散を主張した安倍晋三元首相 について、「もう過去の人だ。主導権を取ろうと発言したのだろうが、執行部の中にそういう話はない」と述べ、不快感を示した−ことなどで、安倍晋三首相の恨みを買っていたことが発端とされる。

参議院議員広島選挙区(2人区)は、自民党と野党で1議席ずつ分け合っていたが、自民党執行部が2議席独占するという名目で急遽、河井案里氏を候補に立て、溝手参院議員(当時)の刺客として送り込んだ。河井案里候補を当選させるため万円をには、溝手陣営を切り崩すしかないことは当然だ。そのため、溝手陣営の主要人物らに対して買収工作を幅広く展開したという見方が世間に根付いている。また、安倍事務所から河井案里候補陣営に多数の選挙支援要員が派遣されたことも周知の事実だ。

このことは、通常の10倍に相当する1億5000万円もの資金が供与されたこととも符合する。また、自民党の選挙責任者である二階俊博幹事長も当初は、「党本部の公認会計士が各支部の支出をチェックしており、買収に使われることはあり得ない」と「説明」していたが最近は、資金を支部に提供した後、「その先までは党は承知していない」と前言を翻し、買収に使われたことを認めるような発言に切り替えている。要するに、トカゲの尻尾切りだ。

公職選挙法二百五十二条第五項では、「第一号から第三号までに掲げる行為(注意:選挙で特定の候補者を当選させること)をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき」は「三年以下の懲役若しくは禁又は五十万円以下の罰金に処する」という「交付罪」の規定がある。

検察庁(実働部隊は東京地検特捜部)に検察官としての使命意識があれば、1億5000万円を交付した自民党本部の責任者(安倍総裁か二階幹事長)はこの「交付罪」に問われる公算が大きい。郷原弁護士も当初。検察庁は「ルビコン川」を渡ったとして、「本丸」に攻め入る可能性は高いと見ていた。


しかし郷原氏は、①選挙区住民に対して公設秘書に香典(300万円相当)を配らせたことが集荷審に報道され、経済産業大臣を辞任した菅原一秀衆議院議員(東京9区、練馬区が中心地域)が不起訴(起訴猶予)になった(ただし、郷原氏自身は検察審査会に図れば、起訴相当または不起訴不当になるとしている)②広島県市町村の首長や議会議員を立件しなかった−ことなどから、検察が「本丸」までは立ち入らない可能性もあることを示唆している。

もし、検察が本来の使命を棚の上にあげ、「元の検察」に戻れば、日本では「上級国民」は逮捕されて取り調べを受けることはない、ましてや起訴されることはないというこれまでの「暗黙の慣例」が続くことになる。

日本を民主主義国家ではなく暗黒国家にしてきたのは、①検察に政界と結託した大幅な裁量権(罪あるものを起訴しない、または、罪なきものを起訴すること)を与えられていること②大手マスコミが時の政権の意向を忖度し、広告収入が減ることを恐れて、「社会の木鐸」として機能していないこと(朝日の社説は安倍首相の説明責任を厳しく追及しているが、「交付罪」の可能性があることについては明確な言及がない)③民主主義制度が連合国総司令部(GHQ)によって上から与えられたものであるため、国民の中に民主主義が根付いていないこと(選挙の投票率がどんどん低下していることに象徴されている)−が主な理由と見る識者は少なくない。

サイト管理者(筆者)もそう理解している。9月解散・10月総選挙が喧伝されるのも、安倍政権と検察の間で密約が交わされているのかも知れない。検察が本丸に攻め入る動きを見せなければ、国民は重大な決意を持って時期解散・総選挙に臨まなければならない。

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