日米首脳共同声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」という形で「台湾独立」のための「集団的自衛権の行使」を明確に盛り込んだほか、「核の先制攻撃」も盛り込んでいる。菅義偉首相は致命的な失敗を犯した。真正野党側が4月25日投開票の3つの補選を全勝して、政権交代しなければ、第三次世界大戦に進むことが危惧される。
日米首脳共同宣言は外務省のサイトで公開されている(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100177719.pdf)。この中では「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」との表現で、事実上の「台湾独立」のために、安保法制で可能にした「集団的自衛権」を本格的に行使することを示している隠していない(【追記4月21日午前6時】「重要影響事態法」に基づく米軍の後方支援にとどまらず、「存立危機事態法」に基づく米軍の直接的な軍事支援を行うようにならざるを得ない)。また、次のような文言で、核の先制使用を明記している。
米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した。米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認した。日米両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
外務省の国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任して現在、「東アジア共同体研究所」の孫崎享所長によると、米国の国防総省は18回に及ぶ台湾有事の際の軍事シミュレーションを行ったが、全てで米国が敗退するとの結論を得ている(https://www.youtube.com/watch?v=lqW9OZccCVA)。バラク・オバマ大統領(当時、以下同じ)は「核なき世界」を就任当時、世界に向かって公言、ノーベル平和賞を受賞した。「核なき世界」の第一歩は、核保有国が核保有国、核非保有国を問わず先制攻撃しないことを世界に向かって約束することだ。中国も核による先制攻撃はしないことを明言しているし、あの北朝鮮でさえそうだ。
しかし、オバマ大統領もやはりディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)の傘下にあるため、「核による先制攻撃をしないこと」を公言できなかった。バイデン大統領はその傾向が一段と強く、国防総省の台湾海峡有事の際のシミュレーションの結果も熟知しているから、共同声明であからさまに公言した。
日本の外務省は1960年代ころは、「核保有国による非保有国に対する核の先制攻撃」を世界に訴える外交活動を展開していたが、安倍晋三政権以来の自公連立政権はそうではない。「核による先制攻撃」には賛成なのだ。
台湾海峡有事の際に、日米連合軍が敗退するということは、尖閣諸島の「防衛」でも敗退するということだ。この場合、米国は「逃げる」ことになるだろう。また、米国は「領有権」と「施政権」という言葉を巧みに使い分けて、「日中分断」を図っている。北方領土の返還に横槍を入れてきたのも米国だ。日本は、米国の言うままの対米隷属外交しか行っていない。日本は実質的に米国の植民地である。日米安保条約の真の目的は、米国のダレス国務長官が回顧録などで述べているように、ディープステートが「日本国内の望むところに、望むだけの規模の在日米軍基地を、望む期間だけ駐留させること」である。
日米安保条約の第5条は、第6条を正当化するための「文言」に過ぎない。治外法権を持つ日米地位協定も安保条約の重要な目的だ。しかし、米国中国の精密中長距離ミサイルの配備で、その「日米安保条約」はもはや名実ともに張り子の虎になっている。だから、中国は次のように強硬な姿勢に出ている(https://digital.asahi.com/articles/ASP4K71J7P4KUHBI02T.html?iref=pc_ss_date_article)。
中国外務省の汪文斌副報道局長は19日の定例会見で、日米首脳会談後の共同声明で「台湾海峡の平和と安定」に言及したことについて、「台湾は不可分の中国の領土だ。中国は一切の必要な措置を取り、国家主権と安全、発展の利益を断固守る」とし、日米が関与を強める場合は対抗措置を取ることを示唆した。
声明で香港や新疆ウイグル自治区の人権状況に「深刻な懸念」を示したことについては、「人権問題では日米こそ負い目がある」と反論。日本の過去の侵略戦争や米国の21世紀以降の戦争を挙げつつ、「日米がすべきことは、自らの侵略の歴史と他国への人権侵害を反省して是正することであり、人権の看板を掲げて中国内政に干渉することではない」と断じた。
中国に対しては、同国が世界人権宣言に基づく国際人権規約を批准し、守るように粘り強く外交交渉を行うことが必要だ。菅首相は、バイデン大統領から東京オリンピック/パラリンピック開催の支持で失敗し、ワクチン問題でも具体的なスケジュールは不明だ(https://www.tokyo-np.co.jp/article/99278)。ハンバーガー会食も失敗し、両首脳それぞれ5分だけの話し合いに終わった。「ジョーとヨッシー」などというのは嘘である。日本は「ルビコン川」を渡った。真正野党は東京オリンピック/パラリンピック中止とコロナ禍対策抜本転換を含む強力な政策体系と連合政権構想を示し、内閣不信任案決議を3補選の結果などを見据えて出す必要がある。
なお、4月20日の東京市場で平均株価が前日比584円下落し、29100円になった。これは、大阪府を中心とする関西圏と東京都で第3回目の緊急事態宣言が発出されることがほぼ決まったことに加え、米国国務省が4月19日、新型コロナウイルス・パンデミックの持続を踏まえて、米国民向け海外渡航情報で最も高いレベル4で事実上の「渡航中止」の対象国を大幅に拡大すると発表したことが大きい(https://www.tokyo-np.co.jp/article/26167)。大幅に拡大される渡航中止=渡航禁止国の中に、日本が含まれる可能性は極めて濃厚だ。
米国務省は十九日、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、米国民に対して日本を含む全世界への渡航中止を勧告した。二十日には全世界で通常のビザ(査証)発給業務を一時停止すると発表。ホワイトハウスは十九日、トランプ大統領が六月にワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで予定していた先進七カ国首脳会議(G7サミット)をテレビ電話会議に切り替えることを決め、各国に伝えた。
米国の感染者数は十九日に一万人を超え、今後も増加し続けるのは必至の情勢。米国民の渡航中止や外国人の入国規制強化、G7サミットの米国開催中止は、東京五輪・パラリンピックの開催にも大きな影響を与えるとみられる。
その場合は、東京オリンピック/パラリンピック開催は中止にならざるを得ない。菅首相には決定的な打撃になる。さらに、自民党の二階俊博幹事長グループの事実上の重鎮である山梨県の長崎幸太郎知事が19日の臨時記者会見で、「五輪の方が命より大切というのはあり得ない。感染状況が深刻ならやってはいけない」と発言したのは、自民党の中でもオリ/パラ開催不可の声が広まってきたことと、親中派の二階幹事長と国家戦略のない単なる対米追随だけ派の菅首相との間に亀裂が生じ始めていることを意味するものだろう。
なお、政府=菅政権は東京都と大阪府、兵庫県3都府県に3回目の緊急事態宣言を発出するようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210421/k10012986611000.html)が、これも東京オリンピック/パラリンピックの強行開催にはマイナスだ。菅首相はオリ/パラ開催には影響はないと言っている(https://digital.asahi.com/articles/ASP4N74BCP4NUTFK031.html?iref=comtop_7_04)らしいが、早期に解除する場合は変異株要因と季節要因から新規感染拡大(リバウンド)がすぐに起こり、首相にとっては重大な事態に陥るだろう。