コロナ第二波全国に拡大、抜本的コロナ禍対策打てない安倍政権−政権維持の9月総選挙への備え急務

連休最終日の7月26日、全国の公表新型コロナ感染者数は「午後11時10分の時点で新たに836人が確認された。23日の981人に次いで過去2番目に多く、累計では3万人を超えた」(朝日デジタル2020年7月26日 23時18分)。政府=安倍晋三政権は、西村康稔経済再生担当相が経済界に対してテレワーク(在宅勤務)の導入7割、時差出勤などこれまでの「コロナ禍対策」を繰り返すのみで新規軸は当然、打ち出せていない。追い込まれ解散を阻止し、政権基盤を強化するため、あえて9月解散、10月(25)日総選挙に踏み切る公算が大きい。野党側はこれに対抗できる備えが急務だが、基本政策合意なしの数合わせのための立憲民主党、国民民主党の再合流の動きもある。しかし、安倍政権が有効なコロナ禍対策を打ち出せない根本的理由は誤った緊縮財政政策に陥り、抜本的コロナ禍対策には欠かせない財源措置を講じることを避けているためだ。野党側が政権奪取するためには、財源措置を明確にした抜本的コロナ禍対策などを共通政策にすべきだ。このための有効な政策をとして、ケインズ理論を発展させた「現代貨幣理論」の日本への創造的適用が有効と思われる。

東京都は239人だったが48%のほとんどが40代以上の都民で、感染経路不明者は144人の60%。東京都と同様に新規感染者数が急拡大している大阪府の新規感染者「141人のうち、約6割の87人の感染経路が分かっていない。(中略)退院時の陰性確認を除く検査件数は1083件で、陽性率は13・0%」に上った。東京都は7日移動平均で6.3%だが、この日に限った陽性率は公表されていない。

全国の新型コロナ感染者の推移は、NHKのサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/)に示されている。スライダーをずらせば、感染が始まった今年1月からの日ごとの推移を視ることができる。

NHKサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/)より。

◎追記:朝日デジタル2020年7月27日14時41分に投稿された「東京都の新規感染者131人 7日ぶりに200人下回る」と題する記事によると、小池百合子都知事は同日の新型コロナ感染者数が131人であることを明らかにしたという。ただし、「感染者が急増するなか、入院患者は24日、5月17日以来となる1千人を超えた。26日時点で1165人にのぼり、今月1日時点(280人)の4倍超まで増えている」状況だ。
なお、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日間の移動平均で27日の感染者数は新規感染確認者(陽性者数)は252.3人、陽性率は6.5%になっている。


政策提言で有名な政経アナリストの植草一秀氏のメールマガジン第2690号「 単なる野党結集ではダメな理由」では、安倍政権の基本政策として「対米隷属、原発推進、弱肉強食奨励」を指摘し、そのうえで野党側が「対米自立、原発廃止、共生重視」の基本政策で大同団結することを提示している。

対米自立に関しては取り敢えず、在日米軍基地を「治外法権化」している「日米協定の抜本的見直し」から始めるべきだとの指摘が強い。これはその通りだろう。また、福島第一原発事故による原子力緊急事態宣言が未だ解除されず、原子力発電所が吐き出す放射性廃棄物の処理技術確立が事実上不可能な状況では、原発廃止(原発稼働即時停止)は当然だ。ただし、国民、立憲が依存している日本労働組合総連合会(連合)傘下の電力総連の圧力を食い止める必要がある。

さらに、「共生重視」のためには、「共生主義」に立った経済政策の抜本転換=緊縮財政路線から新しい積極財政路線=への転換が欠かせない。この経済政策の抜本的転換こそが、新型コロナウイルス拡大防止と経済活動の両立を可能にし、日本経済が未曾有の大不況(場合によっては大恐慌)に陥るのを防ぐ唯一の手段である。

そのために、「貨幣についての事実」を正確に把握し、そのうえでケインズ理論を発展させた「現代貨幣理論=MMT」を日本に創造的に適用し、「失われた30年=デフレ不況の長期継続」を克服できる正しい財政・金融政策、構造政策を展開することが必要になるだろう。

MMTは1990年代前後から提唱されてきた経済理論だが、1998年の米国中間選挙の下院議員選挙でアレキサンドリア・オカシオ=コルテスがMMTの重要性を主張し、政府による積極的な財政拡大(グリーン・ニューディール政策)を提言、史上最年少で下院議員に当選した。このことから、善かれ悪しかれ一躍有名になった。彼女のツイッターは300万人のフォロワーを抱え、動画再生回数も4000万回を超えている。

MMTを訴えて米国の2018年中間選挙で当選した史上最年少下院議員

日本でもその影響を受け、2019年に入ってMMTが政界(国会)やマスコミにも登場するようになり、昨年の国際会議をきっかけに米国でMMTを提唱している経済学者を日本に招待して国際会議を開いたことをきっかけに冷静で有効な議論が広まり始めた。日本でも各種の解説書が発刊されてきているが、京都大学大学院の藤井聡教授の「MMTによる令和『新』経済論』」が好著だ。

日本では提唱者で米国の経済学者であるランダル・レイが著した「現代兵経済論入門」が定番だが、この原著と翻訳書を日本経済の長期にわかるデフレ不況の克服策を含めて、基礎理論(実務的・歴史て実証からの貨幣=通貨の本質と貨幣・国債発行の実務の紹介)と政策論を分かりやすく著述した著作が、前述の藤井教授の著作だ。同著作に従って、取り敢えず、最も基本的な骨子を紹介しておきたい。

日本銀行

第一は、現代国家での「紙幣」とは(中央政府と中央銀行とで構成される)「国家」が作り出すものである。
第二は、「政府は、自国通貨建ての国債(の発行)で破綻することは、事実上あり得ない」(日本政府が、日本円建ての国債の発行で(財政)破綻してしまうことはあり得ない)。
第三は、国債管理はその発行高によって行うものではなく、国債発行に基づく政府支出がインフレ率に影響するという事実を踏まえつつ、「税収」ではなく「インフレ率」に基づいて財政支出を調整すべきであるという新たな財政規律(機能的財政論)を主張する経済理論である。
第四に、あらゆる国民の賃金が一定水準以上となることを前提としつつ、財政金融政策と市場環境政策(構造政策)の双方を通して、循環するマネー量(貨幣循環量)を安定的に少しずつ拡大させることを通して「インフレ率」を適切な水準に整え、国民の暮らしの安定化と国民経済の安定的な成長を目指す。

なお、第二については、財務省も認めている。

財務省のサイトによる

以上が、藤井教授の著書を通した「現代貨幣経済論(MMT)」の骨子だ。同教授は、主流派経済学の理論家ととケインズ派経済学の理論家の長年にわたる対立・抗争の末にMMTが登場、「政府の財政赤字は政府の貨幣供給量を意味しているのだから、当然ながら経済成長を導く。これは誰も否定できない事実だ。しかも、徴税権を持つ政府が、全ての貨幣の価値の源泉となる現金を創出している(通貨発行自主権)のであり、その創出主である政府が、貨幣(注:加えて国債発行)によって破綻することなどあり得ない。これまた、何人たりとも否定できない事実ではないか」と主張したと解説。

そのうえで、「はっきり言って、このケインズ派と主流派経済学者達の間の論戦は、理論的にこれで完全決着を見たと言ってよい」と述べ、MMTの学説史上の位置づけを説明している。

本サイトの管理者(筆者)も、この現代貨幣経済論(MMT)の正しい理解と普及に努め、コロナ禍と長期に渡るデフレ不況の克服の一助とさせていただきたいと思っている。

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