次期解散総選挙、「反安倍陣営」は連合主導の従来型「野党共闘」か「政策連合」のいずれか

立憲民主党の枝野幸男代表は次期解散・総選挙をそれぞれ8月、9月と見込んでいるようだ。ここに来て、連合が立健と国民民主党に再合流を持ちかけ、従来の連合主導の理念なき野合の「野党共闘」を復活させようとしている。しかし、これでは自公政権が日本を長期デフレ不況に追い込んできたプライマリー・バランス論を旗印とした緊縮財政路線を中心として、政策は何も変わらない。政権奪取は不可能だし、億が一奪取しても日本の衰退は防げない。共生主義を理念に政策を抜本転換した「政策連合」で迎撃する以外に、コロナ禍で未曾有の危機にある日本の再生は不可能だ。

※追記:7月14日午前8時20分
コロナウイルスの再拡大が本格化すれば、つまり、第二波到来を政府=安倍政権が認めざるを得なくなれば、解散・総選挙の日程にも大きく影響する可能性が高いことを付け加えておきたいと思います。

立憲の枝野代表が8月解散、9月総選挙を想定して準備を進めていることは、同代表と近い北海道大学名誉教授現在法政大学教授・政治評論家の山口次郎氏がYoutubeでマスコミ活動を展開しているデモクラシータイムスが9日に収録、12日に公開した「インタビュー番組」で明らかにした。

山口氏の考え方は基本的には、国民民主党とれいわ新選組は度外視して、立憲と日本共産党で「野党共闘」の核を形成し、反安倍陣営を結集して行くべきというものだ。しかし、これには大きく分けて二つの問題がある。第一の問題は、同氏が東大法学部出身で経済政策についての言及がないことだ。端的な象徴は非正規労働者や納税義務者である企業(中小零細企業)に対して「酷税」になっている消費税の減税について、公約に掲げ「してもいいし、しなくても良い」と発言していることだ。

しかし、1990年からのバブル崩壊の30年にもわたるデフレ不況スパイラルは、プライマリーバランス論(国債費を除いた一般歳出=政策経費を税収の範囲内に抑える)に象徴される「財政再建路線」を続けてきたことが真の原因だ。本当に「財政再建」を目指すと言うなら、消費税増税はもちろん、所得税も法人税もともに「増税一直線」で進むべきところだ。

ところが、実際は消費税の増税は所得税の減税(累進性の緩和)と法人税の減税の財源として利用されている。

財務省のさいとによる。

また、法人税の減税によって、企業の内部留保金は巨額に膨れ上がっている。日経新聞が2019年9月2 日19時30分に投稿した「内部留保、7年連続で過去最大 18年度の法人企業統計」の記事によると、「財務省が2日発表した法人企業統計で、2018年度の内部留保(利益剰余金)が7年連続で過去最大を更新した。金融業・保険業を除く全産業ベースで、17年度と比べて3.7%増の463兆1308億円となった。製造業が同6.7%増の163兆6012億円と拡大をけん引した。企業が稼いだお金を内部でため込む傾向が一段と強まっている」。

この巨額な内部留保金は、企業部門が全体として大幅な「貯蓄超禍」(全体として黒字)になっていることを示している。経済の成長・発展期には企業部門は「投資超禍」(全体として赤字)になっている。この企業部門が貯蓄超禍になっていることが、デフレ不況スパイラルの主要な原因である。そして、法人税減税が企業の巨額の内部留保の重要な原因になっている。その反面、財政部門が大幅な赤字になっているわけだ。

すでに述べたように消費税増税はまた、4割を超える非正規労働者の給与収入をむしり取り、消費税の納税義務者である企業(中小零細企業)にとって、納税が困難な税金のトップになっている。製品価格への転嫁が困難であり、赤字企業にも課税されるためだ。

欧州では、コロナ禍対策の一環として消費税の原型になった付加価値税の税率を引き下げる措置を行った。政府系のメディアである読売新聞12日付けは早速、欧州の付加価値税率の引き下げには「効果がない」と牽制している。しかし、付加価値税ないしは日本型付加価値税の消費税の減税は、政府=安倍晋三政権の下で実質賃金がどんどんすくなくなり、収入・所得が大幅に減少した国民(特に、非正規労働者)の収入・所得を引き上げ、デフレギャップを解消するための政策のひとつの柱である。

また、デフレ不況スパイラルの根本原因である「財政再建路線=緊縮財政路線」を抜本的に転換し、「大胆な積極財政」に転じるのでなければ、コロナ禍も加わって大不況に陥っている現下の日本経済の再生にもならない。政府はこのところの新型コロナウイルスの感染拡大に何らの対処も行わない。それどころか、「Go to トラベル」キャンペーンを前倒し(8月上旬から7月22日)し、移動の制限の撤廃などコロナ感染再拡大の現状を無視して、経済活動の再開に躍起になっている。これでは、「Go to Hell(地獄に落ちろ)」の結果をもたらす。

枝野代表が上図のような「枝野ビジョン」を打ち出したところで、「失われた30年=デフレ不況スパイラル」を取り戻して克服し、さらには大規模な予算措置が不可欠なコロナ禍対策を実施するためには。財源論がなければ意味がない。

山口氏の見解の第二の問題点は、立憲や国民の支援団体になっている御用組合の日本労働組合総連合(連合)の問題点について言及がないことだ。連合には、電力総連、自動車総連、電気連合などが加盟しており、対応する会社は電力会社、自動車会社、電機会社である。電力会社は原子力発電所の稼働が死活問題になっているが、放射性廃棄物の処理が困難なため(福島第一原発の放射能汚染水は福島県沖の海洋に垂れ流す計画。原子力緊急事態宣言は未だに解除されていない)、心ある国民には原発稼働停止が基本になっている。このため、連合傘下にある立憲や国民からは「原発稼働即時停止」が選挙公約にならない。

自動車会社や電機会社は輸出企業であり、消費税の還付を受けられる。だから、消費税増税に賛成し、自公政権の先導役を務め、消費税増税の音頭を取る。こうした状況下では、消費税の廃止はもちろん、税率5%への引き下げ=消費税減税さえ、曖昧にせざるを得ない。

こうした状況下で、立憲が主役となって政権を奪取するなどのことは不可能だし、億が一、奪取できたとしても日本は再生できない。このことは、12日に行われた鹿児島県知事に示されている。保守王国のためあまり参考にはならないが、ある程度の参考にはすべきだ。まず、立憲、日本共産党が独自に候補を立てたが、投票率は前回の56・77%から49・84%へとさらに下がった。結果も、両党は自民党にまったく相手にならなかった。

鹿児島県選挙管理委員会、Wikipediaによる。

現職だった三反園(みたぞの)訓(さとし)氏(62)は自公の推薦候補だったが、選挙戦で勝利した塩田康一候補も自公両党に推薦願いを出している。要するに、保守分裂選挙になったわけだが、それでも両候補合わせて63.7%の得票率(全有権者の31.8%)を得ている。立憲、共産は合わせても28.8%(全有権者の14.4%)しかない。なお、先の東京都知事線の際に行われた都議補欠選挙では、安倍政権の不祥事とは関係なく、4選挙区とも自民党候補が当選した。

山口氏の見解には賛同できるところも多々あるが、①財源が不明確で経済政策もはっきりしない②御用組合の連合批判がない−など根本のところで疑問に思わざるを得ないところがある。

論座より(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019110300003.html)

なお、国民には前原誠司衆院議員など日本維新の会と組む安倍政権補完勢力もいるが、東京都知事戦でれいわ新選組代表の山本太郎候補を応援した「消費税減税研究会」の共同代表である馬渕澄夫衆院議員ら、消費税減税に賛成な立場の議員も少なくないと思われる。若干古いが、馬渕衆院議員が野党再編のキーマンになるとの見方もある(論座、https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019110300003.html)。なお、馬渕衆院議員は7月中に「税制抜本改革案」をまとめ、公表する予定である。

自由党から移った小沢一郎衆院議員らも都知事選では宇都宮健児候補を応援した。「国民生活が第一」という基本的な考え方は変わっていないためで、野合共闘の限界を感じている可能性がある。

国民の玉木雄一郎代表の立場ははっきりしないが、100兆円の財政支出の必要性を強調するなど、積極財政への転換の必要性は認めている。

また、立憲にも須藤元気参院議員のように、水面下で消費税減税に賛同している議員もいる。枝野代表率いる執行部は、これらの勢力を弾圧しているのが実情だ。日本共産党はれいわ新選組と消費税の減税で合意している。


やはり、共生主義を理念に据え、①プライマリーバランス論(国債費を除く一般的政策経費を税収の範囲に収めることを目標)による緊縮財政政策と決別、大胆な積極財政に転換する②欧州諸国が付加価値税率を引き下げたように消費税減税を実施する③安保法制廃止し、外交による国際紛争解決に注力する④憲法に「非常事態条項」を盛り込むことを柱にした「憲法改悪」を阻止する⑤廃棄物を処理できない原発は稼働を即停止する−を共通政策を中心に、「理念と政策なき野合の野党共闘」を廃し、心ある野党側議員を結集して、「政策連合」を形成することが急務になる。

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