立憲内に現代貨幣理論に基づく「責任ある積極財政」派の動き浸透へ(追記:子どもの感染問題)

現在の日本の最重要の課題は、➀コロナ感染の再拡大(リバウンド)を防ぐためのPCR検査などの検査体制の抜本的拡充②安心して検査を受けられるようにするための生活と生業(なりわい)の保障・補償②コロナ対策不明のまま成り行き任せで強行されている東京オリンピック/パラリンピック強行開催問題ーの2つだ。ただし、現在のコロナ禍はプライマリー・バランス均衡論(税収の範囲内に歳出を抑制する)という緊縮財政路線に基づく、さまざまな「誤った政策」による長期デフレ不況の中で起こったものだ。政府=安倍晋三政権、菅義偉政権の「コロナ禍無策」に対抗するためには、真正野党側がプライマリー・バランス論(財政均衡論、緊縮財政政策)の誤りを国民に広く説明し、「反緊縮・責任ある積極財政政策」を訴えることが必要だ。特に、野党第一党の立憲民主党の責任は重い。こうした中で、かつて総務大臣を務めた経験を持ち現在、立憲副代表の原口一博衆院議員(佐賀1区8期)が代表世話人になって3月24日、現代貨幣理論(MMT)に基づいた「責任ある積極財政政策」の普及を図るための「日本の未来を創る会(仮称)」の初会合を開いた。来週水曜日の3月31日には正式発足の予定だ。真正野党の共闘体制構築に貢献することを期待したい。

3月26日金曜日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日3月26日金曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の3月19日金曜日の303人から73人増加して376人だった。7日移動平均では330.3人になり前週金曜日比で111.2%になった模様。7日移動平均は3月11日以降、前週を上回っている。年代別では20代の88人が最も多い。65歳以上は83人。20歳未満は不明。新規感染者数の再拡大(リバウンド)傾向が鮮明になりつつある。新型コロナの変異株は年代を問わず感染するので、東京都でも既に市中感染が拡大している可能性がある。なお、変異株は20歳未満の未成年、特に子供も感染するので、家庭内感染が激増する可能性が出てきた。早急に対策を講じる必要がある。東京都基準の重症者数は25日から4人増えて45人だった。
全国では午後23時59分の時点で2月6日以来の2000人超えの2026人が新規感染、33人が死亡、重症者は323人が確認されている。大阪府は今年1月30日以来の300人台の300人になった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月25日時点の実効再生産数は全国が前日比0.02人増の1.15人、東京都は同じ25日時点で前日比0.02人増の1.05人だった。簡易計算だが実効再生産数で見る限り、新型コロナ感染者が再拡大(リバウンド)してきており、第4波の段階に入ったとの見方も出てきた。

未成年者の新型コロナ変異株感染について

20歳以下の未成年者が新型コロナの変異株に感染するケースが相次いでいるようだ。幼稚園児や保育園児、学童児、小学生、中学生、高校生が感染すれば、家庭内感染が急増する恐れがある。日刊ゲンダイが伝えた(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287047)。一部、引用させていただきたい。

厚労省の発表(17日時点)によれば、新型コロナ全陽性者のうち、10歳未満は2.8%、10代は6.5%と少ない。ところが、第27回アドバイザリーボードの資料(16日時点)によると、変異株の感染者では、10歳未満が14.5%、10代が11.8%に跳ね上がる。変異株の感染者に限ると26%が未成年なのだ。

日本では英国で変異した英国変異株が主流だが、感染力とともに重症化率(毒性)が強いことが英国の医学雑誌で発表されている。また、英国の変異株はさらに変異しているとの情報もあり、新型ワクチンの安全性・有効性は今のところ、不明だ。もちろん、現在のワクチンはファイザー製で16歳以上だから、高校生未満のワクチンはまだ存在しない。幼稚園、保育園、学校での集団検査など特別な対策が必要な情勢になってきた。

本投稿記事開始

本論に入る前に、立憲の枝野幸男代表が衆院予算委員会で打ち出した「Zero(ゼロ)コロナ」政策について、その方向性は高く評価したいが、財源が不明確であることを中心に問題点を指摘しておきたい。立憲のゼロコロナ政策は同党の次のページに記載されている(https://cdp-japan.jp/covid-19/zero-covid-strategy)。大きな柱としては、➀医療機関に対する支援の抜本的強化②PCR検査などの検査体制を抜本的に強化する(英国型を中心にした変異株については全陽性検体のゲノム解析を行える最新鋭のPCR検査検査システムを導入・構築する)③国民の誰もが安心して検査を受けられるように生活・生業(なりわい)を補償・保障するーというものだ。

特に、国民の生活・生業を守るための財政措置は必須だ。主なものは、➀生活困窮者や子どものいる低所得者世帯への生活支援金の給付②社会福祉協議会が実施している緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付上限の拡大と返済免除措置の対象拡大③持続化給付金・家賃支援給付金の再給付、減収要件等の要件緩和➃税・社会保険料の支払い猶予の継続、減免措置の創設⑤公共交通機関その他コロナ感染症による打撃の大きい産業・企業への国庫負担による経済支援の拡充・強化⑤迅速な事業支援のための日本型PPP(一定の要件を満たせば、融資の全額または一部の返済が免除される制度)の創設ーなどだ。

立憲・枝野幸男代表が衆院予算委員会で打ち出したゼロ・コロナ対策
立憲・枝野幸男代表が衆院予算委員会で打ち出したゼロ・コロナ対策

 

東京新聞Webサイトは「ゼロコロナ」政策について、次のように報道している(https://www.tokyo-np.co.jp/article/89207)。

立憲民主党は新型コロナウイルス対策として、感染の徹底的な封じ込めに優先して取り組む「ゼロコロナ戦略」を打ち出した。菅政権については、感染対策と社会経済活動の両立を図る「ウィズコロナ」の考えだと位置付けている。立民は今秋までに(必ず)行われる次期衆院選をにらみ、この戦略で菅政権との対立軸を国民に分かりやすく示す方針だ。

戦略は、(1)医療現場を支援(2)感染を封じ込める(3)暮らしと事業を守る―の3本柱だ。政府が経済活動の再開を急ぐあまり、感染抑制と拡大の波が繰り返されていると指摘。財政支出が一時的に膨らむとしても、感染者ゼロを目指す「ゼロコロナ」の方が、いち早く日常生活を取り戻すことができると主張する。海に囲まれている特性を生かし、対策で成果を上げている台湾やオーストラリアなどの政策も参考にした。(中略)

具体策としては、海外からの入国者を巡り、政府が自宅などで14日間の待機を要請しているのに対し、立民はホテルに10日間隔離すると提言。感染者を受け入れる医療機関の減収・負担増を補填する「全額事前包括払い」、PCR検査などを無償で受けられる対象の拡大、生活困窮者や低所得の子育て世帯への現金給付なども訴える(以下、略)。

取り敢えず、「ゼロ・コロナ政策」のメリットを挙げておく。当然のことながら、経済は需要と供給からなる。現在は1997年の消費税増税(消費税率の3%から5%への引き上げ)以降、新自由放任主義政策に基づいて行われた「誤った緊縮財政政策(民でできることは民に、という大義名分だったが国有財産=国民の資産を利権集団に売却するものでしかなかった)」によって、日本経済は25年に及ぶ長期デフレ不況に陥った。具体的には、➀プライマリー・バランス論を柱とした緊縮財政路線②製造業への派遣労働解禁など正社員の非正規労働者化(既に40%以上の勤労者が非正規雇用化されている)③相次ぐ消費税増税による所得再配分の逆進化(消費税増税は社会保障の充実のために使われたのではなく、高所得者層に有利な所得税・住民税と大企業に有利な法人税の減税の財源に回された)ーなどがある。

なお、金融政策としては邪道の量的金融緩和政策が長期に渡って行われたため、地方銀行を中心として金融機関の経営が悪化し、日銀マネーが金融機関を通して株式市場や不動産市場に流れたため、長期デフレ不況下の金融・不動産バブルが起こっている。バブルはいつかは崩壊するから、日本の産業・企業は大きな損失を被り、雇用も喪失する。そのうえ、日銀が主要企業の筆頭株主になるという異常な事態に陥り、株式市場による資本主義経済体制の調整・修正機能が大きく損なわれている。これでは、経済社会の健全な新陳代謝が行われなくなり、産業・経済構造の正常な発展が阻害されてしまう。日本が東アジア諸国の「後進国」に陥っている大きな要因だ。

しかし、デフレ不況の中でコロナ禍が発生したため、個人事業主の廃業や企業の倒産が多発している。こうした廃業・倒産は、日本経済の供給能力を損なう(毀損)するもので、放置しておけば国債発行による財政政策を行っても、物価上昇率が高くなる(物価高)だけで、経済社会の活性化は実現できない。れいわ新選組の山本太郎代表が最も危惧していることだ。このため、個人事業主や企業の存続と世界的な産業構造の転換(ガソリン車から電気自動車への交代、再生可能エネルギーシステムの全国的展開、IT産業=情報産業とメカトロニクス産業を融合させたIoT技術、情報通信技術のICT技術=の立ち後れの挽回)は必須の課題だ。

余談だが、ドイツでは1960年代後半の世界的な学生運動で敗北した学生たちが南部にくだり、反原発をスローガンに「緑の党」を結成、再生可能エネルギーシステムを構築する活動を続けてきたため、原発大国のドイツのアンゲラ・メルケル政権は「緑の党」の「手を借りて」、いち早く脱原発に成功した。ただし、メルケル政権は変異株への対策に失敗し、CDU・CSUは3月14日に行われた2州の州議会選挙で大敗、メルケル党首率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は窮地に立たされている。9月26日には連邦議会選挙が行われる(http://www.newsdigest.de/newsde/column/dokudan/11585-1135/)。

話をもとに戻すと、ガラパゴス島・日本の中ではなく、世界の潮流から見れば日本の経済社会がいかに立ち後れているか、良く分かる。コロナ禍対策でも後進国だが、産業構造・経済構造でも後進国に堕してしまっているのである。勤労を尊ぶ日本の経済社会では、観光立国・カジノ立国では日本は立ち行かない。枝野代表がゼロ・コロナ対策を打ち出したことは、供給能力を温存し、高度化するという意味でも評価できる。しかし、最も肝心な財源論が抜けている。

また余談で恐縮だが、日本の政治情勢に触れておく。政府=菅政権のもとでは親中政策の音頭を取ってきた経済産業省が弱体化し、菅首相の「天領地」である総務省に対する監視の目も厳しくなる。武田良太総務相が本日3月26日、東北新社の事業認定を取り消すと発表したのも、その表れだ。首相としてはディープステート(米国の闇の帝国:軍産複合体・多国籍金融資本が同国を動かしている)の傘下にあるバイデン大統領頼みだ。今後の出番は、財務省と外務省だ。財務省は緊縮財政路線に戻ろうとしており、「コロナ税」と称して消費税率の引き上げ(取り敢えずは13%を踏み台にして20%に引き上げる)を目論んでいるし、外務省・防衛省はインド太平洋調整官に任命されたカート・キャンベル氏らと連携を取りながら、「対中包囲網」の形成に余念がない。

デジタル庁法案やスーパーシティ構想も、ディープステートと竹中平蔵パソナ会長に代表される日本のレント・シーカー(政府や官僚組織へ働きかけを行い、法制度や政治政策の変更を行うことで、自らに都合よく規制を設定したり、または都合よく規制の緩和をさせるなどして、超過利潤(レント)を得るための活動を行う民間人)の合作だ。要するに、「対米隷属外交」が本格化し、親中派(媚中派)は政権と自民党から一掃される運命にある。なお、武田総務相は、二階グループに属する。

話をもとに戻すと、枝野代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長トリオが財源論に弱いのは、経済政策に疎い(うとい)からだ。骨太の経済政策を自信を持って打ち出せないから、神津里季生率いる日本労働組合総連合会(連合、原発ゼロに反対する電力総連と消費税の還付で大きな利益を得ため消費税増税の音頭を取る電気連合)の圧力に弱く、真正野党の共闘体制分断工作にいとも簡単に乗ってしまう。具体的には、日本共産党の排除と原発ゼロ政策の撤回要求だ。だから、マスコミ各社の支持率は一向に上昇しない。それどころか、菅政権の大きな不祥事にもかかわらず、ジリ貧の状態になっているのが現状だ。

ここで登場してきたのが、総務相経験者であり立民副代表の原口衆院議員だ。原口氏は現代貨幣理論(MMT)の日本での正確な普及に務めている藤井聡京大大学院教授に学びながら、日本の経済分析を分かりやすく伝えるYoutubeチャネル「機能的財政論」(https://www.youtube.com/watch?v=3dywZdIcU-k)を持っている。論旨はMMTを分かりやすく紹介したものであり、➀中央政府(政府と中央銀行)が通貨発行権を持っている限り、国債(公債)の発行基準を公債発行残高の対国内総生産(GDP)比に置くのは意味がない②健全な積極財政を行うためには、経済の供給力を考慮してインフレ率が一定の水準(2%程度)以上にならないようにすることが「正しい財政規律」である③プライマリー・バランスをゼロにするなどの緊縮財政はデフレ不況を長期にわたって深刻化させるーなどを主張している。次の図は、Youtubeのチャネルで原口氏が照会したものだ。

なお、インフレ率は購買力平価に直結し、現実の為替レートは購買力平価に行き着くから、インフレ率を適正な水準に維持すれば、通貨(円)の暴落などは起こらない。「現代貨幣理論(MMT)」については、次の投稿記事(試論)を参考にされて下さい。

原口氏はYoutubeで情報を発信しながら、3月24日水曜日には藤井教授を招いて「新しい日本を創る会(仮称)」という勉強会を開き、一週間後の3月31日水曜日には正式に研究会を発足させるという。会合には、れいわ新選組の山本太郎代表と親しい馬渕澄夫衆院議員(比例近畿ブロック)や税制に詳しい福田昭夫衆院議員(栃木2区)、発信力のある石垣のりこ参院議員(宮城選挙区)らが参加した。

また、政調会長と党三役の一員であるため勉強会への出席は遠慮しているが、泉健太政調会長とも政策的に近い。藤井教授とも親しい小沢一郎衆院議員や側近の森ゆう子副代表(新潟選挙区)らとも連絡を取り合っているようだ。ただし、枝野代表ー福山幹事長ー安住国対委員長トリオには事前に連絡している。総選挙前に「党内政局」を起こすことは立憲のためにならないと考えているためだ。

 

強力な経済政策に弱いことと神津連合会長に引きずり回されることが立憲の枝野代表の弱みである。また、NHK出身の安住国対委員長も自民党の森山裕国対委員長の要求を受け入れるだけの存在になっており、国対委員長としての責任感がまるでない(参考:https://www.youtube.com/watch?v=6oZedgl6zd0&t=472s)。これでは、秋までには必ず実施される総選挙はもちろんのこと、4月25日の北海道2区、参院長野選挙区、参院広島選挙区補選で敗退する可能性も否定できない。

れいわの山本太郎代表は、記者とのぶら下がり会見で、「消費税率5%を(立民が)積極的に打ち出せば野党共闘に参加するというハードルはあげないが、(コロナ禍の現状を見ると)5%に引き下げることを訴えても(国民の耳には入らず)勝ち目はないだろう」と率直に認めている。枝野代表ー福山幹事長ー安住国対委員長トリオが真剣になって、原口副代表らの訴えに耳を傾けなければ、コロナ第4波次第だが、立憲は厳しい状況に陥るだろう。


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