ミャンマーでの軍事クーデター1週間後の参考情報とコロナ感染状況

2月1日未明、2011年に民政移管したはずのミャンマーで国軍による軍事クーデターが起こってから1週間が過ぎた。国民民主連盟(NLD)のウィン・ミン大統領、アウンサンスーチー国家顧問、NLD幹部、NLD出身の地方政府トップら45人以上の身柄が拘束され、軍出身のミンスエ第一副大統領が大統領代行(暫定大統領)に就任。憲法(英語版)417条の規定に基づいて期限を1年間とする非常事態宣言の発出を命じる大統領令に署名し、国軍が政権を掌握。また、ミン・アウン・フライン国軍総司令官に立法、行政、司法の三権が委譲され、ミン・アウン・フライン司令官は直ちに国家行政評議会を旗揚げし、その長である国家行政評議会議長に就任した。ミャンマー各地で大規模な抗議行動が起こっており、欧米諸国のクーデター批判も相次いであるが、事態の打開は困難な情勢だ。

2月1日コロナ感染状況

本日2月7日月曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月311日月曜日の393人から117人減少して276人、重症者は前日から7人減って104人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。ただし、12人の死亡者が確認されている。
全国では、午後18時50分の時点で新規感染者は1217人、死亡者は83人。重症患者は前日から22人減少して773人になっている。ただし、累計の死亡者数は6571人。重症者減少の主な理由は死亡されたことによるものと見られる。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は555.3人、PCR検査人数は7953.9人だから、瞬間陽性率は6.98%。東京都独自の計算方式では5.3%。感染者のうち感染経路不明率は50.35%だった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月7日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の0.73人、東京都は前日比変わらずの0.75人となっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

※上記に関しては、月曜日は新規感染者数がPCR検査の減少で1週間で最も少なくなる曜日であることに加え、新規感染者が季節要因で新型粉ウイルスの活性化が衰えたためと思われる。ただし、ステルス・スプレッダーになっている無症状感染者が減少したとのデータはないので、今こそPCR検査の抜本的拡充が必要と思われる。次の投稿記事を参照して下さい。

なお、アップル社が公開している人の移動指数(https://covid19.apple.com/mobility)が1月第3週に減少したことも、新規感染者数の減少に影響している。移動指数の影響は3週間後に新規感染者数の増減になって表れる。下図を見ると、1月10日ころから傾向的に低下したが、直近の2月最初の週から上昇し始めている。その影響は2月21の週から取り敢えずの新規感染拡大になって表面化する公算が大きい。肝心要(かなめ)の無症状感染者(ステルス・スプレッダー)を発見・保護・隔離・治療するための医療体制の確立が、厚生労働省の医系技官によって阻まれているため、新規感染者の増減は、➀新型コロナの「季節要因」②人口移動指数③PCR検査人数・件数の動向ーによってほぼ決まる。

人の人口移動指数
人の人口移動指数

ミャンマー国軍の孤立化を伝えるメディもある。時事通信社の「ミャンマー国軍、孤立鮮明 クーデターから1週間」と題する配信記事(https://news.yahoo.co.jp/articles/1d32bcce0ed6032cbd8436857bbf953794ae2210)などだ。ただし、楽観はできない。まず、ミャンマー全国各地の大規模な抗議行動も国軍により武力弾圧される可能性は否定できない。昨年11月の総選挙で、投票開票作業員に「不正投票」を認めさせる文書に署名させているとの報道もある(東京新聞8日付9面)。

なお、ミン・アウン・フライン国軍総司令官にはイスラム教徒ロヒンギャ族(第二次世界大戦後、インド・ベンガル州=現在、バングラデシュ=とミャンマーを往来し、ミャンマーによって国籍を剥奪され、「不法移民」扱いされている)迫害の主犯格として、国際刑事裁判所(ICC)の訴追を受ける可能性が残されている(https://gooddo.jp/magazine/peace-justice/refugees/rohingya_refugees/3946/)。

追われるロヒンギャ族

米国は経済制裁を「西側諸国」とともに行うとも見られていたが、バイデン政権のサキ報道官も記者会見で、「(非難するだけでなく)行動に移す」と強い口調でミャンマーの軍部によるクーデターを起こした軍事政権を批判したが、「行動」の中身が明確でない。これは、ミャンマー国軍(傘下に多数の企業を控えている)は貿易面・経済面では中国とロシアとの関係を深めていただけに、両国のミャンマー軍事政権支援の可能性も強く、経済制裁が聞かない可能性もあるからだろう。

特に、中国は当面、石油の確保ルートとしてミャンマーを重視しているだけに、簡単には経済制裁には同調しないだろう。

アウン・サン・スー・チー国家顧問とミン・アウン・フライン国軍総司令官
アウン・サン・スー・チー国家顧問とミン・アウン・フライン国軍総司令官

今回の軍部による軍事クーデターの背景について、Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/2021%E5%B9%B4%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%BF%E3%83%BC#cite_note-20)から引用させて頂きたい。

2020年11月8日に執行された総選挙は与党・国民民主連盟(NLD)が前回の総選挙を上回る396議席を獲得し、改選議席476議席のうち8割以上を獲得して圧勝した[7]。しかし、アウンサンスーチー政権の最大の課題と位置づけられていた少数民族武装勢力との和平協議に進展はなく、事前予測ではNLDの苦戦も予想されていた。

また、総選挙の実施についても、新型コロナウイルス感染症が大流行しているさなかの執行となったため、国軍系の野党・連邦団結発展党(USDP)からは国民の安全が確保されないという理由から選挙の延期が主張されていた。また街頭演説が制限されたたことは与党に有利に働くと見られていた。

さらに西部ラカイン州に住む多数のロヒンギャは不法移民として選挙権が認められなかったほか、少数民族政党が地盤とする一部地域の投票が治安上の問題を理由に取り消されたため、100万人以上が投票権を剥奪された。国際社会からは総選挙自体は平和的に行われたことが評価された一方、恣意的な投票取りやめが批判されるなど、選挙の公正性をめぐって懸念の声が挙がった。

敗北を喫した国軍は総選挙に不正があったとして抗議を行い、軍の支持者からは選挙の調査を求める声が挙がった。軍は1月26日にクーデターを示唆し緊張が高まったが、選挙管理委員会は総選挙が公正かつ透明に行われたとの見解を発表したほか、国際連合やアメリカ、欧州連合は選挙結果の尊重をミャンマー軍に呼び掛けた。

1月28日には政府と軍の間で事態打開に向けた話し合いがもたれ、その中で軍は票の再集計や議会の開会を延期するよう求めたが、政府側は拒否した[14]。1月30日には憲法遵守を約束したものの、議会開会前日の1月31日には総選挙で1050万件を超える不正があった可能性を主張し、また総選挙後初の議会が2021年2月1日に開会されることにも反対した。

ミャンマーの憲法改正には上下両院の議席の4分の3を超える賛成が必要であるが、両院の25%を軍の指名議員とする規定があり、2020年3月の議会ではNLDの提出した国軍の影響を弱める憲法改正案の大半が軍人議員の反対により妨げられた経緯がある。

当面は、いわゆる西側諸国はコロナ禍対策に全力を注いでおり、➀ミャンマー国内の大規模な軍事政権非難活動(特に、ミャンマーでの軍政から民政への転換に功労のあった仏教徒の抵抗の強さ)の動向②ミン・アウン・フライン国軍総司令官ミャンマーでの新型コロナ封じ込め策の動向ーを見守るしかない状況だ。なお、ミャンマーのコロナ感染状況を日本との比較で下図に示しておきたい(https://www.worldometers.info/coronavirus/)。日本時間2月8日、午前8時12分時点。「公表値」はコロナ対策後進国の日本と大きな相違はない。このため、国軍のクーデターで、コロナ禍も加わり、国民の生命と経済社会の悪化が懸念される。軍事クーデターへの抗議行動で、コロナ感染が拡大する可能性も高くなる。

ミャンマーのコロナ感染状況
ミャンマーのコロナ感染状況

クーデターの原因は、昨年2020年11月8日に行われた総選挙で与党・国民民主連盟(NLD)は前回の総選挙を上回る396議席を獲得し、改選議席476議席のうち8割以上を獲得して圧勝したことにある。改選議席数476というのは、シビリアン・コントロールが全く不十分なミャンマーの憲法の規定からくるものだ。

2008年に制定された新憲法で、ミャンマーには二院制の連邦議会が創設されたが、連邦議会は上院と下院からなり、議員は両院とも任期5年。議席数は上院が224議席、下院が440議席だが、各議院の議席のうち、4分の1は国軍司令官による指名枠となっており、残りの4分の3は国民による直接選挙で選出され、今回の場合は、軍人枠166議席、治安上の理由(コロナ感染対策など)で選挙が行われなかった22議席を除いて476議席だったからだ(選挙結果は次のサイト参照:https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00666/)。

当然、国民民主連盟(NLD)が引き続いて政権を掌握することになり、将来的には憲法が改正されて、軍人枠が次第に縮小される可能性も強まる。アウン・サン・スーチー国家顧問は既に76歳と高齢だが、今回の総選挙をきっかけにその道筋をつけておきたかったのだろう。シビリアン・コントロールの制度の確立は民主政体では不可欠だ。

これを恐れて、ミン・アウン・フライン国軍総司令官は、総選挙語の初議会が招集される2月1日にクーデターを挙行したと見られる。しかも、アウン・サン・スーチー政権下の間に、いわゆる西側諸国との経済交流は、中国との経済交流に及ばなかったようだ。これについて、日刊ゲンダイの「ミャンマー軍事クーデター 米国が手出しせず静観した理由」(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/284745)が参考になる。

「米国の混乱に乗じたとも言えます」とは、国際政治経済学者の浜田和幸氏だ。こう続ける。

「米国は深刻なコロナ禍に加え、バイデン新政権の発足直後。今なら強く出てこないと読んだのでしょう。ミャンマーでは憲法規定で国会議席の4分の1が軍人に振り分けられます。国軍は圧勝したNLDが将来、憲法を改め、自分たちの議席を削減。既得権益が奪われると危機感を強め、強硬手段に出たようです」

スー・チー氏はクーデターを察知し、先週末にSNSで「みんなで立ち上がろう」と訴えた。クーデターの気配は米CIAも把握していたはずだが、(米国は)抑える動きはみせず静観を決め込んだ。

浜田氏によると、その理由は国軍と中ロ両国との関係だ。中国は軍政時代から国軍と緊密な関係で、中東発の石油ルートの要諦としてミャンマーを重視。中古の工作機械などの輸出支援を行う。ミャンマーは、中国人が好きな翡翠(注:ケシ=麻薬の原材料=)の世界最大の産地でもある。ロシアも同国への経済支援に力を入れている。(以下略)

浜田氏によると、ミャンマーはケシを栽培し、麻薬が中国経由で米国に入っている。そのため、以前からケシ栽培に関与する軍人の入国制限や、在米資産を凍結していたのだが、この入国制限や資産凍結を強化するというのが、サキ報道官の「行動する」の具体的な内容だということだ。日本政府は2011年の民政移管後、経済支援を行うとともに、多数の企業がミャンマーに進出している。ただし、中国の経済支援に遠慮する面もあったようだ。

今回の軍部クーデターの平和的解決については、中国が握る。しかし、「米中冷戦」時代の最中である。本来なら、日本の政府=菅義偉政権が乗り出すべきところだが、国内でさまざまな不祥事を抱え込んでおり、それどころではないだろう。ミャンマーでの軍事クーデターは、一党独裁制政権や軍部独裁政権に民主主義体制国家が打ち勝つことが出来るかどうかり、試金石になる。

ただし、米国は実施的にディープステート(闇の国家=東部エスタブリッシュメントと呼ばれる軍産複合体と多国籍金融資本・企業)が支配しており、日本でも政官業の癒着体制が国民主権をねじ曲げている。現在の政府=菅政権は、コロナ禍対策法案で行政罰、過料を盛り込んだように強権的体質をさらに強化している。国民の心が離れていくのも当然だ。共同通信が6、7日に行った菅内閣の支持率は38.8%で前回1月調査から2.5ポイント続落し、初めて40%を割り込んだ。不支持率は3.1ポイント増の45.9%となった。東京オリンピック/パラリンピック0は、森嘉郎組織委会長の女性蔑視発言の影響が少し出て、82.3%が事実上の反対(再延期は有り得ないというのが国際オリンピック委員会と大会組織委の森会長の公式発言:https://www.tokyo-np.co.jp/article/84699?rct=main)。

日本は言葉の真の意味での国民主権・基本的人権の尊重・平和主義に徹した民主体制を築くとともに、米国、中国。ミャンマーなどの独裁強権国家に対して言葉の真の意味での日本独自の「積極的平和外交政策」に転換する必要がある。


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