米国のバイデン大統領が25日(現地時間)、就任後初の記者会見で米中関係について「民主主義と専制主義の闘い」と述べ、「対中敵視外交政策」を鮮明にした。菅義偉首相の4月上旬の訪米の狙いは、バイデン氏の支援前言を強調することで東京オリンピック/パラリンピックの強行開催同意を勝ち取り、政権浮揚の大きなきっかけにすることにあると思われる。しかし、中国の国際政治経済軍事情勢の影響力や、日本では既にコロナ第4波が始まったとの見方も強まっている。菅首相の「賭け(ギャンブル)」は従来と同じように、「負け」に終わる可能性が濃厚だ。
全国では午後23時59分の時点で2073人が新規感染、32人が死亡(東京都は16人)、重症者は前日比8人増の331人が確認されている。大阪府は386人(死亡者2人)になった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月26日時点の実効再生産数は全国が前日比0.03人増の1.18人、東京都は同じ26日時点で前日比0.03人増の1.08人だった。簡易計算だが実効再生産数で見る限り、第4波の段階に入ったとの見方を裏付ける内容だ。
東京都のコロナ感染者数の推移・「まん防」対策必要な地方自治体(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287097)
※マスコミ発表と比べて、小数点第1位で四捨五入等による若干の誤差があります。「まん防」は改正新型インフル特措法に盛り込まれた「まん延防止対策」のこと。ナチス支配下のベルリンオリンピックの時から採用された聖火リレー(日本だけ「聖火」と呼ばれている。英語では「Torch Relay(たいまつリレー)」)開始直後に新規感染急に増加している。特に、宮城県沖で地震のあった宮城県と東京オリンピック/パラリンピック競技拠点の東京都は感染状況が厳しい。
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米国のバイデン大統領はホワイトハウスでの記者会見で、中国を「専制主義国家」と糾弾し、「対中敵視政策」を鮮明にした。本サイトでは、他の米国専門家も指摘するように、バイデン大統領はディープステート(「闇の国家」、実態は軍産複合体と多国籍金融資本)の傘下にあると指摘していたから、予想された内容ではある。
朝日新聞3月27日付は1面トップで「米中、体制間争い」と題して報道した(朝日デジタルではhttps://digital.asahi.com/articles/ASP3V62RRP3VUHBI012.html?iref=pc_news_list)が、主要論点を引用させていただきたい。
バイデン米大統領は25日、米ホワイトハウスで就任後初めてとなる記者会見を開いた。バイデン氏は、中国国内の人権弾圧問題などを指摘したうえで、米中対立について「21世紀における民主主義国家と専制主義国家の有用性をめぐる闘い」と表現。バイデン氏は国家理念を旗印に、体制間による競争を鮮明にした。バイデン氏は会見で、中国の習近平(シーチンピン)国家主席について「専制主義が将来、主流となり、民主主義は機能しないと考える人物」と指摘(注:厳しく非難)(中略)。
バイデン氏は中国との競争に勝つためには、①米国の労働者や科学技術分野への投資を拡大②欧州や日米豪印(クアッド)など同盟国・友好国との関係強化③中国国内で起きている人権弾圧に対し、世界各国の注意を喚起――を実行していく考えを示した。とくに人権問題をめぐっては、バイデン氏は習氏に対し、「米国人は自由の概念と人権を尊重している」と伝えたという。バイデン氏は新疆ウイグル自治区(注:イスラム過激派の温床になっているとの専門家の指摘もある)と香港に言及し、人権問題では妥協しない姿勢を強調した(以下、略)。
ただし、バイデン大統領を含め、歴代の米国大統領のほとんどがディープステートの傘下にあり、その利益のために「人権尊重」の大義名分で世界中で戦争を起こしてきた。本来は、「主権の尊重」を基本理念とする「国際連合」の強化に注力することが国際協調の基本だ。ただし、米国はベトナム戦争では敗北した。なお、スターリン主義のソ連(当時)に対しては、北大西洋条約機構(NATO)を組織し、集団安全保障体制を構築、ソ連・東欧諸国の軍事的包囲網を築いて「米ソ冷戦」に「勝利」した。もっとも、米国が勝利したのは、ソ連が市場経済原理を無視した非効率な中央指令統制経済体制を築いたことによるところが大きい。
東京女子大学教授を歴任し、マックス・ウェーバーの研究者(特に、そのロシア革命論)としても知られた林道義は、「スターリニズムの歴史的根源」という著作で、ソ連を「古代化社会主義体制」(崩壊した日本の古代律令国家=賦役貢納制国家のような政治経済体制)と位置づけた。サイト管理者(筆者)は、「ペレストロイカ政策」を展開したゴルバチョフ大統領時代のソ連を訪問したことがあるが、経済的な立ち後れは一目瞭然だった。クォーツを使ったデジタル時計のようなものがあったが、子どものおもちゃだった。哀れに思ったことを今でも忘れられない。
これに対して、中国が採用した経済発展戦略は、日本型・米国型直接投資論の創始者である赤松要の「雁行形態論」を応用した「開発独裁」だった。日本を含む東アジア諸国は、欧米諸国から、労働賃金の安さが最も重要で、経済発展に直結する(先端技術ではない)標準化された技術やプラント(工場施設一式)を資本とともに輸入して、経済発展の基盤を形成する「開発独裁」で成功してきた。「赤い資本主義国」である中国もその例にもれない。トランプ大統領(当時)の対中輸入関税引き上げの教訓から、現在では輸出力の増強とともに内需振興(極貧層の撲滅と中間層形成が目標)の「両輪の経済発展政策」を推進しており、対外的な経済政策としては「一帯一路構想」の実現に努めており、欧州経済との連携にも注力している。
経済発展の基盤は、科学・技術力の養成と中間層の育成だ。世界の著名な学術雑誌に投稿される中国の科学・技術・医学論文数は、米国に迫る。また、新型コロナワクチンもともかくは開発して、接種に乗り出している。なお、取り敢えずは新型コロナを封じ込めるとともに、昨年は世界でも珍しい2.3%のプラス成長を達成した。科学・技術力の進歩は軍事力増強の基本でもある。中国は米国に深刻な打撃を与えるほどの核兵器は保有しており、とりわけ、精密中距離弾道ミサイルでは米国の技術をしのいでいる。だから、外務省国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授などの要職を歴任したアジア共同体研究所の孫崎享所長などによると、台湾海峡付近や尖閣諸島近辺で米中の軍事衝突が起こっても、米国は敗北する(https://www.youtube.com/watch?v=Sfuo-x5mH_E&t=2278s)。
バイデン政権は国防総省を中心に精密中距離誘導ミサイルなどの先端軍事技術では米国が劣勢に陥っていることは認めている。だから、バイデン大統領は記者会見で、「科学技術力の向上」という表現で、軍事技術力の向上を発言せざるを得なかった。また、NATOのような中国を包囲する集団安全保障体制の構築に頼らざるを得ないことをオブラートに表現する形で、「QUAD(日米豪印戦略連携協定)」という「集団安全保障体制」の強化について発言せざるを得なかった。政府系の日本経済新聞ではQUADについて次のように説明している(https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE11A7R0R10C21A3000000/)。
日本、米国、オーストラリア、インドの首脳や外相による安全保障や経済を協議する枠組み。英語で「4つの」を意味する「Quad(クアッド)」という通称が定着する。4カ国はインド洋と太平洋を囲むように位置し、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観をもつ。今回の首脳協議は1月に就任したバイデン米大統領の強い働きかけで実現した。
ただし、QUADには韓国は入っていない。東南アジア諸国連合も参加に消極的だ。中国との紛争を過去に経験してきたインドも、ホンネのところでは中国とコトを荒立てたくないというのが実情だ。日本だけが前のめりになっている。しかし、日本が前のめりになればなるほど、経済産業省が中心になって行ってきた対中経済外交は暗唱に乗り上げる。また、戦後の日本の対米隷属外交は一段と先鋭化し、日本国憲法で禁じられてはいるが、安保法制で穴を開けられた「集団安全保障体制の構築(集団的自衛権の行使)」が本格的に現実のものになる。
日経新聞の上述の報道では、米国と日本は「民主主義国」になっているが、実際はそうではない。ディープステートが支配する米国は今なお、人種差別主義の国である。国民皆保険制度もないから、コロナ禍での死亡者は世界の中でも断トツに多い。「基本的人権の尊重・国民主権・平和主義」を理念とする日本の憲法は、第99条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定めているが、安倍晋三政権、菅政権と続いてきた自公政権はこの条項を守る気持ちはサラサラない。総務省の東北新社、NTT接待問題などに象徴されるように、高級官僚も平気で、憲法第15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」を守ろうとはせず、菅首相だけに「仕えている」。
日本が東アジア諸国の「後進国」に劣化したのは当然と言えば当然だ。本来は、米国が「ニクソン・キッシンジャー忍者外交」によって米国が「中国関与政策」に転じ、米ソ冷戦が終結して以降は、欧米近代文明の結実として創設され、「内政不干渉」を基礎理念とする「国際連合」を強化することを通して、世界の平和を実現しなければならないはずだ。しかし、国連憲章では第53条と107条で定められた「敵国条項」は削除されていない。国連憲章は国際条約であるため、多数の加盟各国の批准が必要だからだ。日本政府はその努力もせず、対米隷属外交かまっしぐらだ。むしろ、米国のディープステートの言われるがままに、中国と戦闘する準備を勧めている。「敵基地攻撃能力」というのは、実際のところは来た超背ではなく中国を念頭に置いた概念である。
菅首相は4月上旬の訪米時に米国バイデン大統領の「ご機嫌」を取り、「対中集団安全保障体制」(軍事体制)の構築に驀進することを誓う代わりに、米国の東京オリンピック/パラリンピックへの参加を求め、バイデン大統領に大会開催式への出席を要請することを検討している。そのことによって、政権浮揚を図り、「中央突破」つまり「解散・総選挙」に打って出るシナリオを描いていると見られる。
また、「東京オリンピック/パラリンピックの開催については、(日本人にとっても外国人にとっても)安全に開催できるという(科学的)証拠(エビデンス)が必要だ」と明言していたバイデン大統領が、菅首相のオリ/パラについての申し入れを受諾すれば、バイデン氏がディープステートの傘下にあることの傍証になるだろう。ただし、ホワイトハウスのサキ報道官は、東京オリンピック開会式への菅首相からバイデン大統領の出席要請は受けていないと語り、出席は予測できないとしている(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14850240.html?iref=pc_ss_date_article、https://www.jiji.com/jc/article?k=2021032700251&g=spo)。「会えることを楽しみにしている」と皮肉られただけだ。
菅首相のシナリオ通りにコトが進むか確定的なことは言えない。バイデン大統領に「お土産」を「プレゼント」しただけで、「手ぶら」で帰国する可能性はある。その場合、菅首相の求心力は大きく低下するだろう。
しかし、日本全国での新規感染者数が「公式発表」の数字でさえ2千人を突破し、日本の感染震源地である東京都も新規感染者の7日移動平均が300人を突破している。100人以下に抑制することが当初の目的だったが、「夢のまた夢」になったために取り下げた。
米国Google社の日本と東京都の新規感染者のAI予測(3月27日版:2021年3月25日木曜日から4月21日水曜日まで)
サイトのページは、https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M。日本での公表値の発表を盛り込んで、毎日更新されている。4週間後に近づくに連れて、新規感染者数が急増している。
感染力と毒性が強く、ワクチン耐性力のある変異株が主力になると見られる新型コロナの第4波は既に始まっていると見られる。季節要因、変異株要因、人の移動要因で、春から夏にかけて新規感染者が急増する可能性がある。また、無観客大会にしたとしても選手団関係者、招待客含め10万人程度の外国人が来日するから、開催そのものが感染拡大要因になる。日本人の観戦客を容認するとすれば、なおさらだ。「コロナがどんな状況になろうとも東京オリンピック/パラリンピックは必ず開催する」(大会組織委の森喜朗前会長)というのが政府=菅政権や東京都、オリ/パラ大会組織委上層部の判断だが、国民は、血税を納める国民の生命・健康と生活(生業)よりも東京オリンピック/パラリンピック開催を最優先する政府=菅自公政権を支持するだろうか。