明日3月1日に2府4県では緊急事態宣言が解除される。しかし、2月27日土曜日の投稿記事で若干お知らせしたが、新規感染者減少幅の低下・下げ止まり傾向や変異株市中感染予想で緊急事態宣言解除後も茨の道が予想される。期待されている新型ワクチンも政府=菅義偉政権に交渉能力がないため、実際の入荷スケジュールが不透明で、仮に安全な形で集団免疫獲得に大きな効果があるとしても、接種が順調に進む可能性は乏しい。安全で有効、持続性のあるワクチン開発では後進国だからだ。自国で開発できないため、世界のメガ・ファーマ=大手製薬会社=から足元を見られている。閣僚が交渉しても難しい。内閣総理大臣(首相)が交渉に当たるのが筋だ。緊急事態宣言解除後も茨の道は続く。政府の新型コロナ感染症対策本部(本部長・菅首相)は高齢者介護施設での全員検査に乗り出したようだが、「積極的疫学調査」(濃厚接触者の追跡調査)を柱とした従来のコロナ禍対策を続行する。やはり、十分な補償措置を徹底化させることを条件に、東京都など感染震源地(エピセンター)での全員検査、「誰でも、どこでも、いつでも、何回でもできる」検査体制の確立を柱として、コロナ禍対策を抜本転換する必要がある。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は277.4人、前週比率も前日の75.7%から81.2%に上昇した。PCR検査人数は5875.1人で、陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者数を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.7%。感染経路不明率は47.73%。感染経路不明率は依然としてステージ3/4の段階と言える。
全国では午後23時59分の時点で新規感染者数は999人、死亡者数は30人、重症者数は前日比6人減の434人だった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月27日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の0.84人、東京都も前日比0.01増の0.82人だった。低下傾向に変化の兆しも見える。
※東京都では新規感染者数の前週からの減少幅が下げ止まりの傾向にあり、2日連続して増加した。7日移動平均でも前日27日土曜日の269.3人から277.4人に上昇し、前週比率も前日の75.7%から81.2%に上昇した模様。
既に本サイトでも若干述べさせていただいたが、政府=菅政権から関西の6府県で緊急事態宣言を明日の来月3月1日に前倒し解除することを諮問された諮問会議では、議論が紛糾したようだ。東京新聞は2月27日付3面の「変異株(で)再拡大リスクある」と題する記事で、次のように伝えている(https://www.tokyo-np.co.jp/article/88406?rct=national)。小池百合子東京都知事が目標としている7日移動平均が140人に達するのは、サイト管理者(筆者)の表計算ソフト(Libre Office Calc)を使った簡単な対数計算によると、本日2月末の2月28日の感染状況が続くとして、3.3週間かかる見通しだ(277.4×0.812^3.3=139.52)。
6府県に対する緊急事態宣言の早期解除について、26日の諮問委員会では慎重論が相次ぎ、予定を1時間超える議論が続いた。「感染力の強い変異株の影響で、再拡大するリスクはある」と警戒するメンバーが大半だったという。(中略)
経済が専門の竹森俊平・慶応大教授も「問題解決という状態では全然ない。(経済活動の)ゴーサインは出せない」と厳しい見方。「大人数で集まらないで。花見も歓送迎会も気をつけてというのが、基本的なメッセージ」「宣言解除は、ものすごいアナウンス効果だから、不安がある」と言うメンバーもいた。首都圏の緊急事態宣言の終了期限は3月7日だが、あるメンバーは「解除できるとはとても思わない」と語った。
加えて、政府の感染症対策分科会の尾身茂座長も、2月26日の衆院予算委員会第一分科会での立憲民主党・山井和則衆院議員(京都6区・7期)の質問に対して、東京都を含む首都圏では、新規観戦者数の減少幅が縮小していることは確かで、新規感染者減少の下げ止まりの兆しもあることから、参考人招致の「専門家」の立場としては現時点では、3月7日に予定されている首都圏1都3県の緊急事態宣言の解除については、再延長する可能性もあり得ると答弁している(https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51564&media_type=)。
橋本聖子東京オリンピック/パラリンピック組織委会長が記者会見で、オリ/パラの競技観戦客数の発表については聖火リレーが福島から始まる3月25日前後まで引き伸ばすと発言したのは、再拡大(リバウンド)の可能性をぎりぎりまで見極めるためだ。ただし、聖火リレー開始時にリバウンドするかどうかの見極めがつくとは思われない。
政府=菅政権と政府系のコロナ感染症対策専門家が最も警戒しているのは、英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株の市中感染がジワリと拡大していることだ。感染症対策本部では次のページ=https://corona.go.jp/expert-meeting/=で関連資料を公開しているが、2月26日公開された次の資料=https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r030226.pdf=でも、変異株の市中感染を強く警戒している。
問題になっている新型コロナの変異株(会議資料の78頁以下)は、➀英国で変異した変異株(501Y系統)②501Y系統からE484K系統に変異した変異株③いきなりE484K型に変異した変異株ーがある。➀が英国型変異株と呼ばれ、感染力が増している変異株。②③が南アフリカやブラジルで変異した変異株で、感染力が強いうえ、ヒトの免疫力や新型ワクチンの効果を低下させる変異株だ。英国型の変異株もさらに変異している。
【1】N501Yの変異がある変異株
- 「N501Yの変異がある変異株」は、従来株よりも感染性が増していることが懸念されている。
- 英国で確認された変異株(VOC-202012/01)、南アフリカで確認された変異株(501Y.V2)、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3)がこの変異を有している。
- 我が国では、202例(国内153例、空港検疫49例)を確認している。
【2】E484Kの変異がある変異株
- 「E484Kの変異がある変異株」は、従来株よりも免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されている。
- 南アフリカで確認された変異株(501Y.V2)、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3)がこの変異を有している。
【3】その他(要するに、直接E484K系統に変異した変異株)
- 上記のほかに「N501Yの変異はないがE484Kの変異がある変異株」を、現在、我が国では、93例(国内91件、空港検疫2件)確認している。
これらの変異株が日本国内(空港検疫および市中感染)で発見された件数は下図の通りだ。
しかし、新型コロナウイルスの遺伝子構造(ゲノム。新型コロナウイルスはRNA型であるため、1本のらせん状につながった約3万個の塩基配列)の解析には相当の時間がかかるので、新規感染者の検体うちの05%から10%程度の検体しか解析されていない。国内市中感染と空港検疫合計で既に、295例が見つかっている。このうち、国内市中感染件数は242例だ。特に、東京都、埼玉県、神奈川県の首都圏に集中しており、緊急事態宣言が早期解除される2府4県のうち、兵庫県、大阪府、京都府の関西圏も多い。しかも、空港検疫では限界があり、本来なら入国禁止と言った強力な措置を継続して講じるがある。東京オリンピック/パラリンピック強行開催の難点のひとつ(最大2万人弱の選手団の空港検疫)が、ここにある。
ところが、政府=菅政権はオリ/パラ強行開催のため、離別した家族との再開や重篤な病気の治療、国際会議への参加など特別の事情がある場合を除いて、現在は原則入国禁止という制限をオリ/パラ関係者(選手=アスリート=とコーチら)に限って認めようとしているらしい(https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE251380V20C21A2000000/)。支離滅裂な対応と言わざるを得ない。支離滅裂な対応は「右往左往」の結果を招くが、非政府系の感染症対策専門家はもちろん、政府系の専門家も一部は反対するだろう。国民の混乱と怒りを買う結果になるだろう。
また、これは新規感染者の検体のうち1割にも満たない。用心して「氷山の一角」と見ておいたほうが良い。6都府県で緊急事態宣言を早期解除することで、諮問委員会が紛糾したのは、まさにこのためだ。厚生労働省(の医療技官)や国立感染研は、変異株を発見できるように基礎自治体の検査を支援する「変異株スクリーニング」実施の頻度を上げることや、大学と民間検査機関との解析協力体制を築き始めた。ただし、それで事足りるかと言えば、新規感染者の人数は第一波、第二波と比較して格段に増えてきているため、そうではないだろう。さらに、東京都では感染経路不明者が50%程度と、感染状況のステージ3/4のレベルにある。濃厚接触者の追跡調査だけで感染状況を把握することは、変異株を含めて極めて不十分だろう。
さて、東京都は医療体制ひっ迫状況が緩和されてきたとして今後、感染経路の追跡調査を元のレベルに戻すことになった。医療体制ひっ迫時(実際は崩壊に近く、季節要因に救われたというのが実相だ)に厚生労働省・国立感染研究所傘下の地方衛生研究所や保健所の医療資源(医療・検査従事者、追跡調査担当者、検査装置)が極度に不足してきた(パンクしてきた)ため、濃厚積極者の追跡調査を高齢者や基礎疾患を持つ都民に限定していたわけだが、このためPCR検査・抗原検査人数が減少してきた。
ただ、検査での陽性率も低下傾向が続いているから、やはり春近くから新型コロナウイルスの活性化(自己増殖し、気管支や肺の細胞を含めヒトの正常細胞を攻撃する力)が弱まっている可能性も考えられる。しかしだからと言って、新型コロナウイルスがヒトのからだの中からなくなったという訳でははない。新型コロナの最大の特徴である無症状感染者の中にも存在し続けており、ステルス・スプレッダーが広範に存在していることは間違いない。変異株は感染力が強いだけに、非活性化期が一時的に到来したとしても、気が付かないうちに感染が拡大している可能性は否定できない。
新年度入りする直前直後の来月3月から、国民の大量移動が発生する。加えて、米国のアップル社が公開している人の移動指数はこのところ昨年2020年1月13日の基準値を上回り、さらに上昇してきている。感染の再拡大(リバウンド)が起きると、3週間後に新規感染者となって表面化するから、活性化時期に相当する夏場はもちろんだが、春から夏にかけても気が抜けない。橋本組織委会長が東京オリンピック/パラリンピックの競技観戦客数を聖火リレー開始の3月25日前後に公表すると言っても、はっきり言って意味はない。実務的に考えるならば、組織委の独断(実際は菅首相と森嘉郎前会長、小池百合子東京都知事らの独断)ではなくて、コロナ感染症対策の専門家に「諮問」するのが当然の在り方だ。
政府=菅政権のコロナ感染症対策本部(分科会)では、次のような対策が必要だとしている。
今まで、厚労省の医系技官と政府(首相)の意向を忖度する「専門家」はPCR検査を抑制したことの誤りを明確にせず、今ごろになってやっとPCR検査の拡充を打ち出してきた。しかし、PCR検査を受けて陽性(偽陽性=陰性の場合もある)と判定されれば、適切な医療施設で治療を受けられ、生活も保証される政府の財政支援が明確でない。「モニタリング検査」自身がいい加減なものになる可能性が高いうえに、財政支援を前提としていなければ国民も安心してPCR検査を受けることができない。これでは、正しいコロナ禍対策にはなり得ない。
これらのことを考えると、3月7日に東京都など首都圏の「緊急事態宣言」を解除するとしても、前途は多難だ。やはり、世界標準のコロナ禍対策の基本である、財政による支援措置を大前提としたうえで、東京都など首都圏、関西圏の感染震源地(エピセンター)での全員検査、それ以外の地域では「誰でも、どこでも、いつでも、何回でもできる」検査体制の確立を柱として、コロナ禍対策を抜本転換する必要がある。新型コロナウイルスに対する最も優れた新型ワクチンは、「政権交代」だ。なお、米国では長期金利が上昇し始め、株価や地価のバブルが弾ける可能性が濃厚になっている。財政支援は、に実需に結びつくように行わなければならない。特に、特に、企業の倒産や廃業で日本経済の救急能力が毀損されないようにすることが重要だ。