自民党総裁選が行われる中で、立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の野党党首による「政策協定」が8日、4党首の署名によって結ばれたが、①季節要因から大襲来するとみられるコロナ第6波に向けた「医療体制の抜本的再編・構築」の視点②小沢一郎氏が期待していた「オリーブの木」による統一名簿の作成ーという視点が抜けていることが気がかりだ。
9月9日木曜日コロナ感染状況(更新有り)
複数のメディアによると9月9日木曜日の東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は前週木曜日より1424人少ない1675人で、死亡者は19人、重症者は昨日より1人少ない251人だった。7日移動平均では1837.1人、前週費では58.5%と第5波はほとんどピークアウトしている模様。12日までだった緊急事態宣言、まん延防止等特別措置は今月下旬まで延長される。ただし、第5波のピークアウトは夏に小流行する(変異株のデルタ株が新規感染者を拡大させた)という季節要因によるもので、秋の終わりから冬場にかけて大流行するという季節的要因すらすれば、冬場には夏場の5倍ほどの規模の第6波が襲来することが予想される。下記に述べるように「医療体制の抜本的再編構築」を冬が来るまでに行っておかなければならない。
全国では午後18時00分23時59分の時点で新規感染者が1万400人、死亡者は88人、重症者は2173人。
4野党の政策協定、高く評価できるが2つの問題点
「自公連立政権支持勢力による」電波ジャックの中ではあるが、日本共産党、立憲民主党、社民党、れいわ新選組の野党4党と「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が8日、締結した「政策協定」の内容を下記に引用させていただきたい(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-09-09/2021090901_04_0.html)。
新型コロナウイルスの感染の急拡大の中で、自公政権の統治能力の喪失は明らかとなっている。政策の破綻は、安倍、菅政権の9年間で情報を隠蔽(いんぺい)し、理性的な対話を拒絶してきたことの帰結である。この秋に行われる衆議院総選挙で野党協力を広げ、自公政権を倒し、新しい政治を実現することは、日本の世の中に道理と正義を回復するとともに、市民の命を守るために不可欠である。
1 憲法に基づく政治の回復
・安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する。
・平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う。
・核兵器禁止条約の批准をめざし、まずは締約国会議へのオブザーバー参加に向け努力する。
・地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する。
2 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化
・従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の整備を迅速に進める。
・医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの待遇改善を急ぐ。
・コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援を行う。
3 格差と貧困を是正する
・最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす。
・誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る。
・所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化する。
4 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
・再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する。
・エネルギー転換を軸としたイノベーションと地域における新たな産業を育成する。
・自然災害から命とくらしを守る政治の実現。
・農林水産業への支援を強め、食料安全保障を確保する。
5 ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現
・ジェンダー、人種、年齢、障がいなどによる差別を許さないために選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などを成立させるとともに、女性に対する性暴力根絶に向けた法整備を進める。
・ジェンダー平等をめざす視点から家族制度、雇用制度などに関する法律を見直すとともに、保育、教育、介護などの対人サービスへの公的支援を拡充する。
・政治をはじめとした意思決定の場における女性の過少代表を解消するため、議員間男女同数化(パリテ)を推進する。
6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する
・森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑について、真相究明を行う。
・日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。
・内閣人事局のあり方を見直し、公正な公務員人事を確立する。
2021年9月8日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
上記政策を共有し、その実現に全力を尽くします。
立憲民主党代表 枝野 幸男
日本共産党委員長 志位 和夫
社会民主党党首 福島みずほ
れいわ新選組代表 山本 太郎
4野党の政策協定は、れいわ新選組が主張していた「消費減税」を明確にうたい、れいわ新選組を野党共闘に取り組んだ点で大きな評価に値し、これまで自公連立政権が推し進めてきた立憲主義無視、新自由主義推進、利権主義に真っ向から画期的な立ち向かう点で画期的な内容だ。ただし、朝日新聞出身のフリージャーナリストである佐藤章氏の提言を参考にして、サイト管理者(筆者)の目から見ると、二つの点が欠けていると言わざるを得ない。
ひとつは、立憲民主党の小沢一郎代表が提唱した「オリーブの木」構想に基づいて衆院選比例代表ブロックで「統一名簿」を形成するという視点が抜けていることだ。小選挙区で4野党が候補者を統一せされば、自公連立候補に対する勝算は十分にある。しかし、比例ブロック当選者も立派な衆院議員になり得るが、支持政党なしの有権者は比例代表に相応しい政党としてどこの政党に投票すれば良いかわからないというのが正直なところではないだろうか。この点は、「オリーブの木」という「政党」を作り、その候補者として立民、共産、れいわ、社民が名乗りをあげればすっきりする。問題は「統一名簿」の作成だが、それこそ4野党の腕の見せどころだろう。
オリーブの木は「平和を象徴する幸運の木」だが、この「オリーブの木」を構想したのは、イタリアの経済学者のロマーノ・プローディで、「ともにイタリアのために」を標語としてイタリア人民党などの中道政党と左派政党が連合したものだ。1996年4月21日の総選挙でオリーブの木は共産主義再建党と結んで勝利し、ロマーノ・プローディを首相に指名した。この「オリーブの木」構想を小沢氏が日本に応用したものが、「オリーブの木」構想に基づく衆院選比例代表ブロックでの「統一名簿」形成だ。4野党が自党の議席を最優先するだけでは、比例ブロックで勝ち上がる衆院議員が少なくなる恐れがある。「統一名簿」の作成には、野党内部で反対するものが少なくないと言われてるが、現在の野党候補議員の当選数を最大限にするには最良の策だと思われれる。
ただし、「統一名簿」の作成が出来なかった場合は、野党各党の基本理念・政策を承知したうえで、比例ブロックで各党に投票することになる。その場合は、投票率が下がってしまうことも予想される。
欠けている点の第二は、季節要因から来る冬の第六波襲来に備えて、医療体制を抜本的に再構築することである。提言では、「科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化」を謳っているが、感染症対策の基本は「徹底検査と隔離・保護・治療」であり、そのための検査・医療体制を抜本的に整備する必要がある。このことは本サイトで何度も指摘させていただいた。
繰り返しになるが具体的には、第一に、徹底した検査と補償を大前提とした隔離・保護・治療(「自宅療養=自宅遺棄」の撤廃)」という世界標準の感染症対策の根本原則を忠実に実行することが基本だ。第二に、コロナ変異株のゲノム解析能力の飛躍的な向上に官民挙げて努めることだ。第三に、政府や知事の権限で出来る国公立大学附属病院の原則コロナ病院への転換(重症者や中等患者の受け入れ)や厚労相の支持で出来る国立病院機構や地域医療推進機構、労働者安全機構傘下の病院の中等患者専門コロナ病院への転換、大規模療養施設の建設・整備など医療体制を抜本的に再編することが欠かせない。第四に、官民挙げて治療薬と安全かつ変異株に強い安全で有効なワクチンの開発に努めることが重要である。第五に、医系技官制度を解体し、日本版疾病予防センター(Centers for Disease Control and Prevention=CDC)を組織化する。ワクチンについては、次の投稿記事を参考にされて下さい。
ただし、総選挙が衆院議員任期満了の10月21日直前の解散によるものとなり、時期が冬場の到来する11月になるとの見方も強い。その場合、特に、「医療体制の抜本的再編強化」は時間的に間に合わなくなる。佐藤氏によると、自民党総裁選は最終的に安倍晋三善首相の後押しを受け、「電波メディア」で持ち上げられる高市早苗元総務大臣と派閥にとらわれない若い議員の間で人気の高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相の一騎打ちになるようだ(https://www.youtube.com/watch?v=T5AMrmJJfvg)。
【追伸:9日13時50分】河野氏は、自身が所属する麻生派の領袖である麻生太郎副総理兼財務相の理解が得られれば、明日9月10日にも「総裁選出馬表明する」とのニュースが流れ出ている(https://www.youtube.com/watch?v=9ZUBTP2PQuI)。また、河野氏は会談後、麻生氏の了解が得られたとして10日に総裁選出馬表明を行うようだ(https://news.yahoo.co.jp/articles/a38fd657eedfc571dcb712693452b96e24c2d1dd、https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090900749&g=pol)
高市氏は和製マーガレット・サッチャーとして売り込んでいくことになると思われるが、サッチャーは最終的にサッチャリズム=新自由主義=の失敗を補うため、最悪の税制である「人頭税」を打ち出し、政治的に失脚した。総裁選に出馬する岸田文雄前政調会長は「新自由主義」とは決別することを表明している。安倍晋三善首相の索道で出馬する高市氏の政策は、破綻が明らかになったアベノミクスを繰り返し、これに「日本防衛」のための「軍拡路線」を加えたもので、はっきり言って「ウルトラ右翼(極右)」政策・路線で、危険極まりない。真正野党側が敵失で政権交代を果たすのは好ましいことではないが、安倍、菅路線に軍拡路線を加えた「高市首相」のほうが与しやすいだろう。ただし、日本特有の「ご祝儀相場」を打破する必要がある。
河野氏は若手の支持が多く、自民党の世代交代の大きなきっかけになる。河野氏が従来のコロナ対策の問題点に気づけば、「医療体制の抜本的再編強化」に取り組む可能性はある。河野氏が自民党総裁選で敗北すれば、自民党が大分裂し、連合6産別傘下の政党と組むとの憶測も流れている。傍証として政治経済評論家の植草一秀氏はメールマガジン3023号「CIA総裁選に乗じ自民分裂画策か」で、自民党総裁選の混乱に乗じて、自民党を分裂させて、総裁選立候補者を野党陣営の一部が支援する図式も検討対象になっていると考えられる
、と述べている。ただし、その場合は米国のようなディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)の傘下にある共和党と民主党のような政党が出来るだけに終わり、政治刷新にはほど遠くなる。
河野氏にしても、政治的発言の意味合いはあるだろうが、総裁選出馬のために「原発反対の姿勢」を変えることは信念を毀損することになる。仮に、首相になってその信念を実現していくとしても容易ではないだろう。それに、財政・税制政策の中核に新自由主義に基づく「小さな政府と大きな年金」の財源として「消費税増税」を置くというのでは、まさに「弱肉強食」の「新自由主義路線」でしかない。政治改革の根本は構造的には「米官業政電(メディア)」という日本型政治システムの刷新であり、機能的には「弱肉強食」の「新自由主義」政策から「共生主義」への政策転換だ。総裁選でどちらが新総裁に選ばれるとしても、自公林立政権ではそれは不可能だ。
ただし、高市氏にしても河野氏についても、感染症対策の根本に立ち返り、「徹底検査と隔離・保護・治療」の原則に立ち返るとともに、「医療体制の抜本的刷新・改革」を行わなければ、菅義偉政権の二の舞を演じることになる。蓋を開けてみなければ、中身はわからないが、日本の政治に大激動期が訪れていることは確かだ。