日本学術会議、推薦会員の任命拒否理由を菅首相に説明要求も政府、「決定覆さず、理由説明せず」に終始

日本学術会議は3日、推薦会員の任命拒否について菅義偉首相に説明を求める書簡を送付したが、加藤勝信官房長ら政府首脳は「法に基づき適正だ」として政府の決定は覆さないと言明。しかし、東京新聞4日付1面の記事によると、「別の官邸筋によると世論の批判と野党の追及を見極める必要がある」と懸念している。人事権の濫用・権力の私物化・言論の弾圧が安倍前政権の最大の特徴だったが、同政権を継承している菅義偉政権も同じだ。しかし、警察庁官僚出身者を側近として首相官邸を固めたほか、日本の経済社会を破壊した新自由主義信奉者で慶應義塾大学教授を務めて政界入りし、総務相として小泉純一郎首相のブレーンとなった竹中平蔵パソナ会長などを事実上の政策ブレーンとしていることなどを考えると、史上最悪の警察独裁国家が誕生した形である。もっとも、今回の推薦会員の任命拒否問題で日本学術会議の怒りをはじめ国民の不満・不安も高まる一方、野党側の結束も高まると見られ、「菅義偉総裁率いる自民党はおしまい。DEATHだ」との言葉が急に信ぴょう性を高め始めている。

◎追記:10月4日の新型コロナ新規確認者は、東京では6日連続100人超えの108人だった。20代〜30代の若者は45人でそれ以外の世代は58.3%だった。重症者数は前日比1人増えて26人。日曜日としては少ないが、PCR検査数は不明。7日移動平均では175.7人、陽性率は3.5%。全国では午後20時00分の時点で397人が感染確認、1人死亡。今月1日には速報値で1日に1万9245件のPCR検査が行われたことから、推測瞬間陽性率は2.1%。

日本学術会議が3日、菅首相に送った公開質問状は次の通り(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo301-youbou.pdf)。

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第25期新規会員任命に関する要望書
令和2年10月2日
内閣総理大臣 菅 義偉 殿
日本学術会議第181回総会

第25期新規会員任命に関して、次の2点を要望する。

1.2020年9月30日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。

2.2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい。
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東京新聞4日付け1面によると、「会員の法学者でつくる法学委員会は3日の会合で「日本学術会議法上、首相には会員を選考、罷免する権限はない」との考えで一致。違法で即時に是正すべきだとして法的な論点を整理、公表することを決めた。任命を拒否された岡田正則早稲田大教授(行政法)も法学委員会に出席し『学術会議は他の行政機関と比べて特殊な組織。首相による任命といっても、裁量権はない』と発言。終了後の取材に『法律にのっとって処理してほしい』と改めて任命を求めた」という。

時系列的に見ると、安倍政権の時代の2016年(平成28年)に3人の補充会員の推薦の際に、安倍首相が2人の任命を拒否した→任命拒否を合法化するために、内閣官房が内閣法制局に圧力をかけ、日本学術会議法の解釈の変更を共用させた→今回、日本学術会議が推薦した第25期新規会員105人のうち6人を任命拒否した、という流れになるだろう。

しかし、こうした法解釈の変更強要は、権力の乱用であり、権力の私物化にほかならない。しかし、朝日デジタルが10月3日公開した「『批判的な研究者を狙い撃ち』任命除外、識者の見方は」と題する記事で、東京都立大の木村草太教授(憲法)は、
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憲法23条が保障する学問の自由には、「個人が国家から介入を受けずに学問ができること」と、「公私を問わず研究職や学術機関が、政治的な介入を受けず自律すること」の二つが含まれる。学術の観点から提言をする日本学術会議は、学術機関の一種だ。

憲法23条は「公的学術機関による人選の自律」も保障しており、今回の人事介入は学術会議の自律を侵害している。学問の自由に、公的研究職や学術機関の自律が含まれるのは、一般的な解釈だ。
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と述べておられる。

日本国憲法23条の「学問の自由は、これを保障する」は、日本国憲法が99条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定めているようにまず、内閣総理大臣から守らなければならない。しかし、安倍前政権、菅政権は権力を縛る憲法を遵守する姿勢がまるでない。権力の独善的行使、つまり憲法破壊の独裁国家の樹立を狙っているとしか言いようがない。良心的な学者の政権批判は、独裁国家の樹立に邪魔になるから、こうした良心的な学者の排除を狙っている。このことは、東京新聞が4日付3面(https://www.tokyo-np.co.jp/article/59476?rct=main)に掲載している次の図表からも明らかだ。

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これほどまでに、三大理念も含め、日本国憲法を破壊する菅政権には一刻も早く退場してもらわねばならないし、真正野党は20年にわたる長期デフレを克服するとともに、立憲主義を回復するためにも、主権者である国民のために政権を奪還しなければならない。

首相官邸での会議

首相官邸での会議(https://www.kantei.go.jp/より)

なお、菅政権には少なくとも、次の弱点がある。第一は、新型コロナウイルス感染者が再拡大の兆しもうかがわせている中、新型コロナウイルス感染防止対策から経済活動の全面再開に舵を大きく切ったこと。これは、感染拡大と補償なき自粛によるデフレ不況の一層の深刻化の悪循環をもたらす。下図は東京都のモニタリングサイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)による。新規陽性者数が下げ止まって、再上昇している様子が伺える。4日の東京新聞によると、10月3日の東京都人口10万人当たりの週間感染者は一週間前の9月26日の7.6人から9.0人に増加している。なお、陽性率は7日間移動平均で4.1%から3.5%に低下しているが、日ごとの陽性率は変動が激しく、不安定である。移動平均のほうが傾向をみるうえでは重要だが、PCR検査が少ないだけに、正確な傾向が出ているか心もとない。

結局のところ、日本全国に影響を与える東京都内の新規感染者数は、再拡大に転じているように見える。抗ウイルス特効薬が確立されていないうえ、ワクチン開発も短期的には容易ではない。こういう状況では、やはり第一にPCR検査、抗体検査の大規模な拡充とともに、感染確認者の保護・隔離・適切な療養所での適切な治療が第一であり、経済活動の全面的な拡大は二の次の課題だ。そのためには、国民に対する十二分の休業補償が必要になる。日本共産党は3日、西村康俊経済再生担当相に申し入れを行ったが、以下はその一部だ(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-10-03/2020100304_01_0.html

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政府は、感染拡大を防止することと、社会・経済活動を再開することを両立させると強調しています。

この両者を両立させる最大のカギとなるのは、検査と医療を抜本的に拡充することです。PCR等検査の抜本的な拡充抜きには、感染の再燃は避けられず、感染の不安があれば国民はさまざまな活動に安心して取り組めません。いざというときに医療を受けられることへの不安があれば、社会・経済活動はなりたちません。

ところが、PCR検査は、人口比で日本は世界153位と異常な立ち遅れを抜け出していません。政府の言う1日7万件の検査能力に対しても、最大でも3万件程度という低い水準で推移し、直近の検査数は減少傾向にあります。医療体制は、コロナ禍で医療機関の経営危機が広がるなど深刻な危機のもとにあります。これを放置したままでは、経済・社会活動を安心してすすめていくことはできません。
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第二は、今回の日本学術会議の推薦会員の任命拒否に見られる立憲主義の破壊行為だ。これは、良識ある国民の反発を招くとともに、良心的な学者・科学者を敵に回すことになり、野党の結束ももたらして、菅政権打倒のうねりを全国にもたらす。

第三は、東京オリンピック大会の来夏開催問題だ。ひとまず、大会の大手マスコミの提灯報道で、簡素化による対応で切り抜けようとしているようだが、大会簡素化についてはスポンサー企業が負担が増えるとともに宣伝効果も乏しくなることから、ホンネでは嫌がっていると見られる。場合によっては、株主代表訴訟を起こされかねない。国民・都民も税負担が重くなる。また、当初のボランティアは契約期限がとっくに過ぎており、来夏の真夏日に十分なボランティアを募ることは容易ではない。来夏開催に失敗するのは必然の成り行きだが、菅政権と小池百合子率いる東京都では対処できない。

第四は、トランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスにかかり、ホワイトハウスでクラスターが発生している。混沌とした11月3日の米国大統領選挙にさらに大きな影響を与えることが避けられなくなってきたことだ。これは、米国の分断をもたらし、コロナ禍を克服できないでいる同国の国力(経済力・軍事力)の一段の低下をもたらす。こうなると、米国とともに展開する予定の「敵基地攻撃」(注:中国の精密中・長距離ミサイル部隊への牽制が狙い)に一段と不安が強まるとともに、対米隷属の外務省の地盤沈下と中国との経済交流で実利を得ようとしている経済産業省(日本経団連の傘下にある)の力の再浮上をもたらし、政権内部の親米派と親中派の対立の先鋭化が起きる。自民党の親中派の筆頭格・二階俊博自民党幹事長の処遇で、自民党での党内基盤の脆弱な菅首相・加藤勝信官房長官ラインでは、対立を収集できなくなるおそれがあることだ。

第五に、韓国の徴用工問題では、国家間の賠償問題1965年の日韓請求権協定で一応の決着を見たが、その後の1966年12月16日に「市民的及び政治的権利に関する国債規約」(自由権規約)が採択され、民間個人の請求権は残るという解釈が定着している。日本も当初はこの自由権規約に基づいて徴用工個人の訴えを棄却していなかったたという事実がある。このため、「日韓請求権協定で決着済み」との安倍、菅政権の頑なな姿勢では日韓徴用工問題は解決しない。

中国政府にはいまだ基本的人権の抑圧という問題はあるが、欧米文明の時代は着実に終わりを遂げ、時代は明らかに東アジア共同体研究所などが模索している「東アジア共同体」形成の時代に入りつつある。

菅義偉首相の外交政策

菅義偉首相の外交政策

菅首相は米国の対中強行派に従って、対中包囲網の仲間入りを目指しているようだが、米国のCIAが重視する購買力平価で見た国内総生産(GDP)では米国の19兆ドルに対して、中国は25兆ドルである。また、科学技術論文数では米国と同等、既に始まっている新世代通信規格・技術の5Gでは中国企業の特許件数が米国企業よりも多い。従来の対米隷属外交ではどうにもならなくなる状況に変化しつつあり、この変化に菅政権はまず、対応できないだろう。

日本の輸出相手国ランキング

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菅首相も既に71歳と高齢であり、時代が求めている東アジア文明圏の形成を妨げることしか行っていない、歴史に対する反動政権である。「菅義偉総裁率いる自民党はおしまい。DEATHだ」との言葉が急に信ぴょう性を高め始めている。



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