1日当たりの新規感染確認者数が減ってきたなどの「現象」を理由に、改正インフルエンザ特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の解除が日程に上ってきていることがマスコミで報じられている。しかし、新型コロナウイルスは疾患のある患者には猛毒であることが分かってきた。また、検査なしの単なる「自粛」は感染症対策の基本である「検査と隔離」とは無縁である。医学的・科学的根拠なしに「平常時」に戻すことは禍根をもたらす。そのためには、これまでの政府=安倍晋三政権のコロナ禍対策を根本から見直す必要がある。具体的には、①新型コロナウイルスが持病・疾患のある方には猛毒であることを知らせる②財政の裏付けのあるPCR検査や抗原・抗体検査などを徹底的に推進して日本国内の感染者数の状況、分布を正確に把握する③財政措置を講じて、医療機関の完全防疫体制を整える④「個人情報保護」も考慮して既往感染者も含めた真の感染源を国民に知らせ、安全な行動情報を案内する「GPS個別追跡型」を精緻化して感染拡大防止と日常の経済活動の両立を図る−ことが肝要だ。
マスコミの伝えるところによると、このところの新型コロナウイルス新規感染者数が頭打ちになっていると発表されていることから、改正インフル特措法に基づいて発出、延長された「非常事態宣言」を「解除」しようとする動きが目立っている。朝日新聞が11日付朝刊1面で報じた「34県の多く解除を視野」と題する記事によると、非常事態宣言の実務責任者である西村康稔経済再生相は、①一定期間の新規感染者の数や感染経路不明者の割合②人工呼吸器などの医療提供体制③PCR検査を含む感染状況の監視体制−の3要素を「解除宣言」の指標として注目しているという。
ただし、このところ発表される新規感染者数がゴールデンウィーク前に比べて減少しているのは、ゴールデンウイーク入りで、全国にある検査機関のPCR検査数が減っていることが大きな理由である。西村再生相が重要な目安としているように、PCR検査や抗体検査など各種の検査を大規模に実施できる体制を整備し、実際に検査数を増やす必要がある。もっとも、それにはそれに相応しい財政支援が緊急に必要だが、与党内で流れているように今国会末までに第二次補正予算案を編成すると言った「緊張感のなさ」では、その実現の可能性はまずない。
東京都などでは、感染確認者とともにPCR検査数に占める陽性判定者の割合、つまり、陽性化率を発表するようになってきた。しかし、PCR検査数のうち保健所を通して行った検査数と、立ち上がりつつあるが、設立・運営のための財政措置が不十分なPCRセンターなど他の機関を通して行った検査数、検査実施日と判定日などが不明で、公開情報が限られているのは否めない。
そもそも、「営業自粛・自宅待機要請」は感染症対策の基本である「検査と隔離」には何の役にも立っていない。加えて、詳細は5月8日に行われ、昨夜10日夜に公開された次のデモクラシー・ニュースの対談番組東大先端研がん・代謝プロジェクトチームリーダーの児玉龍彦氏と立教大学特任教授特任教授の金子勝氏の対談番組に詳しいが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が血液疾患など重大な持病(疾患)を持っておられる患者さんたちには、猛毒性のウイルスであることが分かってきた。無症状・軽症の患者さんも多く、感染力も相当強いから、こうした方に感染させる可能性は強い。国内の感染実態を把握することなく、また、医学的・科学的準備を整えずに「緊急事態宣言」を解除し、「平時」に戻るとまず間違いなく日本の経済社会に禍根を残す。
上の動画で、児玉教授がSARS-CoV-2が猛毒性のウイルスであることの例として取り上げたのは、東京・台東区にある中核病院で、既に医療崩壊が起こっている永寿総合病院である。
東京都・台東区の中核病院である永寿総合病院では院内感染が起こり、新規外来・救急外来ともにいまだストップしており、中核病院としての機能が崩壊したままだ。ただし、東京都では同病院のほか、中野区・中野江古田病院や江東区・都立墨東病院など半数近くの中核病院で院内感染が起こり、中核病院としての機能に支障が生じているが、小池百合子都知事率いる東京都はその詳細を明らかにしていない。「自粛を」と叫ぶだけだ。
永寿総合病院では感染が確認された入院患者131人のうち、死亡された方は38人。すべて入院患者さん(5月12日23時追記)だが、このうち21人の死亡者が40人48人の患者さんが入院している血液内科(白血病や再生不良性貧血など造血幹細胞を増殖する骨髄に異常のある患者さんが入院される)の患者さんである。血液内科に40人もの48人もの患者さんが入院されているというのも普通はあり得ない(5月12日23時追記:臨床治験病院としての性格も兼ねていた)が、その約半数の患者さんが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の犠牲になられたわけである。こうした重篤な患者さんにとって、今回のSARS-CoV-2はまさに「殺人ウイルス」と言って過言ではない。
(5月12日23時追記)なお、日本で最初に新型コロナウイルスに感染したことが報道された矢形船での感染者によるアウトブレイク(感染患者の急激な増加、この場合は院内感染)は抑えられ、永寿総合病院の院内感染が始まったのは、武漢型や変異した欧州型の新型コロナウイルスではないという。新しい方の新型コロナウイルスでアウトブレイクが発生した可能性が強い、
また、死亡された38人の方には、医師・看護師・職員さんは含まれておらず、血液内科の患者さんが21人と圧倒的に多かった。血液内科の患者さんは重篤な患者さんが多数を占めるから、この新型コロナウイルスは「殺人的」なウイルスと思われる。永寿病院をはじめ日本で感染が拡大している新型コロナウイルスは欧州型からさらに変異した恐らく新しい型のウイルスである可能性が高い。
ただし、永寿総合病院としてももちろん、無策だったわけではない。最善と考えられる手は、上図のようにつくしている。最も重要なのは、感染症学会公認で最も権威のある「インフェクション・コントロールドクター(感染症の拡大と収束に取り組む専門の医師)」を3人も投入したのに、同病院での院内感染の拡大を阻止できなかったということである。
これは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が従来のコロナウイルスに比べて、特異な動きをしていることの表れである。この状況を模式化したのが下の図だ。
通常は、ヒトの体にウイルスが侵入してくるとまず、IgMという抗体が急増、その後にIgG抗体が持続的に産生されて免疫反応を完全なものにする。しかし、SARS-CoV-2の場合は、IgM抗体が遅れて上がってくるため、免疫力が完全なものにはならない。また、IgMが早期に上昇する患者が重症化するということが分かってきた。
このように、今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は特異な動きをしているため、従来の対症療法がなかなか効果を発揮しないし、ワクチンの開発にもかなりの時間がかかると予想されている。要するに、「長期戦」を覚悟しなければならないのである。長期戦になるということになれば、短期的には大量の赤字国債の発行による医療機関・高齢者養護施設の防疫体制の確立や企業・勤労者の事業継続や生活支援のために大規模な財政支援措置は必要不可欠であるが、いつまでも頼る訳にはいかない。
大量の赤字国債発行に、アベノミクスのツケの失敗に終わった超金融緩和政策も加わって、市中の金融市場に膨大なカネあまり現象が生じ、生産・在庫の縮小と相まって大不況下のハイパーインフレーションが起きるからだ。つまり、大規模なスタグフレーションが発生することになる。このため、PCR検査でも多様な方法があるし、抗体検査も不可欠になってきた。ところが、日本感染症学会や日本医師会は、楽天が個人でPCR検査のできるキットを発売すると、その性能は通常のPCR検査と変わらないのに、揃って役に立たないと判断する。
こうした旧態依然としたやり方では、PCR検査や抗体検査が進まず、国内の感染実態が不明なままになる。欧米の初期の対策や日本の今の対策は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を甘くみていたからだ。
現在の「対策」が続く限り、一時の警戒の弛緩期間を過ぎれば、日本も「爆発的感染者増加」が起きる公算は高いと言える。
やはり、真の「専門家会議」には医学、感染症学、遺伝子工学、情報科学の専門家を網羅して、未知のウイルスに立ち向かうための真の専門家が結集、政治の思惑から独立して現代の先端理論とテクノロジーのみに基づいて新型コロナウイルス感染症に立ち向かえるだけの抜本対策を打ち出さなければならない。
現状を打破して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大を防ぐ一方、経済社会を平常時に戻すためには、従来言われてきた「GPS個別追跡型」をさらに精緻化したきめ細かな対策を考え、実施する必要がある。
そのためには、国民が国民主権を取り戻し、その代表者からなる国会が「国権の最高機関」としての立場を取り戻す以外に道はない。「営業自粛・自宅待機」では何の感染症対策にもなっていない。「検査・隔離・最適な行動」が相まって、「長期戦」に備えることができる。
※今回のコロナ禍では謀略説(意外と早期に抗ウイルス薬、ワクチンが開発され、関連業界が大儲けする)も話題なっているが、上記動画を視聴する限り、簡単には製造できないようである。