醜悪さ充満・茶番劇の自民党総裁選ー野党は共闘強化、政権交代で対米隷属脱却、新自由主義一掃を(野田氏補強)

自民党総裁選告示日の9月17日間際になり野田聖子幹事長代理が総裁選に名乗りを挙げたことから、河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相が一回目の投票で圧勝することは難しくなったと見られている。しかし、4人の総裁候補の中で、「日米同盟」という名の「対米隷属外交」と弱肉強食の「新自由主義政策」を抜本転換することができる人物はいない。今回の総裁選は、野党側が憲法53条(「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」)に基づいて冬場に大襲来するコロナ禍対策のために臨時国会の召集を求めたことを全く無視し行われる。真正野党側は敵失によることなく、正当な共通理念と共通政策、野党連合政権構想を早急に示し、河野氏が総裁に選出されたとしても総選挙で勝ち得る体制を構築する必要がある。

実質的審議を行う野党側の憲法第53条に基づく国会召集要求無視してはいけない

今回の自民党総裁線の構図は、安倍晋三前首相と麻生太郎兼財務相が自己の悪事を覆い隠すために出馬させている高市早苗元総務相と、石破茂元幹事長および小泉進次郎環境相が協力し、安倍・麻生氏と醜い権力闘争を続けてきた菅義偉首相・二階俊博幹事長が背後で押す河野太郎氏の戦いという構図だ。宏池会岸田派の領袖としても頼りない岸田文雄前政調会長と障害児を持ってその立場から弱者救済の発言・政策は展開しており評価はできるが、社会通念関して元暴力団員を配偶者に持つと言われる野田氏は泡沫候補たらざるを得ない。ただし、野田氏が出馬したことから、党員・党友票(383票)で圧倒的多数を獲得し、その勢いで一回目の投票で圧勝するという河野陣営のシナリオは崩れたようだ。

野田氏の推薦人は下図で、二階グループが半数近くを占める。党員・党友票を分散させ、一回目の投票で河野氏を勝たせないため、安倍前首相が推薦人を貸したと思われていたが、そうではなかった。野田氏は幹事長代理であり二階氏の押す次期総裁候補の一人(第一候補は小池百合子東京都知事だったが、東京オリンピック/パラリンピックを中止しなかったため、出番がなくなった。「女帝」の終焉かと思われる)であったことと、野田氏の熱意が二階グループを動かしたのかもしれない。

しかし、菅首相によって二階幹事長が解任されることが決まっているため、二階グループも雲散霧消するかもしれない。さて、どの候補が総裁になっても、第一に自民党が「日米同盟」という名の「対米隷属外交」を繰り返すことと、第二に「弱肉強食・格差拡大」の「新自由主義」政策を繰り返すことには変わりはない。自民党での新自由主義路線は中曽根康弘政権のころから始まり、2000年代に入って成立した小泉純一郎政権以降本格化した。

安倍、菅政権でも同様である。例えば、次期総裁の最有力候補である河野氏が総裁選に向けて、その「人となり」と「政策・実績」を著した「日本を前に進める」(PHP新書)から引用させていただきたい(アマゾン・Kindle版)。

 

 

さらに日本として、アメリカをアジアに向けるために、日米同盟に加えて、中国の軍事活動に対抗するための枠組みをアジアで作り上げるということを検討する必要が有ります。日米に加えて、自由や民主主義、法の支配、基本的人権といった共通の価値観を持つ国々が集まり、万が一、中国が軍事的な行動を起こしたら、お互いを支援し合う同盟組織を真剣に検討すべきです。(位置No.842/2272)

米国が果たして真の意味での「民主主義国家」なのだろうか。米国同時多発テロが起きた2001年9月11日以降、米国は同時多発テロの首謀者と断定したウサーマ・ビン・ラーディンを暗殺し、彼を匿(かくま)ったとされるタリバン(神学生)が支配するアフガニスタンに攻め入り、新政権を樹立した。しかし、その結果は20年にわたる内戦の末、米軍の撤退とタリバンによるアフガニスタンの再支配という形で終結した。

9・11同時テロには陰謀説も流れているが、仮にウサーマ・ビン・ラーディンが米国同時多発テロを起こしたとしても、政府が暗殺するというのは、法が支配する民主主義国家の取る措置ではないだろう。本来なら、国際法に従ってウサーマ・ビン・ラーディンとそのグループを捕らえ、裁判を行って判決を下すということが、法の支配する民主主義国家の取るべき措置だろう。テロに対して武力を用いれば、暴力の連鎖を生む。その結果が、アフガニスタンでの米国の敗北ではなかったか。

冷戦の終結とともに、米国の支配層(ディープ・ステート:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)は世界中で対ソ連戦争の代わりにテロ戦争と、グローバリズムと称して「弱肉強食・格差拡大」の新自由主義政策(市場原理主義)を進めてきた。ただし、新自由主義の元祖はシカゴ学派のノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンであり、新自由主義に基づく政策を現実の政治経済社会に打ち出してきたのはロナルド・レーガン大統領だ。この新自由主義が冷戦の終結によって世界中に拡散された。

さて、ディープステートの先鋒になってきたのが日本だ。日本は戦後、米国が主導する連合国最高司令官総司令部(GHQ)の統治下に置かれたが当初は民生局(GS)が占領政策を行い、徹底的な民主化を推し進めた。現在の日本国憲法は国際連合を前提としてこの時期に誕生した。しかし、冷戦が勃発すると当時の米国のトルーマン大統領が1947年、ソ連封じ込め政策を発表・展開し、GHQも占領政策の担当部局がGSから参謀2部=G2に移行した。その結果として日本の民主化にはブレーキがかかり、米国の日本占領政策の基本は「民主化」から「非民主化」・「反共化」に転換した。

その延長線上に日米地位協定と日米安保条約、サンフランシスコ講和条約がある。日米地位協定はドイツなどの敗戦国の同じような地位協定と比べても著しく不平等であり、日本に対して対米隷属を強いるものだ。日米地位協定を見直し、米国からの独立を求める日本の政権はすべて破壊された。古くは1947年に樹立された片山哲内閣、1948年に樹立された芦田均内閣。ロッキード事件で対中外交や対米自立資源外交を展開した田中角栄が葬り去られたのもその一環であり、近くは2009年に成立した民主党の第一次政権(鳩山由紀夫首相ー小沢一郎幹事長)が破壊された。

民主党の第二次政権である菅直人政権以降は対米従属路線に再転換し、野田佳彦政権がさらにマニフェストには記していない消費税増税をブチ上げて、自民党に「大政奉還」することになる。大政奉還された自民党は公明党と連立を組んで安倍政権、菅政権と対米隷属外交を続ける。この安倍政権時の1995年9月、自公連立政権は「集団的自衛権は認められていない」という日本国憲法解釈を根本から覆して、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(通称 平和安全法制整備法)と「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(通称 国際平和支援法)からなる「安保法制」を成立させた。

この結果として、日本は米国の先鋒となって同国の戦争に「貢献」する戦争国家になった。河野氏が主張する現在の対中軍事経済包囲網の形成はその一環だ。河野氏を支援する石破茂元幹事長も同じく「日米軍事同盟」を最重要視する。この点が、石破氏が一時は行動を共にした立憲民主党の小沢一郎衆院議員とたもとを分かった最大の理由だ。小沢氏は、国連を中心にして世界平和のための安全保障体制を構築することを理想とし、目的としている。本来なら日本は、日本国憲法の前提になる国連を中心とした安全保障体制を構築すべきである。

そして日本は、1948年12月10日の第3回国際連合総会で採択された、すべての国民とすべての国が達成すべき基本的人権についての宣言である世界人権宣言に基づいて起草された国際人権規約(世界人権規約=経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約=社会権規約、A規約=と市民的及び政治的権利に関する国際規約=自由権規約、B規約=からなる)社会権規約)を、自国はもとより世界諸国民が尊守するよう粘り強い平和外交を続けなければならない。もとろん、米国に対しても中国に対してもそうである。

なお、社会権規約、自由権規約及び自由権規約の第1選択議定書は、いずれも1966年12月16日に国際連合総会で採択され、1976年に発効した。また、1989年12月15日、自由権規約の第2選択議定書(死刑廃止議定書)が採択され、1991年7月11日に発効した。さらに、社会権規約の個人通報制度を規定する社会権規約選択議定書も2008年に採択され、2013年に発効した。

要するに、日本が日本国憲法に基づいてなすべきことは、国連の強化と国連による安全保障体制の確立に貢献しつつ、日米地位協定(日米安保条約の実質的な中身)を抜本的に改変し、対米従属外交から脱却し、真の対米自主独立国家をかち取ることである。中国に対しては、米国の指示に従って敵視策を取るのではなく、東アジア共同体の重要な一員として包摂していく必要があるだろう。河野氏をはじめ今回の自民党総裁選立候補者の中にはそうした姿勢はない。むしろ、河野氏のようにますます対米従属化を深めていくだけである。

次に、四人の総裁候補のうち岸田氏は「新自由主義」からの脱却を唱えてはいるが、単なる念仏だけ。河野氏の著書を拝読してもそのことは明瞭に見て取れる。河野氏は「新しい年金制度」(位置No.1780/2272)として、①消費税で賄う基礎年金という一階建て部分②国民が自らの手で運用し、積み立てることの出来る積立方式の二階建て部分③国民が必要に応じて加入する民間の私的年金という三階建て部分ーにすることを提唱している。この提言は、現在の年金制度が既に年金保険料収入のうち一部をストックし、残りは全額現役世代から退役世代に回す修正賦課方式に移行していることを考えると、制度設計は極めて難しいことを覚悟しておかなければならない。

より重要な点は、一階建ての基礎年金部分の財源として「消費税」を充てるとしていることだ。要するに、さらなる消費税増税を行うことを考えているということだ。消費税が高額所得者の所得税や法人税減税の財源になっていることは本サイトでも既に述べさせていただいた。そして、①税収に占める消費税部分が今や最大の税収項目になっている②消費税の納税義務者は事業者であることから事業者に多大の負担を強いている③非正規雇用に対する報酬(給与)は事業者が生み出す付加価値から控除して良いから、非正規労働者を拡大する大きな「触媒」になっているーなどの重大な問題点が指摘されている。

納税の根本原則は担税能力のあるものほど沢山納税するという「応能原則」だ。まずは、応能原則を大前提とした税制の抜本改革を打ち出すべきだ。当面は消費税増税の余力はない。コロナ禍に伴う東・東南アジア諸国での生産減によるスタグフレーションの到来を予期しつつ、現代貨幣理論を創造的に応用してコロナ禍対応世界的グリーン・ニューディール政策を展開する必要があるだろう。

財務省より
財務省より

 

新自由主義は規制緩和とともに応能原則を徹底的に破壊してきた。その最たる税収項目は消費税だ。河野氏も「消費税」を年金給付財源の中核に据えているから同氏もまた、弱肉強食の「新自由主義」路線から外れることはない。それに、早くも竹中平蔵パソナ会長らレントシーカー(民間企業・人などが政府や官僚機構へ働きかけを行い、法制度や政治政策の変更を行わさせることで、自らに都合よく規制を設定したり、または都合よく規制の緩和をさせるなどして、超過利潤=レント=を得るための活動を指す)が取り巻いている。

なお、河野氏を支援している小泉進次郎氏もディープステートの影響を強く受けている。ディープステートは、対米従属路線と新自由主義路線から逸脱しなければ、どんな人物が自民党の総理・総裁になってもよい。河野氏が本命であると見られるが、四人の総裁候補の誰でも良いと思っている。

なお、河野氏の特異な政策主張は、第五章の「エネルギー革命を起爆剤に」で述べているように、再生可能エネルギーの必要性と核廃棄物からプルトニウムを取り出しウランと混ぜ合わせたMOX燃料を原発の燃料として再び使うという「核燃料サイクル・高速(増殖)炉開発」を技術的不可能性から否定していることだ。福井県敦賀市に実験炉として建設された「高速増殖炉」の「もんじゅ」は廃炉が2016年12月21日に正式決定された。現在では、陸奥半島にある青森県六ケ所村で、2022年ころから正式可動されることになっている。

日本の原発から廃棄される核のゴミの再処理で、「現在、我が国は、プルトニウムを国内に約九トン、英仏領国合計で約三七トン、合計して約四六トン、合計して約四六トン保有しています。プリンストン大学のヒッペル教授によれば、これはアメリカの核弾頭に搭載されているプルトニウムの総量三八万トンを凌ぐ量です。すでにある余剰プルトニウム四六トンに加えて、六ケ所村の再処理施設が稼働すれば、毎年プルトニウムが八トン追加されてしまいます。これ以上、再処理をして余剰なプルトニウムを取り出す必要がないことは明らかだと思います」((位置No.1638/2272))。

現在では、米国によって日本の核廃棄物の再処理は認められているが、韓国その他原発建設国で核廃棄物の再処理が認められれば、核不拡散条約(各拡散防止条約)の崩壊に行き着く。核不拡散条約こそ、大国のエゴイズムにほかならないが、核不拡散条約の崩壊はディープステートにとってもたまらないだろう。また、朝日新聞記者出身のフリー・ジャーナリストである佐藤章氏によると、陸奥半島は大地震の起きる活断層の上に位置しており、高濃度放射性廃棄物が貯蔵されている六ケ所村は極めて危険である。だから、河野氏が総理・総裁になっても、ディープステートはこれは認めざるを得ない。

ただし、放射性核廃棄物から再処理されたプルトニウムはウランと混合したMOX燃料として日本の産業の中核を占める電力会社の「資産」として計上されている。だから、核燃料サイクルを廃止すれば、電力会社は巨額の不良資産を抱え込むことになる。電力会社や電気事業連合、電力総連、経済産業省、そして党内原発推進派などは核廃棄物再処理体制の廃止に猛反対する。例えば、朝日デジタルは次のように報道している(https://digital.asahi.com/articles/ASP9H74LGP9HULFA00T.html)。

自民党総裁選に立候補する河野太郎行政改革相の原発政策に、党内の原発推進派が警戒感を強めている。「脱原発派」で知られる河野氏は再稼働は容認したが、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル政策」は見直すと明言しているためだ。使用済み燃料が行き場を失えば、原発が動かせなくなる可能性もあるだけに、総裁選の大きな争点になりそうだ。

このため、河野氏は電力会社や電力総連、経済産業省、そして党内原発推進派などから総攻撃を受けている。ただし、自公連立政権の中からは真の改革は期待できない。やはり、野党側に政権を譲り、河野氏側は協力すべきだ。核燃料サイクルを廃止を含む原発ゼロ(廃止)政策は、「温室化ガス効果」をもたらす「エネルギー産業」の停止・廃止を目指す野党の共通政策の中に入る。そして、エネルギー改革は野党側の基本政策にもなっている。例えば、日本共産党は次のように訴えている(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/09/post-882.html)。

(3)原発依存――最悪の環境破壊と将来性のない電源を選択する二重の誤り
第三は、「脱炭素」を口実に、原発だのみのエネルギー政策を加速させようとしていることです。「エネルギー基本計画(素案)」では、2030年度に、原発で発電量の20~22%をまかなうとしています。現在の原発による発電量は全体の6%程度ですから、老朽炉を含む27基程度の原発を再稼働しようというのです。原発は、放射能汚染という最悪の環境破壊を引き起こします。事故が起きなくても使用済み核燃料が増え続け、数万年先まで環境を脅かし続けます。最悪の環境破壊を引き起こす原発を「環境のため」といって推進するほど無責任な政治はありません。

しかも、原発に固執するエネルギー政策は、危険な「老朽原発の延命」をしても、近い将来の新増設が必須となります。しかし、福島原発事故を経験し、国民多数が原発ゼロを望んでいる日本で、どこに新しい原発をつくれるところがあるでしょうか。原発の新増設を前提としたエネルギー政策は、電力供給の面でも破たんする無責任な政策です(注:再稼働、新設される原発では核燃料サイクルで処理されたMOX燃料が使われることになる。その重大な危険性については日本共産党も理解しているはずである)。

安倍、菅政権と9年もの間、対米隷属と新自由主義政策に基づいて国民経済を破壊してきた自公連立政権は下野して野党側に政権を譲り渡し、「野党」として「与党」に協力しながら、自浄期間を過ごすし時期である。なお、4候補とも安倍・菅政権時代の無数の不祥事には目をつむる。また、河野氏の著書では新型コロナ対策についてはワクチン接種と補償体制の整備を訴えるだけで、新型mRNAワクチンでは集団免疫は獲得できないことやコロナが空気感染すること、そして、医療体制の抜本的整備の必要性については言及していない。

さらには、「感染症利権ムラ」になっている「厚労省医系技官システム」の巨悪については触れていない。これらのことについて無知かやる気がないのか定かではないが、いずれにしても従来のことを繰り返すだけでは仮に、河野政権が誕生したとしてもすぐに倒れる(国民の支持を失う)。

真正野党は国民から評判の悪い総裁が選出されるのを期待するのではなく、国民の期待に応えられるようしっかりして積極的に、①共生主義の理念②共生主義に基づく抜本的経済・産業(エネルギー産業が根幹)・社会政策③野党連合政権構想ーの三本柱を打ち出して行かなければならない。特に、核燃料サイクルの廃止については、立憲民主党の小沢一郎議員など強力な政治力を持つ議員を中心に推進していかなければならない。


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