日本を壊国する安保法案=戦争法案、環太平洋連携協定(TPP)、日本列島火山活動活発化の中での原発再稼働。これらに共通するものは、「今だけ、カネだけ、自分だけ」良ければいい、という新自由(放任)主義であり、これらは新自由主義という共通項で括られるため、分解不可能である。つまり、古賀茂明氏のように、「年収200万円以下の非正規労働者が激増してきたため、TPP締結による農産物の自由化によって食料品価格を劇的に引き下げ、彼らを支援すべきだ」などの主張はまやかしでしかない。非正規労働者急増の原因と米国によるTPPの押し付けは同じく、新自由主義によるものである。
新自由主義は、プロテスタンティズムの倫理を土台とした資本主義の精神(エートス)が一方の原動力となって西欧に誕生した近代資本主義が再び堕落して、マックス・ウェーバー=大塚久雄の指摘する「人類史とともに古い前期的資本」になったものである。20世紀の世界的な妖怪は共産主義であったが、21世紀の妖怪は新自由主義である。元祖はシカゴ学派のミルトン・フリードマンであるが、その後、ロバート・ルーカスが数学で彫塑し現代経済学の主流派になり、21世紀の各国の経済政策を規定した「ワシントン・コンセンサス」の理論的支柱になっている。なお、両人ともノーベル経済学賞受賞者である。ノーベル経済学賞は、人類のためにあるのだろうか。
しかし、その実践的帰結は「人類史とともに古い利己的な金儲け主義」に基づくものであるため、各国は軒並み貧富の格差、バブルの横行、巨額の財政赤字に見まわれ、経済社会はガタガタになっていてる。その最たるものが世界最大の借金大国・米国である。その米国が戦後、ずっと飼いならしてきたのが日本であり、その集大成がTPPによる経済的植民地化(日本の財布国家化)と、衆議院を通過した日本国憲法違憲の安全保障関連法案による日本の私兵国家化である。
今月7月21日、文藝春秋社から政治・経済アナリストで、新自由主義を根本から批判してこられた菊池英博氏が「新自由主義の自滅=日本・アメリカ・韓国=」を上梓される。詳読させていただき、感想を述べる予定である。
新自由主義が21世紀の妖怪=悪魔であることに、組織的に気づいているのは、皮肉なことに日本共産党だけである。