菅義偉首相の「根城」とも言うべき総務省高級官僚の公務員倫理規定違反の違法接待は全貌が解明されていない。公平であるべき放送行政を歪めたことはほぼ確実であり、農林水産省にも同様の問題が発生している。このままで行けば高級国家公務員の間に「忖度主義」が横行し、国家・国民のための公正・公平な行政が行われない状況が加速する。政権交代以外に解決の道はない。
東京都の公式発表ではないが7日移動平均での新規感染者は昨日26日の267.9人から269.3人へ、また対前週比率も74.1%から
全国では午後23時59分の時点で新規感染者数は1214人、死亡者数は41人、重症者数は前日比17人減の440人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月26日時点の実効再生産数は全国が前日比0.02人減の0.83人、東京都も前日比0.03人減の0.81人だった。
週刊文春の報道がきっかけになった総務省高級官僚に対する東北新社の国家公務員倫理規定に違反する違法接待。同省のうちわの調査で、国家公務員倫理規程に違反した接待を受けたとして谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長(大臣官房付に降格)、湯本博信前審議官(大臣官房付に降格)ら合わせて11人(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kanbo01_02000778.html)が減給、戒告、訓告を受けた。なお26日、東北新社も二宮清隆社長が辞任し、菅正剛氏を懲戒処分にしたほか、三上義之、木田由紀夫の両執行役員を解任するなどの処分を発表した。
ただし、菅首相お気に入りで、東北新社事案に象徴されるように公正かつ公平な放送行政を歪め、内閣記者会での「記者会見」を骨抜きにし、大手電波メディアに圧力をかけている菅首相の「忠犬」である山田真貴子内閣広報官は、総務審議官時代の2019年11月に、他の接待を受けた高級官僚の接待額を大幅に上回る約7万4000円に上る高額な接待を受けていたが、国家公務員給与の6割に相当する70万5千円を自主返納しただけで、内閣広報官に留まることになった。
逆算すると、117万5千円が給与収入でこれに他の手当てがつくから、総収入は140万円、年収はボーナスを除いて1680万円、ボーナス込みで2千万円は超すだろう。すべて、コロナ禍もあり生活不安を抱えて暮らしている国民の血税から支払われるものである。国民はやっとの思いで税金(血税)と社会保険料を納めているが、その血税が国民の生命と生業(なりわい)を守るための、公正で公平な行政に使われているのではなく、一部の利権集団に不当な利益を与えるために使われているわけだ。
なお、山田広報官は東京学芸大学付属校から早稲田大学法学部に入学、卒業後に郵政省に入省。郵政省と自治省が「合体」して総務省に再編された後、安倍晋三首相(当時)に抜擢されて女性としては初の内閣総理大臣秘書官、総務省情報通信国際戦略局長、大臣官房長、情報流通行政局長、総務審議官=国際担当=を歴任している。戸籍上の苗字は「吉田」で配偶者は、2020年7月に官房総括審議官に就任し、今回の接待疑惑で2月19日に総務省情報流通行政局長を兼任することになった吉田博文氏である。よく出来ているとしか言いようがない。
話を元に戻すと、これらは実質的には「処分」に相当しない。減給処分にしたところで、処分された総務省高級官僚は血税から高額の収入を得ているから、たかが知れている。形式的にはいわゆる「出世」の道は閉ざされたかと思われるが、最終役職歴に見合った「天下り先」が用意されている。訓告は、国家公務員法82条が定めている懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)でもっとも軽いもので、「出世」に取ってはハンディになるが、実質的には「厳重注意」相当だ。 訓告は、業務違反の際に口頭又は文書で注意をする処分であり、給与や昇格に影響はないことも多い。
これらのことからすると、今回の処分で総務省が「生まれ変わる」とは思われない。問題点は全く解明されていない。事件当時、総務省情報流通行政局長の任にあった山田広報官の問題について述べる。朝日デジタルの投稿記事「(時時刻刻)疑惑、語らぬ山田氏 首相長男と同席『大きな事実でない』」(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14813273.html?iref=pc_ss_date_article)で報道された今回の違法接待事案の時系列図掲載されているので、引用させていただくことから始めたい。
多数のメディアが伝えており、この図からも明らかなように違法接待事案は菅氏が民主党政権前の自公連立政権時代の総務相の時代に、長男でバンドマンの菅正剛氏を秘書官に起用したことから始まる。現在の菅首相が掲げる「自助、共助、公助」の「理念」からは程遠い「縁故主義(ネポティズム、身内の者に対して控除する)」の典型だ。菅正剛氏は秘書官体感後、菅氏が東北新社に照会して同社が中途採用。その後、民主党政権が崩壊して第二次安倍政権が樹立された際、東北新社の元社長らが合計500万円ほど政治献金をしている。その後に、菅正剛氏らが放送行政を司る総務省高級官僚の接待工作が少なくとも延べ39回も続く。
ここで問題になるのが、菅正剛氏が取締役を務める東北新社グループの小会社「株式会社囲碁・将棋チャンネル」が2018年、総務省から「東経110度CS放送に係る衛星放送期間放送の業務認定」を受けたことだ。次の投稿記事を参考にしていただきたいが、重要箇所を再掲させていただく。
政治経済評論家の植草一秀氏のメールマガジン第2858号「山田真貴子局長の菅長男異例CS(放送)認可」によると、次のような事実がある。
そのなかで、総務省の東北新社子会社に対する対応として、とりわけ重要視されているのが2018年の認可である。
菅正剛氏が取締役を務める東北新社グループの子会社「株式会社囲碁将棋チャンネル」が2018年、総務省に「東経110度CS放送に係る衛星基幹放送の業務認定」を受けている。当時、総務省はハイビジョン化を進めるために衛星基幹放送の大幅な組み替えを行なっていた。認定においてはハイビジョン放送であることが重視された。実際に、このとき認定を受けた12社16番組のうち、11社15番組がハイビジョン放送だった。
ところが、「囲碁将棋チャンネル」番組だけ、ハイビジョンではない標準画質放送であるのに基幹放送の業務認定を受けた。このとき、認定の判断を行う最高責任者である総務省情報流通行政局長の任にあったのが山田真貴子・現内閣広報官である。菅義偉氏の官邸記者会見で質問が多数存在するのに会見を打ち切ってしまう、いわくつきの女性(内閣広報官)である。
ハイビジョン放送でないのに、東北新社グループの子会社である「囲碁将棋チャンネル」番組だけ、標準画質放送であるのに、衛星基幹放送の業務認定を受けたのであり、この決定を行ったのは、菅官房長官(当時)の覚えがめでたかった人物であり、総務省内で認定の判断を行う最高責任者である総務省情報流通行政局長の任にあったのが山田真貴子・現内閣広報官である。山田氏は翌年の2019年11月(当時は総務審議官に昇進)にある料亭で、違法接待を受けた高級官僚の中でも最も高額の 接待を受けている。
国家・地方公務員または政府・地方自治体の業務委託業者が接待を受けたり金品を受け取るなどのことは、コンプライアンス(法令遵守)の観点から厳しく戒められている。山田氏は25日の衆院予算委員会で立憲民主党の今井雅人衆院議員から追及を受けているが、「東北新社グループからの働きかけはなかった」と答弁している。時系列的に事実関係を調べてみると、今回の接待が「囲碁将棋チャンネル」番組を業務認定したことへの「謝礼」などの意味があった可能性は濃厚である。やはり、虚偽答弁だろう。総務省の放送行政が歪められたことは否定できないと言える。
日本共産党の志位和夫委員長は、今回の総務省幹部接待事案で総務省が処分を行ったが、3つの重要な問題は全く解決されていないとして、菅首相は「自らの責任で真相究明を行うことが求められている」と語っている(https://www.youtube.com/watch?v=Ga_tA-ELEmY、https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-26/2021022601_02_1.html)。3つの重要な問題点とは、➀東北新社(グループ)がなぜ39回もの接待を系統的・組織的に行ったのか、その「目的」が明らかになっていないこと②総務省の幹部がなぜ、そろいもそろって東北新社の接待に応じたのか、その理由も明らかになっていないこと(明らかに、当時の菅内閣官房長官に忖度したか、菅氏の何らかの形での指示があったのかのいずれかと考えられよう)③放送行政=BS、CSなど電波の許認可等の問題(許認可行政)がゆがめられた可能性があることーである。
その上で、「この三つを明らかにするには、正剛氏を含む東北新社側と総務省側を国会に招致し、集中的な審議(を行うこと)がどうしても必要だ」として、菅首相の政治家としての責任は重いと指摘し、真相解明に責任を果たすよう強く求めた。そのためには、菅正剛氏を含む東北新社グループの社長(当時)以下の接待工作班の証人喚問が必要だろう。また、山田内閣広報官の処分については「辞めるべきだし、辞めさせるべきだ」と強調した。内閣広報官は本来、首相と国民をつなぐ(首相の肉声を伝え、手腕を明確にして国民の信頼を得るための)要職だ。当然、首相の「忠犬」「番犬」であってはならない。その意味から、志位委員長の主張は、主権者国民にとっては当然の主張だ。
ただし、自民党側は証人喚問はおろか参考人招致さえ認めていないし、菅首相にも応じる意向はない。事実、昨日26日夜の6府県での緊急事態宣言先行解除の説明ではコロナ禍対策本部長としての記者会見を行わず、20分にも満たないぶら下がり会見を行っただけだった。代わりとして西村康稔コロナ対策担当兼経済再生担当相が尾身茂分科会会長とともに記者会見に出席しただけだ(https://www.youtube.com/watch?v=orO0dr50_LM)。首相の記者会見の司会進行を行う山田内閣広報官に対する攻撃を意識してのことだろう。本来なら、記者会見を主催するのは内閣記者会(官邸の記者クラブ)だ。記者クラブ自体に政権への忖度傾向があるなど問題はあるが、取り敢えず、幹事社2社がまず代表質問を行い、その後で時間を十二分に取ってフリージャーナリストも含めて複数のメディアの記者が、前もって質問内容を届けておくのではなく、複数回の再質問も含めた質問をぶつける必要がある。
ところが現状は、山田内閣広報官が予め質問を出させておいて、その質問に対する答弁を官僚が作成し、菅首相がプロンプターを使って読み上げる。そして、山田氏が「時間が来たので記者会見を打ち切ります。質問が出来なかったメディアの方はメールなどで連絡していただければ、(官僚が回答を作文して)首相がメディア各社にお届けします」という形で進行、終了する。これでは、真の意味での記者会見にはならない。もっとも、菅首相は山田内閣広報官や総務省を使って、さらなる、メディア支配を目論んでいると考えられる。
こうした事態を放置しておけば、むしろ、広島県の鶏卵大手「アキタフーズ」から農林水産省幹部が違法接待を受けていた事案が明らかになり、枝元真徹(まさあき)事務次官ら6人の高級官僚が処分されたように、今後も国家公務員組織の崩壊は続くだろう。なお、この事案は、2019年夏の参院議員選挙の際に、広島選挙区で起こった大型買収案件で、河井克行元法相(公判中、3月に被告者尋問が行われる)・案里(「懲役1年4カ月執行猶予5年」の実刑が確定、参院議員辞職)夫妻陣営を捜査している最中に浮かび上がってきた吉川貴盛元農水相(北海道2区から当選したが、議員辞職し在宅起訴)と広島県の鶏卵大手「アキタフーズ」との贈収賄事件から浮かび上がってきたものだ。
国家公務員組織崩壊の根本的な原因は、安倍首相(当時)と菅内閣官房長官(当時)を中心とする安倍政権(当時)が2014年国家公務員制度改革関連法案を成立させて、内閣官房に5月30日、内閣人事局が発足したことで、内閣が一挙に各省庁の高級官僚の人事を掌握するようになったことにある。内閣人事局の初代長官は警察畑の杉田和博氏(現在、内閣官房副長官=事務担当=)。そして、安倍内閣、菅内閣と続いた歴代政権は「正当な人事」ではなく、正当な理由で内閣(特に首相)の意向に諌言する国家公務員(特に、高級官僚)を左遷・更迭するようになった。これを、「人事権の濫用」という。
その結果、国家公務員(特に、高級官僚)が、日本国憲法第15条2項(「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」)に定められた「公僕」としての公務員の本来の務めをないがしろにするようになった。そして、時の内閣に対して「忖度(国民の幸福より首相の意向を重視することが本質)」を行うようになった。
この結果、世間を騒がせ未だに真相が不明な森友・加計学園問題、桜を見る会、総務省・農水省の国家公務員倫理規定違反接待事件などが続出している。国家公務員組織の「ガバナンス=健全な組織運営を目指す、組織自身による管理体制」=崩壊が生じているわけだ。安倍政権、菅政権には自浄能力はないと見たほうが良い。これらの重大な不祥事、疑惑の真相を解明するためにはやはり、政権交代が欠かせない。