週明け16日の米ニューヨーク株式市場は、主要企業でつくるダウ工業株30種平均が前週末終値比2997・10ドル(12・9%)安の2万0188・52ドルで引け、史上最大の暴落を喫した。米連邦準備制度理事会は週明けの市場の動揺を鎮めようと前日15日の日曜日に、異例とも言えるFFレート(資金不足に陥った市中金融機関がFRBから資金を融通してもらう際の金利水準)の誘導目標を1%ポイント引き下げ0.0〜0.25%にした。つまり、ゼロ金利政策を取った。併せて、市中金融機関から債券などを購入してマネーを供給する量的金融緩和も採ることを表明したが、効き目は全くなかった。金融政策では、新型コロナウイルス感染拡大のパンデミック宣言には全く効果がないことが明らかになった。思い切った規模の財政政策を早急に取り入れることが喫緊の課題である。 これより先、週明け16日で最も早く開き、取引量の多い東京市場では取引時間中に、日銀が上場投資信託(ETF=株価指数連動金融商品。株式と同じたぐいの金融商品=)の買い入れ額を6兆円から12兆円に拡大、コマーシャル・ペーパー(CP)や社債などの資産買い入れ枠をそれぞれ1兆円拡大(前者の買い入れ枠は約3.2兆円、後者は4.2兆円に拡大)、企業の資金繰り支援策を柱とする異例の金融政策対応を発表した。 しかし、ETFは株式相当の金融商品であり、中央銀行が株式商品を買い入れることは中央銀行の資産内容を悪化させることになるため、邪道とされている。このため、日銀としても「原則的な買い入れ方針」は引き続き6兆円とアナウンスせざるを得なかった。このため東京市場では金融政策の限界を感じ、平均株価は一時は持ち直したが結局、終値は前週末より429円01銭安い1万7002円04銭で引けていた。
新型コロナウイルスのパンデミック宣言で動揺し、ダウ平均が史上最大の暴落を喫した週明け16日のNY市場
この後、ニューヨーク株式市場でダウ平均が史上最大の暴落を喫したわけで最早、金融政策では新型コロナウイルス感染症のパンデミック宣言による世界各国の経済行動の萎縮からくる大幅な景気後退には対処できないことが明らかになった。残るは、思い切った財政政策の発動しかない。併せて、パンデミック宣言を行った世界保健機構(WHO)が、実効性のある新型コロナウイルス感染症対策の基本対策を提示し、各国が自国の状況に併せて応用することだ。 2008年から2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1)に対してWHOは、顕著な感染や死亡の被害が著しい事態を想定した警告であるフェーズレベル6/6と警告し、パンデミック(世界的大流行)の宣言を行ない、この宣言は2009年4月から2010年8月まで持続した。ただし、当時は新型インフルエンザ感染症の大規模な拡大や経済社会に与える混乱も大きくなかったので、WHOのパンデミック宣言は誤警告だと批判された。 しかし、万一の緊急事態に備える体制を築くことは重要である。加えて、今回の新型コロナウイルス感染症拡大は中国から始まり現在はイタリアを中心として欧州が拡大の震源地になっており、米国でも危機意識が強まっている。本サイトでも強調しているが、本当のところは日本も危険国である。元東京大学医科学研究所(国立の感染症対策研究機関)特任教授で現在は特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広理事長や元国立感染症研究所員の岡田晴恵教授らが指摘しているように、日本でのPCR検査は1日あたり800人から1000人程度と恐るべき少なさであるため、実態が分からないからだ。 PCR検査が1日あたり1万人を超え、感染者数の増加と死亡者の増加が低下してきている韓国での対策が参考になる。具体的には、新型コロナウイルス感染症対策の基本は、➀PCR検査の精度を高める②新型コロナウイルスに感染していると心配しており、PCR検査を希望する国民に対して検査を行うことができるようにして、実態の把握に真剣に取り組む③陽性と判定された患者の症状の段階に応じて適切な医療措置を実施する③財政資金を投じての医療システムの強化④新型コロナウイルス抗原に対して免疫力をつけるための抗体ワクチンの開発に取り組む-などのことだろう。 ところが、政府=安倍政権がオリンピックの開催強行に執着し、種々のPCR検査を抑制しているため、日本の新型コロナウイルス感染の実態は不明であり、正しい公開もなされていない。朝日デジタルによると、こうした中で、主要7カ国(G7)の首脳は日本時間16日深夜、テレビ会議システムを使い約50分間、緊急協議を行った。会議終了後の記者会見で安倍首相は、➀世界の英知を集めて治療薬の開発を加速させる②必要かつ十分な経済財政政策をG7各国が実行して、世界経済の悪化や金融市場の混乱に対策を打つ③人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして東京オリンピックを完全な形で実現することで支持を得た-などと語ったという。 このうち、第一はG7を開かなくても、誰でも分かること。第二は、ニューヨークダウ平均が暴落したように、新自由(放任)主義でこり固まっている現在のG7では対処ができない段階になっている。そもそも、現在はG7の時代ではなく、G20が世界経済の懸案を議論する場である。そして、第三については、G7の共同声明の発表を待って、正しく読みこなさなければならない。そもそも、東京オリンピックの開催権限を持つのは国際オリンピック(IOC)であって、G7ではない。また、開催時期については言及を避けており、肝腎なことは明らかにできないでいる。 議論がそれるが、G7は、参加国の官僚が実質的に取り仕切っており、首脳の発言も声明も官僚があらかじめ決めているから、モリカケ疑惑で大量の公文書偽造が必用になった問題で財務官僚に借りのある安倍首相が、頼み込んだものである可能性が強い。なお、完全な形での開催というなら何故、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長が16日、福島県で26日から始まる五輪聖火リレーの沿道での観覧自粛を呼びかける方針を明らかにしたのか。「過去の実績」から言って、真実を求める国民には安倍首相の発言は信じられない。 話を元に戻して、IOCのトーマス・バッハ会長は、「(東京オリンピック出場選手の)選考会は現在の課題だ。大会の中止や延期が相次ぎ、予選の形は危機的な状況にある」「(東京オリンピックの開催については)世界保健機構(WHO)の指示を仰ぐ」旨の発言をしている。IOCや各国のオリンピック委員会のまともな委員や感染症対策の専門家は1年から2年程度の延長が必要だと述べ始めている段階だ。新型コロナウイルス感染者の広がりを踏まえ、WHOやIOCは適切な判断を行うことが求められている。

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