対米隷属外交から脱却し「東アジア共同体構想・構築」の準備を

日米、日韓、米中の「戦略的外交協議が」3月中旬、日本(東京)、韓国(ソウル)、米国(アンカレッジ)で行われたが、米国の対中敵視政策は変わらない。韓国は中国敵視政策を放棄し、東アジア諸国では日本だけが「対米隷属外交」を百年一日のように繰り返している。中国の政治・経済・科学技術・軍事力の急速な発展からすれば、対中包囲網・抑圧政策は失敗するだろう。日本は「対米隷属外交」を廃し、「東アジア共同体構想・構築」の準備をすべきときに来ている。

3月24日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日3月24日水曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の3月17日水曜日の409人から11人増加して3月になって最多の420人だった。7日移動平均では309.7人になり前週水曜日比で103.6%になった。東京都基準の重症者数は23日と同じ42人だった。
全国では午後23時59分の時点で1918人が新規感染、21人の死亡者(うち、東京は6人)、重症者は前日比8人増加して328人が確認されている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月23日時点の実効再生産数は全国が前比0.03人増の1.12人、東京都は同じ23日時点で前日比0.01人増の1.05人だった。簡易計算だが実効再生産数で見る限り、徐々に感染が再拡大しつつある。

中国の軍事大国化と経済的脅威を恐れて、米国はトランプ政権(当時)末期から「関与政策」を止め、「対中包囲網」の形成に取り組んでいる。しかし、どうもうまく行かない。米国の対中包囲網としては、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」や「日米豪印戦略的連携(QUAD)」がある。しかし、インドは中国とはチベット問題を経験したこともあるが、非同盟国の盟主だったことや両国の経済発展で中国との経済関係が深くなっていることもあり、中国を狙い撃ちにしたFOIPやQUADにはどうも消極的だ。韓国や東南アジア諸国連合が参加しても良さそうだが、乗り気ではない。

FOIPは安倍晋三首相が「積極的平和主義」の例として打ち出したものだが、背後に米国のディープステートが存在しており、実質的には「対中包囲網」であることは間違いない。

 

「積極的平和主義」とうたってはいるが、中身は「主に軍事的な手段によって、自国のみならず国際社会の平和と安全の実現のために、能動的、積極的に(戦争)行動を起こすことに価値を求める」軍事タカ派路線である。実質は「対中包囲論」であり、具体的には「精密中長距離ミサイルを配備・発射できるようにした「敵基地攻撃論」でしかない。そのための、米軍と自衛隊による中長距離ミサイル発射施設が、日本の南西部に配備されつつある(軍事ジャーナリスト・評論家の半田滋氏による)。

ノルウェーの平和学者であるヨハン・ガルトゥング氏が1958年に提唱した概念の「Positive Peace」(積極的平和、戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態を「積極的平和」とする概念)とは縁もゆかりもない。むしろ、ガルトゥング氏から抗議を受けているほどだ(https://www.huffingtonpost.jp/kenji-sekine/japan-positive-peace_b_7651094.html)。

思い起こせば積極的平和主義という言葉がよく聞こえるようになったのは中東で日本人人質事件があってからのこと。ジャーナリスト後藤健二さんがIS(またはISIL、イスラム国)に拘束されているころ、安倍総理は中東を歴訪し、積極的平和主義の理念にもとづきテロとの戦い、ISIL対策として2億ドルの支援を約束。その後、後藤さんが無惨にも殺害されてしまったことは記憶に新しい出来事です。テロとの戦いを積極的に行うことが積極的平和主義とでも言うのでしょうか?テロと戦うとはどういうことなのか?紛争とはどういうことなのか?この夏公開するドキュメンタリー『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』を観たら実感できるはず。


また、「平和」とは逆のことが行われています。去年4月には武器輸出三原則が緩和され、日本政府はオーストラリアへの潜水艦技術供与を決定。マレーシアやフィリピンへの武器輸出を行うとしています。先月5月18日には戦後初めて国際防衛見本市が開催されるなど、戦争ビジネスが活発化しているのです。

3月16日には日米安全保障委員会(日米2+2、日本の茂木敏外務大臣・岸信夫国防大臣と米国のアントニー・プリンケン国務長官・ロイド・オースティン国防長官の会談)が開かれたが、要するに次のようなものだ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/page1_000942.html)。

  • 四閣僚は、中国による、既存の国際秩序と合致しない行動は、日米同盟及び国際社会に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を提起しているとの認識で一致した。また、ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対することを確認した。
  • 四閣僚は、東シナ海及び南シナ海を含め、現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも反対するとともに、中国による海警法に関する深刻な懸念を表明した。また、日本側から、日本の領土をあらゆる手段で守る決意を表明した。四閣僚は、尖閣諸島に対する日米安保条約第5条の適用を再確認するとともに、同諸島に対する日本の施政を損なおうとする一方的な行動に引き続き反対することを確認した。

半田氏の図に示すように、在日米軍の指示のもと日本の自衛隊は急ごしらえで対中・中長距離ミサイル発射基地を配備しているが、中長距離ミサイルの性能・精度では米国は中国に及ばないhttps://www.youtube.com/watch?v=Sfuo-x5mH_E)。左記のYoutubeチャネルによると、米国防総省が台湾近辺(尖閣諸島近辺も含まれる)で18の戦争シミュレーションを行ったところ、すべて米国の敗北に終わったという。外務省で国際情報局長、イラン大使を歴任した東アジア経済共同体研究所の孫崎享所長によると、「プリンケン国務長官らは、尖閣諸島近辺で米中が軍事衝突(戦争)を行ってももはや、米軍は勝てないことを熟知している」。

ディプステート傘下のバイデン大統領は、国務長官と国防長官にタカ派のプリンケン国務長官、オースティン国防長官(イラク戦争を指揮した米軍の最高司令官を歴任)を派遣し、日米安保条約第5条に基づいて「尖閣諸島」へのコミットメントを強化する旨の発言をさせたが、中国との戦争で負ければ話にならない。プリンケン国務長官やオースティン国防長官は中国に対して強く出ることは出来ないのである。

【付論】日米安保条約の本質について

日米安保条約の本質は第5条にはない。第5条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」と定めている。この条項に「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」との文言を挿入することによって、米国は日本を防衛する義務を免れることが出来る。

米国では交戦権は議会が持つ。また、1948年6月 11日にアメリカ上院が決議したバンデンバーグ決議(北大西洋条約=NATO=の基礎)があり、米国が防衛義務を果たす諸国は、➀「集団安全保障」を認めなければならない②当該国は自助努力で防衛義務を果たさなければならないーことになっている。これには、国際連合中心主義を前提にした日本国憲法の抜本的改正(=改悪)になる。日米安保条約の本質は第6条にある。第6条は次のように定めている。

第6条「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。日米地位協定に変更)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される

つまり、米国が望むところに望む期間だけ、在日米軍基地を設置・保有できるというところに、日米安保条約の主眼(主目的)がある。これは、事実上の治外法権を認めた政府間協定の「日米地位協定」によって定められるから、国会(つまり、主権者国民)の手の届かないところにある。

本投稿記事続き

本サイトでも述べさせていただいように、中国の精密精密中距離ミサイルは、在日米軍基地(当然、自衛隊基地)を攻撃できる能力を持つ。沖縄県の嘉手納空軍基地や山口県の岩国基地などの飛行場は滑走路が攻撃され、使いものにならなくなる。そもそも、第五条は米国が日本を防衛することを義務付けたものではない。米国では交戦権は議会が持つ。日本の自衛隊を実験台にさせて、勝ち目がないとわかれば、逃げてしまうというのが米国という国だ。それに、日本と中国の経済関係は極めて深く、強くなっている。政府=菅政権は経済産業省の高級官僚を左遷させて(ポストがないから、辞職せざるを得ない)、本当に中国と交戦する覚悟はあるのか。

日米2+2とは対象的に、韓米2+2では韓国の意向を反映して共同声明は中国を名指しで批判することは避けた(https://digital.asahi.com/articles/ASP3L7QKRP3LUHBI00W.html)。背景には、中国と韓国が、北朝鮮問題もあり、政治と外交・経済で不可分の関係になっているためだ。極論すれば、従軍慰安婦問題や韓国人徴用工問題で安倍晋三政権、菅政権が国際法の流れ(徴用工自身には賠償請求権は存在する)を無視して、誠実な対応を行ってこなかったためだ。既に、「米日韓」は幻想にすぎなくなっている。

米韓の外交・国防閣僚会合(2プラス2)が18日にソウルで開かれ、対北朝鮮政策での緊密な連携などをうたった共同声明を発表した。中国への対抗姿勢を避けたい韓国の意向を反映し、中国を名指しで批判する表現は盛り込まれず、16日の日米の共同声明との温度差が鮮明になった。

共同声明は、米韓同盟の重要性を再確認し、「自由で開かれたインド太平洋地域」の平和のために米韓が協力していくことを確認。中国を念頭に「法に基づく国際秩序を毀損(きそん)し、不安定にする行為に反対する」との文言は入ったが、直接的な批判は見送られた。中国への強い懸念を前面に打ち出した日米の共同声明とは対照的な形になった。

3月18日に米国アラスカ州アンカレッジ市で行われた米中2+2では、中国側は米国の脅しに屈しなかった。政治・経済・科学技術・軍事大国の自負の現れだろう(https://digital.asahi.com/articles/ASP3M7SY1P3MUHBI01P.html)。

ブリンケン国務長官は同市のホテルの一室で向かい合う中国代表団にこう切り出した。「新疆、香港、台湾、サイバー攻撃、同盟国に対する経済的な威圧」と課題を列挙。ルールに基づく秩序への脅威だとし、「単なる(中国)国内問題ではない。今日、この問題を提起するのが義務だと感じている」と言い切った。

これに対し、中国外交トップの楊潔篪(ヤンチエチー)共産党政治局員は「米国は自らのイメージを改め、自らの民主主義を世界中に推し進めるのをやめることが重要だ」と真っ向から反発。米国社会も批判し、「米国内の多くの人が自国の民主主義をほとんど信頼していない」とし、「中国の社会システムを中傷してもどうにもならない」と主張した。さらに米国務省によると、楊氏は「米国にこそ人権などの面で多くの問題がある。ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)運動は最近始まったわけではない」と指摘。「新疆ウイグル自治区、チベット自治区、台湾は中国の不可分の領土であり、米国の内政干渉に断固反対する」とし、「米国は世界を代表するわけではない」と強調した。

米国がディープステートに操られた民主主義国家ではないことは、中国指導部も知っている。本サイトではしばしば、日本が米国と中国の股裂きに会うことを述べてきたが、その傾向は一段と強まるだろう。菅首相は4月上旬にバイデン大統領と会談して政権浮揚と解散・総選挙を狙っているようだが、「対米隷属外交」続ける限りはこれまでの賭け(Go To トラベルなど)のように、狙いは外れるだろう。世界で最も新型コロナ感染者数と死亡者数が多い国に、のこのこと出かけていく世界各国の首脳はいない。さて、中国の経済発展について触れておきたい。

中国の経済発展について

中国はニクソン大統領・キッシンジャー補佐官(当時)の「忍者外交」で中国の取り込みに成功し、市場経済を否定したソ連(当時)の自壊の側面もあったが、ソ連を打倒することに成功した。確かに、米国は「米ソ冷戦」で勝利者になった。しかし、中国の改革・解放路線を引き出して、中国を今や、世界第二位の経済大国に発展させるきっかけになったのは、日本の田中角栄首相(当時)による1972年の日中国交正常化だ。日中はその後、1978年に尖閣諸島領有権問題は「棚上げ」して「日中友好平和条約」を結んだ。

この時、中国から鄧小平副首相(当時)が「日中有効平和条約」締結の関係から来日し、戦後日本の経済発展に驚き、経済特区を中国沿海地方に設置、外資(先進国の資金・技術・プラント)を導入して経済発展を目指す「改革・解放路線」を採用した。この路線は、日本の直接投資論の権威だった赤松要(一橋大学教授などを歴任)の「雁行形態論(発展途上国は先進国の先端技術ではなく標準化した技術を取り入れることで、安い労働力をテコに経済発展の基礎を築くことができる)」の応用とも言える。明治時代の日本から始まり、戦後の韓国や東南アジア、中国の経済発展は、「開発独裁」とも言われるが、経済的には「雁行形態論」の応用だ。赤松は最終的には「合意的国際分業」に至るとしている。

直接投資には、先端産業の企業が海外に生産拠点を移す「米国型」もあるが、これでは先進国に産業の空洞化が起きてしまい、先進国のさらなる産業構造の高度化と雇用の喪失が起きることになる。これが、冷戦に「勝利」した米国の陥ったわなだ。これを複雑にしたのが、米国を支配しているディープステート(闇の国家:軍産複合体と多国籍金融資本)だ。ディープステートは、ソ連が崩壊した代わりを求めて、イラクなど「テロ国家」を攻撃することになる。国際連合の機能を強化することが本来の在り方だったが、そうはせず、極端に言えば世界最大の軍事大国として「世界の警察国家」の役割を果たした。これに、「新自由放任主義」が加わって、「いびつなグローバリズム」が冷戦後の世界を席巻するようになる。

一方、中国は1989年6月4日(日曜日)の天安門事件をきっかけに民主化運動が弾圧され、「改革・解放路線」も中断したが、1992年から鄧小平の指揮のもとで「改革・解放路線」が復活した。その後は、同路線に基づいて経済発展が遂げられていくようになった。中国は今や、国内総生産(GDP)で日本を追い抜き、購買力平価では世界最大の経済大国になっている。欧米のシンクタンクでは、実際の為替レートでも2028年ころ中国は米国を追い抜き、世界最大の経済大国になると見られている。

なお、世界のコロナ・パンデミックの中で2020年の経済成長率が各国とも軒並みマイナス成長に陥ったが、中国は2.3%のプラス成長になった。今後も、輸出力の増強に注力するとともに、極貧層の撲滅を図るなど、内需拡大にも力を入れるというのが経済政策の方向だ。

米国と中国との経済成長のシミュレーション
米国と中国との経済成長のシミュレーション

世界最大の経済大国になるには当然、科学・技術力大国でなければならない。今や、科学・技術・医学論文数では米国に迫る。科学・技術大国になれば、軍事大国にもなる。核兵器は米国に重大な打撃を与えるほどの核弾頭数は確保しているし、首相経験者の鳩山友紀夫氏が理事長を務める「東アジア共同体研究所」では、実践に使われる精密誘導中長距離ミサイルは米国よりも性能が良いと指摘している(https://www.youtube.com/watch?v=Sfuo-x5mH_E)が、こうした見方は世界の軍事専門家の共通した見方だ。これは米国を支配するディープステートにとっては我慢できないことである。

香港での民主派弾圧や新疆ウィグル自治区の住民弾圧(中国共産党破壊を狙うイスラム過激派教徒問題があるとも指摘されている)などの人権問題や経済が不調に転じたとの情報も出ているが、サイト管理者(筆者)は「内政干渉」や「批判のための批判」は避け、国際法に認められる手段で対処しなければならないと思っている。

東アジア共同体構想とその実現を目指して

サイト管理者(筆者)は「東アジア共同体研究所」が目指しているように、長い道のりだが、今後の日本の行くべき道として東アジア共同体構想を打ち立て、その実現に向けて対応することが望ましい道と考えている。米国でも、「対中包囲・抑圧」政策に与しない外交政策のシンクタンクが登場している。東アジア共同体研究所の須川清司上級研究員が2月2日に発表したクインシー研究所(The Quincy)の「米国の新・東アジア戦略」がそれだ。

クインシー研究所は、「米国の外交政策を(ディープステートによる)終わりなき戦争から引き離し、国際平和を追求する活力あふれた外交に変える」という理念を掲げ、2019年12月に設立された。名前の由来は、国務長官時代にモンロー宣言を起草し、「米国は破壊すべき怪物を求めて海外に出ない」と述べたジョン・クインジー・アダムズ=後に第6代米国大統領(1825~1829年)になった=にちなんでいる。

須川城跡研究員の「ファースト・インプレッション」の冒頭部分を引用させていただきたい。

基本思想=パワー・バランスの変化を受け入れ、軍事抑制・関与重視への戦略転換を図る

Qiの報告書は、東アジア戦略を組み立てる現状認識として、以下の3つの〈重要かつ転換不可能な潮流〉を指摘する。

① 経済力及び軍事力のバランスが変化していること。典型的には中国の台頭。

② 地域の緊張が増加していること。朝鮮半島、台湾、南シナ海、中印国境、尖閣周辺など。

③ 脱国家的な挑戦が厳しさを増していること。具体的には、地球温暖化や新型コロナ感染症に象徴されるパンデミック、サイバー攻撃、サプライチェーンなど。

一見すると、こうした認識、特に中国の台頭というパワー・バランスの変化を重視するところは他のシンクタンクと大きく変わるところはない。だが、他の米国の戦略が「台頭する中国に対抗するため、中国を抑え込まなければならないし、抑え込むことは可能である」という前提に立っているのに対し、Qiは「米国がすべての分野で中国に勝つことは非現実的である」と考えているのが決定的に違う。さらに、マイケル・スウェイン(対中国安全保障専門家)たち(そのほか、韓国系アメリカ人協会役員や下院外交員会スタッフ等を務めたジェシカ・リー、海洋安全保障等に詳しいレイチェル・オデルら)は中国の(必ずしも攻撃的ではない)対外行動パターン、中国軍や中国経済の抱える問題点、政治システムの内実等にも目が向け、中国が米国を一方的に脅かし続けることはないと主張する。

従来の米外交(ブッシュ・オバマ・トランプ政権)に対しても、中国の台頭という現実を受け入れず、東アジアで米国が圧倒的に優越した地位にある(あった)という現状を維持(回復)しようと試みたが失敗した、とQiは手厳しい。

須川城跡研究員はこのあと、➀総論②政治・経済③軍事ーなど多方面にわたってクインシー研究所の論文のファースト・インプレッションを綴っている。文明は800年周期で中心圏が交代するとの文明論の指摘もある。西欧中世末期のペストが西欧近代文明誕生のひとつのきっかけになったように、新型コロナパンデミックはその予兆なのではないだろうか。もとより、一党独裁制の中国に対して、キリスト教を土壌として欧米で育った民主主義敵価値観を伝えるのは容易ではない(マックス・ウェーバー)。

ただし、事実にコミットすれば、絶対に不可能とも言えないだろう。近代プロテスタンティズムの勃興に対して、カトリック教会でも改革が行われ、アジアに宣教師が派遣された。そして、中国清王朝時代に広まったこともあった(韓流ドラマでおなじみのイ・サンの時代)。時代の転換期には、人類史の大局を掴む必要があるだろう。欧米文明の歴史、民主主義的価値観は、「主権の尊重」を基本理念とする国際連合に集約されている。国連を強化し、中国に対応すべきだろう。政府=菅政権やディープステートの傘下にあるバイデン政権には思いもよらないことではある。

なお、日刊ゲンダイ3月23日号によると、「バイデン大統領は3月19日、首都ワシントンからアトランタに向かう際、大統領専用機のタラップをのぼっていた時に数回足を踏み外して、階段に片膝をついてしまった。高コレステロール、不整脈の一種である非弁膜症性心房細動を抱え、過去には脳動脈瘤からの出血の修復のための外科手術も受けている」という。78歳という高齢ハンディキャップは乗り越えてほしいとは思うが、任期の4年間、激務をこなせるか疑問が出てきたのも確かだ。


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