学問の自由に対する介入は忖度政治が横行した安倍前政権時代からー基本的人権破壊の統制国家へ
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大手マスコミの報道によると昨日10月5日夕刻、菅義偉首相は記者会見を行い、日本学術会議について日本国憲法15条を念頭に置いて「政府の機関であり、年間約10億円の予算を使って活動している。任命される会員は公務員の立場になる」(朝日新聞1面、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14647982.html?iref=pc_ss_date)と発言して、自ら主体的に同会議が推薦した6人の学者を排除したことを認めた。憲法15条に基づいて6人の学者を排除したことには無理がある。安倍晋三、菅政権と続いてきた政権批判は許さないといとう「基本的人権を破壊する排除の論理の全面的活用」とそれに基づく「忖度政治=統制国家への爆進」をこれ以上続けさせるわけには行かない。

◎重要:朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/ASNB63SBBNB6UTFK007.html?iref=comtop_7_04)によると、自民党の二階俊博幹事長は今月10月26日に会期を12月上旬までとする臨時国会を召集すると表明した。菅首相の所信表明演説、代表質問を行うと語っているが、その後、解散・総選挙に打って出る公算も大きい。日本学術会議が推薦した6人の学者を任命しなかったことについて、野党側の憲法23条「学問の自由の保障」違反の追及をかわせそうにないことも解散・総選挙の要因のひとつだ。ただし、新型コロナウイルス感染の状況が解散・総選挙強行の障害になる。

◎追記:10月6日の新型コロナウイルス新規感染確認者は、東京都では午後15時の速報値で4日以来100人超えの177人。1日なので瞬間風速だが1週間前の9月29日の212人よりは減少している。9月19日(土)からの4連休以降の影響は約4週間後の10月17日(土)以降に表れてくる。全国では午後20時の時点で、 496人の感染者 7人の死亡者が確認された。4日には速報値で、1日に8465件のPCR検査が行われたため、推測瞬間陽性率は5.9%と世界保健機構が警戒を要する値として公表している5%を上回った。

この日の首相の記者会見は、首相官邸の記者クラブに所属する読売新聞、日経新聞、北海道新聞(ブロック紙、前二紙は事実上、政府の広報宣伝機関紙と言われている)の要請に応じて開かれたもので、他の内閣記者会の会員社の首相番記者は質問することなく、傍聴する立場。記者会見によると、菅首相が日本学術会議として新会員に推薦した105人のうち、6人を排除したのは、会議のメンバーは公務員であり、公務員の任命権は内閣に属するという見解に基づく。下図は東京新聞(https://www.tokyo-np.co.jp/article/59213)による。

日本学術会議の任命拒否の問題で打ち合わせする菅首相と加藤官房長官

日本学術会議の任命拒否の問題で打ち合わせする菅首相と加藤官房長官

これは、厚生労働相から、厚労相時代にPCR検査を抑圧してきた「実績」を「評価」されて内閣官房長官に就任した加藤勝信官房長官が記者会見で表明した理屈と同じものだ。加藤内閣官房長官は、5日の会見で初めて日本憲法15条を持ち出し、日本学術会議の会員は公務員であるから、その任命権は内閣にあるという理屈を述べた。しかし、日本国憲法15条には、第一項で「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めており、内閣は国民に選出された国会に対して任命・任命拒否・罷免の理由を説明しなければならない。にもかかわらず、任命拒否の理由は黙して語らない。

また、第二項で「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定めており、内閣人事局を官僚を支配し。そのことによって特定の業者・団体・個人に特権を与えるなどのことを行ってはならない。ところが、安倍、菅内閣と続いてきた自公連立政権は、一部の富裕層や「お仲間」を優遇し、権力を私物化してきた。その権力装置が、官僚を操る内閣人事局である。例えば、菅首相が総務相の時代に推進してきたふるさと納税制度は、実態として富裕層に対する優遇措置であり、豪華な返礼品の贈答競争も加わって双方の地方自治体の税収の減収につながっているが、この重要な問題点を指摘した総務省の官僚を更迭した。

内閣人事局という権力装置を使って、内閣法制局に圧力をかけ、日本国憲法は集団的自衛権を認めていないという従来の同法制局の憲法解釈を変更させて「安保法」を強行成立させたことや森友・加計学園問題、桜を見る会前夜祭、さくらを見る会、検察官の定年延長問題疑惑など、権力の私物化とこれを覆い隠す忖度政治を官僚全体に広げた。

安倍、菅内閣による内閣法制局への圧力の例

安倍、菅内閣による内閣法制局への圧力の例

内閣法制局に圧力をかけて数々の違憲立法を行ってきた自公連立内閣

内閣法制局に圧力をかけて数々の違憲立法を行ってきた自公連立内閣

また、直接の日本学術会議の根拠法になっている「日本学術会議法」の従来の解釈・運用を内閣法制局に変更させたのか、変更させたのなら何故なのかも、憲法15条に従って詳細な説明しなければならないが、加藤官房長官は「たまたま」と苦しい言い訳を行うだけで、逃げること以外の案はない。昨日北海道新聞社を除いて政府系の新聞社がまさに形式的に行った記者会見菅首相の記者会見も、「加藤案」の域を出ておらず、憲法第23条の「学問の自由は、これを保障する」を犯したとの疑惑に答えるものには全くなっていない。

朝日新聞は10月5日付1面で、首相官邸(内閣官房)が2017年(平成29年)にも2016年に引き続いて日本学術会議の選考過程に介入していいたことを独自の取材を踏まえて報道している。同記事を踏まえて、一連の問題点をまとめてみると、次のようになる。

1946年 日本学術会議は日本学術会議法に基づいて、科学が戦争に動員された反省から、内閣総理大臣の「所轄」で経費は国庫負担としながらも、政府から独立して職務(研究・提言、世論への啓発など)を行う「特別の」機関として規定された。定員は210人で任期は6年、3年毎に半数(105人)が改選される。当初は国内のほぼすべての研究者による選挙で選ばれ「学者の国会」と呼ばれた。
1983年 各種の学会が創設され、立候補する科学者(学者)が減ったことから、会員の選出方法を選挙から日本学術会議の推薦に基づく内閣総理大臣による任命とする方向が示されるようになりこの時期、時の中曽根康弘首相が「政府が行うのは形式的任命に過ぎない。学問の自由、独立はあくまで保証される」と延べ、学術会議の推薦を尊重する考えを示した。
1983年 日本学術会議法を実際に変更。各種学会の方針を基にして学術会議が候補者を推薦し、内閣総理大臣がその推薦を基に「形式的」に任命するようになった。憲法第6条の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」と同じ意味合い。
2005年 現会員が次の会員を推薦する方式が導入され、日本学術会議はこの推薦に基づいて105人の被推薦人を選出するようになり、70歳定年制も導入された。
2016年 欠員補充人事の正式な推薦決定前に、日本学術会議が推薦した候補者案の一部に首相官邸が難色。同会議は欠員補充を見送り。安倍晋三(当時)政権が内閣調査室の情報に基づいて、所管官庁の内閣府を通じて政府批判の学者を拒否した可能性がある。
2017年 日本学術会員半数(105人)の交代にあたり、首相官邸(内閣官房)が同会議に対して105人の推薦候補者に数人を加えることを要請。会議側は、計110人超の名簿を提示したが、結果的に、会議が優先的に推薦した105人が任命される結果になった。ただし、2016年、2017年とともに表沙汰にならなかった。
2018年 日本学術会議を所管する内閣府が、内閣法制局に同法の解釈を照会し、表向き「必ず任命する義務はない」ことを確認。今年2020年9月にも再び照会していたが、昨日10月5日の記者会見で加藤官房長官は解釈変更はしていないと強弁。
2020年10月1日 8月末に日本学術会議が内閣府に105人の推薦人名簿を提出。9月末、政府が6人を除く99人を任命する文書を決裁。10月1日、しんぶん赤旗(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-10-01/2020100100_00_0.html)が日本学術会議の会員の「形式的任命」が「実質的任命」に変更されたこと、つまり、同会議会員の人事に対して政治介入を行い、菅政権が日本国減法第23条「学問の自由は、これを保障する」を破ったことを報道した。マスコミ各社が独自にフォローして一斉に伝え、菅政権が学問の自由はもとより、言論・思想・結社・集会の自由を弾圧する事実上の警察・ファッショ政権である疑惑を報道するという展開になった。
2020年10月3日 日本学術会議が「第25期新規会員に対する要望書」(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo301-youbou.pdf)を菅首相に提出。内容は、①任命拒否の理由②任命拒否の撤回ーの2点。

菅政権の人事介入、学問の自由の弾圧によって任命が拒否された学者は小沢隆一東京慈恵会医科大学(憲法学)、岡田正則早稲田大学(行政法学)、松宮孝明立命館大学(刑事法学)、加藤陽子東京大学(歴史学)、芦名定道京都大学(キリスト教学)、宇野重規東京大学(政治学)の6人の教授。これについては、次の投稿記事を参照して下さい。

※追記:10月5日(午後16時)朝日デジタルが10月6日 12時33分に公開した「学術会議会員の任命『推薦通りの義務なし』内部文書公開」と題する記事によると、日本学術会議を所管する内閣府が5日、2018年11月13日「『日本学術会議法17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について』と題された文書」を公開。その中に「『首相が適切にその任命権を行使するため、任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命するということも否定されないと考えられる』と記している」という。

次の点が疑問だ。①日本学術会議が自ら定数を超える推薦人を提示する理由があるのか②学者でない政治家である首相に妥当に選任できる能力があるのかーというニ点だ。

また、この内部文書には、①今回は日本学術会議側は3年毎に半数改選するという日本学術会議法に基づいて105人を推薦しており、任命すべき会員の数を上回る候補者を推薦したわけではないから、菅首相の任命拒否の理由を説明していることにはならない②首相の「任命権」については、1983年の「形式的なものに過ぎない」とする中曽根首相(当時)の見解があり、中曽根見解との整合性が問われてしまうーという問題点がある。なお、首相官邸(内閣官房)が所轄官庁の内閣府を通して内閣法制局に対して、法解釈を変更させ、しかも、公表させなかった疑惑が残ることは否めない。

御用学者と菅政権「支持」の以外は、憲法23条が保証している学問の自由に対する不当介入として、強く講義している。菅政権支持者は日本学術会議に問題があるとの情報をインターネットで流している(菅政権のインターネット操作の感がする)が、憲法15条、23条に照らせば、菅政権が憲法違反内閣であることは明らかだ。学問の自由には、大学の自治のように学術研究機関の自律・自治も含まれるというのが、まともな解釈だ。日本学術会議の問題は同会議にまかせておけば良い。

なお、自民党内でも船田元衆院議員が今回の人事拒否について菅政権を批判している(https://digital.asahi.com/articles/ASNB55FZXNB5UTFK008.html)。
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自民党の船田元・元経済企画庁長官は5日配信のメールマガジン(メルマガ)で、「日本学術会議」が推薦した会員候補のうち6人を菅政権が任命しなかったことについて、「明らかに(法律の)解釈の『変更』だ」と批判した。事前に国会などにも説明が無かったとして「結果として闇討ちのような形になってしまったのは残念だ」とも記した。(中略)

また、任命されなかった6人の共通点として「組織犯罪処罰法や平和安全法制、特定秘密保護法など、国の重要政策に反対の意思表示を行った」と指摘。「任命拒否の背景が透けて見える」「『反対するとこういうことになる』と抑止効果を狙ったものとしか思えない」とつづった。
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菅首相が臨時国会でまず説明しなければならないのは、①日本学術会議法に対する解釈を変更したのか②変更したならば何故、変更したのか②変更したのなら、公務員は国民の公僕であってまず、国民に対して国会を通してその理由を説明しなければならなかったのに、何故、そうしなかったのか④日本学術会議が推薦した6人の推薦者を、学者(科学者)でもない政治家が何故、同会議の会員として適切でないことを判断できるのかも含めて、なぜ任命しなかったのかーなどだ。これらについて説得力ある説明ができない限り、菅政権は憲法破壊内閣、警察ファッショ内閣として、安倍前政権ともに、国民から糾弾されなければならない。



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