米国のバイデン大統領は東京オリンピック/パラリンピック開催の判断基準は「科学的基準」と公式の場で初めて明らかにした。日本の新型コロナ感染防止対策の是非を科学的に判断しなければならなない。
本日2月9日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月2日火曜日の556人から144人減少して412人、500人以下は3日連続。重症者は前日から変わらず104人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。ただし、18人の死亡者が確認されている。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は534.7人、PCR検査人数は7871.4人だから、瞬間陽性率は6.79%。東京都独自の計算方式では5.2%。感染者のうち感染経路不明率は49.80%だった。
全国では、午後23時59分の時点で新規感染者は1570人、死亡者は94人。重症患者は前日から14人減少して759人になっている。重症者減少の主な理由は死亡されたことによるものと見られる。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月78日時点の実効再生産数は全国が前日比変わらずの0.73人、東京都は前日比0.01人増加の0.76人となっている。
NHKは2021年2月9日05時19分投稿した「米 バイデン大統領 “五輪開催は科学に基づいて判断すべき”」と題する記事(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210209/k10012856701000.html)で、東京オリンピック/パラリンピックの開催基準は「科学に基づいて判断すべきだ」と言明した。日本のコロナ感染防止策は、比較的被害が軽かった東アジア諸国の中でも最悪だった。人種的遺伝子要因やコロナ型ウイルスに免疫を確保している交差免疫獲得要因、米など所品要因が挙げられている。オリ/パラ開催については、開催が可能かどうかについての科学的検証から行わなければならない。まず、NHKの報道から引用させていただきたい。
アメリカのバイデン大統領は東京オリンピック・パラリンピックの開催について「科学に基づいて判断すべきだ」として、新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえて判断すべきだとしたうえで「開催を願っているが、まだわからない」と述べ、引き続き状況を注視する考えを示しました。
バイデン大統領は7日、出演したラジオ番組でことし夏に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催について聞かれ、菅総理大臣と話したとしたうえで「彼は安全に開催できるように懸命に努力している」と述べました。
そのうえで「開催することが安全かどうかは科学に基づいて判断されなければならない」として、新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえて判断すべきだという認識を示しました。(中略)
さらにバイデン大統領は科学を重視すべきだと繰り返したうえで「開催を願っているが、まだわからない」と述べ、引き続き状況を注視する考えを示しました。
オリ/パラ開催に当たっては、世界保健機構(WHO)との連携が必要と言っているようにも受け取れる。さらに深読みすれば、「2021年夏の東京オリンピック/パラリンピックの安全性は科学的見地から担保されない」とも読み取れる。第二次世界大戦中よりも死亡者数が多くなっている米国では、バイデン大統領が「(コロナ禍防止・収束までは)戦争状態」としている。そのため、世界標準・公認のコロナ感染症拡大・抑制に努めている。東京オリンピック/パラリンピック開催時に不測の事態が起これば、バイデン大統領も責任を問われる。
従って、日本の事実上の「宗主国」である米国は、日本のコロナ感染症防止対策(ひいてはコロナ禍対策)を厳しく追及するだろう。重大な欠陥があれば、参加を拒否することになる。米国が不参加を表明すれば、東京オリンピック/パラリンピックは中止に追い込まれる。延長はない。欧米諸国の国民は合理的に物事を考える。日本のように「空気」を読んで、「情緒的」に行動するなどということはしない。また、複数のシナリオを想定し、実現の可能性の高いものから、合理的に最善の方法を選択する。
振り返れば、日本のコロナ対策は、オリ/パラ開催を戦中の「国体護持」のように最大の目標に置いてきた。このため、政府として当然であり、日本国憲法が定めているように「国民の生命と財産(国民の営業活動の対価として得られる)」を守ることを二の次にしてきたことが問われるだろう。世界的に有名なリアルタイムで世界各国の状況を伝えるサイト:https://www.worldometers.info/coronavirus/に従って、最も被害が少なかったと言われる東アジア諸国の状況を見てみる。日本時間午前08時24分のデータだ。
人口100万人当たりのPCR検査人数、コロナ感染者数、死亡者数を調べてみるのが賢明だ。パンデミックに対する基本原則は、世界保健機構(WHO)が公式に表明しているように、早期の検査・保護・隔離・治療だ。このところ、新型コロナ感染症対処法も整ってきている。
国名 | 100万人当り
PCR検査検査人数 |
100万人当たり
感染者数 |
100万人当たり
死亡者数 |
台湾 | 6909人 | 39人 | 0.4人 |
ベトナム | 1万5630人 | 21人 | 0.4人 |
中国 | 11万1163人 | 1416人 | 3人 |
シンガポール | 111万5510人 | 10160人 | 5人 |
香港 | 85万5152人 | 1416人 | 25人 |
韓国 | 11万5763人 | 1583人 | 29人 |
日本 | 5万7360人 | 3208人 | 51人 |
インドネシア | 3万5326人 | 4236人 | 115人 |
参考:米国 | 97万9178人 | 8万3361人 | 1434人 |
これを見ると、人口100万人当たりの死亡者数では実質的に日本が最悪だ。インドネシアは、医療資源が貧弱なので最下位になるのはやむを得ないところがある。台湾、ベトナムで100万人当たりのPCR検査が少ないのは、「水際対策」を強力に実施したことで、無症状感染者(ステルス・スプレッダー)の入国を強力に抑えてきたことによることが大きい。コロナ対策が成功したことは、100万人当たりの死亡者数が少ないことに示されている。PCR検査体制が整っていることも確かだ。なお、ベトナムでは英国で変異した変異株が発見されたため、検査・隔離・保護体制を強化している。
中国は検査人数は少ないように見えるが、人口大国のためだ。中国がコロナ禍対策に成功しているのは、習近平国家主席が疫学、呼吸器学、臨床医学を専門とし、重症急性呼吸器症候群(SARS)対策に成功した実績を持つ鍾南山(しょう なんざん、チョン・ナンシャン)氏をコロナ対策の総責任者に起用。最初に新型コロナウイルス感染者が発見された湖北省・武漢市を都市封鎖(ロックダウン)するとともに、大規模な検査・療養施設を2棟建設し、徹底的な検査・医療措置を行ってきたことが大きい。北京市や青島市の例でも分かるように、市中に感染者がひとりでも発見されたら徹底的にPCR検査を行う。日本とは比べ物にならない1日100万人規模の検査を行う能力を持っている。また、英国の「ランセット」や「ネイチャー」など、欧米の科学論文雑誌への投稿数も世界第一だ。
コロナ対策の一応の成功で、世界第二(購買力平価では既に世界第一)の経済大国・中国の昨年2020年の経済成長率はプラス2.3%、台湾も2.98%だった。韓国もドライブ・スルー方式などを利用するとともに、コロナ専門の医療施設を新たに設営して、PCR検査に徹底的に力を入れ、日本よりははるかに良好な成績を残している。昨年2020年はマイナス成長だったが、それでも落ち込み幅は米国よりも少ない。
これに対して、日本は犠牲が少なかったと言われる東アジア諸国で最もコロナ対策の実績が悪い。人口100万人当たりの感染者数、死亡者数は、医療体制後進国のインドネシアを除いて、最悪だ。ベトナムにも完全に引き離されている。
この原因はやはり、次のような事情が重なったものと思われる。
- 臨床と論文発表の経験のない厚生労働省の医系技官が裏でコロナ対策の実権を握り、あの安倍晋三首相(当時)すら指示した「PCR検査人数、検査件数を拡大せよ」との厳命に従わなかった。彼らはかえって、新型コロナウイルス感染症法を第Ⅱ類相当指定感染症にさせて、行政検査しか行えないようにした。そして、旧大日本帝国陸海軍病院を前進に持つ国立感染研究時、国際医療研究センター、東京大学医科学研究所、東京慈恵医科大学在籍・出身の「専門家」と称する「似非専門家集団」(検査利権ムラ、検査を独占したうえそのための財政支援を受ける)を使って、PCR検査抑制体制を敷いてきた。
- 本来は新型コロナ感染が収束してから実施するはずだったGo To トラベルを、感染二波が谷をつける前で、新型コロナウイルスが活性期に入る秋冬に強行、全国に感染拡大を引き起こして、第三波では急激な新規感染拡大者数の増加と医療逼迫・医療崩壊を招き、入院待ち・自宅療養患者を激増させて、死亡者を急増させた。
- 厚労省の医系技官は、政府=菅政権と組んで、新型コロナ対策措置法改正、感染症法改正を行った。これは、立法事実がないのに、行政罰と過料を科すようしたのである。れいわ新選組の山本太郎代表によると、入院拒否した者、指定医療機関から逃げ出した者はそれぞれ1人だけで、特殊事情によると思われる。営業自粛の前提になる十分な営業活動自粛・休業補償(日本国憲法第29条1項「財産権は、これを侵してはならない」、第3項「 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」)を明記することもなく(改正内容に政府は補償するものと記しているが、実質的には努力義務に過ぎず、政令でいかようにも補償水準を決定できる)、最新鋭の技術によるPCR検査の抜本的強化や、その前提になる簡易医療施設の設営には触れていない。さらには、「自宅療養」を明記することで、自宅での感染を拡大する機会を作った。
大手メディアでは「新型ワクチン」接種を進めるための大規模キャンペーンを行っているが、上記のことを踏まえると「新型ワクチン一本足打法」に頼ることは科学的ではない。
日本での新規感染者数はこのところ減少傾向にあるがこれは、NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・医師(東大医科学研究所に在籍したことがあり、検査利権ムラについては歴史的経緯を含めて詳しい)によると、冬から春入りを迎えて、新型コロナの不活性化期に入っていることが主な理由と見られる。しかし、無症状感染者(ステルス・スプレッダー)が野放しにされていることから、人口移動指数が2月第1週からかなり増加してきていることや、大きな流れでは春から夏にかけて新型コロナウイルスが再び活性化することを考えると、新規感染者が再拡大に転じる可能性は大きい。オリ/パラ開催に当たって、世界保健機構(WHO)は日本に対して、日本のコロナ感染症対策の調査団を派遣すべきだ。
なお、大手メディアでは新型ワクチン接種「急ぐべし」の「報道」が展開されている。ただ、新型コロナウイルスの変異株(南アフリカで変異した変異株には、新型ワクチンは効かないと報道されている)が市中感染していることもあり、➀安全性②有効性(とりわげ、英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株に対する有効性)③持続性ーについての国民の理解が必要だ。それには、期待は出来ないが、本来なら厚労省が各国の接種情報を収集し、積極的に正確な情報を公開しなければならない。
上昌広理事長・医師は何よりも、ワクチン接種では政府に対する国民の信頼が大切だと指摘しているが、支持率の下落や世界中で批判が高まっている森喜朗オリ/パラ大会組織委員長の女性蔑視発言を事実上、見て見ぬふりをするなどのこれまでの状況を見ると、政府=菅政権を「信頼できる」と信じる国民は「政官業癒着ムラ」など一部に限られている。なお、朝日デジタルは森発言事案について、次のように伝えている(https://digital.asahi.com/articles/ASP285WQPP25UTIL06S.html?iref=comtop_7_05)
東京海上日動火災保険の広報担当者も「五輪・パラリンピックの理念に反するもので、誠に遺憾だ。引き続き、多様性と調和を掲げる東京大会の成功、そして安心・安全な大会になるよう尽力していく」とした。
多くのスポンサー企業は海外でもビジネスを展開している。ある企業は「メッセージを出して終わりではダメ。森会長の発言のような大会にはしないときちんと分かるようにしてほしい」と組織委に伝えたという。幹部は「海外からどう見られているか。もはや会長が辞める辞めないという次元の低い問題ではない」と話す。
組織委は昨年12月末、国内スポンサー全68社が契約延長に合意したと発表。新型コロナの影響で経営に深刻な打撃を受けた企業もあるなか、追加協賛金は総額220億円にのぼった。
SNSでは「スポンサーにとっても迷惑だ」という声がある一方で、「なぜ辞任を求めないのか」「抗議の声をあげるべきだ」との意見も出ている。
もっとも、スポンサー企業でもある朝日新聞社は、5日の社説で森発言を批判、辞任を求めたから一見落着としている。しかし、森発言はオリンピック憲章の根本原則第6項目「オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある」に明確に違反する。辞任もしくは更迭が妥当だ。
問題の深刻さからして、森発言を許した日本オリンピック委員会(JOC)評議会の責任追及、大会組織委幹部の責任追及も含めて辞任または更迭するまで、森会長を追及する必要がある。東京オリンピック/パラリンピックでは3兆円以上の血税が投入され、延期費用も3千億円は優に超える。実質的な「スポンサー」は国民だ。なお、森会長は当初、辞任を考えていたが、大会組織委の幹部に「辞任しなくて良い」と言われたから、辞任しなかったとのことだ。カネを引き出す能力があるからだ。
組織の幹部の「出所進退」は自分で決断するものだろう。また今日、オリンピックが商業主義に陥って、オリンピック憲章(フェアプレーの精神が根本)にもとっていることを見逃しても良いのだろうか。朝日新聞社は森友問題では何度となく追及報道をしたのではないか。これで終わりとするのでは同社も政府に忖度するスポンサー企業だから逃げている、と言われても仕方がない。なお、2月12日に大会組織委理事と評議員による合同会議が開かれ、森発言問題について最終的な意思決定を行うことになったが、形式的なものにとどまるだろう。ただし、この間、ボランティア事態は443人、組織委や東京都町に5712件の苦情が電話やメールで寄せられた(日刊ゲンダイ2月10日号3面)。
下図のアップル社の人口移動指数は、最新時点の2月7時点では86.37だった。
日本では厚労省の医系技官が中心になって采配を行っている「検査利権ムラ」のPCR検査抑制体制を廃し、国民が安心して「いつでも、どこでも、何回でも」PCR検査を行えるようにコロナ禍抜本対策を行わなければ、「緊急事態宣言再発令と経済悪化」の悪循環を繰り返すだけだ。感度(陰性なのに陽性と判定する程度)の問題は最近のPCR検査技術の革新によって改善されつつあり、世界では「感度」よりも「頻度」を重視することが常識になっている。
なお、政府=菅政権のコロナ禍対策が支離滅裂、後手後手に回り、「政府の失敗」の責任を国民に押し付けてきたから、内閣府の発表した景気ウォッチャー調査は3か月連続で悪化している(https://www5.cao.go.jp/keizai3/2021/0208watcher/bassui.html)。
家計動向関連DIは、小売関連等が低下したことから低下した。企業動向関連DIは、製造業等が低下したことから低下した。雇用関連DIについては、低下した。
1月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差3.8ポイント上昇の39.9となった。
家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが上昇した。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差6.4ポイント低下の30.1となり、先行き判断DIは前月差5.4ポイント上昇の41.5となった。
今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、このところ弱まっている。先行きについては、感染症の動向に対する懸念がみられる。」とまとめられる。
先行き判断は上昇しているが、2月7日に緊急事態宣言が10都府県で再延長されたこと、さらに➀大局的に見ると、新型コロナ活性化には季節要因があること②2020年度第三次補正予算にGo To トラベル予算が盛り込まれたことで、Go To トラベルなどGo To キャンペーンが強行される可能性があることーなどから、2月以降の景気ウォッチャー判断指数が、1月の先行き見通し通り上昇するかは、不明だ。日本のコロナ禍対策と経済社会情勢、そして東京オリンピック/パラリンピック開催問題はこれから正念場に入る。