「大阪都構想」に反対するれいわの街頭演説を大阪市南警察署が妨害

強力な地方自治権と財源措置を与えられ、最も効果的な住民サービスを提供できる政令指定都市である大阪市をを廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う2度目の住民投票が12日、告示された。「大阪都構想」に反対している自民党市連、日本共産党、れいわ新選組は反対の街頭演説活動に一段と力を入れている。ところが同日、れいわが反対の街宣活動をしていたところ、大阪市の南警察署が法的根拠を示さずに街宣活動を妨害し、事実上中止させた。日本国憲法が保障している言論・集会の自由を踏みにじる行為だ。背後に、大阪維新の会(日本の維新の会の大阪支部)と同党と緊密な連絡を取っている菅政権の圧力が感じられる。

10月17日火曜日コロナ感染状況
◎追記:10月13日火曜日の新型コロナ新規感染者数は、東京都では午後15時時点で1周間前の6日火曜日の177人を若干下回る166人になった。重症者数は前日比2人増加して27人になった。3日前10日のPCR検査数は2897件で、10月3日分の同検査数3092件でに比べて197件少なかったことが影響している可能性がある。全国では504人の感染者、4人の死亡者が確認されている。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は176.0人、PCR検査人数は4,072.6人だから、陽性率は4.32%。東京都独自の計算方式では3.6%。感染経路不明率は60.02%。東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1012日時点の実効再生産数は東京が前日比0.04人増加の1.00人、東京都が前日比0.01人増の1.01人。全国が同変わらずの1.02人。

「大阪都構想」と言えばあたかも大阪市を含めた大阪府を首都にするようなイメージが頭の中に浮かぶが、「都」とは一切関係がない。「強力な地方自治権と財源措置を与えられ、最も効果的な住民サービスを提供できる政令指定都市である大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する」ことが目的である。地方自治体法上、最も有利な政令指定都市としての大阪市を永遠に廃止することが狙いである。大阪府議会と大阪市議会でそれまで「大阪都構想」に反対していた公明党が、次期総選挙で立候補を擁立を予定している小選挙区に、日本維新の会に対立候補を立てると脅されたとされており、賛成に回らざるを得なくなったようだ。ただし、公明党の支持組織である宗教団体「創価学会」の会員のうち、かなりの会員が反対に回っている。

また、大阪市などが行った説明会でも、「メリットだけが強調され、デメリットの説明はなかった」との不満や、自民党市連、日本共産党、れいわ新選組の「大阪都構想」反対の街宣、チラシ配布などの反対活動で、当初は賛成派が反対派を10%ポイント程度上回っていた情勢が現在、5%程度にまで縮まるなど、接戦模様の状態になってきている。JX通信が10日から11日にかけて行った世論調査(https://www.asahi.co.jp/abc-jx-tokoso/)では賛成45.4%、反対42.3%、未定12.3%との結果が出ている。住民投票(有権者は大阪市内に住む日本国籍の18歳以上の市民)の行方は、投票日の11月1日までの賛成派、反対派両陣営の住民投票についての運動に大きく依存してきた。

れいわ新選組の街宣活動を妨害してきた大阪市南警察署の警察官に講義する山本太郎代表
れいわ新選組の街宣活動を妨害してきた大阪市南警察署の警察官に講義する山本太郎代表

れいわ新選組でも、橋下徹知事時代に大阪府の職員として勤務していた大石あきこ氏を大阪府第5区の第一次公認候補としていることもあって、これまで数次にわたって、コロナ禍対策のため事前に街頭演説の場所・時間帯を知らせない「ゲリラ街宣」を行ってきた。ところが、告示日の12日に初めて、大阪市の南警察署が法的根拠を示さずに街宣活動を妨害、事実上中止させた(一部報道では南警察署が許可しなかったとの報道も出ているが、山本代表が現場で法的根拠を示すよう求めていることから、仮に南警察署が許可申請を拒否していたとしても、その法的根拠を示さなかったことは確かだろう)。日本国憲法に保障された言論・集会の自由を弾圧するものである。

※追記(10月14日午後13時30分):大石あきこ氏による事件についての説明が次のラジオ番組のサイト(http://shinyakaisoku.seesaa.net/article/477882125.html)で語られています。街宣現場で街宣用機器の設置をしていた時に南警察署から警察官が確認にきたが、その際にはれいわ側の声明を聞き、納得した感じで帰ったが、街宣が始まると南警察署の警察官が拡声器で退去命令を行ってきたという内容が紹介されています。南警察署が①記者クラブ加盟のマスコミ各社にしか対応をしない②マスコミ各社も無視したーなどから、妨害事件が大きくならなかったようです。HUFFPOSTの次のサイト(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f8410aec5b6e5c32000bf29)も参考にされて下さい。

その背後に、大阪維新の会(日本維新の会の大阪支部、維新は大阪が発祥地)と同党との癒着関係が深い菅義偉政権の圧力があると思われる。国政での自公政権の憲法破壊活動は日常茶飯事であるが、この憲法破壊活動がついに、地方自治体にまで及んできたことを示すものだ。放置しておくと、日本国民は基本的人権を保障されなくなる。ここでは、そこまでして「大阪都構想」反対派を弾圧する理由について述べてみたい。

橋下徹元大阪府知事が突如、「大阪都構想」を持ち出してきたのは、大阪維新の会系のサイト(https://oneosaka.jp/tokoso/question.php)のトップページによると、「大阪都構想」のメリットは大阪府と大阪市の「二重行政」による税金の無駄遣いと不効率化にあるとしている。

大阪都構想の目的を二重行政の解消とする賛成側のサイト
大阪都構想の目的を二重行政の解消とする賛成側のサイト
大阪都構想の目的を二重行政の解消とする賛成側のサイト
大阪都構想の目的を二重行政の解消とする賛成側のサイト

しかし、2020年8月21日の大阪市議会本会議で、大阪市の松井一郎市長は「今、二重行政は無いんです」と語っているから、「大阪都構想」の実現に執念を燃やす狙いは別のところにある。れいわはその目的を、橋下氏が大阪府知事の公職にあった2011年当時に語った発言「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る(カツアゲする)」を引用し、そこに真の狙いがあると見抜いている。大阪府に財源が足りなくなっているのであれば、国に対して地方交付税交付金、地方譲与税を増やすように交渉するのが本筋だ。しかし安倍晋三・菅自公政権は「財政再建」と称して、消費税の強行増税を象徴とするとする緊縮財政を採っており、維新もこれに賛成しているから、豊かな自主財源を持っている大阪市から「権限、力、お金をむしり取る(カツアゲする)」という発想しか出てこない。

「大阪都構想」の真の狙い
「大阪都構想」の真の狙い

そこで、「大阪都構想」という大阪市民・府民に将来への希望を抱かせるインパクトの大きい言葉を掲げることで、日本でも第一級の政令指定都市である大阪市の解体とその権限、財源をむしり取る「策謀」を打ち出してきたわけだ。大阪市の自主財源は現在、次のようになっている。

  • 大阪市税(自主財源の大部分を占め、約6500億円ほどある)
  • 政府の一般会計から支出される地方交付税交付金、900億円弱
  • 政府からの地方譲与税(地方交付税交付金の一種)、900億円弱
  • 政令指定都市に実施権限が与えられている宝くじによる収入、120億円弱

これらを合計すると、合計で年間約8500億円〜8600億円。

しかし、住民投票で「大阪都構想」が有効投票者(有権者全体ではない)の過半数で賛成されると、大阪市の自主財源の大層を占める①個人住民税②市たばこ税③軽自動車税④固定資産税⑤法人住民税、法人事業税⑥都市計画税➆事業所税の合計約6595億円のうち、特別区の財源になるのは、①個人住民税②市たばこ税③軽自動車税の約1782億円だけになる。全体の4分の3は符税になり、市税は4分の1に激減する。

このため、「大阪都構想」実現の際には、大阪市を廃止して設置される特別区が自由に使える財源は特別区税約2000億円と財政調整基金(府税化した元大阪市税分と地方交付税を再配分した結果によって生まれる財源。要するに、大阪府から特別区への「小遣い」)4000億円趙程度の合計、約6000億円〜6500億円程度にしかならない。財政調整基金の配分額の決定権は、大阪府に握られており、配分額が「大阪都構想」実現後どうなるのかについては、不明というのが偽らざる状況だ。現在分かっているところでは、最終的には約2000億円、大阪府に召し上げられる(カツアゲ)ことになる。これでは、現在までの大阪市の市政サービスが劇的に悪化することになってしまう。

大阪都構想の実現で4つの特別区は2000億円を大阪府に召し上げられる
大阪都構想の実現で4つの特別区は2000億円を大阪府に召し上げられる

しかも、召し上げられる(カツアゲされる)2000億円は、大阪府が自由に使うことが出来るようになる。想定されているのは、外国人観光客の誘致(インバウンド)やカジノを含む統合リゾート構想(IR)、カジノと同じ場所に設置される大阪万博の実現などだ。しかし、コロナ禍でインバウンドはほぼゼロ、カジノ業者の誘致も米国のカジノ業者がコロナ禍で経営不振に陥っており、回復のめども立たない。日本に進出するどころではない話になっている。こうした財源を中心として「大阪都構想」を図示してみると次のようになる。

そもそも、日本が20年に及ぶ長期デフレ不況で経済が苦境に追い込まれているのは、緊縮財政で民間経済の主力エンジンである家計の最終消費需要が冷え込んでいることと、モノやサービスが売れる見込みがないことから、企業も設備投資に及び腰で投資しないことにある。輸出項目に分類されるインバウンドやカジノといった外需頼みの「政策」では、輸入も大きく純輸出の国内総生産に占める寄与度がわずかである(近年は、企業の設備投資による産業行動の高度化に失敗しているため、マイナスになる場合も出てきた)から到底、成長戦略の柱にはなり得ない。なお、需要拡大が見込まれる社会保障関係の保育士、介護士の優遇=給与の引き上げ=を無視してきたことは完全に失敗だった。

新自由主義路線を採ってきた大阪府維新政権の失敗のため、大阪府の府内国内総生産(GDP)は他の都道府県に比べて、経済成長に失敗している。近年の大阪府の府内総生産(GDP)を比較してみると、次のようになっている。維新大阪府政の経済政策が失敗していることがよく分かる。

維新府政でせいちょうしていない大阪府
維新府政でせいちょうしていない大阪府
維新府政でせいちょうしていない大阪府
維新府政でせいちょうしていない大阪府

◎追記(10月17日):維新の吉村洋文府知事や松井一郎市長は「大阪の成長をストップさせるな」と叫んでいるが、公式の統計でも大阪府は全国の都道府県の平均の実質経済成長率よりも大幅に落ち込んでいる。また、財政収支の面でも大阪府は大阪市よりも悪い。維新は新自由主義政策を続けているため、不況になり、経済成長率が悪くなるのは当然だ。下図2番目で、「大阪府通常終始差額」とあるのは、「経常収支差額」の間違い。インバウンド(円安にして外国人観光客を増やすこと)やカジノ誘致で経済成長が出来るというのが維新の考え方だが、日本の経済情勢を考えれば、そんなことは不可能であることは当たり前の話だ。市民の家計所得を引き上げ、市内企業の設備投資に火をつける以外の成長戦略はない。

維新政治で大阪府の経済は悪化した
維新政治で大阪府の経済は悪化した
維新政治で大阪府の財政収支も悪化した
維新政治で大阪府の財政収支も悪化した

にもかかわらず、いまだにインバウンドやカジノを含む統合リゾート構想の見直しをしない。ウィズコロナ(この言葉は適切ではないと思う)どころか、ビフォーコロナのままだ。大阪維新を含めた日本維新の会は菅首相と深く結びついている。総務省が2度目の住民投票を認めたのも、市議会の賛成票が過半数を占めたことがあるが、安倍晋三首相、菅官房長官(当時)への忖度も働いていると見られる。

菅義偉首相が維新の吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長仲良く歩いている
菅義偉首相が維新の吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長仲良く歩いている

大阪府・大阪市は阪神工業地帯の中核都市圏であり、京浜工業地帯の都市圏と合わせて、日本経済のリーディング経済圏であったし、今後も当然、その役割が期待される。大阪市の住民は、「大阪都構想」の内容・本質をよく理解されたうえで、必ず投票に行っていただきたい。有権者全体の人数ではなく、有効投票数の過半数で可否が決定されるからだ。サイト管理者(筆者)も大阪市住吉区に住んでいたことがあり、お世話いただいたことがあるから、ひとごとではない。大阪市に親類・知人のおられる方には是非、「大阪都構想」を十分に理解したうえで、住民投票に行き、賛否を投じて欲しいとの連絡をお願いしたい。



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