菅首相が日本学術会議推薦の6人の任命を取り消すのが筋だが、総選挙で政権奪還することが最終解決の道(追記)

日本学術会議(以下、会議)の梶田隆章会長が所轄官庁の井上信治・科学技術担当相と10月23日会談し、井上担当相が会議内で政策提言の見直しを要求。梶田会長は会議が行政機構に属することから、これに応じた。しかし、梶田会長は「政府と会議の率直な対話のためにも」、3年ごとに定員210人のうち半数(105人)改選するという日本学術法(以下、日学法)の規定に則り、推薦した150人のうち6人が拒否された問題の解決が不可欠として、任命拒否の理由と任命を求めた。これに対して、井上担当相は「任命は総理の権能」として拒否した。任命拒否は本サイトでこれまで述べてきたように、日本学術会議法(日学法)違反であることは明らか。任命拒否問題は、菅政権によるあからさまな学問の自由・思想の弾圧を意味するもので、同政権は警察独裁全体主義国家を驀進しており、これを阻止しなければ前文で、①国民主権②基本的人権の尊重③平和主義ーを基本理念とした日本国憲法が破壊されてしまう。菅政権の暴走を阻止するためには、①任命拒否批判に対する世論の高まり②来週26日月曜日から開かれる臨時国会での真正野党側の徹底的な追及③解散・総選挙による真正野党共闘側の政権奪還ーしかない。

10月24日土曜日コロナ感染状況

10月24日土曜日の新型コロナウイルス感染確認者は、東京都では速報値で前週17日土曜日に比べ32人減少した203人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)、東京都基準の重症者は前日比2人増加の25人だった。全国では午後23時59分の段階で731人の感染者と4人の死亡者が確認されている。北海道や沖縄で感染者が増加している(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/?utm_int=special_contents_list-items_045)。東京都のモニタリング指標(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では7日移動平均での感染者数は153.3人、PCR検査数は3755.3件だから、陽性率は4.08%。東京都独自の計算方式では3.4%。感染経路不明率は57.86%。
東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、10月23日時点の実効再生産数は東京都が前日比0.01人増加の0.90人、全国が同0.01人増加の1.01人だった。

菅政権が会員の任命権が首相にあるとする根拠は、安倍晋三政権が2018年11月13日に「内閣府会議事務局」が作成したという作成経緯不明の「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」(https://www.it-ishin.com/wp-content/uploads/2020/10/naikakufu20181113.pdf)(以下、文書)と題する文書にある。その論理には矛盾があることは本サイトでも述べてきたが、再度述べておきたい。

文書は、日本国憲法第15条第1項「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」(ただし、第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」の規定があり、公務員は国民全体の奉仕者でなければならない)を根拠として、追加的に憲法65条「行政権は、内閣に属する」と憲法72条「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」を持ち出し、「任命権者たる内閣総理大臣が、会員の任命権について国民及び国会に対して責任を負えるものでないければならないことからすれば、内閣総理大臣に、日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」としている。

なお、文書には書かれていないが、憲法第73条(「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ」が趣旨)第4項「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること」を内閣総理大臣による実質的任命権の根拠にする者もいるが、「法律の定める基準に従ひ」とある。そのうえ、第1項に「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」とあるから、本事案から言えば日学法を誠実に執行しなければならないことにある。これでは内閣総理大臣には都合が悪いので、文書には記載しなかったものと推察される。

文書では、会議会員の内閣総理大臣(首相)による任命は、憲法第23条に規定されている「学問の自由(①学術研究の自由②教育・学術機関の自主・自律・自治活動の保障)」に根拠を置く文部大臣による大学長の形式的任命、司法権の独立が憲法上保障されている下級裁判所の形式的任命とは性格が異なる、としている。

しかし、憲法15条第1項では、公務員の選定兼(任命権)・罷免兼は国民にあると定めており、かつ、第2項では国民全体に奉仕する者でなければならないと定めている。実際のところは国民が個々の公務員、特別公務員(会議会員、検察官など)を選定・罷免することは不可能だから、国民主権および国民の代表である国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会で、一般公務員、特別公務員の任命・罷免を含む様々な法律(国家公務員法、地方公務員法、検察庁法、日学法など)が制定され、内閣はその制定された法律に基づいて公務員、特別公務員の任命などを行わなければならない。しかも、公務員は「全体の奉仕者でなければならない」とあるから、国会で制定された各種公務員法に基づいて、内閣に都合の良い公務員だけを任命することはできない。

ところが、安倍内閣(当時)は検察庁法を無視して、同内閣に都合の良い黒川弘務東京高検検事長(検事総長の定年は65歳だが、それ以外の検察官の定年は63歳)の定年延長を強硬閣議決定し、検事総長に就かせようとした。安倍内閣はそのうえで、閣議強硬決定を合法化するために、「検察庁改正法案」を制定しようとしたか、世論の厳しい反対と黒川検事長のかけ麻雀が発覚し、検察庁改正法案の見送りを余儀なくされるに至った(NHKのWebサイトhttps://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/37768.html参照)。

東京高検検事長を麻雀賭博で辞任した黒川弘務氏

東京高検検事長を麻雀賭博で辞任した黒川弘務氏

検察庁法と同様に、会員の任命を定めた法律がある。日学法だ。日学法は第7条第2項(「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」)、第17条(「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者の うちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する ものとする」)と従来の内閣の法律解釈(1983年の中曽根康弘首相の国会答弁など)に基づいて、会議の推薦に基づいて、特別公務員である会員を形式的に任命しなければならない。

だから、梶田会長が推薦に従って105人全員を推薦し、菅首相は推薦者を全員会員に任命しなければならない。文書の論理破綻は明らかである。しかも、当時の日本学術会議関係者は「当時の山極寿一会長は在任中、政府から文書を含めこうした解釈を伝えられたことは、一切ありませんでした」語ったという。「学術会議任命拒否問題野党合同ヒアリング」でも、内閣府の会議事務局側からは文書作成の経緯について、納得のいく回答はなかった。野党側はこの事案について、臨時国会で徹底的に追及していくとしている。現時点では、「公文書偽造」疑惑や「虚偽公文書作成」疑惑、「公文書管理法違反」疑惑などの疑いがあると言わざるを得ない。この文書作成と使用の経緯を徹底的に追及することが、任命拒否という本事案の究明・解決の大きな手がかりになり得る。

また、文書の作成経過について、野党の合同ヒアリングでも政府側は明確な答弁をしていない。内閣は事務局の担当者が会議画に事後説明したなどと詭弁を弄しているが、この文書は従来の日学法の政府解釈を根本的に変更するものだ。日学会会長や幹事会、総会で解釈変更を了解した文書は存在しないし当然、日学法を制定した国会でも徹底した審議が行われなければならないはずだが、それもない。

なお、以上に述べた論理は同じ合同ヒアリングで会議の大西隆元会長(2011年就任)が述べている(https://www.youtube.com/watch?v=tEf0WXwKc7E&t=3078s)。また、大西元会長は、①会議が中国の千人計画に積極的に加担した②会員になれば日本学士院会員になり年金250万円を受給できるーなどの虚言がメディアやインターネット条で安易に拡散していることについても、苦言を呈している。甘利寿明衆院議員らネタ元の流布論者は謝罪すべきだ。

第8回学術会議任命拒否問題野党合同ヒアリング

第8回学術会議任命拒否問題野党合同ヒアリング

第8回学術会議任命拒否問題野党合同ヒアリング

第8回学術会議任命拒否問題野党合同ヒアリング

安倍内閣が検察庁法を無視したのと同様に、菅首相は日学法に違反して6人の任命を却下している。しかも、6人の任命拒否の主導的役割を果たした人物が、国民主権を無視して国家管理料トップで、神奈川県警察本部長や内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監を歴任した警察・諜報畑の杉田和博官房長官が主導的役割を果たしたことが濃厚になっている。

こうした、論理破綻と疑惑だらけの菅首相、菅政権の「説明」、日学法違反に対して、黒川東京高検献長定年延長問題、検察庁改正法案とともに、世論は追及の声を挙げるべきだ。また、来週26日から始まる臨時国会でも真正野党は徹底して追及し、辞任拒否撤回に追い込むべきだ。

新国民民主党は野党合同ヒアリングにも出ていない。野党の資格はない。本サイトで自公与党の補完勢力と指摘したが、そのことがここでも表れている。同党は23日、立憲・社民との共同会派を離脱することを表明したが、維新と同様に自公与党政権の補完勢力であることを国民は理解すべきである。なお、社民党は11月14日にも解党し、社民党には投手の福島瑞穂参院議員だけが残り(政党要件は満たす)、残りの所属議員は立憲に移籍する予定だ。真正野党共闘の再構築と理念・インパクトのある政策・野党連合政権構想の国民への提示が必要になる。政策としては、れいわ新選組と当面の日本共産党の政策を中心に据えるべきだ。

立憲の理念・綱領・政策では無党派層という名の政治不信層、政治無関心層の心の琴線に訴えるところがない。

ただし、本サイトでいつも主張しているように、「国民の圧倒的多数の合意」が熟するまでというような逃げの論法ではなく、近い将来には日本共産党は「日本型共産主義思想・国家像」の全貌を示す必要がある。サイト管理者(筆者)としてはそうした時期は来ないし、「日本型共産主義」の提示も不可能だと思う。古典派の夜景国家型資本主義の弊害から、資本主義の初期の段階から人道的社会主義やキリスト教に基づく社会主義が提唱され、その限界を乗り越えるために「科学的社会主義」なるものが打ち出されたが、スターリン主義、毛沢東主義、金日成主義に象徴されるように「非科学的釈迦会主義」に過ぎなかった。

その間に、市場経済体制に基づく資本主義体制の下では、ケインズ理論を中心にした「修正資本主義(福祉国家論)」が現実のものになり、一応の経済成長・発展をみた。しかし、1970年代のスタグフレーションを克服できなかったため、ミルトン・フリードマンを元祖として新自由主義思想が構築され、夜警国家(政府は国防以外に何もしないし、市場には介入しない)の現代版である「新自由主義資本主義体制(財政政策否定・金融政策至上主義・小さな政府路線・民営化路線)」が冷戦後、グローバリズムの名のもとに現れるようになった。その結果として、日本では金融政策・緊縮財政中心の経済政策で20年にわたる長期デフレ経済が続き、大格差社会が現実のものになって、それにコロナ禍が置い落ちを駆けている。日本共産党はこれらの変遷を踏まえるべきだ。

下図は総務省が23日発表した9全国消費者物価上昇率だが生鮮食料品を除く総合指数では前年比0.3%下落になっている。政府と日銀は安定した経済成長が続く2%の物価上昇率の達成を目指して2013年4月から新たな量的金融緩和政策(日銀が市中既発国債、幅広い株式銘柄を組み合わせた上場投資信託=ETF=などを大量に購入すること)を行ってきたが、目標達成には完全に失敗している。日銀マネーは年金積立金管理運用独立行政法人=GPIF=の株式投資比率の引き上げとともに、日本企業の株式購入につながり、株価の上昇をもたらした。しかし、実需(消費や投資、公共投資)に結びつかないため、過剰流動性(実需に流れないおカネが市中に滞留すること)をもたらして、為替相場の円安の原因になり、バブルの種をまいている、また、日銀やGPIFなど淳公的機関が企業の大株主になるという異常な事態になっている(10月25日午後21時追記)。

2020年9月の消費者物価指数

2020年9月の消費者物価指数

さて、昨日任命を拒否された6人の人文・社会科学者がビデオ会見も含めて日本外国特派員協会で記者会見を行い、「総理の任命拒否は日本国憲法違反・日学法違反」て一致した。

外国人特派員協会での任命拒否6人の科学者の記者会見

外国人特派員協会での任命拒否6人の科学者の記者会見(ビデオ出演含む)

発言内容を朝日新聞24日付39面から引用させて頂きたい。

任命拒否された
6人の学者名
役職と専攻 発言の骨子
芦名定通 京都大学教授
(宗教学)
政府が推進したい大学における軍事研究に、明確に反対する声明を出した日本学術会議。そこが問題になったのだろう。問われているのは科学技術の在り方に政府が介入、コントロールしようとしていること。それをよく考え、どう対応するのか、多くの方々と考えていきたい。
宇野重規 東京大学教授
(政治思想史)
内閣によって会員に任命されなかったことについては特に申し上げることはない。民主的社会を支える基盤は多様な言論活動だ。民主的社会の最大の強みは、批判に開かれ、つねに自らを修正していく能力にある。その能力がこれからも鍛えられ、発展していくことを確信している。
岡田正則 早稲田大学教授
(行政法学)
会員の適否を政治権力が決められるとなれば、日本学術会議の独立性は破壊される。学問の自由の制度的枠組みの破壊だ。国民が学術会議法を通じ、選定・罷免権を委ねるのは学術会議であり、総理大臣ではない。菅首相はこの違憲・違法状態を速やかに解消すべきだ。
小沢竜一 東京慈恵医科大学教授
(憲法学)
かつて科学は政治に従属して戦争に突入した。この苦い教訓を踏まえ、日本学術会議は憲法が定める学問の自由の保障を受けて設立された。学術会議は政治権力に左右されない独立した活動で、政府と社会に政策提言することが職務だ。任命拒否は、その目的と職務を妨げる。
加藤陽子 東京大学教授
(日本近代史)
法解釈の変更なしには行えない違法な決定を菅総理がなぜ行ったのか、意思決定の背景を説明できる決済文書があるのか、政府側に尋ねてみたい。日本は人文・社会科学も融合した総合知を掲げざるを得ない事態にある。政府側の意向に従順ではない人々を切っておく事態が進行したのだと思う。
松宮孝明 立命館大学教授
(刑事法学)
菅首相が6人を落としたことは(日学)法に違反し、罪だ。だが官邸は憲法15条を元に合法であると主張している。ヒトラーですら全権を掌握するため特別な法律を必要とした。憲法を読み替えて独裁者になろうとしているのか、というくらい恐ろしいことだ。

立命館大学の松宮教授(刑事法学)が危惧するとおり、菅政権は警察独裁全体主義国家の樹立に爆進しいる。日本国民は、日本国憲法が保障している国民主権・基本的人権の死守が瀬戸際に立たされていることに気づく必要がある。人間には心と体があるように、学問の自由を含む基本的人権・国民主権の死守と正しい経済政策による経済社会の再建はいずれも不可欠の重要な優先課題である。