日本学術会議会員の任命拒否で菅政権の独裁政権化明確にー「野党共闘」での国民主権回復以外に道なし(追記)
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菅義偉首相が、学者の立場から政策提言する政府の特別機関「日本学術会議」の新会員6人(任期6年、3年毎に半数改選)の任命を拒否したことが10月1日明らかになった。明らかに、日本国憲法第二十三条「学問の自由は、これを保障する」に違反する行為だ。従来は学術会議が推薦する新会員を首相がそのまま受け入れ、「任命」することになっていたが、大手マスコミの報道によると、内閣府が内閣法制局に圧力をかけ、同法制局に従来の解釈を変更させた模様だ。首相官邸(内閣官房)が内閣法制局をコントロールして日本国憲法を破壊する行為は「安保法制」の強行採決・成立が象徴するように、安倍晋三前政権とこれを引き継いだ菅政権の常套手段だ。菅政権および自公与党に「自浄作用」はないため、次期衆議院の総選挙で野党側が「野党共闘」で結束を組み、①理念②政権構想③重要政策ーで一致して総選挙を戦い、政権を奪還して「国民主権」を現実のものにする以外に解決の道(日本国憲法を前提とした立憲政治の回復の道)はない。

◎追記:10月3日土曜日の新型コロナウイルス新規感染確認者は、東京都で5日連続で200人前後の207人だった。東京都の基準での重症者は前日比3人増加の25人で、2人死亡。20代〜30代の若者は104人だったから、それ以外の世代は50%。全国では沖縄県で新たに29人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、2日までの1週間の人口10万人当たりの感染者数が10.5人と、再び全国で最も多くなった。沖縄県を含む全都道府県では577人の感染者と6人の死亡が確認された。1日には速報値で1日に1万9245件のPCR検査が行われたため、推測瞬間陽性率は3.0%。

朝日新聞10月3日付「学問の自由(の侵害)感政権の影」と題する記事(朝日デジタルでは、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14644726.html?iref=pc_ss_date)によると、日本学術会議が推薦した学者のうち、任命を拒否されたのは次の6人の学者である。

  • 芦名定道・京都大教授(宗教学)
    「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人の一人。2013年には、特定秘密保護法案に反対の立場を表明した。著書に「保守主義とは何か」「トクヴィル」など。
  • 岡田正則・早稲田大教授(行政法学)
    名護市辺野古沖の埋め立て承認を撤回した沖縄県に対して防衛省がとった法的手続きについて「行政不服審査制度を濫用(らんよう)するもの」と共同声明で批判。著書に「国の不法行為責任と公権力の概念史」。
  • 小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)
    衆院特別委員会の公聴会で安保関連法案について「存立危機事態の定義があいまい」と批判した。共著書に「安倍改憲と自治体 人権保障・民主主義縮減への対抗」。
  • 加藤陽子・東京大教授(日本近代史)
    「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人の一人。福田康夫政権での「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」のメンバー。著書に「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」。
  • 松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)
    共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案を審議した参院法務委員会の参考人質疑で「共謀罪は必要ない」と発言。
  • 宇野重規・東京大教授(政治思想史)
    「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人の一人。2013年には、特定秘密保護法案に反対の立場を表明した。著書に「保守主義とは何か」「トクヴィル」など。

いずれも、日本が無謀な太平洋戦争で敗北した原因を学術的に研究してこられた結果を踏まえ、安倍前政権の日本国憲法破壊、違憲立法を批判してこられ、学者としての良心を備えておられる。日本学術会議がこうした業績を踏まえ、これらの学者を学術会議会員に推薦したことも理解できるところだ。優秀な学者が学術会員に選定される過程は次の法律に基づく。なお、次図は 〒106-8555東京都港区六本木7丁目22番34号にある日本学術会議本館(Wikipediaより)

日本学術会議本館
日本学術会議本館(Wikipedia)

新聞赤旗10月2日付(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-10-02/2020100201_01_1.html)によると、本学術会議法は1983年に会員選出について公選制から推薦制に変えた法改定を行ったが、その際の国会答弁でも、丹羽兵助総理府総務長官(当時)が、「ただ形だけの推薦制であって、学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」「決して決して(1949年の日本学術会議設立のサイトに当時の吉田茂)総理の言われた方針が変わったり、政府が干渉したり中傷したり、そういうものではない」と答弁(同年11月24日、参院文教委員会)した事実も明らかにされている。

これについては、10月4日付の東京新聞が3面の「首相の任命『形式』的」と題する記事(サイトではhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/59393?rct=politics)でも明らかになっている。引用させていただくと、
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日本学術会議が推薦した新会員の候補者6人が任命されなかった問題で、政府が1983年の日本学術会議法改正に際し、首相の任命は「形式的」との見解を記した文書を作成していたことが3日、分かった。立憲民主党の小西洋之参院議員が国立公文書館で確認した。
文書は総理府(現内閣府)が83年に作成したとみられる「日本学術会議関係想定問答」で、内閣法制局の「法律案審議録」に含まれていた。首相の任命は実質的かとの問いに「推薦に基づいて会員を任命することとなっており、形式的任命である」と答えていた。
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ところが、今回の推薦拒否に先立つ2016年(平成28年)の3人の補充人事の際にも、当時の安倍晋三政権が学術会議が推薦した3人のうち、安倍首相が2人の任命を拒否し、空席のままになっていたことが毎日新聞(https://mainichi.jp/articles/20201002/k00/00m/010/335000c)や東京新聞(https://www.tokyo-np.co.jp/article/59528?rct=main)の調べで明らかになっている。毎日新聞社のサイトでは、「2016年の第23期の補充人事の際にも「学術会議が候補として挙げ、複数人が首相官邸側から事実上拒否された」と、同会議の複数の元幹部が毎日新聞の取材に明らかにした。官邸側の「人事介入」が第2次安倍晋三政権の際にもあったことになる」と報道している。

平成16年4月14日に現行の改正法が施行され、第7条2項で「 会員は、第十七条の規定(「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」)による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」http://www.scj.go.jp/ja/scj/kisoku/01.pdf)と定めている。「基づいて」というのは、拒否する余地はないという意味。憲法は第六条で、「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」と定めており、天皇には任命を拒否する権限はないことを「国会の使命に基づいて」と表現している。

改正前は選挙制で会員が選出された。改正後の時点での「任命権」は形式的なもので、時の首相が推薦された学者を任命しなかったことはなかった。しかし、時代は安倍政権の時代である。安倍政権は政権の政策の策定・遂行に邪魔な官僚は左遷し、従来の内閣法制局の解釈からすれば違憲の立法を繰り返してきた。日本国憲法は集団的自衛権を禁じているという従来の内閣法制局の見解を、解釈変更に消極的な法制局長官も更迭して、集団的自衛権を認める「安全保障関連法(安保法)」を数の力で強行成立させた。こうした事例は第二次安倍政権の時代に繰り返し行われた。

東京新聞10月3日付3面によると、これまでの事例として次のようなものがある(https://www.tokyo-np.co.jp/article/59312)。

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今回の日本学術会議法の解釈については、「内閣法制局によると、日本学術会議法の解釈に関する協議は、内閣府の求めで18年に行われ、今年9月2日にも口頭で解釈を再確認したという」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/59309?rct=politics)。

日本学術会議会員任命方法をめぐる政府の法解釈の経緯
日本学術会議会員任命方法をめぐる政府の法解釈の経緯

こうなると、時の政権(菅政権)を批判するものがさまざまな弾圧を受けるようになることは確実だ。安倍前政権とその後継政権である菅政権の手口は、内閣法制局を官邸(内閣官房=領収書の要らない官房機密費を工作資金に使う=)が支配して、従来の日本国憲法の解釈・法律の解釈を変更させる→相当の衆参委員会で数の力を頼りに憲法違反の法案を委員会で強行成立させる→衆参の本会議で賛成論と反対論を演説するという「セレモニー」を行う→小選挙区の特性上、有権者全体の20%〜25%しか与党の支持層がいないのに、国民が国民主権を放棄して投票に行かないから、「小選挙区で圧勝」することになり、つれて「比例ブロック」でも圧勝という形になって、衆参両院とも圧倒的な議席を占めることになるから、衆参両院の本会議で可決・成立ということになる。

菅首相は、同じ総務相を経験した学者の仮面もかぶった政商・竹中平蔵パソナグループ会長、生産性が低いとして日本の中小企業の撲滅を狙う小西美術工藝社のデービット・アトキンソン社長らをブレーンに据え、警察官僚を側近にしているから、来年9月までの総選挙で自公与党が勝てば、警察独裁国家を完成させることができる。(追記:むしろ、野党に対する挑発を行い、解散・総選挙に持ち込む計算も透けて見える)。

しかし、こうした状況では、国民や知識人は塗炭の苦しみにあえぐことになり、日本の経済社会は冬にかけてコロナ第三波に見舞われる恐れが強いことから、大不況から大恐慌に暗転する公算が出てきている。既にその徴候は濃厚になってきた。

質共立の推移
失業率の推移(https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html)
有効求人倍率の急激な減少
有効求人倍率の急激な減少(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64513520S0A001C2MM0000/)

現下の経済情勢では、8月の失業率が3.0%と悪化しているうえ、有効求人倍率も1.04倍(https://www.e-stat.go.jp/stat-search?page=1&query=%E6%9C%89%E5%8A%B9%E6%B1%82%E4%BA%BA%E5%80%8D%E7%8E%87&layout=dataset&metadata=1&data=1)と急速に悪化してきていることから、再就職も困難な状況だ。失業率が1ポイント上昇すると千人が経済苦から自殺すると言われている。現在、東京都では新型コロナウイルス感染者数が下げ止まり傾向から、再拡大に転じてきている。こうした中で、政府は全世界の各国から、取りあえずは観光客を除く国民を受け入れることにし、東京都も今月10月から「Go To Travel=Go To Trouble」キャンペーンの対象に加えることにした。こうした中で、新型コロナウイルス対策に反発する共和党支持者が次期大統領に投票するトランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスに感染したという衝撃的なニュースが昨日10月2日飛び込んできた。

新型コロナウイルス感染対策無策=コロナ感染拡大と経済活動再開への舵切り=感染拡大の公算太=補償なき経済活動自粛要請の悪循環が待ち受けている。菅政権の検察独裁国家の樹立に対抗できるのは、野党側が①公助を中心とした共生主義の理念②明快でわかりやすい経済政策③立憲主義の再確立ーを中心にした野党連合政権構想を打ち出し、(追記:今回の菅政権の日本学術会議への人事介入が、衆院解散・総選挙に持ち込むことが狙いであればあるほど)いつ解散・総選挙を打たれても即応できる真の意味での「野党共闘体制」を構築し、総選挙で堂々と政権を奪還しなければならない。

立憲民主党の小沢一郎衆院議員や日本共産党の志位和夫委員長は、1年以内の、つまり総選挙での政権奪還を訴えている。ゲリラ街宣を展開中の山本太郎率いるれいわ新選組や社民党の福島瑞穂党首も同様の考えだろう。

しかし、一応は時限つき消費税率ゼロ%を打ち出した立憲民主党の枝野幸男代表が、環太平洋パートナーシップ(TPP)や消費税率の10%を打ち出した菅直人、野田佳彦元首相衆院議員を同党の最高顧問にするなど、不審な動きが垣間見えている。泉健太政調会長はツイッターで枝野代表の消費税減税に対する一歩前進を歓迎しながらも、「消費者物価上昇率が2%になるまで消費税は凍結すべきだ」と枝野代表を後押ししている。財源は、不公平税制の抜本的改革と現代貨幣経済論を日本経済に応用した新発国債発行・積極財政で捻出できる。なお、今回の日本国憲法に違反する学術会議人事問題が野党の結束を強めることも想定できる。

強力で日本の将来に展望のある「野党共闘」を組んで、政権を奪還しなければ、コロナ大不況は大恐慌へと暗転する公算が大きい。野党というのは、政権奪取を目指す真正野党でなければ意味がない。議員特権のうえにあぐらをかく野党議員は必要ない。国民の皆さんは、国民が国家の主権者であり、首相は国民のために働かすものだという確信と自信を取り戻していただきたい。



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