2020年度第三次補正予算が成立したが、限定的でも緊急事態宣言前に編成されたものであり、英国で変異した感染力、死亡に至る重症化力が強いウイルスの市中感染が相次いで発見されるなど、最も重要なコロナ禍対策は脇道に追いやられている。れいわ新選組の山本太郎代表は既成野党が求めた第三次補正予算案の組み換え要求が従来型の「財政規律」に則ったものであることに疑問を呈し、中小零細企業、個人業者の倒産・営業停止・廃業で日本経済の供給能力が毀損され、思い切った財政出動ができなくなることを恐れている。サイト管理者(筆者)も山本代表の見解を支持する。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は943.6人、PCR検査人数は8962.6人だから、瞬間陽性率は10.52%。東京都独自の計算方式では7.8%。感染者のうち感染経路不明率は51.96%だった。新規感染者数は減ってきているが、重症者、死亡者が多くなっており、入院待ち・自宅待機の感染患者も多くなっており、医療崩壊・医療逼迫の状況になっていることから、11都府県で発令した緊急事態宣言の2月7日時点での一律解除は困難のようだ。
全国では、午後23時59分の時点で新規感染者は3534人、死亡者は96人。重症患者は前日から18人減少して1014人になっている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1月28日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の0.77人、東京都は前日比0.03人減の0.74人となっている。
自民、公明の連立与党と維新が賛成し、衆参両院本会議で賛成多数で可決した。NHKのWebサイトによると、第三次補正予算の概要は次の通りだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210128/k10012838231000.html?utm_int=news-politics_contents_list-items_004)。
今年度の第3次補正予算には、去年12月にまとめた経済対策を実行するため、追加の歳出として19兆1761億円が計上されています。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に関する予算としては、病床や宿泊療養施設の確保など医療を提供する体制を強化するために「緊急包括支援交付金」を増額するため1兆3011億円、各都道府県が飲食店に営業時間の短縮や休業を要請する際の協力金などの財源として「地方創生臨時交付金」を拡充するために1兆5000億円、ワクチンの接種体制などを整備するための費用として5736億円を盛り込んでいます。
ポストコロナに向けた経済の構造転換や好循環を実現するための予算としては、中堅・中小企業が事業転換に向けて行う設備投資などを最大で1億円補助するための費用として1兆1485億円、行政サービスのデジタル化を進めるため、地方自治体のシステムを統一する費用などに1788億円、“脱炭素社会”に向けて基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を10年間継続して支援する費用として2兆円、Go Toトラベルの延長に伴う費用として1兆311億円を計上しています。
さらに防災・減災や国土強じん化を推進する予算として、風水害や巨大地震などへの対策やインフラの老朽化対策などの費用として2兆2604億円が盛り込まれています。(以下略)
コロナ禍対策は第3次補正総額19兆1761億円のうち、3兆3747億円と17.6%に過ぎない。これに第二次補正予算で財政法定主義(日本国憲法第83条「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」に基づいて政府が予算を決定する際には国民の代表から構成される議会の議決が必要である)を無視して確保された予備費10兆円の残りが3兆円程度。コロナ感染拡大に伴う経済への悪影響も考えなければならないから、これではとても足りない。
米国では昨年第4四半期の実質経済成長率が前期比年率換算でプラス4.0%増加したが、冬場のコロナ感染拡大で第3四半期の33.1%増からは極端に低下。この結果、米国政府が巨額の経済対策を実施したが及ばず、2020年度は前年比マイナス3.5%と 74年ぶりの低水準に陥った(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210128/k10012838331000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_029)。中国はコロナ対策が効を奏して2.3%のプラス成長。
脇道にそれるが、経済の悪化にもかかわらず、新型ワクチン期待もあり、米国の株式市場ではバブルが発生している。しかし、長期金利は次第に上昇を始めており、新型ワクチンへの期待が薄れることなどをきっかけにして、バブルも崩壊する可能性を否定できない。米国経済の供給能力(企業の倒産や営業停止などで毀損される)を維持することに主眼を置かなければ、重大な局面を迎える。
話を元に戻すと、今のところ、国民の「不要不急外出自粛」で新規感染者数は前週の同じ曜日よりも少なくなっているが、東京オリンピック/パラリンピック強行開催のため限定的な緊急事態宣言にとどまり、政府=菅政権のPCR検査抑制が続いているにもかかわらず、東京都で1000人、全国で4000人を超える東アジア諸国としては高水準の新規感染者が続き、11都府県では医療崩壊が進行中だ。
また、感染力(変異株はヒトの細胞に浸透するスパイクたんぱく質がより浸透しやすくなっている)や重症化力(死亡率の高さで分かる、免疫暴走を引き起こす)の強い英国、南アフリカ、ブラジルその他の国で新型コロナウイルスの変異種(国立感染研は正式には変異株と主張している)に感染した国民が静岡県、東京都、埼玉県などで少なくとも34人確認されている(https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG1021Q0Q1A110C2000000)。東京新聞Webサイトでは市中感染が相当に拡大していくとみている。
日本でも帰国者から変異種が検出されたが、水際で感染者を隔離して広がりを防いできたはずだった。だが今月には都内で、英国から帰国した男性の濃厚接触者2人から英国型変異種が検出された。男性は空港検疫で陰性だったため、健康観察のため自宅待機とされたが、その間に飲食をする集まりに参加。その後に陽性と判定された。変異種は検疫もすり抜けてしまった。
(感染症が専門の国際医療福祉大の)高橋和郎教授は「感染力の高い変異種が広まればそれだけ収束は難しくなる。政府は地域を限定せず、全国で変異種がないか遺伝子検査を広げる必要がある」と訴える。
「変異種」は正式には「変異株」だが、東大先端研に所属し、遺伝子工学が専門の世田谷区在住の児玉龍彦名誉教授によると、変異株は急激に感染が急速に拡大してもピークを迎え、やがて感染者数は低下していくという波を描くとしている。ただし、変異株は下図のような特徴を有するため、コロナ禍対策としてはやはり最大限の補償付きの緊急事態宣言に切り替え、国民の行動規制を強化したうえで、社会的検査、地域全体の大規模検査が必要だとの持論を変わらずに主張している。感染拡大のスプレッダーを早期発見することが収束の基本原則だからだ。
このことは、東京オリンピック/パラリンピックの強行開催を最上位目標にしている政府=菅政権と東京都、オリ/パラ組織委員会以外では、世界の共通認識だ。次の参考サイトを参考にされたい。
検査して陽性であった場合は、保護・隔離・治療するための何らかの医療施設が必要になる。まず、検査ひだが、PCR検査、抗体検査費は技術革新で費用が1件あたり2000円から3000円に低下しているから、全国民にPCR検査検査を行うとしても4000億円程度で済む。しかし、複数回検査を行わなければならない。それには兆円単位の財政資金が必要になる。加えて、日本経済の供給能力を毀損しないようにするため、大企業はもちろんのこと中小零細企業、個人事業種の倒産や営業停止、廃業を防がなければならない。それには、多額の支援金が必要になる。
このため、山本代表は昨日29日の国会での2回目の記者会見で、既成野党側が要求していた第三次補正予算の組み換えは従来型の「財政規律」にしばられていると指摘。そのうえで、「経済の供給能力・適正なインフレ率」を新しい、また理論的にも正しい財政規律にしなければならないと前置きしたうえで、中央政府(政府と日銀)の通貨発行権を用いて政府が90兆円規模の新発国債を発行して、企業の倒産・営業停止・廃業を防ぐとともに、個人の生活を補償するための生活支援金の至急を、コロナ禍収束まで支援・支給していく必要があると強調した。
具体的には、➀消費税は廃止する(野党共闘のためには税率を5%以下に引き下げる)②強力な営業活動自粛要請措置を実現するため、飲食店、フリーランス、個人事業主、中小零細企業に十分な補償措置を行う③コロナ収束まで毎月1人当たり 10万円を給付する➃社会保険料、水道、光熱費などは免除し奨学金徳政令を実行、教育費は無償にする(生産力の根本は有能な勤労者で、その予備軍は大学生・大学院生)ーなどを挙げている(https://reiwa-shinsengumi.com/covid-19-policy202008/)。
米国で長期金利が上昇(2%から3%)へ上昇すれば、同国のバブルは崩壊する。日本の株価が上昇しているのは、米国など外国の投資家による日本株買いの影響が大きいから、日本のバブルも弾けるだろう。ただし、株式を購入している層はコロナによる営業への被害が少ないかコロナ特需にわいている企業(例えば、テレワーク推進要請による電機業界やシステム開発業界)か高所得者層(昨年支給された生活支援金給付)だから、リーマンショック時とは様相を異にするだろう。
財政規律を「経済の供給能力・インフレ率の安定的上昇」に切り替えれば、市場で決まる為替レートは各国通貨の購買力平価に収束するから、円の暴落などは起こらない。その意味でも、正しい財政規律を採用するのは当然のことだ。リベラル派と言われる野党の支持率が低いのは、経済政策が事実上、存在しないことである。国民民主党も一見、積極財政を主張しているように見えるが、累積国債発行残高(一般政府の債務残高)の名目国内総生産に対する比率を財政規律としており、やがて、増税を求めてくる。
政府=菅政権は真逆のことを行っているから、真正野党側が強力な共通政策(特に、経済政策と外交政策)を打ち出して当然だ。リベラル派の最大の弱点は経済政策が弱いことだ。立憲民主党の枝野幸男代表は意味のない古い財政規律に縛られている。日本共産党は150年前の資本論が経典だが、資本論は市場経済体制に基づく資本主義生産様式の社会体制の崩壊を「予言」しただけであって、同党には政策論の根拠になる経済理論が事実上、存在しない。だから、れいわの経済政策を創造的に活用して野党共闘の経済政策の要(かなめ)を示す必要がある。コロナ禍で国民や企業が窮地に立たされている現状ではなおさらのことだ。
なお、法相を努めた経験のある衆院議員の河井克行被告に対する公判は2月末までには終了し、その後、判決が言い渡される。河井克行被告は自民党の正式な手続きは経ているが、河井案里被告(懲役1年4月、執行猶予5年の判決が下っている。敏腕検事として知られた郷原信郎弁護士によると、執行猶予期間の長さから限りなく実刑判決に近い)の買収資金150万円をはるかに上回る2900万円もの買収資金を使ったのだから、実刑は間違いないと言われている。
河井克行容疑者は単なる「将棋の駒」に過ぎないが、減刑のために真実を述べ控訴を断念すれば、選出された広島3区で衆院補選が行われることになる。
時期にもよるが、4月の北海道2区、参院長野選挙区での補選で自公側が敗北する可能性は極めて濃厚だから、山本代表は河合容疑者の判決が確定して、同合容疑者の選挙区である広島3区での補選実施が確定すれば、自公連立政権は「定額給付金10万円再支給」を公約に、解散・総選挙に打って出ると見ている。2021年を日本政治刷新の年とするようにしないと行けない。
【追記】問題になっている感染症法に刑事罰を追加する感染症法「改正」案と新型インフルエンザ特措法(新型コロナウイルス特措法)に罰則 規定を設ける改正事案で、自民党の二階俊博幹事長と立憲の福山哲郎幹事長との間で合意が成立した。2月3日に成立する予定だ。
しかし、➀政府=安倍晋三政権(当時)、菅政権の「コロナ禍対策」が世界標準に従わず、支離滅裂、後手後手に回ったことを認めず、対策の抜本転換を図る意思もない②2020年度第3次補正予算で明らかになったように、政府=菅政権十分な補償が行われないことは確実である③これまで日本の社会に大格差をもたらしてきたのにさらに分断を持ち込み、基本的人権破壊の入り口になる➃罰則規定を設けても、政府への信頼と国民の理解・協力が前提になるコロナ禍収束には役に立たないーことから、サイト管理者(筆者)としては反対する。
東京新聞29日付2面によると、自民・立憲の協議による変更内容は以下の通りだ(https://www.tokyo-np.co.jp/article/82738)。
東京新聞によると、両改正案は15日に「厚生労働省感染症部会」に提出され、14人のうち賛成した国会議員はわずか3人、慎重意見が3人、8人は反対か慎重だったが、記事録の公開は26日に第三次補正予算案が衆議院を通過したあとで公開された。