日本学術会議推薦の105人の名簿から6人を削除したのは杉田官房副長官らしく、日学法違反が明確に

日本学術会議が推薦した105人の名簿から日本学術会議法(日学法)17条からは問題がないと見られる6人の人文科学者・社会科学者を任命しなかった重大事案で、任命を拒否した事実上の責任者が警察庁官僚出身で、首相官邸(内閣官房)で事務方の杉田和博内閣官房副長官であることがほぼ明らかになった。13日の加藤勝信官房長官の記者会見などによる。菅義偉首相を含む首相官邸が意図的に学問の自由を保障している日本国憲法第23条、日学法第7条、17条に違反する犯罪行為を犯し続けていた容疑が濃厚になった。

10月14日水曜日コロナ感染状況

10月14日火曜日の新型コロナ感染者数は、東京都では午後15時現在で前週7日火曜日の142人より35人多い177人だったhttps://www.fnn.jp/articles/-/94454。2週間前の9月30日の194人よりは減少している。重症者は東京都の基準で前日比2人減の25人。国内は午後551人感染確認、8人の死亡者が出た。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は181.0人、PCR検査数は4051.6件だから、陽性率は4.47%。東京都独自の計算方式では3.9%。感染経路不明率は58.07%。東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1013日時点の実効再生産数は東京都が前日比0.02人増加の1.03人、全国が同0.01人増加の1.03人。日本での新型コロナウイルス感染状況については、総合的に見て新規感染者数が前週同曜日比で増加傾向にあることや、実効再生産数の増加などで、総合的に見て10月初旬に新規感染拡大の低下傾向に歯止めがかかりつつある可能性も想定しておく必要があると見られる。

10月14日水曜日の新型コロナ感染状況
10月14日水曜日の新型コロナ感染状況
日学法第7条は1項で「日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する」と定員要件を定めており、2項で「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とし、第17条は「 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものと定めている」。学者は人文科学者・社会科学者・自然科学者の総称である。

事務方が日本学術会議(以下、会議)の推薦名簿を首相に報告する前に名簿を調査し、推薦リストの中に刑事犯であったかどうかなどの重要事項について調査・検討することは許されるだろうが、そうした刑事法の問題がなければ根本的には推薦名簿を首相に挙げ、首相は日学法の規定通り、推薦名簿に基づいて形式的任命を行わなければならない。

ところが、首相は10月5日の記者会見で「日本学術会議は政府機関であり、年間約10億円の予算を使って活動していること、また任命される会員は公務員の立場になること、また会員の人選は推薦委員会などの仕組みはあるものの、現在は事実上、現在の会員が後任を指名することも可能な仕組みになっていること、こうしたことを考えて、推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきました。日本学術会議については、省庁改編の際にその必要性も含めてそのあり方も含めて、相当のこれ議論が行われ、その結果として、総合的俯瞰的な活動を認めることになりました。まさに総合的俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断させていただきました」(https://infact.press/2020/10/post-8907/)と内閣記者クラブのうちの一部で、それもかなりの政府系新聞社の記者たちに語っている。このため、追及が形式的で熱意のないものだったから、こういう答弁にしかならなかった。

この首相発言には当初から問題があった。「総合的・俯瞰的」というのは真意が不明だが、要するに会議に対して「政府=菅政権の立場に立って」活動することを要求するというものだろう。こうした内容は、憲法第15条に基づいて原理的に、国民全体の奉仕者である公務員は国民が任命・罷免することになっている規定からすれば、会議に「総合的・俯瞰的」活動を求める(強要する)というのなら、特別国家公務員である会議の会員の人事・活動内容を規定する日学法(一般の国家公務員に適用される国家公務員法に先立って適用されなければならない)にはない規定だから、国民の代表であり、国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会(衆参両院議院)で徹底的に審議し、改正の議決を得なければならない。

ところが、安倍晋三政権(当時、内閣官房長官は菅氏)と菅政権は一切そういうことを行わず、閣議決定で従来の憲法・法律解釈を勝手に変更する日本国憲法破壊活動を常時行っており、日学法に対する解釈変更も国民や衆参の国会議員には内緒で行ってきた。警察官僚を事務方の側近に置き、政府批判を許さない独裁国家樹立を驀進している菅政権は極めて危険である。

第二に、5日の記者会見では首相自ら6人の任命を拒否したかのような発言をしたが、その法的根拠として6日、政府が提出してきた行政権や公務員任命権を定めた憲法の条文を根拠として、首相が学術会議の推薦通りに任命する義務はないとの論理を展開した、2018年11月13日に内閣府日本学術会議事務局が作成したとする内部文書を公表した。しかし、この内部文書の論理破綻が衆参の国会閉会中審査の内閣委員会などで明らかになった。

こうした中で、加藤官房長官は菅首相は推薦名簿を見ていないと語るなど、5日の首相答弁を否定する矛盾に満ちた発言を開始するようになった。下図は東京新聞14日付3面に掲載された記事と図(https://www.tokyo-np.co.jp/article/61619?rct=main)の引用だ。

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菅首相が決済文書に添付されている参考資料としての「推薦名簿」は詳しく見ていなかったとするならば、職務怠慢であるし、内閣官房の事務方が示した99人の任命案をそのまま承認(任命)したというのなら、日学法7条1項の会議の定数規定に反する行為を行ったことになる。これらは、明らかに日学法違反である。

杉田和博官房副長官
杉田和博官房副長官

また、加藤官房長官は105人の推薦名簿から6人を削除した事務方の責任者が警察官僚出身の杉田官房副長官(政務ではなく事務)であることも明らかにした。Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%89%E7%94%B0%E5%92%8C%E5%8D%9A)によると、杉田官房副長官の経歴は下記のようになっている。
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1941年4月22日生まれ、埼玉県出身。埼玉県立浦和高等学校卒業、東京大学法学部卒業。地下鉄サリン事件当時の警察庁警備局長。性格は温和で、高い調整能力で知られる。一方、「危機管理には通じているが、社会福祉や経済といった国民生活全体を見渡す視野の広さに欠けている」との評価もある。警察ではほぼ一貫して警備・公安畑を歩み[、警備局長を経て内閣官房にて内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監として政権中枢で公安と危機管理を担った。2004年に退官。(その後)2012年12月26日、第2次安倍内閣において内閣官房副長官に就任。
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戦前生まれの79歳であり、戦前・戦中の日本型ファシズム時代を幼いなりに覚えており、民主主義というものを掘り下げて取得した可能性も高くない。かつ、警察官僚出身、内閣情報調査室長の経験もあるから、思想調査と思想弾圧がお手のものであることは否定できない。

東京新聞14日付3面「杉田官房服長官、8年館も事務方トップ、内閣人事局兼任」(https://www.it-ishin.com/wp-admin/post.php?post=20150&action=edit)の記事では。「第2次安倍政権発足時から現在まで約8年間にわたり政府の事務方トップを務めている。政権が関係する人事に強い影響力を行使しており、今回の任命拒否もその延長線上にあるとみられる」と報道している。内閣情報調査室長を務め、内閣人事局を事実上動かし、8年間も内閣官房副長官を務めているということなら、人事に対して政治介入し、思想弾圧をすることも得意なはずだ。

野党のヒアリングで杉田官房副長官の人事の問題点について語る前川元文科省事務次官
野党ヒアリングで杉田氏の人事の問題点を語る前川元文科省事務次官

杉田官房副長官については、安倍政権を批判したことで、徹底的に同政権からいやがらせ・中傷批判攻撃を受けた前川喜平元文部科学事務次官が13日、立憲民主党などの野党合同ヒアリングに出席し、次のような発言を行ったことが各種大手マスコミで報道されている。ここでは、時事通信社の「杉田副長官、審議会人事に介入 前川元文科次官が証言」と題する報道を引用させて頂きたい(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020101300838&g=pol)。

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前川氏は事務次官を務めていた2016年の文化功労者選考分科会委員の選任の際、杉田和博官房副長官に人事案の差し替えを指示されたことを明らかにした。前川氏によると、16年8月ごろに委員のリストを杉田副長官に提出したところ、1週間ほど後に呼び出され、2人の差し替えを命じられた。前川氏は「杉田氏から『こういう政権を批判するような人物を入れては困る』とお叱りを受けた」
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このため、前川文部事務次官(当時)は事務方(国家官僚のトップ)の指令なので、差し替えを余儀なくされたという。

こうした状況から、杉田官房副長官が会議が推薦した105人の推薦名簿の中から、見せしめのために政府の「政策」に批判的な6人の人文・社会科学社を推薦名簿から外した疑いが極めて濃厚になっている。また、杉田官房副長官は事務方(官僚機構)のトップであるから、官僚が特定の立場から、6人の学者の任命を拒否したということになると、憲法15条1項、2項の違反は確実になり、重大事案になる。しかも、杉田氏は官房副長官の立場。上司は菅官房長官(当時)であるから、菅首相が官房長官時代から杉田官房副長官より報告を受け、政府に批判的な科学者を排除していたことも想像に難くない。

朝日新聞は14日付3面の「任命拒否、撤回求め署名14万筆ー歴史学者ら」記事(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14657109.html?iref=pc_ss_date)で、「日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題で、歴史学者らが13日、菅義偉首相に任命拒否の撤回を求める約14万人分のネット署名を内閣府に提出した。『悪例を残す大変な問題。前例のない、学問の自由と独立に対する侵害だ』と訴えている」と報道している。

日本国23条に保障すること定めている学問の自由(学問・科学研究の自由と学術団体の人事を含めた組織活動の自律性の保障の2種類の自由が含まれる)」を否定する日学法違反の任命拒否事案は科学者・学者対政府の全面戦争の様相を帯びてきた。この問題がうやむやになると、次は国民一人ひとりの基本的人権の弾圧になる。最高裁が13日下した「非正規社員の退職金・賞与を認める必要はない」という高裁判決を覆した「最終判決」はそのひとつの表れである。

日本国憲法は第6条2項で、「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する」と定め、第76条1項で「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する」と規定している。だから、主権者国民の代表であり、国権の最高機関である国会の関与は無視しているから、日本の裁判所システムは事実上、内閣の支配下に置かれている。だから、政府に不利な判決は上級裁判所に行けば行くほど、政府の政策を忖度した判決が出る仕組みになっている。

昨日13日の最高裁判決も、自民党政府が推し進めてきた労働政策(労働者を正規・非正規に分断し、最終的には非正規の労働者だけにする)を追認し、政府の労働政策を擁護する判決に過ぎない。現在の日本国憲法は民主的憲法とされているが、民主主義を支えるための根幹制度である三権分立制度は十分には機能していない。最高裁判事については、あの米国でも上院の同意がいるし、韓国の大陪審院(最高裁判所に相当)の判事の任命に関しても。韓国国会の徹底的な調査が入るシステムになっている。

主権者国民の代表であり、国権の最高機関である国会が最高裁判所の長官も含めて人事に対して何らの権限も持たないというのは実におかしい。政権交代を成し遂げた際には、日本国憲法の非民主的な規定を、民主主義を深化・徹底化する方向で言葉の真の意味での「改正」が必要だ。



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