コロナ感染者急増で関心高まる都知事選−「政策連合」結成への布石打てるかが焦点(追加)

東京都知事選挙の投開票が明日7月5日に迫ったが、ここに来て東京はじめ全国の「公式」コロナ感染確認者が急増している。6月19日に小池百合子現職都知事率いる東京都が選挙のため、他県への移動を含む自粛を撤廃したことが直接の原因だ。政府=安倍晋三政権とその支配下にある小池現職候補は危機意識もなければ、対策も講じない。都民としては感染を恐れて投票に行かないことより、明日の我が身を心配して投票所に足を運ぶというのが、常識的な線だろう。与党も野党も統一候補を立てられなかったことがあり、根深い野党への失望から「ポピュリズム」と誤解される「政策連合」結成に向けて、布石を打てるかが焦点になる。

焦点の東京都では2日連続して「公式」の新型コロナ感染者が100人を超え、昨日3日は127人に上った。小池現職都知事は当初は「(新宿歌舞伎町を指して)夜の街が感染拡大の原因」と嘯いていたが、さすがに127人にもなると形だけでも心配しているフリをしなければならない。だから表向き、「無症状の若者の割合が多いが、持病を持っている都民、高齢者の都民への感染が懸念される」などと語り、担当専門家補佐官も「医療逼迫の可能性もある」などと言っておかなければならない。

週刊ダイヤモンドのサイトより(https://diamond.jp/articles/-/242086)

しかし、これまで自粛要請協力者に対して、①財政調整基金から気前よく「協力金」を支給していたのが枯渇してきたこと②「無所属候補」と言う名の自民党・公明党の「公認候補」であり、その組織票に頼らざるをえないという弱みを握られているから、自公政権がかつぐ政府=安倍政権が緊縮財政(プライマリー・バランス論=税収の範囲内に国債の利払い費を除いた一般歳出=政策経費を収めること)・社会保障削減路線(新自由主義=弱肉強食路線=弱者は滅びて当然だし、社会の進化にとっては当然のこと=の誤った考え方からくる)に踏襲して、何もしないというのが小池現職都知事の「コロナ禍対策」である。

この安倍政権の新自由主義路線(と安保法制=他国先制攻撃能力の強化路線)に基づいて、都内の保健所の大幅削減や都立病院・東京都保健医療公社病院の独立行政法人化(都の予算を削減して、採算重視型の営利法人に再編すること)に地道をあげ、都民の生活の安定と都の個人業種・中小企業の業績向上に尽くすという都政の本分を否定してきたのが、小池都政の本質だ。

小池現職都知事が「自粛から自衛へ」という「自己責任原則」を持ち出してきたことが、その端的な証拠だ。コロナ禍対策に、小池都政は責任を持たないというのが究極の姿勢だ。それにしても、東京を中心に新型コロナ感染者が急激に広がっている。朝日デジタルが2020年7月4日0時28分に掲載した「全国で250人が感染 東京は2日連続100人以上」と題する記事によると、「新型コロナウイルスの国内感染者は3日午後11時半現在で、新たに250人が確認された。全国の累計は1万9403人になった。東京都は2日連続で100人を超えたほか、隣接する埼玉、千葉、神奈川の3県でも計59人が感染。鹿児島県では前日までの累計数を上回る感染が確認された」という状況だ。

これはあくまでも「公式発表」に過ぎない。加藤勝信大臣率いる厚生労働省や東京都が未だにPCR検査や抗原・抗体検査を十分、かつ、正確に行っていない。だから、国内感染の実態は掴めていない。超禍死亡(例年より死亡者数が多いこと。新型コロナ感染が原因の場合も多い)の問題もある、また、新型コロナウイルスに感染したことが分かれば、補償なき休業・解雇を命ぜられるから、4割に達している非正規労働者(これも、日本経団連の要求に応じ国際競争力を強化するためと称して、正社員を採用せず、正社員も合理化してきた結果)にとって、積極的に検査を受ける誘引も出てこない。

こんな政府=安倍政権、小池東京都政に対して、反発が起きないのが不思議だ。現在は、「自己責任原則」を植え付けられて国民、都民は我慢しているが、その我慢も限界に達してくるだろう。国民・都民の「下級国民」がこうした悲惨な状況に陥ったのは、彼らのせいではない。政府=安倍政権=財務省が、プライマリーバランスを赤字から黒字にするという名目の下に採用してきた消費税増税・緊縮財政路線、意味のない量的金融緩和路線を取り続けてきたという政策の失敗によるものだ。

加えて、政治屋を含む「上級国民」が不正の限りを尽くし、日本の経済社会を滅茶苦茶にしてきたこともある。国民民主党の小沢一郎衆議院議員が2日、ツイッターにつぎのように新規投稿した。

「総理がいま一番恐れているのは、自分が辞めた後、犯罪の証拠が次々に明るみに出て、訴追されることである。(中略)(昨夏の参院選広島選挙区で河井克行、河井案里容疑者に渡された資金の)使い道はもちろん、異例の金額である1億5千万円の提供を誰がどう決めたのか、決定の過程や金額の内訳を有権者に明示する義務がある。(中略)これ(逮捕・訴追)を避けるためには子飼いを後継に据えなければならない。目下、衆院解散を騒ぎ立て、政局に懸命なのもそのためである。感染者が急増しても知らんぷり。保身で頭が一杯で考える暇もないのか」。安倍首相のホンネを厳しく批判している。

さて、日本国民の99%は「下級国民」と呼ばれているが、日本国憲法ではそういう言葉はない。すべての国民には基本的人権というものがあり、法の下に平等なのである。その国民の99%が下級国民に成り果てているのは、次の理由からである。

①政治屋と政商の結託による利権政治・血税の私物化②その不当性を調査し逮捕・起訴しない検察の不当性③最高裁判所長官の指名権が内閣(総理大臣=首相)に握られており、その最高裁長官が他の全ての裁判官の任命権・人事権を持っている(実際には、政府と連携している最高裁事務総局がこれらの重要な仕事をする)という裁判制度の非独立化=政府への従属化という問題と判事・検事交流などの異常な制度の横行。

④「上級国民」階層に属する大手マスメディアの「記者たち」が「特ダネ」を得るために行政と結託し、国民を「下級国民」に洗脳するための情報操作を行う(その最たるものが「選挙情勢」を流し、投票率を低下させることだ)⑤同じく「上流国民」階層に属する「野党」と称する政党が、適当に芝居を打ちながら、水面下で政府・与党と手を握っている⑥戦後の民主主義化の最中に朝鮮戦争が勃発し、中途で挫折したため、日本国民が民主主義を理解できていない−などだ。

しかし、今回のコロナ禍はこうした戦後の矛盾を国民の前にたたきつけている。「上級国民」からは反緊縮・積極財政は「ポピュリズム」と揶揄されるが、そうではない。新自由主義に基づく利権政治の横行(究極的には政府の民営化)とプライマリー・バランス政策論・財政再建路線こそ、日本の経済社会を悪化させてきた最大の原因である。現在、米国で起こった、貨幣(通貨)の起源と本質を実証的に探りつつ、ケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」を発展させている「現代貨幣経済理論(MMT)」に基づけば、そのことがよく分かる。多少の例を図示すれば、下図のようになる。

累積国債発行残高の対国内総生産比率が最も高いのは日本であるが、「正統派経済学」によると国債は発行すればするほど金利は高くなる。しかし、そうはなっていない。むしろ、超低金利が続いており、これ以上の量的緩和政策は無意味になっている。また、日本の実質経済成長率は世界各国の中で最低水準に在るが、財政支出の規模と実質経済成長率は明確な相関関係・因果関係を持っている。「正統派経済学」は歴史的に実証されていない物々交換を数学の鎧で精緻化したにすぎず、「供給は自ら需要を作る」という「セーの法則」という「失業はあり得ない」という「考え方」が基本原則だ。これを「机上の空論」という。

「通貨発行自主権を持ち変動相場制を採用している国がデフォルトに陥ることはないというのがMMTの大きな結論で、この点は財務省も米国の各付け会社から日本国債の各付けが引き下げられたことに対する反論として認めている。都合の良い時にはMMTを認め、都合の悪い時にはMMTを否定するというのが、東大の経済学の教授が「法学部の学生連中は経済が分からない」といって嘆いたそのOBからなる財務省の姿だ。

財務省のサイトより(https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm)

財政政策を柱にして完全雇用と物価の安定を確保すべきだ」というMMTに基づく政策を採用することによって、①反緊縮・積極財政への転換②消費税率の5%への引き下げから廃止③有害無益で高コストの原子力発電所は即可動を停止する−などの基本政策を中心に、心ある政治家が結集して識者と市民が支援する「政策連合」を形成すれば、安倍政権とそれに続く自公政権はすぐに崩壊する。その序章となるのが、明日7月5日投開票の東京都知事選挙だろう。

※朝日デジタルが2020年7月4日20時11分に投稿した「全国で263人感染 山形は2カ月ぶり、地方からも再び」と題する記事によると、「新型コロナウイルスの国内感染者は4日午後8時現在で、新たに263人が確認された。全国の累計は1万9666人になった。東京都で(は131人と)3日連続100人を超えたほか、隣接する埼玉、千葉、神奈川の3県で計63人の感染がわかった。感染がしばらく確認されていなかった地域でも、再び報告があがり始めている」。強力なコロナ対策を公約にかかげ、実行力のある候補者に投票すべきだと思う。

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