菅首相所信表明・学術会議任命拒否問題言及なし、温室ガスを根拠に原発新増設推進もー秘密警察独裁国家目指す

菅義偉首相が26日召集の所信表明演説で、日本学術会議会員任命拒否事案に触れなかった。また、地球温暖化対策として「2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする」ことを大義名分に原発利用推進を強調した。原発の新増設も視野に入れているのだろう。コロナは「足元では新規陽性者数は鈍化している」ことを認めざるを得なかったが、ワクチンを「来年前半までに全ての国民に提供できる数量を確保する」と明言しており、危険性も指摘されているワクチンの強制接種も辞さない覚悟を示した。目指すは、新自由主義政策の集大成としての「秘密警察独裁国家」の樹立だ。

10月27日火曜日0

10月27日火曜日の新型コロナウイルス感染状況は、東京では午後15時の速報値で前週火曜日の20日の139人より19人多い158人、重症者は前日比4人増えて33人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。2日連続の前週同曜日超え。全国では午後23時59分時点での感染確認者は644人、死亡者は5人。宮城県では1日では過去最多の45人の感染者が確認されている。このところ100人以下だった大阪府でも142人になっている。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は人157.6、PCR検査数は4063.3件だから、陽性率は3.88%。東京都独自の計算方式では3.4%。感染経路不明率は55.27%。
東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、10月16日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加の1.06人、東京都が同0.01人増加の1.00人。東京都も久しぶりに増加に転じた可能性がある。コロナの第3波襲来を警戒して備えをしておく必要があることは言うまでもない。PCR検査、抗体検査などの検査体制に加え、重症者、死亡者もいっ時より多くなりつつあるから、医療施設体制も先進国並みに充実させる体制の確立が必要だ。

10月27日時店の東京都の新規コロナ感染者の推移

10月27日時店の東京都の新規コロナ感染者の推移

菅首相は9月16日の臨時国会での首班指名投票で内閣総理大臣に指名されたが、この臨時国会は、野党が7月31日に憲法第53条に基づいて臨時国会召集を要求していたものの、会期が3日間だけで事実上拒否され、所信表明演説も行わなかった。共同通信社の世論調査でも、72%の国民が学術会議会員の任命拒否事案についての理由の説明不足を問題にしているとの調査結果が出ているが、26日召集の臨時国会でも任命拒否事案についてはまったく触れなかった。

臨時国会での菅首相の所信表明演説

臨時国会での菅首相の所信表明演説。Youtubeより。

ただし、NHKのテレビには出演(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201026/k10012682481000.html?utm_int=news_contents_news-main_003)し、「『総合的、ふかん的』と申し上げてきたが、幅広く客観的という意味合いもある。民間出身者や若手研究者、地方の会員も選任される多様性が大事だ。組織全体の見直しをしなければならない時期ではないか』としたうえで、『任命すると公務員になる。学術会議で選考したものを追認するのではなく、政府として関与し、責任を取る必要がある。ただ説明できることとできないことがある』と発言したという。

しかし、現在の日本学術会議法(以下、日学法)には、過去の政府答弁も踏まえると、政府に実質的な任命権はない。本サイトで何度も繰り返しているように、日本国憲法15条には「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めているから、会員の任命に関しては国民の代表であり、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会で制定した法律に従って任命しなければならない。日学法と過去の政府答弁に基づけば、内閣総理大臣には会議の推薦した人文科学者、社会科学者、自然科学者105人全員を任命しなければならない。首相は同胞に違反しているから、日学法に違反したことは明らかだ。まず、任命を拒否した6人の人文科学者・社会科学者の任命拒否を取り消すことが、本事案解決の最初のステップだ。

首相に対するのNHKのインタビュー報道は、2018年11月13日に内閣府日本学術会議事務局名の「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」という作成経緯不明の「怪文書」の内容通りの説明になっている。この怪文書の論理破綻や「公文書寄贈」、「虚偽公文書作成」、「公文書管理法」違反などの疑惑があることは既に本サイトで示した通りだ。

首相に説明能力が欠けていることが明らかになったが、怪文書の論理破綻と作成の経緯を追及しないまま、首相の「説明」を垂れ流すだけのNHKの報道姿勢も問われなくてはならない。

憲法第23条の学問の自由の保障(①研究活動の自由②研究機関の自律性・自治制度の保障)を否定する任命拒否が日学法違反であることと、会議の在り方は全く別問題だ。会議の在り方については、首相が判断するものではなく、国民の付託を受けた国会で憲法23条を否定しないことを大前提に、真摯に論議すれば良い。

菅首相はまた、地球温暖化の原因とされる温室ガスの排出量を2050年までにゼロにすると明言したが、温室ガスの大量排出の原因になっている石炭火力発電所については、「政策を抜本的に転換する」と述べたものの、具体的な内容は示さなかった。欧州では石炭火力発電所の削減が進んでいるが、日本では①原発再稼働や増設を行わないで石炭火力発電所を閉鎖することには、電力会社の強い抵抗がある②石炭火力発電所は製鉄の副産物として生じる石炭由来のガスを燃料にしていることから製鉄所内に建設されており、「石炭火力発電所だけを止めるわけには行かない」との声が日本鉄鋼連盟にあるーなどのためだ(東京新聞6月23日付1面参照、東京新聞Webのサイトではhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/64429?rct=main)。

加藤勝信官房長官が核燃料サイクル(使用済み核燃料を再処理して繰り返して利用するというもので、「夢の核燃料サイクル」)の推進を行うと語っていることと首相の所信表明を併せると菅政権は原子力発電所の再稼働どころか、新設も視野に置いていることが見え見えだ。しかし、核燃料サイクルの要(かなめ)になる、日本の福井県敦賀市に建設された「もんじゅ」が2016年12月21日に廃炉になった。「もんじゅ」は、MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を使用し、消費した量以上の燃料を生み出すことのできる高速増殖炉の実用化のための研究用拘束増殖炉(文部科学省の管轄下にあった)で日本で二番目の原型炉。「三度目の正直」ということわざはあるが、高速増殖炉に関してはそうは問屋が降ろさない。

廃炉の憂き目にあった高速増殖炉第二号機もんじゅ

廃炉の憂き目にあった高速増殖炉第二号機もんじゅ

核燃料サイクルの要(かなめ)になる新たな高速増殖炉建設の目処は立っていないようだ。「夢の核燃料サイクル」と言われた核燃料サイクルは、まさに「夢」でしかなかったことに終わるだろう。しかも、福島第一原発の発生から9年以上経った現在も3万人以上が避難生活を続けている。福島第一原発の炉心を冷却する処理水という名の「汚染水」は、  処理水を貯蔵するタンクが建設用敷地に空きがなくなってきたため、本年中に2023年前後に福島県沖に海洋投棄することが自民党内で決定される予定だったが、延期になった。

また、東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐる被害者住民の集団訴訟で、仙台高等裁判所は9月30日、政府と東京電力の過失を認める判決を行った。福島県で暮らす住民など3600人余りが訴えた集団訴訟で、仙台高等裁判所は『大規模な津波が到来する可能性を事故の前に認識できたのに、国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ』などとして、国と東京電力に総額10億円余りの賠償を命じました。全国の集団訴訟で、国の責任を認める2審判決は初めてです」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200930/k10012641371000.html)とのことである。

※なお、Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96#%E6%87%90%E7%96%91%E8%AB%96)では音質化ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素など)による地球温暖化に懐疑的な見方も伝えられている。

もっとも、本サイトでもしばしば指摘してきたところだが、現在の日本国憲法には三権分立を完全には保証していない条項がある。憲法第6条2項には「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する」、憲法79条に「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する」とあるから、最高裁判事の実質的任命権者は、閣僚の任命・罷免権を持つ首相だから、政府=菅政権は最高裁に上告して、仙台高等裁判所の判決の差し戻しを命じるだろうと予測していた。本来は、憲法15条2項に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」との規定を勘案して、最高裁長官の指名には国会が関与しなければならない(衆参両院議院の議員定数の3分の2の同意を必要とするなど)と思う。

事実、10月13日に仙台高裁判決不服として、国と東電が最高裁に上告した。もっとも、住民側も上告したが、これは仙台高裁が国と東電に命じた賠償金が10億円と恐ろしく少なったたためだ。政府=菅政権と東電は賠償金の金額そのものではなく、過失を認めないようにさせることであるから、最高裁が上告を認めて過失を認めない新たな判決を下し、原発訴訟の最終的な判決を確定させる可能性が高い。

※追記:なお、2050年までに温室効果化ガスの排出量をゼロにするという目標達成のためには、分散化再生可能エネルギー(太陽光やを発電源にする)体制の早急な確立が必要不可欠である。これを阻止しているのが原発や石油・石炭にこだわる電力会社だ。このことは、デモクラシータイムスの次の解説番組(https://www.youtube.com/watch?v=wME6ynlCXWQ)で詳細に論じられている。再生可能エネルギーの供給は近年、技術革新が飛躍的に進み、常軌・石炭による第一次エネルギー革命、石油による第二次エネルギー革命に次ぐ第三次エネルギー革命をもたらし、まともな民主主義社会ではIT技術の確信とともに経済社会構造、政治構造を根本的に変革しつつあるとしている。これを阻止しているのが、政治的には「規制改革」を唱える小泉・安倍・菅政権だ。これについては、後ほど改めて照会します。

菅首相、所信表明現行6か所読み間違え
10月27日東京新聞6面によると、菅首相は所信表原稿を6か所読み間違えたようだ。コロナ医療費額を「重症者に重点化します」を「重症者にゲンテン化します」と言ってしまい、野党側からヤジが飛んだ。この他、衆院本会議では「薬価改定」を「薬価改正」、「打ち勝った」の「打ち」の読み飛ばした。参院本会議では、「重症化リスク」を「重症リスク」、「貧困対策」を「貧困世帯」、「被災者」を「被害者」と読み間違えた(共同通信調査)。
柄にもなく緊張していたのだろうが、菅義偉像に若干の修正が必要なようだ。
こうした事情に加えて、日本学術会議任命拒否事案に内閣官房副長官兼内閣人事局長。神奈川県警察本部長や内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監なども歴任した杉田和博内閣官房副長官(官僚組織のトップで、厳密に言えば国民が任命したとは言えない)が陣頭指揮していた疑惑が濃厚であることも踏まえると、福島第一原発訴訟は原告側敗訴に終わる公算が大きい。

ただし、次期総選挙で真正野党側が共闘を組み、政権を奪還すれば話は別である。2009年に公的年金問題に国民の不満が集中したこともあり、当時の鳩山由紀夫代表率いる民主党が政権を奪取したが、①民主党内部に松下政経塾出身で新自由主義者の悪徳10人衆が中心になって鳩山由紀夫首相を窮地に追い込むとともに、米国の対日工作組織のCIAが野党・自民党とマスコミを煽り、小沢一郎幹事長に対しては陸山会問題を通して事実上失脚させた②民主党の理念・財政の裏付けを持った強力な政策体系・政権構想が明確でなかったーために、民主党政権は自爆崩壊した。以降、国民は野党に対して信頼を失った。

現在は、集団的自衛権を認める憲法違反の「安保法制」が2015年9月17日に成立したころから、野党側は日本共産党を含む野党共闘を目指す動きが活発になり、新立憲民主党が成立して野党共闘が新たな段階を迎えている。しかし、立憲の枝野代表はかつての民主党の悪徳10人衆のひとりであったが、そのことの心からの反省と宗教的に言えば改心が窺われない。新自由主義と決別して共生主義を唱え、「原発ゼロ社会の一刻も早い実現」を主張しているものの、経済政策には本質的に無関心だ。福山哲郎幹事長は立憲内部の自由な政策論議を封じ込める役割を果たしているものと思われる。安住淳国対委員長は、自民党の森山裕国対委員長と相変わらずの「国対政治」を続けているようだ。いつも、森山国対院長との国対委員長会談ではゼロ回答しか持ち帰らない。

現在の日本共産党の提言型政治行動は評価するし、主張している日米地位協定の抜本的見直しなどの短期的な政策も納得できるが、スターリン型共産主義は否定するものの、国民が納得できる国家像を提示し得ていない。真剣さは買うが、共産主義というものを根本から見直さない限り、真の国民政党になるのは難しい。山本太郎代表率いるれいわ新選組は高く評価しているが、政治の恩師である小沢一郎衆院議員や馬淵澄夫衆院議員、泉健太政調会長らと組んで、水面下での政治工作を強力に展開する必要がある。

なお、菅首相の所信表明には安倍晋三前政権が打ち出した「アベノミクス」のような経済政策体系が打ち出されていない。警察畑の官僚や国会議員を側近にし、PFI(Private Financial Initiatve)の手法を使って「民営化」の名のもとに日本の中小企業も含め日本そのものを外資に売り飛ばすことが特異な竹中平蔵パソナ会長兼東洋大学教授や日本の中小企業を潰し、地銀の再編統合を狙うゴールドマン・サックス出身のデービッド・アトキンソン小西美術工藝社社長、財政政策を否定して量的金融緩和政策の続行を求める高橋洋一嘉悦大学教授を経済政策の側近に採用している。

新型コロナウイルスについては足元感染者数の減少傾向が鈍化していることは認めざるを得ず、「余談は許さない」と語ったが、ワクチンを「来年前半までに全ての国民に提供できる数量を確保する」と明言しており、遺伝子工学に詳しい児玉龍彦東大名誉教授など感染症の専門家の間では、大規模な試験で有効性と安全性を確認する第3相の治験を通過するにはかなりの日時がかかるし、通過できない可能性も低くないとするとの専門家の見識もある。実際、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたコロナ族のウイスルに対するワクチンは開発されていない。現状での基本対策は大規模検査と感染確認者の-保護と隔離、効果的な対症療法の確立だ。しかし。基本対策については語らず、生半可の出来の可能性もある「開発ワンチン」を全国民に強制摂取する意向を打ち出した。

仮に、11月1日の「大阪都構想」に関する住民投票で投票での賛成数が過半数を超えれば、大阪府内だけでなく日本全国で、菅首相や自公与党と癒着している日本維新の会の勢いに弾みがつく。要するに、菅首相は2000年からの新自由主義政策を完成させて、秘密警察による独裁全体主義国家体制の樹立に爆進しているが、11月1日の住民投票で維新が勝てば、その勢いにさらに弾みが付くことになる。26日の所信表明演説の裏に隠れている内容はそういうものだ。ただし、毎日MBSが24、25の両日に行った世論調査では、賛成派と反対派がほぼ拮抗する条居になっている。

毎日MBS放送による24,25日世論調査の結果

毎日MBS放送による24,25日世論調査の結果

しかし、政府=菅政権にとっては、米国の衰退と中国の台頭には対応できないだろう。英国BBCの日本語版サイトによると、「新疆ウイグル自治区のカシュガルで24日に女性1人の新型コロナウイルス感染(者)が確認されたものの、全住民約470万人を対象とした一斉検査が始まった。25日までに137人の無症状感染者が見つかった」(https://www.bbc.com/japanese/54688595)と新型コロナウイルス感染拡大を封じ込めることに尽力している。これにも成功すれば、内需拡大(裏返せば、貧困層をなくすこと)にも力を入れ始めた中国が政治・経済・軍事大国にのし上がる公算が大きい。

米国は、コロナ禍対策失敗のトランプ現大統領の大統領敗戦が濃厚になってきたが、真の大統領選挙は投票所での投票と開票が始まる11月3日以降だと見られている。開票状況が混乱すれば現代版南北戦争が勃発することになり、国力の衰退は必至だ。民主党のバイデン候補が最終的に勝利を収めても、民主党お得意の「人権外交」から中国を攻撃していく可能性が強い。トランプ大統領は、米国の屋台骨である軍産複合体とは妥協しながらも、ケネディ大統領と同様に与してはいない大統領と見られているが、バイデン候補はどうも背後で軍産複合体が支援しているように思われる。ただし、超大国であるはずの米国では、1日に700人が新型コロナで死亡するなど、全米的には有効なコロナ対策を打ち出せていない。経済活動に巨大な悪影響をもたらし、「超大国」の座が危ぶまれる状況だ。

いずれの新大統領候補が「勝利」するにしても、引き続き日本に対して対米隷属外交を要求してくるだろうし、政府=菅内閣も米国側の「期待」に応えようとするだろう。しかし、米中新冷戦時代の外交は、菅政権では困難だとの識者の見方は強い。媚中派と揶揄される自民党の二階俊博幹事長とのあつれきも良さ雨される。新自由主義政策による中小企業潰しと長期デフレ不況の克服失敗による国民の不安の高まりと、米国と超大国化する中国の対立の狭間で、菅首相率いる政府=菅政権は動揺するだろう。