日本はコロナ第4波に突入した模様だ。変異株が感染源の主流になると見られており、効果があるとされるmRNAワクチンも変異株対応のワクチン開発が必要になる。
全国では午後23時59分の時点で1785人が新規感染、29人の死亡、重症者は前日比10人増加の341人が確認されている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月27日時点の実効再生産数は全国が前日比0.02人増の1.20人、東京都は同じ27日時点で前日比0.02人増の1.10人だった。全国でこの水準が続けば、1.20^14=12.8になり、全国の新規感染者は2週間後には現在(2千人程度)の12.8倍になってしまう。
既に3月21日の緊急事態宣言前から新規感染者の下げ止まりないし増加傾向が鮮明になっていたが、新規感染者数の増加傾向を見る上で最も重要な7日移動平均は、日本全国のエピセンター化ししている東京都では、3月11日以降前週と同じ曜日に比べ上昇基調が続いている。3月21日の「緊急事態宣言」解除後早くも、第2波でピークだった346.1人(8月5日)を突破した。東京都の専門家会議に参加する専門家からは「第3波を超える急激な拡大が危惧される」との指摘が出ていた(https://digital.asahi.com/articles/ASP3X51Z6P3XUTIL00S.html?iref=comtop_7_03)。なお、無策でいれば小池百合子都知事は新規感染者が2週間後に1日当たり千人を突破するのも近いと危惧している(1.10^14=3.80倍)。
コロナの第4波を食い止めるためには、国民の生命・健康・生業(なりわい)の確実な保障・補償を大前提として、多くの識者の指摘から考えると少なくとも次の4つの条件が必要だ。
- 感染減少傾向が維持されていること。
- 新規感染を抑制する方策が立案され、確実に実行されていること。
- 第4波は変異株が感染の主流になることが見込まれていることから、陽性検体すべての遺伝子解析を行い、保護・隔離・治療を行うこと。
- 感染拡大時の病床を確保する明確な方策が示されていること。
しかし、政府=菅政権はこれらを無視して、東京オリンピック/パラリンピック強行開催のための聖火リレー開始のために「緊急事態宣言」を解除し、国民の警戒心を緩めたと思われる。中日新聞系の東京中日スポーツでは、大阪大学の宮坂昌之名誉教授(免疫学)が3月27日、読売テレビの情報番組「あさパラ!」に出演し、新型コロナウイルスの拡大について「私はすでに第4波に入っていると思います」と述べたことを報道している(https://www.chunichi.co.jp/article/225660)。
宮坂名誉教授は、大阪府での増加は「社会に一定数の感染者が残っていて、そこから感染が広がっている」と述べ、変異株について「世の中の半分ぐらい(の新型コロナウイルス)は変異株に置き換わっている」と説明した。しかし、ワクチン接種が進むことで「一定以上の効果を発揮すると思いますし、効きが悪くなったときに、アップデートしたワクチンを作ることができる。(米国の医薬品メーカー)モデルナは作っていますから。われわれは追いついたり、追っ掛けられたりしますけど、負けないと思います」と変異株拡大のもとでの展望を語った。
なぉ、「医療維新」のサイト「m3.com」では、第4波の襲来時期について全国の医師に対するアンケート調査を実施している(https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/893806/)。
m3.com編集部は第3波対応の振り返りと今後の対応について、3月19日から3月22日にかけて緊急調査を実施、m3.com医師会員1749人から回答を得た。第1回では今後の見通しを紹介する。61.1%の医師が「2021年春」に第4波が来ると予想していた。「2021年夏」が18.9%、「2021年秋」が7.9%と続いた。「第4波は来ない」は2.6%に留まった。
Q:”第4波”はいつ頃来ると思いますか。
(以下、略)
これで見ると、春から夏にかけて第4波が到来すると判断している医師は全体の80.0%に及ぶ。大半の医師が予想する第4波は聖火リレー(Torch Relay)と東京オリンピック/パラリンピック大会開催時期に重なる。立憲民主党の枝野幸男代表は28日、大阪府と宮城県には「緊急事態宣言」の再発令(発出)が必要だと語った(https://digital.asahi.com/articles/ASP3X5G47P3XUTFK00C.html?iref=pc_news_list)。
枝野氏は「大阪は時期尚早のタイミングで自ら(緊急事態宣言の)解除を求め、宮城県は(飲食店支援策の)『Go To イート』を地元で独自に進めていた。そしてこの結果だ」と指摘。「それぞれの知事の責任は大変重たい」と述べ、大阪の吉村洋文、宮城の村井嘉浩両知事の対応を批判した。
また首都圏についても「残念ながら明確にリバウンド(感染再拡大)に入ったと言わざるを得ない状況だ」と述べた。「そもそも解除が時期尚早だった。ただ協力しろ、自粛しろということだけでは、こうした(再拡大の)状況になる結果は見えている」と菅義偉首相の判断に疑問を投げかけ、「政権を代える以外に今の危機を乗り越えることはできない」と述べた。(以下略)
なお、宮坂教授は新型mRNAワクチンの新開発に期待しているが、日本では新開発のワクチンはもちろん、既開発の東京オリンピック/パラリンピック開催までには到底間に合わない。変異株のせいで、新型ワクチン効果に影響が出ることも早くから指摘されていた(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2607N0W1A220C2000000/)。
米国で新しい変異型とみられる新型コロナウイルスへの懸念が広がっている。米国の複数の研究チームによると、新しいタイプの変異ウイルスはニューヨークとカリフォルニアの両州で確認され、新規感染者に占める割合が高まっているという。既存のワクチンの効果が低い可能性も指摘されており、米疾病対策センター(CDC)などが影響を注視している。
実際、NHKのWebサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)によると、バイデン大統領が新型mRNAワクチンの接種が進んでいると誇っている米国でも 、感染の減少傾向にストップがかかっているように見える。
参考までに述べると、ファイザー社やモデルナ社のmRNA新型ワクチンは2回の接種が必要とされており、2回目の接種の場合により多くの副作用(高温の発熱など)が出るため、米国では「ワクチン休暇」が必須になっている。なお、第一次大戦の末期(1920年前後)に全世界で5千万人以上の死者を堕したH1N1亜型インフルエンザの「スペインかぜ」に対するワクチンが開発されたとの信頼できる情報には寡聞にして接することができなかった。国立感染研究所の感染症情報センターのサイトから、抗生物質も開発されていなかった時代であり、ワクチン開発などは論外という情報には接することが出来た(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html)。
参考までにGoogleのAI予測(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)による全国と東京都の新規感染予測を下図に示しておきたい。4月中旬以降、急増する見通しだ。
米国グーグル社の日本、東京の新規感染者見通し(3月26日金曜日から4月22日水曜日までの4週間)
第3波が落ち着いてきた大きな要因は、季節要因とコロナウイルスの変異種交代要因が大きな要因と見られるが、「緊急事態宣言」にも活動自粛の一定のアナウンスメント効果はあったと思われる。菅首相は緊急事態宣言解除の際に国会の質疑で「(緊急事態宣言を解除して)本当に大丈夫か」と野党側から問われたが、科学的根拠(エビデンス)を示さないまま「大丈夫だと思う」と答弁した。その責任は取ってもらわなければならない。
菅首相は4月上旬に米国のバイデン大統領に会い、東京オリンピック/パラリンピック開催の支持を取り付け、政権浮揚を図るつもりだ。国会では野党側議員の「バイデン大統領に開幕式にご出席いただくつもりか」との質疑に対して、「出席していただく」と答弁した。しかし、ホワイトハウスのサキ報道官は記者会見で「日本の政府からは正式な出席要請は受けていない」と語った。また、聖火リレーは始まったが、「東京オリンピック/パラリンピックの正式開催については、国際オリンピック委員会(IOC)と日本側が慎重に協議を重ねている」と述べ、開催が正式に決定していることはないことを示唆した。
現在の新規感染者は、2週間から3週間前に感染していた感染者が症状が出て正式な検査を受けた結果によるものが大半だ。4月訪米、5月総選挙という菅首相のシナリオが実現しない可能性が濃厚になってきた。