学術会議会員任命拒否、政府方針への反対懸念が理由か、東京新聞8日付で明らかにー野党集中審議要請を(2カ所重要追記)

東京新聞が8日付け朝刊1面トップ記事で共同通信社の報道を引用しながら、今回の日本学術会議(以下、会議)会員任命拒否の理由として、拒否した6人が安全保障政策など政府の重要方針に対して反対運動を先導する懸念があったからだと報じた。任命拒否の正しい理由であると思われるが、同会議が日本学術法(以下、日学法)に基づいて会員候補を任命した時点では、6人は特別公務員ではない。明らかに、憲法23条に基づいた「学問の自由」を否定し、同法違反でもある。また、政府=菅政権は会議に諮問をすることができるが、会議は科学者としての研究成果に基づいて答申することを求められており、菅政権の意向を忖度して、期待通りの答申を行う必要はない。真正野党側は実質的に任命拒否を行ったと見られる杉田和博官房長官を国会招致したうえで本事案の徹底した集中審議を実施する必要がる。

11月8日日曜日コロナ感染状況

本日11月8日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染者は1周間前の11月1日日曜日の116人より73人多い189人。東京都基準の重症者数は前日比変わらずの36人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。全国では午後23時59分の段階で954人が感染し、7人の死亡者が出ていることが分かった。東京都のモニタリングhttps://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/では、7日移動平均での感染者数は201.7人(8月29日以来の200人超え)、PCR検査人数は3474.3人だから、推測陽性率は5.81%。東京都独自の計算方式では4.6%。感染経路不明率は57.31%だった。東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/の調べでは11月7日時点の実効再生産数は全国が前日比0.04人増加して1.20人、東京都では前日比0.04人増加の1.09人だった。全国でコロナの第3波が訪れてきているようだhttps://digital.asahi.com/articles/ASNC861FKNC8UTIL22X.html?iref=comtop_7_05 

政府=菅政権が会議が推薦した会員候補者6人の任命を拒否した理由はすべて破綻しているが、実際のところは任命を拒否した6人の思想弾圧が真の理由であることは、政府=菅政権の答弁が矛盾に満ちたものであったことから、大方の国民にとってはほとんど常識になっていた。このことを明確にしたのが、「政府関係者」を取材して行った本日8日の東京新聞の報道だ。

東京新聞の記事は東京Webサイトでも11月8日06時00分 の時点で一部公開(https://www.tokyo-np.co.jp/article/67069?rct=politics)されており、本紙の1面記事と合わせて引用させて頂きたい。

中日新聞社グループの東京新聞
中日新聞社グループの東京新聞

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首相官邸が日本学術会議の会員任命拒否問題で、会員候補6人が安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送る判断をしていたことが7日、分かった。安全保障関連法や特定秘密保護法に対する過去の言動を問題視した可能性がある。複数の政府関係者が明らかにした。
(中略)
任命を拒否されたのは、松宮孝明立命館大学教授や小沢隆一東京慈恵医科大学教授、加藤陽子東京大学教授ら6人。官邸はこの6人が政府の重点政策に強い反対を打ち出し、国会を含む公の場で積極的に発言していたと判断。今後も同様の主張を続け、学術会議内でも反対運動を主導しかねないとして「(特別)公務員としては適任でない」と考えたという。
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【追記:11月10日午前9時】もともとは、共同通信の配信記事で、それを東京新聞が新たな部分を追加したものと推察されるが、「複数の政府関係者が明らかにした」というのは、政府=菅政権、特に菅首相の答弁が支離滅裂になったため、任命拒否の理由をリークしたものだろう。ただし、「今後も同様の主張を続け、学術会議内でも反対運動を主導しかねない」というのは政府側のリークであって、(政府の方針・意向・政策について)「主導しかねない」というのは会議と任命を拒否されている6人の推薦による候補者に対する名誉毀損に相当する。刑事上の名誉棄損罪の客体は「人の名誉」だが、この場合の人とは、「自然人」「法人」「法人格の無い団体」などが含まれるとされており、日本学術会議は「法人格のない団体」に相当する(郷原信郎弁護士のブログ投稿記事https://blogos.com/article/490235/参照)。

日本学術会議の答申や提言は会議の会員の科学的な研究成果に基づいて、第一部(人文科学・社会科学系)、第二部(生命科学系)、第三部(理工学系)で議論されたうえで、学術的研究に基づいて正しい見解・提言・答申が総会で正式に決定されるからだ。日本学術会議の設立理念から見て、その内容が、政府=菅政権の思惑と異なっていても、全く問題はない。政府(現在は自公与党勢力で決められた菅政権)の暴走に対する歯止めになるからだ。

日本国憲法第15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と規定している。また、日学法(http://www.scj.go.jp/ja/scj/kisoku/01.pdf)では第3条で「日本学術会議は、独立して左の職務を行う」として会議の(政府権力からの)高度の独立性をうたっている。また、第7条で「会員は、第17条の規定(「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令による定めるところにより内閣総理大臣に推薦する」)による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定めており、安倍晋三政権以前の政権では任命は実質的なものではなく、形式的な任命に過ぎなかった。

また、第25条「内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があったときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる」、26条「内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の 申出に基づき、当該会員を退職させることができる」と規定しているように、会員の辞職、退職についても会議(の総会)の同意の必要性を定めている。

もちろん、政府は会議に対して諮問を行うことが出来るが、学術的研究成果のみに基づいて答申することは当然のことである。時の政権の意向を忖度して答申を行うわけでは断じてない。日学法は前文で「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される」と設立の趣旨を定めている。このように、時の政権の諮問内容や政策が設立の趣旨と異なる場合は、学術的な研究成果を下に諌言的な答申、提言を行わなければならない。

任命拒否が判明した推薦候補
任命拒否が判明した推薦候補

日本学術会議の答申内容や提言が、政府の意向と異なることを理由に、会議の会員を首相の権限のみで辞職させたり罷免したりすることはできないのである。そうしたことを恐れて会議が推薦した人物を任命しないというのは、憲法23条に定められた学問の自由(①研究活動と成果の公表の自由②会議をはじめとした学術研究団体、大学の自律と自治の保障)を破壊し、日学法違反でもあることは明白である。ましてや、今回の会議が推薦した会員候補者はまだ公務員にはなっていない。会員候補者の推薦段階から政府が「意見調整」の名の下に、政治介入を行うことは日本国憲法に定められた基本的人権の保障を根底から破壊するものであり、日学法にも違反する断じて許されない。

6日の参院予算委で菅義偉首相を追及する日本共産党・小池晃参院議員
6日の参院予算委で菅義偉首相を追及する日本共産党・小池晃参院議員

【追記:11月9日午前7時20分】日本共産党の小池晃参院議員は6日の参院予算委で、日本学術会議の会員任命をめぐって菅義偉首相が『推薦前の調整』がなかったことを任命拒否の理由に挙げたことについて、「『会員の選考と推薦の段階から政府が介入する』という宣言、『露骨な政治介入宣言』」で、「明らかな法違反だ」と厳しく追及した。菅義偉首相は、自身の発言の中身さえ説明できず、質問のたびに審議が中断。小池参院議員は、菅首相が今までの国会での説明を根本からひっくり返す議論を突然始めたとして「議論の大前提が変わった」と指摘。

そのうえで、会議側の推薦人を変更ないしは推薦人から削除する実質的な役割を主導的に果たしてきたと見られる杉田和博内閣官房副長官の国会招致を含め、「これまでの国会での質疑を最初からやり直すべきだ」と強く求めた(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-11-07/2020110701_01_1.htmlhttps://www.youtube.com/watch?v=9h8Dx5OLoBwを参照)。東京新聞の今回の報道は、小池参院議員の質疑内容を具体的に裏付ける内容だ。

今回、共同通信者の報道を受けて東京新聞が追加報道した内容は、菅政権が政権の意向にそぐわない思想の持ち主は弾圧するという意味としか捉えようがない。菅政権が秘密警察を使って全体主義独裁国家の樹立を驀進していることを改めて明らかにするものだ。真正野党側は任命拒否を行ったと見られる杉田和博官房長官を国会招致したうえで本事案の徹底した集中審議を実施する必要がる。



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